岡本 学 院長の独自取材記事
かわつこどもクリニック
(松江市/松江駅)
最終更新日:2025/12/11
国道沿いの住宅街にほど近い、松江市の「かわつこどもクリニック」。院長の岡本学先生は、「命を助けることに集中できる科」である小児科を志し、鳥取大学医学部に入学。卒業後は同大学院で肝・消化器疾患を専門に研究を重ね、鳥取大学医学部附属病院の医局長まで務めあげたベテラン医師だ。同院を開業後も、スタッフ特製の画用紙で装飾されたぬくもりのある空間で、子どもとその家族に寄り添ってきた。そんな岡本院長に、同院の特徴や診療の際に大切にしていることなどを語ってもらった。穏やかな笑顔と親しみやすく丁寧な受け答えには、日々の診察時の風景が思い起こされるようだった。
(取材日2025年11月5日)
「命を助ける」医療の原点から、地域密着の小児医療へ
小児科医をめざしたきっかけを教えてください。

実家の近所にあった鳥取大学は、父が職員だったこともあり、自分にとって自然な進学先でした。母方の祖父母が医師で、親戚にも医学部へ進んだ人が何人かいたことから、医師は身近で意識していた職業だったんです。小児科を選んだのは、当時の医局長の言葉に心を動かされたからですね。高齢の患者さんが多い診療科では、介護や経済的な事情、ご家族の人間関係など、さまざまな要素が絡み合うことが多いけれど、小児科はお子さんを中心に、医師と家族が一緒になって医療に取り組める。そんな言葉をいただいて、もちろん、延命だけが治療ではないという難しさはありますが、「命を助けることに集中できる科」という言葉に大きな魅力を感じ、小児科医をめざしました。
大学病院に勤務していた時代には、大学院で研究もされたそうですね。
はい。鳥取大学医学部附属病院は、他の関連病院で手に負えない患者さんや最重症の患者さんを受け入れる、いわば地域医療の「最後の砦」のような病院です。だからこそ、医師として幅広い症例を診られる大学病院で、研究にも力を注ぎたいと思ったんです。当時、鳥取大学には当時の教授を中心とした小児の肝臓病を研究するグループがあり、そこで肝・消化器疾患を専門に、C型肝炎ウイルスの母子感染に関する研究を進めました。4年間、平日の夜や休日を使ってデータ整理や論文執筆を続け、臨床の現場と研究の両面から小児医療の知見を深められました。その後、2003年に鳥取大学医学部附属病院の医局長に就任し、2005年からは松江市立病院で勤務しています。
松江市立病院ではどのようなご経験を積まれましたか?

大学病院を出る頃に「これから暮らしていくなら松江が良いな」と、落ち着いた街の雰囲気や、人の温かさに惹かれたんです。大学時代は専門グループごとの診療体制の中で、患者さんから見ると「教授に診てもらっている」という認識が強く、患者さんと距離を感じる場面がありました。松江市立病院では外来から入院、救急まで幅広い小児医療に携わり、自分の名前で受診してくれる患者さんが増えましたね。地域の開業医や医療機関との連携も経験する中で、「どのタイミングで専門家につなぐべきか」「どこまで自院で診るべきか」といった判断力が、実践的に身につきました。大学での知識に、地域医療の視点が加わった大切な時期でした。
地域に寄り添い、子どもと家族の安心を支える小児科へ
開業しようと思った理由を教えてください。

