山本 剛 院長の独自取材記事
やまもとこどもの診療所
(福岡市南区/高宮駅)
最終更新日:2025/10/30
マンションが立ち並び、若いファミリー層が多い福岡市南区清水エリア。その一角にある「やまもとこどもの診療所」は就学前の小さな子どもが多く訪れる小児科クリニックだ。訪問したのは10月。扉が開くと、カボチャのハロウィンディスプレーとともに「こんにちは」と笑顔のスタッフが迎えてくれた。優しい色で統一された待合室は天井が高く、個室の待合室もあり、オルゴールのBGMがゆったりと流れている。受付の横にはカフェと薬局が併設されている。院長の山本剛(ごう)先生は大学病院・総合病院などで小児科医として経験を積み、特にアレルギー疾患や呼吸器疾患の豊富な臨床経験を持つ。「よく頑張ったね! またね!」と目を細めてハイタッチで子どもを見送る山本先生。子どもたちや診療への思いを聞いた。
(取材日2025年10月4日)
地域の子どもたちの健康を直接見守り、サポートする
山本先生が小児科医をめざしたきっかけを教えてください。

もともと子どもが好きだったのです。私は4人兄弟の長男で、常に小さい子たちと接していました。小学校の先生になろうかなと思っていた時期もありましたが、高校生の時に担任の先生から「医学部をめざしてみたら?」と勧められたことがきっかけで「医者ってどのような仕事なのだろう」と興味を持つようになったのです。身近に医療関係者がいたわけではないのですが、少し影響があったとすれば、私が幼い頃に、下の兄弟の一人が生まれてすぐ亡くなったことがありました。その記憶がぼんやり残っていて「赤ちゃんが亡くなることがあるのだ」「子どもが元気に育つことは本当に大切なことなのだ」と感じていました。ですから「もし医者になるなら小児科」と、自然に思っていましたね。
さまざまな病院で経験を積まれたそうですが、開業に至った経緯を教えてください。
香川大学医学部を卒業した後、福岡徳洲会病院や福岡大学病院などの総合病院で働き、小児や新生児の診療、小児救急など幅広く携わってきました。その後、湘南鎌倉総合病院で部長を務めた際に、自分なりの小児科診療スタイルを築いていったのです。小児科のトップとして働く中で、診療の形や患者さんとの向き合い方、他科との連携などを自分でコーディネートするようになり「場をつくること」の楽しさを実感。後輩を指導しながら、チーム全員を巻き込んで「自分の思いや理想を形にしていく」ということの面白さも感じました。その頃から、「地域に根差し、子どもたちやご家族と近い距離で関われるクリニックをつくりたい」と思うようになりました。
福岡市南区清水という場所を開業の地に選んだ理由とは?

勤務医の仕事ももちろん大切で、やりがいも感じていましたが、福岡の病院に戻った際にちょうど開業の話をいただき「自分の想いを形にするなら今かもしれない」と決心しました。当初は、以前勤めていた病院に近い春日や大野城などで検討していましたが、最終的に南区清水を選んだのは、この土地になじみがあったからです。大学病院に勤めていた頃、この清水でマンションを借りて暮らしていました。その時期は子育てもしていて、うちの子がよく遊んだ近くの公園やスイミングスクール、保育園など、今うちに来てくれているお子さんたちが通っている場所と同じなのです。自分も子どもを育てた場所で、地域の環境もよく知っていますし、この土地と出合えたのもご縁。「ここで頑張ろう」と決めました。
入った瞬間からワクワクする、楽しい場所にしたい
クリニックの特徴を教えてください。

