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良雪 雅 院長の独自取材記事

いおうじ応急クリニック

(松阪市/松阪駅)

最終更新日:2024/04/24

良雪雅院長 いおうじ応急クリニック main

はるか昔、寺は地域のコミュニティーの中心であり、癒やしの場であったことに倣い、寺院名を医院名にしたと穏やかにほほ笑むのは「いおうじ応急クリニック」の良雪雅(りょうせつ・まさし)院長だ。過酷な救急医療現場で疲弊する医師たちを見て、応急診療と在宅医療に特化した同院を開院。増え続ける応急診療と在宅医療のニーズに応えるべく、広い駐車場を確保できる土地で2023年に移転開業。地域コミュニティーの一端も担い、地域の人々とスタッフとコミュニケーションを取りながら、より良い医療を提供するべくまい進する。患者はもとより仲間の笑顔を守りたいとの思いで救急医療体制の改善に取り組む良雪院長に、クリニックの存在意義や今後の展望を語ってもらった。

(取材日2024年3月19日)

応急診療と在宅医療に特化したクリニック

開業までの経緯を教えてください。

良雪雅院長 いおうじ応急クリニック1

三重大学医学部を卒業後、見聞を広めたかったこともあり、さまざまな人が集まる東京へ行き、都立病院で研修を受けました。その間、多くの医師が救急医療で疲弊する姿を目の当たりにし、この過酷な環境が今の日本の医療の問題の一つであるという意識を持ち始めたのです。そのタイミングで、以前の松阪市市長から、共通の知人を介してお声がけいただき、縁のある土地でもあった三重に戻りました。最初は医師会がやっている休日夜間診療所に知人の医師を派遣する形でやっていたのですが、医師不足によりそれも存続が厳しくなってきました。そこで、行政の方と協議を重ね、行政から救急医療対策事業を請け負った個人クリニックとして開院し今に至ります。

応急診療・在宅医療・地域とのコミュニケーションがクリニックの三本柱と伺いました。

当院の理念は「最期まで笑顔で生きられる街をつくる」です。「笑顔」で最期まで生き続けるためには、土台の安心感が重要です。そういう意味で松阪市に不足している医療の形は何なのかを分析し、提供する必要があると思いました。その中で最初に始めたのが応急診療。そして、次が在宅医療でした。また、安心と同時に「笑顔」に必要なのが、自分が誰かに認められているという充実感です。これはコミュニティーに属していることが一つのポイントです。クリニックでは、コミュニティーに属せずに孤立している方を見かけます。すべての方にアプローチできるわけではないですが、孤立している方を少しでも減らすために、当院が地域の憩いの場になるように努めています。

応急診療と在宅医療に特化したクリニックというのは、珍しいですね。

良雪雅院長 いおうじ応急クリニック2

まず救急医療に特化して開院したクリニックは少ないと聞いています。そのクリニックだけで完結する形、入院施設もあってリハビリテーションまで行う形など、その地域が抱える救急医療体制の問題などによって、同じ救急専門とはいえ、かなり異なります。当院は高度なことまでは対応していません。二次救急医療を担う病院はちゃんとあっても、一次診療を行うクリニックが不足している。あるいは在宅医療が地域で普及しておらず、発熱患者でも主治医に連絡がつかず救急要請されてしまう。それらを防ぐためにも、傷病の緊急度や重症度などから優先度を決定するトリアージをしっかりと行い、軽症の場合や高齢の患者さんは地域で診て、より専門的な医療が必要な場合は病院に診ていただく。そこに特化した、新しい形態のクリニックです。

多目的道場つきの新しいクリニックで地域の憩いの場へ

地域の方の意識は当初から変わりましたか?

