林 直樹 院長の独自取材記事
ウィメンズクリニックふじみ野
(富士見市/ふじみ野駅)
最終更新日:2025/02/17

ふじみ野駅近くにある「ウィメンズクリニックふじみ野」は、生殖医療を軸とするクリニック。不妊治療、高度生殖医療、婦人科内視鏡手術を専門とし、埼玉医科大学総合医療センターなどで豊富な診療経験を持つ林直樹院長が、2017年に開業した。医師や看護師、培養士、助産師、臨床検査技士、臨床心理士、遺伝を専門とするカウンセラー、薬剤師など、多数の専門のスタッフが連携し、日々診療に取り組む。「子どもを授かりたいという方々はもちろん、ライフステージの変遷とともにトラブルに直面する女性たちの思いにも、真摯に応えていきたい」と語る林院長に、同院の診療の特徴や取り組み、生殖医療への思いなどを聞いた。
(取材日2024年11月26日)
高度生殖医療を含む幅広い選択肢で子を持つ希望を支援
クリニックについて教えてください。

不妊症、不育症などの問題を抱えつつ、子どもを望まれるご夫婦への生殖医療を軸とするクリニックです。不妊治療についてはタイミング法や人工授精から、体外受精、顕微授精といった高度生殖医療まで、多彩な選択肢を用意。停電などで電力が断たれても電源供給が可能な電源装置や取り違え防止システムを備えた培養室では、タイムラプスインキュベーター、レーザーアシステッドハッチング、ピエゾ式顕微授精装置といった新鋭の装置を設置しており、高い水準の医療を提供できるよう環境を整えています。また、今でも定期的に内視鏡手術の実施や技術指導のために、長年臨床にあたってきた埼玉医科大学総合医療センターに赴いており、親密な連携関係を保持。より高度な処置、治療が必要なケースにも対応可能です。
開業からの7年間で変化を感じられている部分はありますか。
不妊治療への認知と意識は大きく変わりました。隠れて受ける治療といったものから、子を授かるために前向きに取り組むべき治療というイメージへと変化したのは喜ばしいことです。2022年4月からは保険適用も広がり、受診される方も急増しました。一方で、現在ではそうした爆発的な患者増は落ち着き、国内において不妊治療を受ける人が減少傾向にあるというデータがあるのは気がかりです。当院にいらっしゃる方に伺うと、「できれば2人以上」「たくさんの子を授かりたい」という声が多いのですが、一方で全体に目を向けると子を望まない人が増えているようです。これは社会全体の問題であり、子どもを持つ人、持とうとする人を皆で支える社会にならなければなりません。「子を持つことはリスク」といった考えが広がるのは非常に残念なことだと考えています。
不妊治療について教えてください。

大まかに分けて、タイミング法や人工授精など、自然妊娠に近いプロセスを重視する一般不妊治療と、体外受精などの方法も駆使してできる限り妊娠の可能性を高める生殖補助医療(ART)の2つのアプローチがあります。これらはどちらかが良いというものではなく、検査結果や不妊期間、これまでの経過や希望される子の人数などを確認しながら、それぞれに適した方法を取るべきというのが私の考え。例えば、まずは一般不妊治療を行い、結果が得られなければ遅きに失することなく体外受精に切り替えるといった流れが考えられます。また、卵管や子宮に問題があって妊娠しにくくなっているケースでは、先に外科治療を行うなど、幅広い選択肢を提案できるよう心がけています。子宮内膜ポリープなどの子宮内病変への子宮鏡下手術は、当院にて日帰りで可能です。
多様なスタッフによるチーム医療でベストな治療を
どのような場合に生殖補助医療を選択すべきなのでしょうか。

