石ヶ坪 良明 院長、石ヶ坪 諒 副院長の独自取材記事
横浜リウマチ・内科クリニック
(横浜市港南区/港南台駅)
最終更新日:2024/11/21

横浜のベッドタウンとして知られる港南台駅からバスで約5分。12軒ものクリニックが入居する医療モールに「横浜リウマチ・内科クリニック」はある。2017年開業の同院の院長を務めるのは、横浜市立大学でリウマチ・膠原病の研究チームを率いた経験を持つ石ヶ坪良明先生。「モットーは『医者を信じるな』です」と笑う。「患者さん自身が自分の病気に関心を持ち、積極的に向き合ってもらいたい」と懇切丁寧な診療を心がける。整形外科を専門とする副院長の石ヶ坪諒先生と同時に2人で診察する体制は同院ならではだろう。専門的な知見を惜しみなく提供する二人に、これまでの経歴と診療にかける想いなどを聞いた。
(取材日2024年10月9日)
基幹病院のような医療を街のクリニックで
院長は横浜市立大学第一内科の教授を務められていたそうですが、経歴を伺えますか?

【良明院長】リウマチ学を専攻し、学生や若い先生たちの教育・指導にあたってきました。私が大学を卒業した当時、リウマチは「治らない病気」といわれていたんです。痛みを抑えるための治療しかなかったのが1980年代に新しい治療薬が出てきて、寛解もしくは早期治療で進行を食い止めることがめざせるようになってきたんです。それでがぜん、リウマチが面白くなり、研究に力を入れるようになりました。当時は、免疫学が盛んに研究されていた時期で、人材も豊富で日本からも複数のノーベル賞受賞者が出た時代です。私自身は、研究だけでなく臨床でも世界に視野を向け、関節エコーを用いる診察方法をリウマチの分野へ推進し、全身の部位に炎症が繰り返し起こるベーチェット病では、日本での国際学会も主催しました。
待合室には教え子の皆さんからの寄せ書きが飾られていますね。
【良明院長】研究者として病気に向き合うのも、臨床で患者さんに向き合うのも、指導者として学生に向き合うのも大好きなんです。言葉を選ばずにいうと、趣味といってもいいかもしれません(笑)。横浜市立大学の伝統となっている「合同リウマチ」と呼ばれる診療システムがあるのですが、これはリウマチの患者さんの外来診療に、整形外科の教授とリハビリテーション科部長、リウマチ内科の医師を入れた、複数の医師で診察を行う手法です。当院でもこれに類するかたちで患者さんの診察を行います。火、水の週2回は、私の息子であり、現在は、整形外科を専門としながら、リウマチ学の勉強に取り組んでいる副院長とともに、1人の患者さんを同時に2人で診察を行っています。
副院長は、どういう経緯で診療に入られたのですか?

【諒副院長】父が足を骨折した時期がありまして、最初は単にお手伝いとして来ていたんです。私もリウマチは少しなら診ることができましたので。そんな中、院長の診療に同席することがありました。私自身、医師になってから別の科の先生の診察に立ち会う機会はあまりなかったんですが、その際非常に衝撃を受けたんです。というのも、院長はリウマチ科の専門家です。私が認識していた“少しなら診ることができる”というのとは、レベルが段違いだと感じました。せっかくの勉強のチャンスがこんな近くにあったことに気づいて以来、週に数回こちらへ入るようになったんです。
自身の症状に関心を持って受診してもらいたい
クリニックの特徴を教えてください。

