樋上 敦 院長の独自取材記事
ひのうえ皮フ科形成外科クリニック
(尼崎市/塚口駅)
最終更新日:2026/02/13
「ひのうえ皮フ科形成外科クリニック」の院長である樋上敦先生の第一印象は、物腰がやわらかく穏やかな人。話していると、思わず悩み事も包み隠さず話せてしまうような温かな人柄が伝わってくる。「患者一人ひとりの生活に思いを寄せ、希望に沿う治療を提供すること」をモットーに、ニキビ・かぶれ・アトピー性皮膚炎・円形脱毛症・イボ・やけどなど幅広い症状に対応している。クリニックには毎日、子どもから高齢者まで多くの患者が訪れており、待ち時間をできるだけ短縮しつつ、症状の訴えはしっかり聞けるように、診察室増設や院内体制の改善などの工夫に努める。形成外科で約15年、皮膚科で約10年、大学病院などで勤務医の経験を持つ樋上院長に、医師としてめざしていることなどについて話を聞いた。
(取材日2019年4月22日)
患者の過去を想像し、病気の原因を推理する
なぜ医師をめざされたのですか?

実は子どもの頃、病気がちでよく病院にかかっていました。その時に出会った先生方はどこか高圧的にも感じられて。子どもながらに心を開けず、いつも「もっと優しくて話しやすい先生はいないのかな」と思っていたんです。自分の性格を表現するのは難しいですが、私は小さい頃からおとなしくて穏やかなほうでした。自分なら、将来、患者に優しく接することのできる医師になれるのではないか。そんな思いが次第に強くなっていったんです。そこから勉強し、京都大学で学んだ後、手先の器用さを生かしたいと、形成外科の教室に入局しました。
その後、形成外科から皮膚科に転向されるんですね。
はい。大学病院及び関連病院の形成外科で勤務医として約15年勤め、形成外科を専門とする医師として一通りの技術は身につけました。さらにこの道を究めていこうとしていた時、マイクロサージェリーという顕微鏡下で行う長時間の手術が重なり、首を痛めてしまったんです。残念ながらこの道を断念せざる得なくなりました。すでに40歳を過ぎていましたが、皮膚科に転向することを決め、ゼロから学び直しました。当時は妻も子どももいましたが、病院近くの古いアパートで一人暮らしを始めて、修行に励む毎日でした。まるで苦学生みたいでしょう(笑)。形成外科でも皮膚の表面を扱っていましたので、皮膚科との共通点は多く、それまでの経験を生かすことができました。
皮膚科でのやりがいはどんなところに感じられていますか?

形成外科と皮膚科は同じ皮膚を扱うのですが、診る視点がまったく異なります。形成外科は既に診断がついていて、その上で、手術でどのように治していくのか患者の「未来」を考えます。一方、皮膚科は、まだ診断がついていない症状に対して、どうしてこうなったのかという患者の「過去」を考えることになります。皮膚科に転向したての頃、医師が患者の症状を見ただけで、その方が柔道家であることを見抜き、まるで名探偵みたいだと驚いたことがあります。種明かしをすると、格闘系の競技をしている人に感染しやすいカビの病気があり、それを疑う病変があったからなんです。このように、その人のこれまでの生活や日常を想像しながら、病気の原因を推理するのが、皮膚科の専門家としての醍醐味だと感じています。
一人ひとりの希望に沿う医療の提供をめざす
開業までのいきさつなど教えていただけますか?

