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松宮 春彦 院長の独自取材記事

もぐもぐクリニック

(府中市/多磨駅)

最終更新日:2020/04/01

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西武多摩川線・多磨駅から歩いて5分の場所にある「もぐもぐクリニック」は摂食嚥下障害の診断と機能改善サポートを含む在宅医療に力を入れているのが大きな特徴の歯科医院だ。松宮春彦院長は、摂食嚥下の機能向上や維持に積極的に取り組む医療機関が全国的にもまだ少なく、必要なサポートが遅れがちな現状を打開したいと2018年4月に同クリニックを開業した。クリニックには管理栄養士、歯科衛生士、言語聴覚士の他に医師や薬剤師も在籍しており、多職種連携を図りながら患者をトータルサポートする。「特にご高齢の方にとって飲み込みの問題は命に直結します。早期発見・早期対策を行うクリニックとして成長していきたい」と話す松宮院長に、診療への思いや取り組みについて聞いた。
(取材日2018年5月9日)

多職種が連携することで有効なサポートが早期に行える

摂食嚥下機能のサポートを行っているそうですね。まずは貴院の診療内容についてお聞かせください。

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当院は外来診療と訪問診療を行っている歯科医院です。その中でも摂食嚥下(せっしょくえんげ)、つまり食べ物を認識してから口に運び、咀嚼(そしゃく)して飲み込むまでの機能を評価して、問題があれば治療を含むサポートを行っていることが大きな特徴です。2014年の全国国民健康保険診療施設協議会が調査した「摂食・嚥下機能の低下した高齢者に対する地域支援体制のあり方に関する調査研究事業」によると、摂食嚥下障害のある在宅要介護の高齢者は全国で40万人以上いるそうです。障害があったままだと、食べ物が気管に入ることで起こる誤嚥性肺炎の発症リスクが上がります。日本人における死亡原因の3位が肺炎で、その中には高齢者の誤嚥性肺炎も含まれますから、摂食嚥下機能の維持は患者さんの命を守るための対策と言えます。しかし、これを積極的に行っている医療機関や医師がまだ少ないのが実情なのです。

嚥下機能のサポートを行う医師が少ないことで歯科医療としてはどんな問題が起こり得るのでしょうか。

対応が後手後手になり、またバラバラになりがちであることです。訪問診療を行っている歯科医院自体は増えているのですが、嚥下障害の診断と治療を行えるところは多くなく、摂食嚥下に関する問題が見つかれば、その都度、外部の医師などに依頼する必要があります。加えて、摂食嚥下に問題があることに気づかずに治療を進めてしまうこともあります。人工歯を補う必要があるからと入れ歯を作ったものの、うまく食べられなかった。よく調べてみると、どうやら舌の運動や飲み込む力など摂食嚥下機能に問題がありそう。そして再び入れ歯を作り直さなくてはならなくなった。こういったこともあるわけです。

こちらでは早期に問題を見つけ、スムーズに対応できるということでしょうか。

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そうです。摂食嚥下機能のサポートを行う上で重要なのは、患者さんの全身状態と栄養状態を把握して、改善を図りながら歯科治療を含む支援を行うことです。つまり歯科医師だけでは十分ではないのです。その意味で当院では多職種が連携しながら患者さんの健康をサポートしていける体制が整っています。私を含めた2名の歯科医師と管理栄養士のほかに、医師、薬剤師、歯科衛生士、言語聴覚士、医療事務などが在籍しています。特に管理栄養士は初診から常に往診に同行し、患者さんの栄養状態を把握、サポートをしていきます。また、医師である私の父と弟は摂食嚥下治療についてのサポートをしてくれています。多職種とリアルタイムに連携しながら嚥下機能のサポートを行う歯科医院は全国的にも珍しいでしょう。

