山本 雄一郎 院長の独自取材記事
やまもと胃腸内科
(宮崎市/南宮崎駅)
最終更新日:2021/12/06

宮崎市の中心を流れる大淀川南部に、宮崎市太田「やまもと胃腸内科」はある。クリニック周辺には、古くからの住宅地に新しい住宅が立ち並び、宮崎南駅からも徒歩10分と近く交通の便も良い。先代の先生からの「クリニックを引き継いでほしい」という申し出に応え、山本雄一郎院長が、2017年開業した。胃腸内科と一般内科の診療を行っており、引き継ぎ以前からの患者も多く足を運んでいる。県立病院などで12年間研鑽を積んだ山本院長。勤務医時代には放射線科にて脳や内臓、婦人科系疾患など幅広い症例の診断も行ってきた。内視鏡検査はもちろん、画像を見て原因へとたどり着くための読影も得意としている。「患者さんと話す時間を大切にしていきたい」と明るく語る山本院長に、開業の経緯や今後の展望についてたくさんの話を聞いた。
(取材日2021年9月30日)
地域の医師同士のつながりを生かして、より良い診療へ
こちらの地域で開業した経緯についてお伺いします。

この地で開業したのは、同じ大学の先輩だった故・川野勝二先生から「クリニックを引き継いでほしい」とお話をいただいたことがきっかけです。そろそろ引き継いで4年になりますね。私は大学で放射線科に所属していたのですが、川野先生も同じ学科でした。一般的には放射線科といえば、CTやMRIの画像を用いて診断していくスキルを身につけていくのですが、私がいた宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)では当時、消化管部門があって、放射線科ながら、バリウム検査や胃内視鏡検査に関する技術も磨くことができました。放射線科の医師も、内視鏡検査ができるよう実習を行っていくのが当時は九州管内では普通で、宮崎県内でも、放射線科の医師が内視鏡検査をしているところは多いですよ。
先代医師から引き継いだとのことですが、この地域はどのように受け止めていましたか?
太田周辺は、医師がとても多い地域というイメージをもっていました。さまざまな専門クリニックが、まるで総合病院のように密集している地域ですよね。引き継ぐ上で、地域の先生方や患者さんに受け入れてもらえるかは、やはり少し不安でした。でも、皆さん割とすんなり受け入れてくださったのでありがたかったです。この地域は、医師同士のつながりも深い場所。新型コロナウイルス感染症が流行する前は、近隣の先生方と集まって交流を深める機会も多かったです。そういったつながりもあるので、患者さんの状態を診て、よりその症状を得意とする先生が近くにいるときは紹介しています。周辺にクリニックが多いことで助かっていることは多く、電話1本で紹介できる関係性に助けられていますね。
どんな患者さんの来院が多いのでしょうか?

内視鏡検査をしたいという患者さんが多いですね。あとは、おなかの痛みから来院される方や逆流性食道炎の患者さんも多い印象です。クリニックを引き継ぐ以前から、定期的に内視鏡検査を受けていた患者さんは、今も継続的に来院されています。人間ドックや健康診断で、再検査したほうがいいと指摘されて来られる方もいらっしゃいますね。胃腸内科ということで、口から肛門にかけてを中心に幅広く診療を行っています。患者さんの中には、内視鏡検査の痛みに不安があるという方も多いのですが、最近の内視鏡機器は鉛筆並みに細くなっていて、検査には鎮静剤も使うので、ご本人が気づかない間に検査を終えることも望めます。検査中は眠ってしまう方も多いでしょう。全身麻酔ではなく静脈内鎮静法を用いるので、検査が終わった頃に目が覚めるという感覚だと思います。
画像から疾患を見極める、放射線科での経験を生かす
放射線科での経験は、どのような診療に生かされていますか?

