大嶋 直人 院長の独自取材記事
おおしま整形外科
(朝倉市/甘木駅)
最終更新日:2024/06/25

「この町に骨を埋めるつもりで開業しました」と、にこやかに語ってくれたのは「おおしま整形外科」の大嶋直人院長。開院以来、地域の「整形外科のかかりつけ医」をめざし、患者第一の診療を貫く医師だ。大嶋院長は、九州大学病院やその関連病院で、長年、関節外科や外傷外科の治療に従事してきた。また、手の外科治療にも精通し、手指や肘関節のしびれ、外傷の治療にも力を入れてきたという。今回は、言葉の端々から優しさがあふれる大嶋院長の診療理念、医師を志した理由などをひもとく。その胸の内に、患者への深い思いやりと、自らの診療に対する静かな情熱が垣間見えた。
(取材日2023年11月8日)
オーダーメイドな診療で、患者を、その家族を幸せに
こちらの診療内容について聞かせてください。

当院では、腰・肩・膝・首などの痛み、手指・足のしびれのほか、骨折や外傷など幅広い症状に応じています。患者さんの年齢層は60代、70代の方が中心ですね。土地柄もあってか、農業をされる患者さんが多く、受診された際に野菜や果物を持ってきてくださる方もいらっしゃいますよ。そんな皆さんの優しさにふれると、きちんと診療でお返ししなくてはという気持ちになりますね。また、最近は小さなお子さんや学生さんなど、お若い方も来られるようになり、当院の診療がだんだんとこの町に根づいてきたのかなと感じます。この朝倉地区は、僕が学生の頃、小児糖尿病サマーキャンプや児童養護施設でのボランティア活動でよく通った場所なので、その分、地域に貢献したい気持ちは強いですね。
先生の診療方針についても教えてください。
当院では、患者さん一人ひとりに合った最善・最良と思える医療を提供することを方針としてきました。体の痛みや苦しさなどのお悩みに一つでも多く対応し、患者さんとそのご家族の「幸せ」を支えたいと考えています。そのためには、目の前にある症状だけに目を向けていてはいけません。患者さんの声に耳を傾け、お気持ちや生活背景にも配慮することが大切です。例えば、運動部で頑張る学生さんなら、治療もしたいけれど試合にも出たいと思われるでしょう。僕も学生の頃から野球をやってきましたから、その気持ちがわかるんですよね。また、当院では局所麻酔で行える範囲で手術にも対応しますが、もし入院が必要な場合は、病院勤務時代の豊富な人脈を通じて適切な医療機関へご紹介しますのでご安心ください。地域の方にとって、何でも相談できる「整形外科のかかりつけ医」でありたいですね。
実際に患者さんを診療される際、どんなことを重視していますか?

患者さんの診療内容への「納得感」ですね。いくら医師が適切だと言っても、ご自身が納得できなければ「幸せ」にはなれません。具体的には、検査結果を映すモニターに32インチの大画面を採用し、過去の検査結果も素早く映し出せる環境を整えました。服薬に関しても、どれがどの薬かわからなくなってしまう方がいますので、自作の資料を使い、色で区別がつくようにしています。また、わかりやすい説明ができるよう、説明資料をプリントして差し上げたり、例えば椎間板ヘルニアの方には、椎間板がどのように飛び出すのかがわかりやすい可動型の模型もお見せしています。一方で、地域の方のご要望に合わせ、もう少し朝のオープンの時間を早めたいのですが、多くの患者さんに来ていているおかげなのですが、どうしても夕方の診療が遅くまで押してしまい、スタッフの健康に配慮し、また働き方改革も考慮にいれて、今の形に。その点は本当に申し訳なく感じています。
エコーを用いた精密な関節治療と、手の外科治療に尽力
先生が得意とされている治療は何ですか?

