河相 直樹 院長の独自取材記事
かわい内科・胃腸内科クリニック
(大阪市都島区/都島駅)
最終更新日:2024/11/29

大阪メトロ谷町線の都島駅から徒歩2分。2016年に河相直樹院長が開業した「かわい内科・胃腸内科クリニック」には、近隣だけでなく京都や奈良、兵庫からも多くの患者が訪れるという。消化器内科を専門に基幹病院で急性期医療に従事してきた河相院長が注力しているのは、内視鏡検査だ。定期的に検査を受けてもらうことでがんを早期発見につなげたいという思いから、検査時の苦痛軽減に心を砕く河相院長。「定期的な内視鏡検査で救える命があると考えています」と力を込めて話す河相院長に、同院の特徴、内視鏡検査への思いやこだわりなどについて聞いた。
(取材日2024年10月30日)
適切な内視鏡検査を行うことを医師としての使命に
ご開業の経緯をお教えください。

大阪大学医学部を卒業後、大阪警察病院や大阪府立急性期・総合医療センターで消化器内科を専門に急性期医療に従事してきました。その間にも内視鏡技術は長足の進歩があり、先進の内視鏡治療に携わりながら切磋琢磨してきましたが、50代にさしかかり、医師としてのステージが変わる時期だと感じ始めたんです。当時の私の診療内容を振り返ってみると、特殊な内視鏡治療以外はすべてクリニックでできることに気づきました。だったら、特殊な内視鏡治療は優秀な若い世代に任せて、今度は自分がさまざまな患者さんを基幹病院へ紹介する立場になってみるのはどうだろうか。そんな思いで、53歳の時に開業しました。内視鏡検査を受ける頻度は、多くても年に1回程度です。それくらいの頻度なら、患者さんは少し離れたところからでも十分通えるはず。いろいろな方が通院しやすい利便性を考えて、医師人生最後の地に都島を選びました。
なぜ消化器内科の道に進まれたのですか?
立派な研究者になるのを夢見て東京大学工学部に進み、植物ウイルスといった分子生物学の研究をしていましたが、次第に人間を相手にした仕事をしたいと考えるようになり、医学部に入り直しました。医学部で勉強してみると、どの分野もやりがいがあり、「何を選んでも間違いはない」と思いましたね。消化器内科に進んだのは、家族が消化器の病気で亡くなったから。当時の医療技術では内視鏡で消化器の奥まで観察することが難しく、発見が遅れてしまったんです。身近な人を亡くした残念な気持ちから、自分の腕を磨いて内視鏡で適切な診断を行いたいと思うようになりました。それから、私が掲げる医師としての大きなテーマが「内視鏡検査での見落としで命を落とすことがないように」になりました。
どのような患者さんが通われていますか?

開業当初は勤務医時代に診療していた患者さんや、よく存じ上げている先生からのご紹介が多かったのですが、今は地域の方も来院されています。地域の患者さんの主訴は生活習慣病が中心ですが、当院の主軸は内視鏡診療。都島区、旭区、北区を中心に、胃カメラや大腸カメラを希望される方が来られています。紹介によって、京都や奈良、兵庫など遠方から来られる方も少なくありません。先日は十津川村からも内視鏡検査でいらっしゃいましたね。高校生など、10代の方も必要があれば検査を受けに来られます。最近は過敏性腸症候群や逆流性食道炎の方が増えていますが、これらは生活習慣を変えていくことも重要なので、まずは生活指導から取り組みます。
「症状がないから内視鏡検査は不要」を減らすために
先生が内視鏡検査に注力している理由を教えてください。

