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吉満 彰 院長の独自取材記事

吉満内科クリニック

(霧島市/日当山駅)

最終更新日:2025/06/03

吉満彰院長 吉満内科クリニック main

姫城温泉バス停から循環バスに乗り、医師会医療センター前で下車した場所にあるのが、「吉満内科クリニック」だ。天井が高く、広々とした待合スペースには、患者が手がけたアート作品がさりげなく飾られており、地域に根差したクリニックとしての姿を物語っているようだ。診療にあたるのは、吉満彰院長。ゆったりとした宮崎弁の語り口が印象的だ。取材中にも、地域の人々から頼りにされている様子がうかがえた。「患者さんが自分らしく過ごすには、医療だけでなく、看護や介護の力が不可欠です」と語る吉満院長に、在宅医療への想いや診療に込める姿勢について聞いた。

(取材日2025年4月10日)

霧島市立医師会医療センターと連携し地域医療を支える

開業するまでの経緯を教えてください。

吉満彰院長 吉満内科クリニック1

鹿児島県内の大学病院や公立病院で、放射線科医として呼吸器疾患やがんの放射線治療などに携わった後、民間の内科医院で3年間勤務しました。そこでは一般内科の診療に加えて在宅医療にも取り組み、患者さんの生活に寄り添う医療の在り方を実感しました。そうした中で、現在の霧島市立医師会医療センターの前身となる隼人町立医師会医療センターが設立されることになり、地域で連携できるクリニックが求められていたのです。私自身は、独立して在宅医療に取り組みたいと考えていた時期でしたので、ご縁が重なり、2004年に現在の場所で開業しました。私はもともとこの土地になじみがあったわけではありませんが、地域の皆さんが温かく迎えてくださったおかげで、20年以上ここで診療を続けてこられました。

霧島市立医師会医療センターの目の前に開業されたのですね。

はい。専門的な検査や治療を担う霧島市立医師会医療センターと、日常的な症状や慢性疾患に対応する当院が連携を行うことで、地域全体の医療を支える体制を築いています。例えば、高血圧や糖尿病など、急を要しない症状はまず当院で診察します。いわば、この地域の「医療の入り口」としての役割です。こうすることで、専門的な治療を必要とする患者さんが同センターを受診しやすくなればと思っています。当院で診察後、必要があると判断した患者さんに対しては、同センターへの紹介も可能です。また、同センターのソーシャルワーカーから、終末期のがん患者さんの在宅医療をご相談いただくこともあります。

クリニックの特徴を教えてください。

吉満彰院長 吉満内科クリニック2

当院では、いわゆる「町のお医者さん」として、幅広い症状や年齢層の患者さんに対応しています。外来の診療内容として標榜しているのは、内科と呼吸器内科です。風邪症状のある方をはじめ、気管支喘息や肺気腫など、呼吸気系疾患の方も来られます。その他にも、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の方などもいらっしゃいます。年齢層は、10歳前後のお子さんから、上は100歳を超える方まで、非常に幅広いですね。在宅医療に関しては、放射線科医としての経験を生かし、私が対応できる範囲の診療をしています。例えば、痛み止めの注射や、栄養剤・抗生物質など必要に応じた補液の点滴です。夜間に患者さんの容体が急変する場合もありますので、その場合は訪問看護ステーションの看護師と連携し、その場で必要な処置を行います。

人生の最期を自宅で過ごす患者や家族を支えたい

そもそも在宅医療に興味を持ったきっかけを教えてください。

吉満彰院長 吉満内科クリニック3

以前、ある公立病院に勤務していた際、40代後半の末期乳がんの患者さんを担当させていただいたことがありました。その患者さんは、治療が一段落して在宅で療養に切り替わった後も、ご自宅で急変して救急搬送されてくることが度々ありました。その度に、私は呼吸の苦しさを和らげるための処置をしたり、短期入院を受け入れたりして、またご自宅へ戻るサポートをしていました。でも、本当に望まれていたのは、安心して最期まで家で過ごせる環境だったのではないかと思ったのです。この経験から、患者さんが人生の最期の時間を自宅で過ごすことの意味と、それを支える医療の必要性を強く意識するようになりました。患者さんご本人は、ご自身の余命に覚悟ができていたようですが、後に残すお子さんのことが心残りだとおっしゃっていた言葉が今でも印象に残っています。今も、そのご家族との縁は続いており、私の診療を支える原点となっています。