日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医の資格も取れ、その後、兵庫県立尼崎病院、兵庫県立塚口病院、そしてその2つが統合した兵庫県立尼崎総合医療センターにそれぞれ部長として赴任しました。皮膚科に転向してちょうど10年が過ぎた頃、塚口駅すぐのところにクリニックモールができることを知り、開業を決意しました。この地域の方々の皮膚を守ることを今後の目標としてやっていこうと思ったんです。おかげさまで2016年に開業して以来、毎日、子どもから高齢の方まで予想を上回るたくさんの方々に来ていただいており、地域に密着した医療を提供しているという実感があります。
診察の際、大切にしていることはどのようなことですか?
同じ病気でも患者さん一人ひとり、考えることはまったく違います。完治したいと思う人がいれば、生活に支障の出ない程度に治れば十分という人もいます。患者さんの病気に対する認識によって、治療方針は変わりますので、患者さんの話をよく聞くことを何より大切にしています。私が「この病気ならこうだ」と決め込んで一方的に話してしまうと、言いたいことも言えなくなるでしょうから、そのようなことがないように心がけています。そして、たくさんの方を診察しつつ、一人ひとりの患者さんと直接話す時間は十分に取りたいので、診察方法や体制などは改善を重ねています。診察室やスタッフを増やしたり、クラークという補助のスタッフに入ってもらったりしています。診察中は、患者さんのほうに体を向けてしっかり顔を見て話したいんです。
まさに、めざしていた優しくて話しやすい医師を体現されているのですね。

患者さんが気持ち良く接することのできる医師に、どこまでなれているかは定かではありませんが、常にそのようにありたいと意識しています。修行時代から診させてもらっていた患者さんの中には、開業して遠方になったにも関わらず、継続して来てくださっている方がいます。私のことを信頼してくれているのだなと思うと、ありがたいです。そのような方の存在が、患者さんをもっと助けたいという原動力につながっているように思います。「おじいちゃんから勧められて来た」「子どもがお世話になったが自分も診てほしい」など家族ぐるみで関わることが増えたり、直接感謝の言葉をかけていただく機会も増えていけばとても幸せですよね。
どんなことも包み隠さず教えてもらえる医師に
最近はアトピー性皮膚炎の悩みが多いみたいですね

そうですね。ここ数年でアトピー性皮膚炎の新しい注射性剤が登場しました。当院でも注射製剤を使用してアトピー性皮膚炎の症状を和らげられるよう努めていますが、非常に患者さんの金銭的負担がかかる治療です。当院ではなるべく高い薬を使わず、患者さんに合った既存の薬をうまく組み合わせて治療しています。皮膚科の医師は皮膚の専門家であり、悪化原因を探って生活指導するとともに、ステロイド剤以外の免疫抑制剤や漢方薬なども適宜使用していますので、不安があればまずは相談してほしいです。アトピー性皮膚炎の治療に関しては、さまざまな情報がネット上に氾濫しています。情報に左右され、自己判断で間違った使い方をして症状が悪化するような事態にだけは、なってほしくないと強く思っています。私はどの治療に対しても、ガイドラインに基づきながら、患者さんの希望に沿って自分の経験や知識を取り入れた医療を提供するように心がけています。
お忙しいと思いますが、休日はどのように過ごされていますか?
音楽を聴いたりピアノを弾いたりするのが好きなんですが、なかなか時間がありません。子どもたちがゲーム好きなので、やりすぎないように注意しているうちに、自分がやめられなくなっていることはあるんですが(笑)。実は、口笛が得意で小さい頃から3オクターブほどの音域を出すことができました。40歳の頃には、コンクールに出場して優勝したんですよ。口笛で日本一になった時はうれしかったですね。
最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

日々、皆さんの抱えられている悩みを少しでも改善できるよう取り組んでいます。皮膚科では、医師が患者の過去から、どうして今の状態になったのかを推理するとお話ししました。この推理は、ヒントや材料が多くあればあるほど、命中率は高まると考えます。ですので、私はどんなことでも患者さんが話しやすい医師でありたいのです。例えば、「この薬を使ったら悪くなった」「以前、この治療が合わなかった」「こんな生活習慣を続けている」「薬を塗れなかった時もある」など、どんなことでも包み隠さず話していただいて結構ですからね。皮膚科の医師は皮膚の専門家であり、悪化原因を探って個々の症状や状況に合わせた治療をしています。皮膚のことで気になることや不安なことがあればまずは安心して相談に来てください。