小児科というのは基本的に「何でも診る」のが前提です。風邪をひいた、おなかが痛い、下痢をしている……そうした症状はもちろんのこと、各種検査機器もそろえ、予防接種や健康診断まで、幅広く対応しています。この清水エリアは集合住宅が多く、子育て世代のご家族が多く暮らしています。中でも、圧倒的に就学前のお子さんが多い地域ですね。兄弟が増えたり、ご家族の転勤や住宅購入などで郊外に引っ越すケースもあり、小学生・中学生の患者さんは少し少なめといったところです。この他、学校医として小学校を1校、園医として保育園を20ヵ所ほど担当しています。
呼吸器やアレルギー疾患の診療にも力を入れているそうですね。
以前勤務していた救急総合病院で小児呼吸器疾患や小児アレルギー疾患など、専門的な診療にも取り組んできたことから、特に力を入れています。例えば喘息や、風邪のあとに咳が長引いたり鼻水が止まらないといった症状は、小さいお子さんによく見られるものです。そうした際にも、経験を生かして丁寧に相談に乗れるよう心がけています。それと同時に「子どもたちが行きたくなる小児科」をめざしています。子どもにとって病院は怖いところというイメージがあると思うのです。怖がったまま診察を受けると、どうしても泣いてしまって、医師として得られる情報も限られてしまいます。だから、まず「怖くない」「安心できる」という環境づくりがとても大事。「風邪をひいたら山本先生のところへ行こう」と、子どもたちが自分から言ってくれるようなクリニックでありたいと、取り組んでいます。
具体的にどのような取り組みをされていますか?

クリニック内の雰囲気を明るくし、入った瞬間から「楽しい場所」だと感じてもらえるよう、スタッフも私も心がけて対応しています。例えば、今はハロウィンの時期なので、かぼちゃのディスプレイを飾っています。季節ごとのイベントも大切にしており、クリスマスにはツリーや飾りつけを行い、8月の終わりには駐車場を使って毎年プールイベントも実施しています。診察を待つ間もリラックスして過ごしてほしいので、個室を4つ設け、絵本やおもちゃなども用意。この個室は新型コロナウイルス流行前から設置していたのですが、感染症対策にも役立っています。ベビーカーや抱っこで赤ちゃんを連れながら上のお子さんを連れてくるお母さんも多い小児科。子どもだけでなくお母さんにとっても快適な空間にしたいという思いから、建物内にカフェと薬局を併設しています。
子どもたちが元気で笑顔になるよう、チームでサポート
子どもと向き合って診察する上で、大切にしていることなどありますか。

笑顔で、まずお子さんに「こんにちは。今日はどうしたのかな?」と話しかけています。付き添う親御さんに聞くのが早い場合もありますが、ここでは子どもたちが中心。どこが痛い、どこが気持ち悪い、どのような気持ちなのかなど、子どもたちの思いや言葉をまず聞いてコミュニケーションを取り、お子さんにも親御さんにもわかるように丁寧な説明をするよう心がけています。注射などで泣いてしまう場合もありますが、子どもたちとしっかりコミュニケーションを取りながら進め、診察や治療が終わる頃には泣き止んでもらえるよう心がけています。診察終わりには「よく頑張ったね!」とハイタッチ、ハグ、バイバイは必ずするようにしています。子どもたちの笑顔が何よりうれしいですね。ニッコニコで診察室に走って入ってくる、そのような子も多いのですよ。
笑顔のあいさつがとても心地良いですね。スタッフとのコミュニケーションも大切にされているとか。
現在、看護師は妻を含めて5人、受付は4人が在籍し、余裕を持って人員を配置するようにしています。シフト休や有休をしっかり取れるようにするためでもありますが、来院された方々をしっかりサポートするためでもあります。例えば、赤ちゃん連れのお母さんは、抱っこしながら書類を書いたり、荷物を持ったりと大変なことが多いですよね。そのようなときに「抱っこしますよ」など、少しでもお手伝いできるような体制を整えています。8月のイベントでは、屋外のプール遊びの他、室内での「読み聞かせ」や、着られなくなった服やおもちゃを持ち寄る「バザー」も行いました。これらはすべてスタッフのアイデアによるもの。日頃からスタッフ間のコミュニケーションを大切にしていますが、自発的に動いてくれる姿を見ると本当にうれしいですね。
最後に、メッセージをお願いします。

これまで待ち時間が長くなってしまったこともありましたが、ウェブ予約の活用も増え、長く待っても20分程度で受診できるよう体制を整えています。「もっと元気のお手伝い!子ども達のホームドクター!」これがうちのモットーですが、お子さんやご家族に安心してかかりつけとして通ってもらえるクリニックを、スタッフと一緒に築いていきます。今後も子どもたちが笑顔になってくれるよう、引き続きサポートしていきますので、お気軽に何でもご相談ください。

