渡邉 健二 院長の独自取材記事
らららこどもクリニック
(鹿児島市/都通駅)
最終更新日:2025/10/07

JR鹿児島中央駅から徒歩6分の「らららこどもクリニック」。2017年の開院以来、一般的な小児科診療を中心に、発達障害を含む神経系疾患や重症心身障害児者の外来診療、さらには受診が困難な子どもの訪問診療にも対応してきた。2025年には院内の改築を行い、すべての患者が安心して通えるよう環境づくりを進めている。院長の渡邉健二先生は、北海道大学農学部を卒業後、鹿児島大学医学部に進んだ経歴の持ち主。物静かな語り口でとても丁寧な印象のドクターだ。小児医療に力を注ぐ渡邉院長に、医師の道に進んだ理由や小児医療にかける想い、診療で大切にしていることなどをたっぷり聞いた。
(取材日2025年8月20日)
一般小児科診療から神経疾患や発達障害まで幅広く対応
医師をめざした理由を教えてください。

もともとは農学部で学んでいましたが、大学時代に何度も骨折を経験したことから医学に関心を持つようになりました。特に、事故で右手を骨折し手術を終えた時、医学の力を実感し、医学部への転向を決意しました。小児科を選んだのは、全身を幅広く診ることができる点に魅力を感じたからです。
小児科に入局後、育児休暇を取得されたそうですね。
妻も医師なのですが、学年が下なので当時は学生でした。妻が修士時代にジェンダーの勉強もしており、育児休暇は必須と言われ、私も小児科でしたので、育児休暇を取得することにしたのです。小児科に入局する際に育児休暇の許可ももらっていましたので、環境が整った状態で取得できましたね。3ヵ月の育児休暇でしたが、その意義は大きかったです。子育ては孤独だと身にしみましたし、社会の中での存在意義がなくなってしまう、という状況を実感しました。3ヵ月の育児休暇が終わり、仕事に復帰すると、自分の気持ちが楽になりました。子育てではうつになりかねない、ということがよくわかりました。
クリニックの診療内容について教えてください。

風邪やアレルギー、乳児健診や予防接種など、一般的な小児科診療を幅広く行っています。その上で、発達の課題や小児神経疾患を抱えるお子さんの診療や、医療的ケアが必要なお子さんへの訪問診療にも対応しています。小児神経疾患は原因や治療法がわからず、不安を抱えるご家族も少なくありません。その不安を少しでも和らげるよう、必要に応じて大学病院や市立病院とも連携し、診療体制を整えています。どのようなお子さんでも安心して通えるクリニックでありたいと思っています。
すべての患者や家族が安心して通える場所に
クリニックの理念についてお聞かせください。

医療的ケアを受けている子どもはさまざまな不都合を抱えながら過ごしていますが、決して不幸せではないと考えます。五体満足でも自死してしまう方もいますが、そんな中、言葉は出ませんし、寝返りもできなくても、家族に愛され常にニコニコしているお子さんを見ると、この子は本当に幸せなんだな、この子になりたいなと思ってしまいます。そのようにお子さんを育てられるご家族も尊敬します。そのようなご家族に接する中で、当院の基本理念「生んでくれてありがとう、生まれてきてくれてありがとう」ができました。子どもの能力はさまざまですが、それぞれが大きな可能性を持っています。一人ひとりの「子どもが健やかに成長し、もてる能力を最大限に発揮する」ことも挙げています。また子育てが孤独にならないために「子育てをする両親・家族も、社会の一員として生活・活動する」、「子どもの成長を通して、創造的な社会・未来を実現する」こととしました。
その想いが、「医療型短期入所サービスるるる」の設立へとつながるのですね。
「るるる」は、重度の障害がある方を対象とした日中のデイケア施設です。開設から8年がたち、利用を始めた当時は幼かったお子さんたちも成長しました。医療的ケア技術の進歩により、以前は自宅で過ごせなかった方も、家族と一緒に暮らせるようになってきましたが、重度の障害がある方が自立した生活を送るのは難しく、日常的なケアをご家族だけで担うには限界があります。そうしたご家族が少しでも安心して過ごせるよう、想いを共有しながらサポートしています。また、地域には18歳を超えた方が通える施設が不足しており、「るるる」では現在の利用者には年齢制限を設けず、成長後も継続して利用できる体制を整えていきたいと考えています。
クリニックを改築されたとお聞きしましたが、どのように変わったのでしょうか。

1階を「るるる」、2階をクリニック専用のスペースに改築しました。これまでは2階にクリニックと施設が同居していましたが、施設を利用する子どもたちが成長して手狭になっていたんです。改築後の「るるる」は、成長したお子さんも安全に過ごせるよう、より快適な環境づくりを進めています。また、浴室もストレッチャーのまま利用できるよう、広いスペースを確保しました。クリニック部分では、感染症対策にも配慮し、すべての患者さんが安心して過ごせる環境に整えていきます。
患者のニーズや想い、不安を一緒に解決していく
診療の際に心がけていることはありますか?

来て良かった、安心できたと思って帰っていただきたい。そのためには子どもや親御さんそれぞれにどのような不安があり、何を求めて来院されているのかを第一に考えます。発達障害の子どもを診る機会が増えていますが、子どもと親のニーズがずれていることがよくあります。それを擦り合わせていくと、ほとんどの場合、患者さんが「どうしたいか」という答えを持っていますので、それを言語化し、うまくやれることを一緒に考え、引き出すよう心がけています。この子たちが将来親元を離れ、独り立ちできるベースをつくっていかなければいけませんから、焦らず長いスパンで考え、成功体験を積んでいくことが大事です。
プライベートについてお伺いします。お休みの日はどのようにリフレッシュしていますか?
以前は映画や釣りに行っていましたが、ここ3年ほどは音楽を聴くようになり、最近はコンサートやライブに出かけるのが楽しみになりました。アーティストが鹿児島に来てくれたときはもちろん、福岡まで遠征することもあります。
今後の展望について教えてください。

子どもが少なくなっていく時代ですが、どんなお子さんも安心して過ごせる社会であってほしいと思っています。そのために、病気や障害の有無に関わらず、すべてのお子さんを受け入れ、支えていけるクリニックでありたいです。病気や障害のあるお子さんを持つ親御さんたちにも、生まれてきてくれたこと自体が幸せだと感じてもらえるよう、寄り添いながらサポートをしていきたいと考えています。これからも、お一人お一人に丁寧に向き合い、地域に根差した小児医療を続けていきたいと思います。
読者へのメッセージをお願いします。
当院では、風邪やアレルギーといった一般的な症状はもちろん、小児神経疾患や発達障害まで、お子さんに関するさまざまなご相談に対応しています。どのようなお悩みもしっかり受け止め、一緒に解決していけるよう心がけています。お子さんが体調を崩すと、ご両親はどうしても自分のことを後回しにしがちです。そういった場合は、お子さんと一緒に受診していただくことも可能ですので、どうぞお気軽にご相談ください。また、時間帯ごとの予約制を導入し、できる限り待ち時間が少なくなるようスタッフ一同で工夫をしています。今後はクリニックの改築に伴い、患者さんやご家族がより安心して通える環境を整えていく予定ですので、気軽にお立ち寄りください。