田村 英嗣 院長の独自取材記事
天山歯科クリニック
(松山市/いよ立花駅)
最終更新日:2022/06/13

松山市天山、国道33号に面した建物の2階にある「天山歯科クリニック」。隣接する天山病院の歯科衛生士の活動により、お口の管理の重要性が広まり、2015年4月に歯科クリニックを開院した。外来では、一般歯科・小児歯科を診療。訪問歯科診療も積極的に行っている。2022年4月、3代目院長として田村英嗣(ひでつぐ)先生が就任。子どもから高齢者まで幅広い患者の口腔内に寄り添った治療を心がけている。「お口の健康と全身の健康は直結しています。皆さんが気持ち良く、ストレスなく生活できるよう、口腔内の健康をサポートしていきたい」と話す田村先生に、歯科医師として大切にしていることや、診療のモットーなどについて話してもらった。
(取材日2022年5月16日)
口から食べる喜びを維持するための訪問歯科診療
先生は3代目院長と伺いましたが、就任されるまでのご経歴を教えてください。

私は徳島大学歯学部を卒業後、帰郷し愛媛大学病院歯科口腔外科で研修医として経験を積みました。その後、松山市内の歯科医院での勤務医を経て、再び愛媛大学病院歯科口腔外科、矯正歯科に勤務。ゆくゆくは開業を視野に入れていましたが、コロナ禍の影響もありどうしようかと考えているとき、一緒に働く先生が天山歯科クリニックのことを紹介してくれたんです。前院長先生が退職されるため次の先生を募集しているタイミングでもあり、3代目院長として務めることになりました。
診療内容は訪問歯科がメインだそうですね。
もともと開設の経緯が、天山病院をはじめとする関連の高齢者施設の患者さん、利用者さんの口腔内の健康を守ることでしたので、訪問診療での高齢者の歯科治療、口腔ケアを専門としています。とはいえ、院内設備も整えていますから、通院される患者さんへの一般歯科・小児歯科の診療も行っています。現在、当院には歯科医師が私ともう一人おり、私は主に訪問診療を、もう一人の先生が院内診療をメインで担当しています。なのでご来院される患者さんはお子さんから高齢者の方まで幅広いですよ。天山病院の小児科とも医科歯科連携をしているので、そこからお子さんの紹介を受けることもあります。
訪問診療ではどのような治療が可能ですか?

訪問に特化した器具や設備はかなり充実しているほうだと思います。口腔内のクリーニングはもちろん、虫歯治療や入れ歯の型採りから装着まで一通りの治療が可能です。また訪問診療においては口腔ケアがとても大切。ですから、施設の場合は必要に応じて週に1回から月に1回のペースで定期的に患者さんの口腔内をチェックし、お一人お一人に合わせた処置を行っています。例えば、口が開きがちで乾燥している方には保湿ケアを行うなど。訪問で可能な範囲での処置にはなりますが、患者さんのお困り事に対し、できる限りお応えすることに努めています。
先生の診療のモットーを教えてください。
患者さんの希望に沿うようにということです。中には早く終わってほしいという方もいらっしゃると思いますが、実際そうではない患者さんもいます。私は、歯科医師として治療法を提案し、それぞれのメリット・デメリットどちらもご説明した上で、ご本人に納得して治療に臨んでいただくことを大切にしています。それが、患者さんの意思に寄り添うことだと思うのです。例えば歯が1本ない場合、一般的にはブリッジや入れ歯、インプラントという方法がありますから、それらをすべてご説明した上で一緒に考えていきますし、もし歯がないことにストレスもないから放置したいという場合は、それも尊重します。ただ、長期的にみると良くないこともあるので、そこは歯科医師としてしっかり説明しますが、あくまでもご提案というスタンスです。ゆったりと時間の許す限り患者さんに向き合い、寄り添った歯科治療ができるように努めています。
口腔内を清潔に保つことが、全身の健康につながる
口腔ケアにおいては歯科衛生士さんが大活躍だそうですね。

