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新田 壮平 院長の独自取材記事

在宅療養支援クリニック かえでの風 さがみ

(相模原市南区/相模大野駅)

最終更新日:2019/08/28

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2017年3月、相模原市南区にて新たに「在宅療養支援クリニック かえでの風 さがみ」を開院した。病院と同等の鎮痛剤、がん性腹膜炎などが原因でたまった腹水をろ過して戻すCART(腹水ろ過濃縮再静注法)など、高度な緩和ケアやカテーテル・ドレーンの管理など在宅では困難と思われがちな医療サービスを受けられるという。同院の院長を務める新田壮平先生は、大学の工学部で医薬品の開発研究をしていたが、医学部との共同研究を通して臨床にも強い魅力を感じ、医師の道に進んだという経歴の持ち主。「水道や道路など、あるのが当たり前のインフラのように、私どもの提供する医療が地域で安心して生活できるための資源になっていければ」と語る新田院長に、在宅医療にかける思いや診療スタンスなどを聞いた。
(取材日2017年2月17日)

不足する地域の在宅医療に貢献するために分院を開設

こちらは複数の医療サービスを提供しているグループと伺いました。

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医療法人社団楓の風というくくりの中に、訪問診療を行う診療部門、訪問看護ステーションを展開している看護部門、通所リハビリテーションやデイサービスを行う介護部門の3つがあります。ただ、決して私どもだけでサービスを完結させようとは考えていません。例えば、訪問診療は私どもがやらせていただいたとしても、それまで患者さんが利用していた地域の他の訪問看護ステーションや介護施設と組ませていただくことも多いです。むしろ、グループ外の方々と一緒にやらせてもらうことで、自分たちを顧みる機会をいただければと思っています。自分たちの組織だけで完結してしまうと、欠点が見えにくくなってしまうんですね。あくまでも、地域に医療・福祉のリソースをそろえよう、足りない部分を補おうというスタンスをとっています。

本院に比較的、近い場所に新しいクリニックを出すのはなぜですか?

相模原市は面積が非常に大きく人口も70万人ほどになります。しかし在宅医療を提供できる機関はまだ十分量ではないことが大きな理由です。もう1つは、行政区が違うことで患者さんにご不便をかけることのないようにしたいためです。本院は東京都の町田市にありますが、新たにできるクリニックは相模原市です。隣接していて近くですから、こちらとしては訪問診療に伺うのに問題はありません。しかし、公費で医療を受けている方の場合、行政区が違うと、利用料を一度収めて還付するための手続きをとり、それからお金が戻ってくるのを待たなくてはならないことがあります。病院に行くのが困難な方にそういった手続きをさせてしまうのは、在宅医療を提供する側としては矛盾を感じてしまいます。

どのような患者が中心になると考えられますか?

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高度ながん治療が受けられる都心の大学病院やがんセンターに、体が許すうちはマイカーや電車で通院されていた方が、積極的治療の継続が困難になったというときに、「今後は負担の少ないように地元の病院で療養を継続しましょう」と言われ、地元で専門的な緩和ケアを受けられる場所をご希望されます。多くは、そういうときの地域での受け皿として、やらせていただいています。あとは、いわゆる老々介護で、パートナーの方の認知症が進行してこれまで頑張ってきた精一杯の生活が破綻しそうという方々や、脳梗塞の後遺症でまひがあり通院が困難、ご家族も50代60代になってきて、1日がかりで通院に付き添うのも負担が大きいなどというケースも支援させていただいています。

人生の先輩として接し、患者の価値観に合う医療を提供

診療内容やスタッフ体制はどうですか?

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内科や外科、精神科など複数科の医師によるサポートを受けていただけること、在宅療養支援診療所ではまだ少ないCART療法(腹水ろ過濃縮再静注法)が常時行えること、PCAポンプによる患者さんのニーズに応えるがん疼痛コントロールなど、病院と遜色のない緩和ケアを提供していきたいと思っています。スタッフは、常勤の医師が私で、非常勤の医師が7人。事務員と相談員が1人ずつという体制でスタートしました。もちろん、地域で日歩奮闘されている訪問看護ステーションや介護施設、訪問診療を行っている地元の歯科医師、管理栄養士、調剤薬局の皆さまともしっかりと連携を取っていきたいと考えています。

こちらならではの特色を教えていただけますか?