終末期の診療で大事にしていることはありますか。

ご本人とご家族の気持ちにできるだけ寄り添うことです。初めてご自宅を訪問したときには、少しずつお話を伺うようにしています。その方がどんな人生を過ごしてこられたか、行ってみたい場所や、会いたい方をお聞きするようにもしていますね。そうした希望があれば、できるだけ実現できるよう支援するのが私の役割です。ご家族に無理をお願いするとか、私が安易に許可するということではありません。医療としてできる処置をし、患者さんの願いがかなって満足して旅立てること。それが「生を全うする」ということだと私は思っています。そして、それをご家族にも理解していただくことが、終末期の患者さんの診療に携わる医師の仕事だと考えています。

患者さんご本人の思いに寄り添う一方で、ご家族へのサポートも欠かせないのですね。

吉満彰院長 吉満内科クリニック4

そうですね。終末期の診療において、ご家族の存在はとても大きいと思います。そばにいるご家族の安心は、ご本人にも伝わるからです。ご家族が、患者さんの寂しさやむなしさ、孤独感を支えることに集中できる環境をつくる。それが、私たちの大事な役割だと考えています。最近は、「予想される病状変化をしっかり理解した上で、残された時間を自分らしく生ききりたい」と考える方が増えてきたように感じます。そのためには、医療だけでなく、看護や介護の力が不可欠です。看護師や介護職の方々の支えがあるからこそ、在宅医療は成り立っているともいえるでしょう。これからの在宅医療は、そうした連携の質がますます問われていくと感じています。

地域のつながりの一端を担うクリニックに

訪問診療ではどのような患者さんに対応しているのでしょうか。

吉満彰院長 吉満内科クリニック5

住居型老人ホームに入居している方を中心に、在宅で安定して過ごされている方を定期的に訪問して診療しています。慢性疾患をお持ちの方・高血圧の方・肺炎や心不全を起こしやすい方など、症状はさまざまです。緊急を要する場合は別ですが、一方的に治療方針を決めることのないよう心がけています。状態が落ち着いているのであれば、ご本人が穏やかに過ごせるようサポートする。そうした診療を大切にしています。もちろん健康的な状態を維持することは大切です。ただ、生きるという行為は生理的現象だけで成り立っているのではないということです。家族との何げない会話や料理の音や香り、花を揺らす風のそよぎ。そういう「日常」を味わいながら過ごせることが、充実した生につながっているのではないでしょうか。

今後は、どのような診療をしていきたいとお考えですか。

これからも、自分にできる範囲の診療を丁寧に続けていきます。特に在宅医療の場合、私が無理をして引き受けた結果、一番ご迷惑をおかけするのは患者さんです。だからこそ、これからも、一人ひとりとしっかり向き合い、きめ細かい診療を続けていくことが大切だと考えています。また、食事や運動によって改善が期待できる症状に対しては、生活習慣を見直す診療にも力を入れていきたいですね。もちろん、ご本人とよく話し合い、納得していただくことが大切なので、無理に勧めることはありません。薬だけに頼るのではなく、生活全体を整えることでより良い状態をめざすサポートができればと思います。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

吉満彰院長 吉満内科クリニック6

私にとって「老い」とは、年齢による変化に逆らわず、どう折り合いをつけていくかということです。生まれてきたものは、いつかは必ず命を終えるときがきます。それが自然の摂理であり、年齢を重ねるにつれて、どこかしらに不調が出てくるのも当然のことです。だからこそ、いつまでも若さを追い求めるのではなく、年齢に応じた生活の仕方を見つけていくことが大切だと考えています。究極の老いは「死を迎えること」です。その時までの過ごし方を考えたときに支えとなるのが、地域のつながりです。見守る人がいて、やがてはその人も見守られる側になる。そんな関係が、この地域には根づいています。当クリニックもその一端を担えるよう、これからも地域に根差した医療を続けていきたいと思います。

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