関節の治療ですね。当院では特に、エックス線だけでなくエコーを用いた精密な診断と治療に努めています。エックス線は骨の状態を調べるのに役立ちますが、人間の体は骨だけではありません。血管や神経、筋肉などの状態もしっかり確認しなければ、適切に診断することは難しいんです。また、エコーには放射線被ばくの心配もないので、患者さんのお体の負担軽減にもつながります。エコーを使用した治療には、関節注射や神経ブロック療法などがありますが、エコーのおかげでより適切な位置にアプローチでき、薬剤も少量に抑えることが可能です。ちなみに当院では、患者さんを極力お待たせしないよう、3台のエコーを備えています。これだけの台数がある所は少ないかもしれませんね。今後はリハビリにも応用していきたいと考えています。
先生は、手の外科治療にも精通されているそうですね。
はい。勤務医時代に手の外科治療を専門とされる先生と出会ったのを機に、「自分も挑戦してみよう」と考えました。手というのは、体の部位の中でも特に使う頻度の高い、生活に欠かせないもの。反面、その治療となると、整形外科の中でも学ぶべきことが多い分野であり、専門にする先生が少ないのが実情なんです。かつては「no man's land(誰も手をつけてはいけない領域)」と呼ばれていたほどですよ。その分、経験や技術が問われる側面もあるので、とてもやりがいを感じています。当院では、主に手指のしびれや運動障害を引き起こす手根管症候群、指の曲げ伸ばしが難しくなるばね指、手首の腱鞘炎の一種であるドケルバン病などの日帰り手術に応じてきました。もちろん、手術が苦手な方もいますので、手術以外の治療法もご提案し、早期治療に努めています。
リハビリ室の設備も充実されているとか。

疼痛の緩和や炎症の治療を目的とした超音波治療器のほか、足関節の痛みや坐骨神経痛などにアプローチする低周波治療器など、さまざまな機器を導入しています。また、当院では患者さんの状態に合わせたオーダーメイドな運動療法に力を入れており、運動効果向上が期待できる新鋭のトレーニング機器も導入しました。理学療法士をはじめとしたスタッフたちも皆熱心で、患者さんへの思いやりにあふれたメンバーがそろっています。毎日の朝礼では、患者さんへの接遇における心得を復唱しており、常に笑顔で患者さんの立場に立った行動を心がけてくれていますよ。自主的なスタッフばかりなので、本当に頼りにしています。
人々を救う「町のお医者さん」に憧れ、医療の道へ
ところで、先生が医師をめざされたきっかけは何ですか?

一つは、幼少期の経験ですね。僕は何かと病院のお世話になっていたんです。当時の苦しさは今も忘れられませんし、その分、僕を診てくれた先生への感謝の気持ちは募るばかりでした。医師という仕事を強く意識したのは、中学生の頃。アメリカ西部の大草原で、力強く生きる家族の日常を描いたテレビドラマがあったのですが、そこに登場する町のお医者さんに憧れまして。その医者は、風邪やけがの治療から、お産まで何でも懸命にこなしながら、貧しい人がいれば鶏や野菜を治療費代わりに診療してくれる心優しい先生でした。僕が学校でそんな話をしていると、英語の先生が「それなら君も医者になりなさい」と勧めてくださり、その一言が医師の道を進む最初のステップになったんです。そう考えると、開業医として困っている人の力になりたいというのは、子どもの頃からの夢だったのかもしれませんね。
今後の展望についても聞かせてください。
近年、骨粗しょう症の方が増えてきたので、骨粗しょう症の検査専用の部屋の増築を考えています。骨粗しょう症は女性に多く、50歳以上の女性の3人に1人が罹患しているとされる一方で、検査の受診率は20~30%程度とまだ低いようです。骨がもろくなると、くしゃみなどのわずかな衝撃で骨折することもあるので、さらなる予防の普及に努めたいですね。また、僕もスタッフも勉強が好きなので、新しい治療法も積極的に導入していけたらと考えています。最近ですと、肩関節周囲炎による難治性の拘縮肩に対してサイレントマニピュレーション(非観血的関節受動術)も始めました。また、ヘバーデン結節や母指CM関節症に対する動注治療も開始できるように進めています。
最後に読者へのメッセージをいただけますか?

当院では、患者さんのご要望をできる限り診療に反映したいと考えています。皆さんの待ち時間や診療全体のバランスを考えると、難しい場合もあるかもしれませんが、少しでも地域に貢献していきたいですね。そして、最終的には患者さんや、そのご家族はもちろん、関係業者の方やスタッフも、すべての人が幸せになれる場所にしていけたら。この朝倉の地に骨を埋めるつもりで開業しましたので、ぜひ皆さんの健康な生活をサポートさせてください。