椎谷 文恵 院長の独自取材記事
シイヤ歯科
(品川区/青物横丁駅)
最終更新日:2025/10/15
 
            「シイヤ歯科」が開業したのは2017年7月。下町の風情が色濃く残る青物横丁、旧東海道沿いにオープンした歯科医院だ。院内はオレンジ色を基調としたビタミンカラーで彩られ、椎谷文恵院長の明るくオープンな人柄を映し出すような、親しみやすい空間が広がっている。患者の待合室には、椎谷院長が自ら作成したという手書きの治療ファイルがずらりと並び、「患者さんには、自分の口の中についてきちんと知識を持ってほしいんです」という椎谷院長の気持ちが伝わってくる。長年の診療を通じて感じる青物横丁という町の魅力、そして「歯科医師は職人である」という椎谷院長の持論などについて、開院間もない夏の昼下がりに話を聞いた。
(取材日2017年7月28日 )
地元の人々に頼りにされるかかりつけ歯科医院をめざす
まず、先生のこれまでの歩みについて教えてください。

私の家族は歯科医師ばかりなんです。父も姉も歯科医師で全員が同じ大学を卒業していて、私の主人も別の場所で歯科医師をしています。大学卒業後は鎌倉にある歯科クリニックに勤務して、その後はずっとこの近くで20年ほど診療してきました。以前はとても忙しい環境にあって、1時間に4人もの患者さんを診ていたほどです。開業した現在は約30分に1人くらいのペースで診療しているので、治療についてだけでなく、患者さんとたわいのない日常会話もできる時間的なゆとりが増えました。しかも「本当にこの先生に診てほしい」と思って来てくださる患者さんばかり。そこは大きく変わった点であり、うれしいことでもありますね。
青物横丁は都心から近く便利な場所ですが、風情のある町ですね。先生はこの町にどんな印象をお持ちですか?
青物横丁は都心から近い割に、旧東海道の下町という雰囲気も残っていて、とても温かみのある場所です。この辺りの方々は皆さん本当に思いやりがあって、人と人とのふれあいがある町だと感じます。実は「7月に開業します!」と大々的には言っていなかったのですが、患者さん同士のネットワークでいつのまにか知られていて、それを聞きつけた人たちがたくさん来てくれました。人が人を呼ぶというか、コミュニティーがとてもしっかりした地域なんでしょうね。おかげさまで毎日多くの患者さんを診療しています。
開業時にホームページがなかったのに、患者さんがたくさんいらしているというのは珍しいと思います。

開業してしばらくの間は時間的な余裕があると思っていたので、まずは開業して、それからホームページを作ろうと思っていました。ところが、ありがたいことに予想以上に患者さんが来てくださったので、なかなか時間がとれない状況だったんです。20年もこの近くで診療していましたし、私の苗字がとても珍しいこともあって、気軽にドアを開けて、「椎谷先生ってここに開業したの?」と患者さんがいらっしゃったことも(笑)。もしアウェーな地域で開業していたら、こうはいかなかったでしょうね。この辺りには他にも歯科医院がたくさんありますが、年齢の割には私は1~2番目くらいの古株なんです。それもあって、開業して間もない時期からすでに地元のかかりつけ医として溶け込んでいたような気がします。
患者の口の中を最善の状態にする「職人」でありたい
先生が興味を持って取り組んでいる診療内容についてお聞かせください。

私のもともとの専門は入れ歯やインプラントです。入れ歯もきちんと型を採り、技術のある技工士さんと連携すれば、お肉でも噛めることが期待できます。今は、審美的に入れ歯に見えない素晴らしい材料もあるんですよ。また、これらに加え、特に興味を持っているのは「噛み合わせ」ですね。噛み合わせはすべての人に関わってくる問題で、改善するためには、口の中だけではなく全身の状態まで視野に入れる必要があります。噛み合わせは全身に影響していて、体のゆがみや姿勢の改善が、ひいては噛み合わせの改善につながるケースもあるからです。当院では姿勢改善のためのトレーニングも行っています。方法はさまざまあるのですが、普段から注意したほうがいいポイントなど、その人の状態に合わせたアドバイスを行います。噛み合わせは、今後も続けて関わっていきたいことの一つですね。
診療に際してこだわっていることはありますか?
私にとって、歯科医師とは「職人」です。そして、自分が治療した患者さんの口の中は、ある意味「作品」だと考えています。職人であれば、自分が関わった「作品」のその後が気になるものです。適当なものを作った職人ならそれほど気にならないかもしれませんが、私はとても気になるタイプで、そこには強いこだわりがあります。ですから、短期間の治療で終わってしまうのではなく、患者さんを継続的に診ていきたいんです。青物横丁という町を離れなかったのも、そういった理由からです。患者さんは年配の方が多いので、今まで関わってきた患者さんとそのままお付き合いを続けつつ、さらに新しい患者さんともたくさん出会いたいですね。
どのような経験から、「職人」や「作品」という発想に至ったのですか?