患者や家族と話し合いながらゴールを定めていく

実際にどんなことを行うのでしょうか。

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基本的には当院が独自に作成したプログラムに沿って検査や治療を進めていきます。まず検査ですが、問診と身体状況の確認を行ったあと、必要に応じて早い段階で管理栄養士による栄養ケアプロセスが開始されるのが大きな特徴です。データが不足している場合にはその場で血液検査を行っています。また、嚥下機能の検査については詳細なスクリーニングのあと、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を行い、結果に基づいた嚥下障害の診断、治療・リハビリテーションの計画立案をする形です。嚥下造影用の装置については非常に大型ということもあり、個人歯科医院での導入は全国でも珍しいようですね。当院は高齢者も来院しやすいよう車いすに座ったまま駐車場から検査室や診療室に入れるよう設計しています。診療内容として特徴的なものには、嚥下に関わる神経や筋肉に作用する特殊な装置を用いた電気刺激療法や、食道の入り口を広げるバルーン拡張法などがあります。

診療時に心がけていることをお聞かせください。

摂食嚥下障害を診断する上で問診は大変重要です。いつ頃から異変に気づいたか、痩せるなどの全身症状が起きていたかをご家族にも聞いていきます。また初診時にはケアマネジャーさんに同席してもらうこともあり、介護サービスの内容や利用開始時期などを尋ねることもあります。そのように多角的に得た情報は嚥下障害の治療方針を決定する際に生かされます。また、在宅医療ではご本人とそのご家族双方の思いを聞いて、もしそこに溝があればどう埋めていくかを考えるのも大切です。これといった絶対的な正解があるわけではなく、ご家族と相談しながらゴールを考えていく姿勢が在宅医療に関わる医師には求められるのではないでしょうか。

ところで、先生はなぜ歯科医師を志されたのですか?

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祖父が歯科医師で、私の母校でもある東京歯科大学に勤めていました。また父は現在でも医師として臨床の現場に出ています。彼らの姿勢に影響を受けたのだと思います。歯科医師を志したのは、身近に医療に携わる人が多かったから、自然と自分もその道を進むようになった、というのが率直なところでしょう。祖父は基礎医学の研究者でしたが、物事の捉え方や分類法などは、私の今の臨床現場でも大いに役立っていると感じています。

在宅でも医療機関と同等の診療を受けられる環境を

訪問診療にはどんな経緯で興味を持たれたのでしょうか。

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大学で研究に携わった後、都内の歯科医院で臨床経験を積みました。その歯科医院の院長に訪問歯科グループを紹介していただいたのがきっかけです。当時臨床の現場で訪問歯科診療の必要性が高まっていることを肌身に感じていた私は、紹介していただいた翌月には在宅医療の世界に足を踏み入れていました。歯科医院に来ることのできない在宅要介護高齢者の中には食べ物をうまく飲み込めていない方も多く、中には体重が大幅に落ちてしまう人もいます。食事時の咳き込みやむせ等の摂食嚥下障害の初期症状は放置されがちで、医療機関を受診した時には既に状態が悪化してしまっていることも多いのです。そういった現状を訪問診療を重ねる中で目の当たりにし、摂食嚥下障害の早期発見と多職種で連携を図りながら切れ目なくサポートを行えるクリニックをつくりたいと開業しました。在宅においても医療機関と同等の診療を受けられる環境をつくることが最大の目標です。

お忙しい中、お休みの日はどんなふうに過ごしていますか。

開業して間もないこともあり、あまり休めていませんね。休診日も他の医院で嚥下治療を行っていたり、患者さんの治療計画を考えていたりしますので。自宅では猫を8匹飼っていますので、時間ができたらまったり過ごしたいと思います。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

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高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥に関係しているといわれています。本人や家族が気づかないうちに誤嚥性肺炎を起こしてしまい、病気が進んで入院をして退院した時には体力が落ちている。そしてまた肺炎を起こして入退院を繰り返す。そういったケースが非常に多い現状があります。当院はそんな問題の解消に近づけるクリニックとして成長していき、患者さんやご家族が医療機関に通わなくて済む状況をつくりたいと考えています。摂食嚥下障害は早期発見が大切です。食事に要する時間が長くなった、咳が増えた、体重が1ヵ月で5%以上減ったといった状況であれば、飲み込みの検査を受けることをお勧めします。

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