新しい病院だから何か特別な治療を打ち出すというようなことは、あまり考えていません。本院と一緒に、より良い医療を地域に提供していければと思っています。強いて言えば、私がずっとがんの薬物療法をやってきたことが特色でしょうか。在宅のクリニックでは、患者さんに抗がん剤を提供することはあまりありませんが、どういう副作用が出るのかはこれまでの経験から十分に承知しています。なので遠くの病院まで通院での抗がん剤治療をできるだけ負担が少なく受け続けることができるように、抗がん剤治療の副作用対策もどんどんサポートさせていただきます。

診療にあたって心がけていることは何ですか?

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私が接するのは、多くの患者さんが年上で、がんの患者さんが8割を占めます。ですから、私は人生の先輩として向き合わせていただいています。2人に1人ががんになるこの時代です。いつか、私自身もがんの不安や苦しみと向き合わなければいけないかもしれません。でも担当させて頂いている患者さんたちは、今、その苦しみと向き合っています。その方々から病気との向き合い方、家族との向き合い方を学ばせてもらう。その中で、患者さんの価値観を理解し、価値観に合った医療を提供していきたいと思っています。もう1つ心がけているのは、ご家族の方に無理をしないようにと声をかけることです。特にご高齢の方は頑張りすぎてしまいがちですが、在宅医療はご家族の力が欠かせません。ご家族の方が倒れてしまっては成り立ちませんから、「もう少し肩の力を抜いて」「このままだと体がもたないから、ちょっとペースを変えましょう」と、話をさせてもらっています。

患者が安心して地域に帰れる場所をつくりたい

在宅医療を選ばれたのはどんなきっかけですか?

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ひとことで言えば、たくさんのがん患者さんと接するうちに道が決まっていったということだと思います。前職までの病院勤務時代、私は患者さんと治療をうまくやっていくために、信頼関係を構築する努力をしました。しかし、治療していてもやがて限界に近づき、これ以上の積極的治療ができなくなった時に、「一緒に頑張りましょう」と言ってきた患者さんに、「地元の病院に帰りましょう」と言わなければなりませんでした。現在の医療制度上、三次医療圏の病院で長く入院しての継続治療は難しいからなのですが、患者さんを見放すようでとても苦しかったです。ですが、苦しいのは、地域に患者さんが安心して帰って行ける場所が十分にないからだと気づきました。それなら、患者さんが安心して帰って来られる場所をもっと充実していければ、患者さんは幸せだし、先端医療で活躍している三次医療圏の先生方も、もっと気持ちが楽になるだろう思い、今の道に進みました。

将来の展望を伺います。

地域の方たちにも信頼していただけて、同時に、地域の開業している先輩医師たちからも信頼をいただけるようになったら、できればその方たちと一緒に、お看取りの経験や在宅療養の経験を地域で共有、そして蓄積していけないだろうか、と考えています。これからお看取りをするという不安なご家族と、先輩であるご家族を、マッチングできるような場づくりをしたいと思っているんです。今は、地域の人たち同士の結び付きが非常に弱まっている時代。いろいろな活動で、地域コミュニティー再生の試みはされていますが、私どもも医療・福祉の分野からお手伝いしていければいいなと思っています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

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今、「在宅医療」という言葉だけは、少しずつ認知が広まってきたように感じます。しかし、実際にどういう人が在宅医療を受けるものなのか、どのくらい費用がかかるのか、どういうシステムで安全なのか、など中身まではまだまだ十分に理解されてはいません。そもそも、「うちのおじいちゃん・おばあちゃんは、在宅医療を受けられるの?」という方がほとんどではないでしょうか。そういった疑問を持たれたら、ぜひ当院の相談室にお気軽に電話で相談してください。お電話されたからといって、当院で診療を受けていただかなくても全く構いません。まずは、在宅医療とはどんなものか、そこを知っていただくことが第一歩と考えています。

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