松江市立病院で勤務していた頃、入院や夜間救急を受診する子どもは減少傾向にありました。それは、アレルギーを抑えるための治療や吸入ステロイドの普及、新しいワクチンの導入などの「予防医療」分野の発展が大きいですね。一方でこの地域は開業医が少なく、「予防接種を受けたいのに、予約が1〜2ヵ月先まで埋まっている」という声を多く耳にするようになったんです。ちょうどその頃、新しいことに挑戦したいという思いがあり、地域にもっと貢献できるようにと開業を決意しました。地域医療のために予防接種や一般的な小児の病気に対応できるクリニックをつくりたいと思ったんです。地主さんも「小児科ができるなら地域のためになるし」と快く土地を譲ってくださり、今の場所で開業できました。
対応している診療について教えてください。
予防接種と小児内科全般の総合的な医療に注力しています。小さなお子さんの苦痛や恐怖が和らぐよう、診療の時は心がけていますね。血液検査は、注射で採血するのではなく、小さい針でパチンと刺して、にじみ出た血液を使って検査しています。感染症など多くの検査に対応していて、大きな病院を紹介しなければいけないかの判断に役立てています。アレルギーの少量血液検査には、今のところ対応していません。あとは、超音波検査を積極的に活用しています。超音波検査は痛みもなく、おなかの症状で来られたお子さんなどにはとても有用な検査です。他には、ちょっと腫れてるとか、しこりがあるときにも活用しています。けがの縫合など外科的な処置については、対応しているクリニックさんを紹介しています。
クリニックのこだわりを教えてください。

一般診療、予防接種や健診、感染症用など、数多くの空間を分けて設計しました。感染症用の入り口とか個室はどこでもありますが、大きな病院でも1~2個だったり、診察室は同じだったりするんです。私は予防接種の必要性を強く感じていましたから、感染症のリスクを考えたときに、予防接種の人と他の患者さんは「すべてにおいて」分ける必要があると考えたんです。ですから、診察室を分け、待合室だけでも、一般の診察待合と予防接種・健診用の待合、感染症が疑われるお子さん用の待ち合い、多目的待合として4つの個室を用意しています。個室は感染症のお子さんの隔離だけでなく、生後2~3ヵ月のすごく小さな赤ちゃんにご利用いただくこともあります。予防接種は昼間の専用の時間帯がメインですが、待合と診察室を分けたことで、午前中や夕方の診療と並行した時間に受け入れることもできます。
地域の中で相談しやすい小児科医であり続けたい
クリニックで大切にされているこだわりを教えてください。

正しい診断に基づいたお子さんにとって最も良い医療をしたいと思っています。後から振り返って「あの時こうしておけば良かった」と思うことのないよう心配があれば積極的に検査を行います。一方、医学的に不要と判断した検査は、ご希望があってもお断りする場合があります。親御さんが「本当に大丈夫かな」と不安に過ごされるよりも、専門家の診察を受けて安心してもらうほうが大切だと考えているので、長く務めた松江市立病院や松江赤十字病院、他の医療機関とも連携し、必要に応じて耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科など、適切な専門科をご紹介しています。また、開業当初から一緒に働いているスタッフが多く、ご家族に寄り添うチームができています。保護者の方が診察時に話し忘れた内容を、看護師や受付スタッフが丁寧に拾い、診察後に再度お話を伺う時があります。保護者の方の声にしっかり耳を傾けてくれるスタッフのおかげで、安心して診療を続けられています。
子どもがリラックスできるようにしている工夫はありますか?
怖がらないようにするのは、正直なところ簡単ではありません。それでも、できるだけ泣かせないようにと心がけています。診察の際は女性スタッフが一緒に入るようにして、なるべく私だけで対応しないようにしています。女性スタッフがそばにいると、子どもも安心して診察を受けられるんです。子どもによって安心できる距離感が違って、顔を見ると怖がる子もいれば、しっかり目を合わせて話したほうが落ち着く子もいる。一人ひとりに合わせた関わり方を心がけながら、少しでも安心して診察を受けてもらえるようにしています。予防接種のときはなるべく痛みが少ないように、接種することを意識しています。あまり泣かないで治療を終えられたら良いですね。
読者の方へメッセージをお願いします。

特別なことをするというよりも、来ていただける方にとって「頼りになる小児科」であり続けたいと考えています。子どもたちが安心して医療を受けられるよう、予防接種をはじめとする日常的な診療を大切にしつつ、必要に応じて適切な医療機関へつないで、ご家族の不安を少しでも減らせればと思っています。気になることや不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。地域の皆さんにとって安心して通える、相談しやすい小児科であり続けたいと思っています。

