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松宮 春彦 院長の独自取材記事

もぐもぐクリニック

(府中市/多磨駅)

最終更新日:2021/06/11

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西武多摩川線多磨駅近くの「もぐもぐクリニック」は、摂食嚥下の機能向上や維持をめざした診療に積極的に取り組む医療機関が全国的にも少ない状況の中、松宮春彦院長が「必要なサポートが遅れがちな現状を打開したい」との思いから開業。クリニックには管理栄養士、歯科衛生士、言語聴覚士のほかに医師や薬剤師も在籍し、多職種が連携して患者をトータル的にサポートする。「特に高齢の方にとって嚥下の問題は命に直結しますから、早期発見・早期対策を行うクリニックとして成長していきたい」と話す松宮院長に、診療への思いや取り組みについて聞いた。
(取材日2021年3月23日)

多職種が連携して対応。栄養改善への取り組みも特色

こちらの歯科医院の特色を教えてください。

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当院は外来診療と訪問診療を行う歯科医院で、在宅の患者さんは外来の約10倍と訪問診療に積極的な点、「摂食嚥下障害」の診療とリハビリテーションに力を入れている点が特色です。摂食嚥下障害は、食べ物を認識し、口の中で噛んで、舌から喉、食道、胃へと飲み込む一連の流れである「摂食嚥下」のどこかに障害が起きている状態です。これにより飲み込みにくくなる、食べこぼしやすい、食事中・食事後によくむせるなどのほか、食べたものが気道に入る「誤嚥」もよく起きます。食事が取りづらく「低栄養・脱水」の状態が続いて体重の減少、筋力の低下や感染症につながる恐れがあるほか、「窒息」、誤嚥で肺に入った細菌による「誤嚥性肺炎」など、直接命に関わる症状も懸念されます。ただ、こうした症状は初期段階では見過ごされやすいため、当院では詳細な検査を行って、早期からの治療開始をめざしています。

摂食嚥下障害にどのように取り組まれるのですか?

原因が多岐にわたる上、栄養状態が悪化した方も多いので、初診時には問診に加え、各種の検査で患者さんの栄養状態、全身状態を調べます。さらに呼吸音と嚥下音の解析、舌圧測定といった検査で摂食嚥下の機能を確認後、必要な場合は嚥下内視鏡と嚥下造影装置を使って画像による精密検査も行い、それらを踏まえて診断します。嚥下造影装置は非常に大型で、個人歯科医院での導入は全国でも少ないようですね。このように栄養状態も含む全身状態を把握し、多職種がリアルタイムに連携して治療とリハビリテーションを行っていきます。ただ、低栄養の状態でのリハビリは逆効果になる場合もあるため、当院では初診時から管理栄養士が加わって、栄養状態の改善と嚥下機能や全身状態の回復を連携してサポートする「栄養ケアプロセス」を開始するのも特色です。

在宅医療では地域の医療機関や介護専門職との協力も大切ですね。

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これまでの活動で、摂食嚥下障害やその治療への理解が地域にも広がってきたと感じています。病院の入院患者さんが在宅療養に移行される際、病院での退院カンファレンスに、そこのスタッフさんや在宅を担当されるケアマネジャーさんと一緒に参加する機会も多くなりました。ケアマネジャーさんへのアプローチは特に重要で、食べ物や薬をうまく飲み込めない患者さんに対し、「年齢のせい」と諦めず、適切な治療やリハビリテーションで機能回復が期待できると知っていただくため、当院開業の数ヵ月前から地域のケアマネジャーさん向けの勉強会も開きました。ご家族と相談して患者さんのケアプランを立てられるとき、「摂食嚥下の改善に力を入れているなら」と当院を選んでいただくことも増えたと聞いています。

患者や家族と話し合いながら、適したゴールを考える

実際に行う治療について教えてください。

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基本的には当院が独自に作成したプログラムに沿って進めていきます。検査で前述のとおり患者さんの栄養状態を含む全身状態と摂食嚥下機能を調べた上で、24のチェック項目に対し10段階でいくつなのかを評価し、摂食や嚥下がうまくいかない原因を踏まえた具体的な治療方針を立てます。加齢による摂食嚥下障害の場合、摂食嚥下に関わる筋力や知覚の低下には歯科医師や言語聴覚士が訓練を行うほか、歯の欠損や歯周病などに対する歯科治療、管理栄養士による栄養指導など、多職種が連携したシームレスな対応が可能です。また、当院に特徴的なものとして、嚥下に関わる神経や筋肉に作用する装置を用いた治療や、食道の入り口を広げるバルーン拡張法という訓練を導入していることなどがあります。

摂食嚥下障害を積極的に診るところは少ないのですか?