そうなんです。当院には経験豊富な歯科衛生士が多数在籍しており、クリニックと訪問歯科それぞれで口腔ケアを行っています。介護施設や病院においては、私が患者さんの状態を診察した上で、一人ひとりに合わせた口腔ケアや機能訓練の内容を指示しています。口腔ケアは、誤嚥性肺炎を防ぐ意味でも大きな意味を持ちます。寝たきりで、お口の中が汚れているままだと喉の奥に汚れた唾液が流れてたまり、飲み込むときに気管に誤って入ってしまい誤嚥性肺炎の危険性が高まります。寝たきりの方の肺炎は致命的なことになりかねませんので、命を守るためにも口腔内を清潔に保つことは重要です。
小児歯科診療も提供されていますが、心がけているのはどんなことでしょうか?
心がけとしては、無理にはしないことです。たった一度の治療が精神的なトラウマになることもありますから、虫歯があっても本人に痛みがなく、食事など普段の生活にも支障がなければ、回数を重ねながら少しずつ進めていきます。たまに何十年も歯科医院に行っていない方がご来院されるのですが、お話を聞いてみると子どもの頃のトラウマが原因ということも実際にありました。理想を言えば早めに治療を行うのがベストですが、乳歯の間は無理に治療を強行する必要はないかなと考えています。それより、生え替わる乳歯の間に歯科医院に慣れていただき、永久歯を大切にしてもらうほうが重要。最初は怖くてできなかったことができたとき、うれしそうにしてくれるお子さんもいて……。そういった姿を見るとこちらも励みになります。
先生がやりがいを感じる瞬間とは?

やはり患者さんが喜んでくださる瞬間ですね。以前、施設で長い間ずっと同じ箇所の痛みに悩まされている患者さんがいまして、噛み合わせをみたら強く当たっているように見えたので、歯の高さを調整してみたんです。そうすると、「うん」と深く頷いてくださいました。長年ストレスに感じていたところを緩和することができたのかなと、うれしかったですね。たかが1本の歯でも、不具合があると生活の質は落ちてしまいますから、その不便を解消できたらいいなと。その患者さんとの出会いにより改めて感じることができました。
歯科のかかりつけ医として患者の健康を見守り続けたい
今後の展望を教えてください。

正直なところ、まだ就任して間もないので手探りのところはありますが、天山歯科自体も開院してまだ10年たっていない歴史の浅いクリニック。なので、一緒に成長していけたらと思っています。当院は普通の歯科というよりも病院に付属した歯科というイメージを持たれている方も多いと思いますが、一般的な歯科と同じようにどなたでもご利用いただけます。なので一般歯科・小児歯科を診療するクリニックとして院内での診療もより充実させていきたいですね。院内は診察ユニットが5台あり、比較的ゆったりとした環境でリラックスして治療を受けていただけるかなと思います。地域の方々にもっと気軽にご利用いただき、お口の健康維持にお役立ていただけたらうれしいです。
お忙しい日々だと思いますが、余暇の楽しみはありますか?
まだ子どもが小さいので、休日は一緒に遊ぶことが多いですね。今はもうすぐ2歳になる子が1人ですが、6月にはもう1人生まれる予定です。今は妻が出産を控えているので、なるべく買い物も担当しています。もともとゲームが趣味で、子どもが生まれる前はついつい夜更かししてゲームに熱中することもありましたが、ちょっと抑えつつ(笑)。これから子どもたちが大きくなっていくにつれて、親として家庭での経験を通して、もっと親御さんの気持ちに寄り添えるようになるのかなと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

やはり、口から食べることはとても大切なことです。入れ歯が合わずにうまく噛めなくて流動食しか食べられない人と、入れ歯でもしっかり噛んで食べられている人では、全然違います。ですから、通院が難しくなった方も、お口のクリーニングだけでもお気軽に訪問診療のご相談をいただきたいなと思います。当院は訪問診療も積極的に行っているので、患者さんのご自宅へ訪問するスケジュールに関しても柔軟に対応できます。またご本人だけでなく、介護をされているご家族の方にも、ぜひ訪問診療の存在を知っていただきたいと思います。口腔内に刺激を与えると脳の活性化も期待できますし、口から食事ができるようになると、ご本人はもちろんご家族も喜んでくださる。そうやっていい影響が伝わっていったらいいなと、それが私の願いです。