野村 康英 院長の独自取材記事
歯科のむら
(さいたま市北区/鉄道博物館駅)
最終更新日:2025/09/30

鉄道博物館駅から歩いて8分、4階建てビルにある「歯科のむら」。階下の内科・眼科と連携しながら診療を行う野村康英院長は、開業から8年、一人ひとりの患者とじっくり向き合うことを何より大切にしてきた。「話が長くなってスタッフにあきれられることもあるんですよ」と笑う野村院長だが、その会話の時間こそが患者の不安を和らげ、納得のいく治療選択につながるのだろう。歯科恐怖症の患者には少しずつ治療を進め、治療に疑問を持つ患者には丁寧に説明する。そんな野村院長に、患者に寄り添う診療への思いや、医科歯科連携の取り組みについて話を聞いた。
(取材日2025年9月6日)
思いがけない誘いから始まった開業への道
開業の経緯について教えてください。

臨床研修を1年、その後は東京のクリニックで数ヵ月働き、それから当院を開業しました。もともとは長く勤務医を続けるつもりだったのですが、ちょうどその頃、1階の薬局を経営する知り合いから「歯科医院をやらないか」という話をいただいて。2階の内科の先生が糖尿病診療をされていて、歯周病との関連もあるから歯科があったほうがいいという話になっていたそうなんです。そこで私に声をかけてくださって、「私で良ければ」と答えたら、とんとん拍子に話が進み、開業することになったんです。それが2017年、今から8年前のことです。
お父さまも歯科医師だそうですが、影響はありましたか?
父も歯科医師で開業していたので歯科医師という職業は身近で、自然と歯科医師の道へ進みました。今思えば、父の背中を見ていたことが、早期に独立開業する勇気につながったのかもしれません。経験が浅いことは自覚していましたが、その分、患者さん一人ひとりとしっかり向き合って、わからないことは勉強しながらやっていこうと。インプラント治療や矯正は専門外になりますが、患者さんから質問されたときにはお答えできるように、勉強会に顔を出したりしています。知識を持っておくことで、患者さんの相談に乗れますからね。
診療で大切にしていることは何ですか?

一人ひとりを大切にすることです。特化した得意分野はありませんが、その代わり患者さんとじっくり話をする時間を大切にしています。患者さんの生活状況を聞いたり、治療の選択肢について説明したり。スタッフには「また話が長い」と呆れられることもありますが、この時間があることで患者さんがリラックスできたり、治療への理解が深まったりすると思っています。せっかく縁あって来ていただいた患者さんですから、最後まで付き合っていきたい。それがうちの特色かなと思っています。
歯科恐怖症の患者も安心できる診療を
歯科恐怖症の患者さんへの対応で工夫していることは?

まずは少量の治療から始めることですね。例えば、虫歯がかなり広くても、最初は軽く削って薬を詰めるだけにして、「今日はギリギリのところでやめておきますね」と説明します。本当は奥まで細菌が残っていることもありますが、一気に進めると痛みが出てきてしまい、恐怖心が増してしまう可能性があるので。麻酔も工夫していて、最初は「ツン」と少しだけ入れて「よく頑張りましたね」と声をかけ、落ち着いてからまた少し入れるという具合に調整します。注射の回数は増えますが、こうすることで患者さんには「思ったより痛くない」と安心してもらいたいんです。治療が苦手な方には、無理に治療を進めずに痛み止めと抗生物質をお出しして様子を見るということもできます。患者さんが納得して、自分のペースで治療を進められることが大切だと考えています。
セカンドオピニオンのように相談に来られる患者さんも多いそうですね。
他のクリニックさんなどでこれまでに治療された内容で「このかぶせ物はなぜこの材料なの?」「どうして抜歯と言われたの?」といった疑問を持たれて来院される方もいますね。そいう時は、前の先生を批判することはもちろんせず、おそらくこういう理由だったと思いますよと自分がわかる範囲で説明し、当院ではこういう選択肢があります等と対応させていただきます。治療法に絶対的な正解はないので、患者さんの希望や生活背景を考慮して、一緒に最適な方法を見つけていくことを心がけています。
お子さんの診療についてはいかがですか?

最初は私の体格を見て泣いてしまう子も多いんですが、6~7回通ううちに慣れてくれます。大切なのは、ゆっくり話すことと、親御さんにも中に入ってもらって一緒に説明を聞いてもらうことだと思っています。5~6歳になると話や意思疎通ができてくるので、「これを使うからね」と器具を見せて説明します。1歳半健診では口を開けてくれない子もいますが、「泣いている時は口が開くから今のうちに見ちゃいますね」とお母さんに説明して、手早くチェックします。お子さんの治療では褒めることも心がけていて、少しずつでも進んだところまでを「今日はここまで頑張ったね」と褒めます。そうすることで、次も頑張ろうという気持ちになってくれるようにと。キッズスペースもあるので、待ち時間も楽しく過ごせるよう配慮していますよ。思いの他お子さんの患者さんが多くて、私自身も驚いています。
医科歯科連携で取り組む総合的なケア
同じビル内の内科との連携について教えてください。

2階の内科では糖尿病診療に力を入れているので、歯周病管理で連携することが多いです。糖尿病の方は「歯科医院で診てもらうように」と言われて来院されます。内科の受診日に合わせて歯科の予約を取る方も多いですね。内科の他にも、シェーグレン症候群のような唾液腺の病気では、眼科とも連携してドライアイの検査をお願いすることも。睡眠時無呼吸症候群のマウスピース作製の依頼もありますし、誤嚥した時もすぐ内科でエックス線撮影が行えたり、点滴が必要な時もすぐ対応してもらえたりと、さまざまな連携ができます。有病者歯科が私たちの強みになっていて、高血圧や脳梗塞経験者など、いろんな病気がある方を診ています。簡単に抜歯できない方も多いので、慎重に、でも必要な治療はしっかり行うようにしています。
スタッフとの関係や地域活動についてはどうですか?
当院のスタッフは全員40~50代で、私より年上なんです。だから上下関係というより、フラットな関係で「先生、早く終わらせてください」なんて注意されることもあります。歯科衛生士は2人いて、予防歯科にも力を入れています。私がチェックした後に歯科衛生士もしっかりチェックしてくれるので、ダブルチェックで見落としを防いでいます。地域活動では大宮歯科医師会の仕事に力を入れていて、休日診療所での当番や介護施設での口腔ケア指導、健康フェスティバルへの参加など、いろいろやらせてもらっています。歯科医師会の活動を通じて地域に貢献できればと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

特別な得意分野はありませんが、聞きたいことがあれば何でも答えます。治療の相談だけでなく、他院での治療内容の質問でも構いません。これからも新しい機器を導入したり、勉強会に参加したりして、患者さんにご提案できる選択肢を増やしていきたいと思っています。新しい治療や機器にもアンテナを張りながら、一人ひとりの患者さんと最後まで付き合っていく。それが私のやり方です。何か困ったことがあれば、気軽に相談に来てください。