訪問診療に取り組む歯科医院は増えていますが、摂食嚥下障害に対して適切な診断・治療を行う歯科医院は多くないと考えています。院内の多職種連携で対処できるところはさらに少ないと思います。ですから摂食嚥下について問題が見つかれば、外部の医師などに依頼する必要があります。それどころか摂食嚥下の問題に気づかずに治療を進めるケースも考えられます。歯を補う必要があるので入れ歯を作ったが、うまく食べられなかった。よく調べると舌の運動や飲み込む力など摂食嚥下機能に問題があり、機能改善を図る必要があると同時に入れ歯も作り直しになる、といったことも起きるかもしれません。

診療で心がけていることをお聞かせください。

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患者さんやご家族、治療や介護に関わる方とのコミュニケーションを大切にしています。在宅医療ではご本人とそのご家族双方の思いを伺って、もし溝があるならそれをどう埋めていくかによって、在宅医療への納得度・満足度は大きく変わります。ただ、何か絶対的な正解があるわけではなく、ご本人やご家族と何度もご相談しながら、ゴールを考えていく姿勢が在宅医療に関わる歯科医師には求められると思っています。加えて摂食嚥下障害の診断では問診も非常に重要で、診療面でもコミュニケーションは欠かせません。「いつ頃から異変に気づいたか」「痩せるなどの全身症状が起きていたか」をご家族にも伺いますし、初診時にケアマネジャーさんに同席をお願いして、現在の介護サービスの内容や利用開始時期などを伺う場合もあります。

在宅でも医療機関での受診と同等の診療を可能に

先生が歯科医師を志されたきっかけは何ですか?

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祖父は歯科医師で東京歯科大学に勤めていましたし、父も臨床で活躍した医師ですから、彼らの姿勢に影響を受けたのだと思います。歯科医師を志したのは、身近に医療に携わる人が多かったから、自然と自分もその道を進むようになった、というのが率直なところでしょう。東京歯科大学に入ったのも祖父の影響があったと思います。祖父は基礎医学の研究者でしたが、物事の捉え方や分類法などは、私の今の臨床現場でも大いに役立っていると感じています。

訪問診療に興味を持たれた経緯をお聞かせください。

大学で研究に携わった後、都内の歯科医院で臨床経験を積みました。そちらの院長に訪問歯科グループを紹介していただいたのがきっかけです。当時、臨床で訪問歯科診療の必要性の高まりを肌で感じていた私は、紹介された翌月には在宅医療の世界に足を踏み入れていました。歯科医院に通院するのが難しい在宅要介護高齢者の中には、食べ物をうまく飲み込めていない方も多く、体重が大幅に落ちてしまう場合もあります。食事時の咳き込み、むせなど摂食嚥下障害の初期症状は放置されがちで、医療機関を受診するときには既に状態が悪化していることも多いのです。訪問診療を重ねる中でそういった現状を目の当たりにし、「摂食嚥下障害を早期に発見し、多職種で連携を図りながら切れ目なくサポートができるクリニックをつくりたい」と開業しました。在宅でも、医療機関を受診したときと同等の診療が受けられる環境をつくることが最大の目標です。

地域の方にメッセージをお願いします。

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高齢の方は容体が悪化して病院に入院すると、容体は回復するものの活動量が減って体力が落ち、退院後にまた体調が悪くなって、入退院を繰り返すことも珍しくありません。高齢者に多い肺炎もそのきっかけとなる病気で、高齢になると発熱や咳など肺炎の典型的な症状を示さないケースもあり、ご本人やご家族が気づかないうちに病気が進むことも多いのです。当院は、そのような誤嚥を起こす要因となる摂食嚥下障害の治療、リハビリテーションを通じて、高齢の患者さんやご家族が安心して暮らしていただけるお手伝いをしたいと考えています。摂食嚥下障害は早めに見つけて機能回復に努めることが大切です。食事にかかる時間が長くなった、咳が増えた、体重が1ヵ月で5%以上減ったなどの状況であれば、飲み込みの検査を受けることをお勧めします。

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