世の中にはさまざまながんがありますが、それらは大きく3つに分けられます。1つ目は、治療しやすいがん。乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、皮膚がんなどのように見えやすい場所にあり、進行が比較的ゆっくりとしてることが多いがんですね。2つ目は、治療しにくいがん。膵臓がん、胆管がんなど、定期的に人間ドックを受けている方でも、しばしば短期間で亡くなってしまうがんです。そして3つ目が、そういった両極端のがんの間にあるがん。内視鏡で診療する、胃がん、大腸がん、食道がんなどの消化器がんです。これらのがんは、ある程度の間隔で定期的に内視鏡検査を受けることで、死に至る確率をぐっと減らすことがめざせると考えられています。逆にいうと、これらのがんで亡くなる方の多くが、検査をあまり受けていなかった方。つまり、検査の有無が生命に直結する領域なのです。内視鏡検査で命を救いたい。それが私が内視鏡検査に力を注いでいる理由です。
定期的な検査がとても重要なのですね。
基本的に消化器がんにはほとんど症状がありませんから、定期的な検査が非常に大切です。「症状がないから大丈夫」という考えが一番危険なんですよ。例えば、ピロリ菌に感染した方は除菌後であっても胃がんのリスクが依然として高いため、胃内視鏡検査後も定期的な受診が必要になります。よく、「ピロリ菌を除菌すると胃がんにならない」という間違った認識を持った方がいらっしゃいますが、そういった方には当院でのデータを提示しながら、リスクをきちんとお伝えします。なぜ定期的な受診が必要なのか、検査を受けないとどんなリスクがあるのかが理解できれば、ちゃんと受診してくださるはずですから。次の検査までの間隔が長いと受診を忘れてしまうこともありますので、はがきでもご案内を送るようにしています。
内視鏡検査でこだわっていることや、工夫していることを教えてください。

大前提として、たとえ日本一上手な先生が担当しても、内視鏡検査はつらいものです。そして一番問題なのが、患者さんが「二度と内視鏡検査を受けたくない」と思ってしまうこと。検査の恐怖が「症状がないからがんはないし、検査はいらない」という思想に結びついていきます。ですから、なるべく患者さんの苦痛を減らし、次も検査できるようにすることが大切です。当院の内視鏡検査は鎮静剤を用いるほか、胃内視鏡検査では比較的苦痛の少ない経鼻内視鏡も選択できます。大腸内視鏡検査では、おなかの張りが残りにくい炭酸ガスで腸を膨らませています。検査では基本的に看護師が3人つくので、不安に思った方が相談しやすい環境です。機器の洗浄機も当院のこだわり。注視している方は少ないかもしれませんが、検査する医療機関を決める際の大事なポイントが、内視鏡検査時の感染対策です。見えないところも手を抜かない。それが、当院の内視鏡検査のモットーです。
一人ひとりに向き合い、時間をかけた丁寧な診療を
内視鏡検査で大切にしていることは何ですか?

内視鏡検査で一番大切にしているのは、一人ひとりの患者さんと向き合い、十分な時間をかけて丁寧に観察することです。クリニックの役割は、がんを見つけて基幹病院に紹介すること。診断が私の役目なんです。例えば大腸ポリープは、ざっくりとした例え方をすれば大腸がんの卵です。そのために、卵の段階ですべて取り除いておきたい。早い段階で見つけて適切に対処することが重要ですから、大きなものや進行がんがないかをサッと確認するのではなく、一つも取りこぼさない気持ちで観察します。検査結果をお伝えする際は、認知機能が落ちてきた方も理解しやすいよう、カラー写真と診断内容を明記した紙をお渡ししています。ご家族にも共有しやすく、手元に残して検査結果を振り返ることもできますので、わかりやすい説明に役立っていると思います。
他の医療機関との連携についても教えてください。
近隣にある大阪市立総合医療センターを中心に、大阪国際がんセンターや、私の以前の勤め先である大阪警察病院など、さまざまな基幹病院と連携しています。よく知っている先生がたくさんいるので、紹介もスムーズに行えます。一方で、がん治療は一生を決める問題ですから、患者さんの希望が最優先です。患者さんやご家族にこだわりがある場合は、ご希望に沿った病院を紹介しています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

より内視鏡に注力していきたいと考えています。初診の方もたくさんおいでいただけたらと思っています。消化器のがんで命を落とさないために大事なのは、定期的な検査です。今まで内視鏡検査を受けたことがなかった方や、しばらく検査から遠ざかっている方、何か不安に思うことがある方は、ぜひ一度相談にお越しください。
自由診療費用の目安
自由診療とは胃カメラのみ/1万9700円~、大腸カメラのみ/3万3000円~、人間ドック/2万9700円~