勤務医時代の放射線科では、脳や内臓、婦人科系まで全身の疾患を画像から見極める経験を積みました。患者さんによっては、「どこの病院に行けばよいかわからないからここに来てみた」という方も少なくないのですが、そういう方には連携している病院でCT検査を受けてきてもらって診療を行うこともあります。画像があれば読影ができるので、必要な治療が行えるクリニックを紹介することもあります。「振り分け係」的な役割もしているという感じでしょうか。女性の患者さんだと乳がんの発症率が上がっているので、検診などを勧めたりもしています。あとは、逆流性食道炎の患者さんに食事の指導を行っています。この疾患は、食事内容が影響していることも大きいので行っているんですが、食事と姿勢とストレスに特に注意が必要ですね。パソコンなど、前かがみの姿勢が多い方は注意してほしいです。
内視鏡検査も数多くされていると思いますが、注意してほしい疾患などありますか?
大腸がんの患者さんは増えていますね。特に、年齢の若い方に増えています。30代前半で発症しているケースもあり、そうなると20代後半から進行しているということになる。従来は、40代になったら内視鏡検査をといわれていましたが、最近は30代でも1回検査するよう提案しています。あとは、胃がん。減ってくる疾患かなと思っていたのですが、あまり減っていないですね。胃がんに関係するピロリ菌は、かつては井戸水にいるといわれましたが、今は母親からの罹患が多いといわれています。ですので、胃がんを発症された親族がいる場合は、検査したほうがいいでしょう。あとは、睡眠時無呼吸症候群にも注意してほしいです。内視鏡検査中に眠られた患者さんの中にも、一時的に呼吸が止まる方がいた経験から、当院でも診療が行えるようにしました。この疾患は突然死や糖尿病、高血圧などの疾患の引き金になりやすいため、早めの治療が大切です。
内視鏡検査で心がけていることを教えてください。

見落としがないように検査していくことを大切にしています。患者さんの負担をできるだけ軽減した内視鏡検査を行うには、テクニックも必要です。経験を積めば身についていくものなのですが、痛みが出ないよう、苦しくないように素早く的確に判断していくようにしています。以前、喉頭がんが見つかった患者さんがいたのですが、本来喉は苦しくなりやすいので素早く通してしまうことが多いのですね。ただ、かといって見落としはしたくないと思い、できるだけ負担をかけないようにしっかりと診たことが良かったようです。また、気にかかる所見がある場合には、改めて3ヵ月後に診せてもらうようお願いするようにしています。
早期発見を大切に、地域の健康をサポートする
先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

私の父は肝臓が悪かったのですが、それが医師をめざした一つの理由ですね。高校では医師の道を選ぶ同級生も多く、そうした環境もこの道を選んだきっかけになりました。長男だったので、地元に残って働こうということは考えていました。放射線科を選んだのは、医師に病変を教えるような役割を担う部門というところに魅力を感じたことが大きかったです。その後、読影もできて内視鏡検査もできるというところを買われて消化器内科の経験を積み、今の道を進んでいます。
今後の展望について教えてください。
地元に根づいて、周辺の先生たちと一緒に地域の方々が健康になれるお手伝いをしていきたいですね。必要に応じてですが、薬の量を減らしていくような努力も続けらられるようにしたいと思います。あと、今は内視鏡検査を4ヵ月ほどお待ちいただいている状態です。検査をたくさんこなしていくことも大切なのですが、患者さんと話をすることを大切にしていきたい。そうなると待ち時間が増えたりと課題もありますが、それでも、患者さんとの会話はできるかぎり大切にしていきたいですね。
最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

思い立ったが吉日という言葉があるように、何か不調があったらできるだけ早く内視鏡検査を受けてほしいですね。胃の内視鏡検査なら1年に1回が目安。特にピロリ菌を除菌した方は安心してしまいがちですが、胃は症状の進行が早いので定期的な検査が必要です。大腸の場合は、ポリープがある方は1年に1回が目安ですね。問題のない方なら3~4年に1回行っておくといいでしょう。「あの時検査しておけばよかった……」と後悔しないように、早めに行動していただきたいです。それで医師が大丈夫と言えば患者さんも安心でしょうから。検査をすれば、私たちも自信をもって診断できますしね。不安や不調があったときには、ぜひ気軽に相談にいらしてください。