以前、知り合いと一緒に食事をしている時に、「この人、入れ歯なのにお肉までよく噛めているな、これは作品と呼べるものだな」と感心したことがあるんです。入れ歯って、ただ入れればいいというものではありませんよね。その方の笑い方にもぴったり合った入れ歯だったので、私も「優れた作品だ」と思ってもらえるような治療をめざすようになりました。作品といっても、見た目だけではなく、よく噛めるという機能面ももちろん含んでいます。例えば、椅子職人が素晴らしい椅子を作ったら、うまくメンテナンスすることで味が出てきて、持ち主は「ずっと座り続けたい」と思うものです。それと同じように、患者さんにより良い治療を提供することで、より良い歯の状態で食事を楽しんでほしいと考えています。
患者自身が自分の口の中について理解することが大切
患者さんと長くお付き合いする中で、心がけていることはありますか?

20代後半の頃、アメリカの大学院のインプラント科で1年ほど学ぶ機会がありました。仕事を続けながら2ヵ月に1回の頻度で渡米していたのですが、その際、日本とアメリカの違いに気づかされることが多々ありました。特に感じたのは、日本の患者さんは自分の口の中についてわかっていない人が多いことです。ですから、自分の口の中のことは自分で理解してもらうことを常に大切にしています。どんな治療にも利点と欠点があるので、最終的にどの治療を選択するかは患者さん自身が決めるしかありません。例えば、ブリッジは楽だけどメンテナンスが大変、入れ歯は取り外しが必要で面倒かもしれないなど、自分で選べるだけの知識を持っていれば本人も心強いはずです。患者さんが理解を深めるために、きちんと説明をし、知識を増やすお手伝いをしながら、一緒に口の中を最善の状態に保っていきたいですね。
予防についてはどのように取り組んでいるのですか?
当院の患者さんは、「この時期にメンテナンスに来てください」とお話しすればきちんと来てくれます。それは、自分の口の中のことをよく理解しているからだと思います。よく理解していれば、人に言われなくても気になるもので、予防するには患者さんのデンタルIQを上げるのが一番ではないでしょうか。定期的なメンテナンスでは、クリーニングや歯石除去、虫歯の有無に加えて、口臭、姿勢の傾きなどもチェックしています。患者さんが診察室に入ってきたら、靴のかかとの減り具合も見ているんです。院内を土足にしているのもこうした理由からで、患者さんが自分の靴でどのように歩いているか、かかとがどのように擦り減っているかで全身の状態、バランスがわかります。スリッパに履き替えてしまうと、そこまで把握できません。院内の清掃という意味では私たちは大変ですが、ここは譲れないポイントですね。
歯科医師という「職人」としてどのような診療をめざしていくか、今後の抱負を一言お願いします。

これまで勉強も重ねてきたし、今後も学び続けるつもりですが、私がめざすのは「作品のクオリティー」をいかに高めていくかです。患者さんが他の人としゃべっているときに、「口の中をすごくきれいにしてくれるクリニックに通っているんですね」と言われるくらい、素人が見ても違いがわかるような治療をしていきたいんです。良い治療を受けて患者さんが喜んでくだされば、その人は周りの人にも、自分の受けた治療について発信するようになりますよね。そんなプラスの連鎖をつなげていきたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント/37万円~、ジルコニアを用いた補綴治療/9万5000円~、セラミックを用いた補綴治療/9万円~、審美性に配慮した入れ歯/9万円~

 
             
             
             
             
            
 
                 
                 
                