上羽 智之 理事長の独自取材記事
うえは整形外科
(橿原市/岡寺駅)
最終更新日:2024/09/04

橿原市白橿町2丁目、近鉄吉野線・岡寺駅より徒歩10分。白橿団地の近くにあるクリニックモール1階の「うえは整形外科」は、整形外科のかかりつけ医として、多くの患者を支えてきた。開業当初から通う患者もおり、来年10年を迎える。上羽智之理事長は東京の大学に進んだが、生まれ育った橿原に戻って診療するという初心を貫き、股関節を専門として奈良県立医科大学附属病院を中心に勤務の後、開業した。腰痛・肩凝りからスポーツ障害まで幅広い疾患に対応。特に骨折は生活の質、健康寿命の低下につながるため、骨粗しょう症の診断・治療に注力している。「投薬や手術だけが治療ではなく、予防医学の観点からも日常生活のアドバイスや運動指導などにも取り組んでいきたい」という上羽理事長に、診療方針や地域への思いなど語ってもらった。
(取材日2024年7月30日)
股関節のエキスパートから、地域のかかりつけ医へ
先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

父が奈良県立医科大学附属病院の産婦人科に所属していた環境で育ったのが大きいですね。お産では夜間に病院に駆けつけることもあり、父を車で送る母と一緒に病院までついて行くこともありました。幼いながらに、そんな父をすごいな、かっこいいなと誇らしく思っていました。病院は近い距離にあり、私もそこで父に取り上げてもらったんです。私も自然と医師をめざすようになり日本大学医学部に進みましたが、必ず医師として愛着ある橿原に戻って来ようと決めていました。その思いどおり、大学卒業後は父と同じ奈良県立医科大学附属病院へ。麻酔科、救命救急センターで経験を積みました。その後、同大学附属病院の整形外科のほか、県内の複数の整形外科の病院に勤務しました。40歳で独立開業し、来年で10年になります。
整形外科を選ばれたのはなぜですか?
子どもの頃からスポーツが好きだったことが大きいですね。大学は野球部に所属し、高校は陸上部で400メートルの選手と、スポーツのおかげで精神面もかなり鍛えられた気がします。私自身は大きな故障をしたことはありませんが、肉離れ、骨折、野球肘などで整形外科に通っていた仲間も多かったですし、スポーツを通して人間の体に興味を持つようになりました。進学した日本大学はスポーツが盛んで、整形外科にはスポーツに携わるさまざまな患者さんが来ていました。
開業を決めた理由もお聞かせください。

奈良県立医科大学附属病院の整形外科には通算7年ほど勤務し、股関節を専門として毎日のように手術も行いました。父はずっと勤務医でした。このまま勤務医を続けるか、地域のかかりつけ医として幅広く患者さんを診ていくか。そう考えた時、自分の裁量で診療することに関心がありましたし、しっかり計画を立て診療を行うほうが性格的にも向いているのではと考えたのです。大学病院では重篤な患者さんも多く診ていました。ほかの科と連携するチーム医療も行うなど、やりがいがありましたが開業を決意しました。地元に戻って診療したい、地域貢献もできる。その思いは変わりませんでした。ここは知人が勧めてくれた場所で、ちょうど結婚が決まったタイミングでもあり、決めました。子どもが生まれてから香芝に住まいを移しましたが、生まれ育った橿原が大好きなんです。田舎の温かい雰囲気も、自分に合っていると思います。
投薬や手術だけでなく、予防の大切さも伝えたい
どのような年代の患者さん、主訴が多いですか?