母体の年齢が上がると妊娠率が下がってしまうというのは、統計的に証明されている事実ですので、やはり比較的年齢の高い患者さんには、早い段階から体外受精などの生殖補助医療をお勧めします。例えば、40歳を過ぎてタイミング法や人工受精の回数ばかりが増えてしまうのでは、治療方法としてあまり適切ではないと私は考えています。自然に近い形で妊娠すればそれに越したことはないですが、大切なのは、できるだけ早く確実に赤ちゃんに出会うということ。結果を求めるのならば、年齢や背景に応じた治療法を選択すべきと思います。
こちらでは婦人科診療やワクチン接種も受けられるそうですね。
子どもを望まれる方々に限らず、ライフステージの変遷に伴う体の変化に向き合う女性たちをサポートする診療も行っています。例えば、若年層からの月経困難症や子宮筋腫、子宮内膜症といった女性特有の疾患、更年期障害などです。かつて子宮内疾患で手術を受けたが再発している方など、即座に外科対応は必要ないものの、日常的なケアが必要な方を対象にフォローアップしています。大学病院時代からの患者さんでは80歳を超える方も診ています。また、カップルで来院されるケースが多いこともあって、インフルエンザなどの予防接種にも取り組み始めました。もちろん、HPVや風疹のワクチン接種も行っています。
多様なスタッフが在勤していらっしゃるとか。

患者さんを中心に、産婦人科の医師や泌尿器科の医師、看護師、助産師、検査技士、培養士、不妊治療に精通する臨床心理士、遺伝を専門とするカウンセラー、薬剤師などの多職種が連携してケアにあたるチーム医療が私の理想。時には医師ごとに見解が異なることも、おかしなことではないと考えています。専門性を持つスタッフが、それぞれの視点からケースに向かうことで、多様な意見が得られるのです。「この患者さんにとってのベストは?」という問いには、さまざまな意見があり、それを統合することでより良い選択肢が提案できるものです。当院では個性豊かな多職種のスタッフをそろえており、同じゴールをめざして日夜研鑽しています。不安や悩みを抱えがちな不妊治療ですから、患者さんの思いに寄り添い、きめ細かく対応する看護師や臨床心理士らの力は欠かせないものです。
繊細な領域だからこそ、きめ細かな配慮で受診しやすく
診療の際に心がけていることは?

患者さんは皆、何らかの「思い」を持って来院されているもの。どんな思いで来られて、診察や処置を受けてどんな思いで帰宅されるのか、その思いを理解したいと考えています。スタッフに常に伝えているのは、患者さんに信頼されるように常に意識して、適切な医療を提供できるよう尽力しようということです。全員が生殖医療に対する基本的な知識を持ち、患者さんの疑問や不安に対し、職域を超えて患者さんを中心にしたチーム医療で対応していくことをめざしています。そのために勉強会のような、それぞれの知識や技量をブラッシュアップする機会も常に設けています。忙しいですが、皆が良く対応してくれて信頼していますし、当院の自慢ですね。
受診へのハードルを下げる工夫もされているそうですね。
不妊治療には患者さんの協力が欠かせません。男性側の問題が妊娠しづらさにつながっているケースも少なくありませんから、曜日と時間を定めて泌尿器科医師が診療する男性専用の枠も設けています。また、上のお子さんを連れて受診される方には、可能であれば午前枠の最後の枠での予約をお願いすることも。不妊治療中は精神的に追い詰められている方も多く、小さなお子さんの姿を目にすることがつらいというお声を受けてのお願いです。さらに、詳しい説明を動画で配信したり、カウンセリングをオンラインで実施したりといった対応も。センシティブな領域での診療となりますので、それぞれの事情を鑑みながら、多くの患者さんが受診しやすい体制をつくっていければと、スタッフとも意見を出し合いながら取り組んでいます。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

キャリアが長くなるとともに、患者さんとは徐々に世代が離れていくことを実感しており、世代間ギャップを乗り越えて理解する努力をしていかなければと感じています。特に伝える工夫は重要です。また、若い世代の先生方に、私の持てる限りを伝授していきたいですね。「どんなに卓越した医療を提供していても、新米の先生方が5年後10年後に行う医療のほうが、優れているはず。常に必要なのは謙虚な心である」と恩師から教わりました。そうした姿勢も伝えていければと思います。妊娠・出産のベースは母体の健康ですから、治療を望まれる方は、まずご自身の体の状態を整えることを考えてください。治療について勉強されるのは良いことですが、インターネットなどに氾濫する誤った情報に惑わされるのは問題です。お一人で、ご夫婦だけで悩まずに、正しい情報を求めるためにも気軽にご相談いただければと思います。