【良明院長】リウマチと整形外科の専門家が、2人同時に1人の患者さんを診るというのは大きな特徴でしょうね。例えば足の痛みという症状一つでも見方が異なります。私自身、整形外科を専門とする医師の視点から教えられることが多く、この年にして視野が広くなっていることも感じています。さらに当院とモール内の設備、検査機関を駆使しつつ、私のリウマチ内科以外の広い専門性として、16年間の呼吸器内科・感染症内科教授としての経験を生かし、迅速かつ適切な診断ができることも大きな特徴です。
【諒副院長】それはひいては患者さんのメリットですよね。院長が言ったとおり専門が違う医師が2人いることで見方が違うんです。リウマチの診療レベルは院長がはるかに上と思っていますが、「関節を診る」ことに特化すると整形外科の医師が長けている部分もあります。そうした多角的な視点で患者さんに向き合えることは当院の大きな特徴だと思います。
初診ではたっぷり時間を取って診察されるとか。
【諒副院長】そうですね。完全予約制で1枠30分取って診察します。2人で診察することはもちろんですが、院長はかつて医学生を指導する際に用いていたプレゼンテーション資料を駆使して、リウマチの原理や理屈をとてもわかりやすく説明するんです。正常な関節とリウマチの滑膜炎の関節の画像をパソコンのディスプレーに出し、実際にエコーで患者さんの関節を映しながら説明します。
【良明院長】私が患者さんに常々言ってきたのは「医者を信じるな」ということです。もちろん私たちが適当なことを言うわけではなくて、すべてを医者任せにせず、患者さん自身が積極的にご自身の病気について知るという姿勢を持ってもらいたいんですね。だから、わかりやすい講義のような診療を心がけているんです。
患者さんにとっても、ここまで時間を取って説明していただけるのは安心ですね。

【良明院長】そうですね。でも実は新型コロナウイルス感染症の流行時は、発熱の患者さんには「ここに来ないでください」という宣言を出していたこともあるんですよ。というのも当時、新型コロナウイルス感染症は未知の感染症でした。当院には免疫抑制薬を服用されている患者さんが多く受診されますので、感染すると重症化するリスクが非常に高いと考えられました。だから発熱者の診療をするのは危険だったんです。私は日本感染症学会の感染症専門医でもあるので、診療はできなくはないんですが、当時はそれよりもリウマチの患者さんへの感染伝搬を憂慮して、風邪の対処法の指導や必要な方にはパルスオキシメーターをお貸ししたりして発熱症状のある人には電話対応を約束していました。電話対応はお正月なども含め、365日朝7時から夜7時まで行い、3年間を過ごしました。
大学病院時代の経験が、クリニックでの診療の糧に
院長はそもそもなぜ医学を志されたんですか?

【良明院長】ノーベル賞に興味を持っていたことが原点です。高校の卒業アルバムの寄せ書きに「予言」として、「研究者として新しいものを見つけたい」と書き残しました。研究者として何を対象にするか考えたとき、最も身近で取り組みやすかったのが医学だったんです。結局臨床中心になり、こうして診療を続けていますが、横浜市立大学第一内科を統括する立場を経験したことは今も役立っています。リウマチ・血液・感染症・呼吸器を専門とする若い先生方を指導していくためには幅広い知識が必要があり、それが全身疾患としてのリウマチをはじめとした膠原病を診るための資産になっています。少し論点から離れますが、退官後当院を開業するまでの間に約1年ほどかけて北海道から沖縄まで全国の大小の医療機関を旅しながら小児科をはじめ全人的医療が必要な興味深い経験もしました。
副院長はなぜ、整形外科を選ばれたんですか?
【良明院長】年がら年中ずっと仕事ばっかりしている親の背中を見ていたら親と同じ科は選ばないですよね(笑)。
【諒副院長】そんなことはないです(笑)。私自身は、そもそも外科的な手術に興味があったんです。その他外科の領域も考えましたが、患者さんの身体機能を取り戻すために手術を行うことで喜んでもらえるのがうれしくて。このために頑張りたいと思ったのが一番ですね。ちなみに今院長と2人で診療している以外に、日曜日のみ私が単独で整形外科をこちらでやっています。日曜日、レジャーの現場でケガなどが起こりやすいと思いますが、日曜は診療していない医療機関も多いですよね。でも大きな病院を受診するのも悩ましいと思います。その際、当院に気兼ねなくご連絡いただけたら、整形外科の専門家がお話を伺います。
最後に、読者へのメッセージをお聞かせください。

【諒副院長】リウマチ・膠原病の専門家の中でも大御所的な立場の人の横で勉強しながら診療できるというのは非常に貴重な経験だと思います。これから先も得た知識を次の世代の患者さんたちにも還元していきたいので、さまざまなことを吸収して学んでいきたいなと考えています。
【良明院長】私たちは患者さんの立場に立ち、最も患者さんにとって有用な診療を心がけていますが、患者さんご自身も、自身の病気に興味を持って勉強していただけるような診療をめざしています。