良雪雅院長 いおうじ応急クリニック3

当院の応急診療部門は普通に運営を行っていくと立ち行かなくなるため、行政から委託金を受けております。開業直後に市長が代わったことで、この方針も変更され、委託金が打ち切られそうになりました。この際に市民の方へ相談をしたところ「このクリニックは地域に必要だ」と、委託金を存続させるための市民運動が起こったのです。それから市長の考えが変わり、存続することになりました。市民が自分たちで必要な医療を考えて活動したのは、この地域にとって財産であったと思います。

こちらの場所へ移転された理由と新しい建物のこだわりポイントを教えてください。

開業当初はミニマムにやる予定でしたが、応急診療や在宅医療のニーズが高く、対応するためにスタッフが増えていき現在は70人ほどになりました。そのため、以前の場所が手狭になったので、2023年に移転リニューアルをしました。せっかく新しくするなら独自性のあることにもチャレンジしたいと思って、キッチンや縁側がある多目的道場を造ったのが一番こだわったところです。多目的道場ではその名のとおり、活用方法は多目的で地域の方が交流したり、個展や勉強会をしたり、おばあちゃんが縁側に腰掛けていたりしますし、面接もします(笑)。部屋の2面がガラス張りなので、開放的な雰囲気が良いのですよ。これから、高齢者施設やカフェも併設させる予定で、ビオトープや畑を作っていろいろな方が気軽に立ち寄れるような、地域の皆さんがほっとできるスペースにしていきたいです。

そもそも先生が医師をめざされたきっかけは?

良雪雅院長 いおうじ応急クリニック4

親戚には一切医療関係者はいないのですが……。僕がちょうど高校1年か2年の頃にアメリカ同時多発テロ事件がありました。将来何をしようか、自分の仕事として何をするのが一番この先も価値があるのかと考えた時に、人の命がああいうふうに一瞬で終わってしまうような今の世の中においては、やはり自分は人の命を救うということをやりたい。時代の変化などに伴って価値観は揺れ動くものだと思うのですが、人の命を救うということは世の中がどれだけ変わっても常にすごく大きな価値があることだなと。それで医師になることを決心し、医学部へ進みました。

医療を受ける側、提供する側、双方の「笑顔」のために

診療の際に心がけておられることは何ですか?

良雪雅院長 いおうじ応急クリニック5

的確なトリアージをするということ、そして理念に沿って患者さんご本人やご家族が笑顔でいられることを意識しています。家族が看取りの場面になると延命措置を迷われる方が多いのですが、ご家族とご本人の思いを聞きながら、自分だったらこうするという話をします。あと、やはり重要なのは診療外の地域との結びつきだと思います。なぜ患者さんがいわゆる「コンビニ受診」をしてしまうのかというと、多いのは子どもが発熱して大したことはないと思うけど不安で駆け込むというケース。しかし、お母さん同士でSNSなどで相談し合えば「様子見でいい」など、地域でカバーできることが多くあります。1人で考えるのではなく、地域の方々がつながってカバーし合うことが大切だと思います。

在宅医療に必要なものは何だと思いますか?

在宅医療に必要なのは専門的なスキルではなく、マネジメントやチームをうまく動かす力、周囲や他業種と関係をつくる力だと思います。在宅医療はどうしてもチームで動かす必要があるので、上手に他の職種に頼ったり盛り立てたりしながら一緒に働いていきます。しかしその一方で、注意や指摘もしなくてはなりません。周囲と仲良くしながらも、時には指摘をするのはとても難しいこと。また、チームをまとめる上で自分自身が変化できることはとても大切です。医師からだけではなく、事務員や看護師、あるいは地域の方々と話す中でフィードバックを受けて、自分が間違っていたと思ったら変わらなければいけません。自分が地域の方々に教えるのではなくて「地域の方たちから自分が教わるのだ」というスタンスでなくてはならないと思います。実際、当院で働いているスタッフは変わることができる方ばかりです。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

良雪雅院長 いおうじ応急クリニック6

松阪市には実は3つの急性期病院が合併する話と、救急車の利用を有料化する話が出てきています。有料化が実施されたら、地域の皆さんが救急車の利用を躊躇して、当院の応急診療を受診する患者さんが増えることが予測されるでしょう。今の課題は、救急車有料化の影響で患者さんが増えた場合に対応する体制づくりです。また、救急車が有料化したら、普段から24時間対応の在宅医療を受けておいたほうが良いという考え方も出てきて、ますます当院の提供する医療のニーズが増えるかもしれません。そうなったときにしっかり対応できるようにしていきたいですね。また、僕は患者さんと相談しながらでないと治療は行えないと思っています。コミュニケーションを重視した治療やケアを希望する方は、ぜひお気軽にご相談ください。医師と患者というよりも人と人という関係性の中で、より良いケアを探していきましょう。

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