症状は多岐にわたり、股関節はもちろん、肩凝り、首痛、腰痛、神経痛、リウマチ、野球肘などのスポーツ障害まで幅広く診ています。当院では手術は行っていないので、必要に応じて速やかに適切な医療機関をご紹介しています。年齢層も0歳から90代までとても幅広く、近くの団地にお住まいのご高齢の方も多く来院されます。団地にはエレベーターがないので階段の上り下りが大変という話もよく聞きます。開業してすぐ、「よく白橿に来てくれたね」など喜びの言葉をたくさんいただき、とてもうれしかったです。そうした方々のお役に立ちたいと強く思いましたね。
診療方針や、日々の診療で大切にしていることを教えてください。
開業前から、投薬や手術だけが治療ではなく、予防医学の観点からも日常生活のアドバイスや運動指導にも取り組んでいきたいと考えていました。ストレッチなど、負荷が少なく気軽に行えるものもあります。予防の大切さも伝えていきたいですね。整形外科は1回受診して治療が終了することは多くありません。長いお付き合いになることもあり、開業当初から通われている方も。患者さんとのコミュニケーションはとても大切にしており、リラックスしてもらいたいので世間話もしますね。スポーツ障害では、自分も子どもの頃から幅広くスポーツに親しんできたので、その経験が生きています。どこが悪いのか見当がつきますし、患者さんの体の使い方などもすぐ理解できます。何にお困りなのか、どういう動作をすると痛いのかなど、きめ細かに問診を行っています。
スポーツ障害は、どのようなものが多いのですか?

一番多いのはバスケットボールをやっている小・中学生。突き指、捻挫などが多いです。人気アニメの影響で競技人口が増えたことも一因かもしれません。今、人気のあるスポーツの傾向というのも、来院される患者さんを見ればわかります。野球では肘、サッカーやバスケットボールでは膝の障害も多いですね。ケガをしないためにはどうすればよいか、的確・有用なアドバイスを心がけています。スポーツをしない方も、加齢によって筋力、体力は落ちていくので、日常生活の中で取り組めるストレッチなどをお伝えしています。自転車をこぐ、歩く、スクワットなど、専門的見地から一人ひとりの患者さんに合わせ、体に影響のない範囲でできるだけ積極的に動くことをご提案しています。
地域住民の骨折を防ぐため、骨粗しょう症の治療に注力
特に注力している診療はありますか?

骨粗しょう症の治療に力を入れています。白橿地区は、向かいの大規模団地をはじめ全体に高齢化が進んでいます。骨粗しょう症の診断・治療に力を入れ、この地区の方の骨折をなくすことが目標です。骨折すると生活の質が著しく下がり、健康寿命も落ちてしまいます。それを防ぐためにも、骨粗しょう症を早期に発見・治療することが大切。当院では、60歳以上の方、更年期を過ぎた女性や、家族歴のある方など、高リスクとなる方が来院されたら積極的に骨密度を測ることをお勧めしています。
これまで出会った患者さんなどのエピソードがあれば教えてください。
勤務医時代から担当していたご高齢の患者さんが独立後も来院してくださり、「痛くなったら先生に診てもらうんだ」と言ってくださっていたと聞き、信頼してもらえたのかなと、とてもうれしく、忘れられないですね。これまで親身に指導してくださった先生もたくさんいました。大学病院時代の恩師には、ありがたさと同時に、せっかく熱心に教えてくださったのに病院を辞めて開業してしまい申し訳なかったなという思いもありますね。
休日の過ごし方やご趣味、健康のために実践されていることなどあれば教えてください。

子どもが3人おり、休日は一緒に過ごすことが多いですね。下の子は3歳のやんちゃ盛り。昆虫が大好きで、一緒に虫捕りをしたりもします。身近に自然豊かな場所がたくさんあるので、リフレッシュできますね。大学病院に勤務していた時、整形外科内で野球チームができ外野手として参加しましたが、整形外科医の全国大会では5回も優勝した強豪でした。開業後は参加が難しくなり、今は年に1回、予選の時に顔を出す程度ですが、交流は続いています。大学時代の同級生とも、年に1度は東京で集まっています。それも楽しみですね。スポーツ障害の患者さんを指導する立場なので、自分もできるだけスポーツに取り組むよう心がけています。運動不足にもなりますし、どんなに忙しくてもエアロバイクくらいはできますからね(笑)。
最後に今後の展望についてお聞かせください。
地域医療を志して開業したので初心を忘れず、患者さんに寄り添いニーズをしっかり受け止めて診療を行い、介護関連とも綿密に連携を取っていきたいです。話を聞くのが好きで、話しやすいとよく言われます。この取材のように自分から長々と話すことのほうが不得意かもしれません(笑)。今後も白橿地区のかかりつけ医として、患者さんが気軽に話せる雰囲気を大切にしつつ、患者さんの健康を支える地域医療に貢献していきたいです。