乾 真実 院長の独自取材記事
狛江のんびりクリニック
(狛江市/狛江駅)
最終更新日:2026/03/13
小田急線狛江駅の南口を出て、徒歩5分。狛江通り沿いの住宅地にたたずむ「狛江のんびりクリニック」。かわいらしい羊の看板がトレードマークだ。乾真実(いぬい・まさみ)院長は、2004年にそれまで精神科・心療内科のクリニックがなかった近隣のニーズに応え、クリニックを開院。地域の精神科かかりつけ医として、幼児から高齢者まで幅広い相談に対応している。また、特別支援教育に力を入れる狛江市の依頼を受け、地元の知的障害や発達障害のある子どものケアにも取り組み、教育委員会や学校と連携して相談を受けるなどの活動も行っている。地域住民の心の健康を支えるクリニックとして多忙を極める中、地域にも貢献する乾院長にクリニックの特色、診療で心がけていることなどを聞いた。
(取材日2022年6月27日/再取材日2026年2月9日)
地域の精神科かかりつけ医として、行政とも協力
住宅地にあるクリニックですが、どのような患者さんが多いですか?

狛江市の方が多いですが、調布や世田谷など周辺地域から通われている方や、川崎など県をまたいで通院されている方もいらっしゃいます。患者さんの年齢層は20〜50代の方が多く、お子さんや中高生の患者さんも1割くらいはいらしています。患者さん同士の紹介で来られる方もいらっしゃいますし、学校から勧められていらっしゃる方もいますから、やはり地域に根差した診療が中心になっています。
子どもの診療を行うこともあるのですね。
幅広い年齢層の方を診療していますが、子どもに関して言うと、狛江市は以前から特別支援教育に力を入れているんですよ。当院でも、行政からの依頼で知的障害や発達障害のある子どもたちにどのような支援をするべきか専門家として会議に出たり、学校まで出向いたり、教育委員会や学校と連携してお母さんや先生から相談を受けたりもしています。子ども診療をする場合は、本人だけでなく保護者、特にお母さんと一緒に診ることも大切にしています。親子関係が治療に与える影響は大きいので、親御さんに「こんなふうに接してくださいね」「こんなふうに声をかけてあげてくださいね」とお伝えします。家庭の中に休める環境をつくってあげるためにも、保護者の協力は欠かせません。
診療の中で大切にしていることは何ですか?

患者さんの対等なパートナーでありたいと考えています。病気は医師が治すものではなく、患者さんご本人の中に治るための力があって、服薬や休息の仕方など医師のアドバイスを得て十分に休養することで回復につながっていくものです。背景にある問題が病気を治りにくくしていることもあります。それを一緒に考え、専門家として適切なアドバイスをし、患者さんを支える存在でありたいと思っています。あとは、僕自身の体調が悪ければ患者さんの話も十分に聞けませんから、忙しいときでもイライラしたり焦ったりしないように、まず自分が良いコンディションであるために、早めに休んで十分に睡眠を取ったり、なるべく心身のゆとりを持つことを心がけています。
内科と精神科双方の視点を重視して診療
先生はなぜ精神科の医師になることを志されたのですか?

早くから、体と心の両方がわかる医師になりたいと思っていました。心というものは体とつながっていて、体調が悪くなれば気分も落ちるし、精神的な病気になれば体に症状が出ることもあります。まずしっかりと内科の勉強をし、その上で内科と精神科のどちらに進むかを考えようと思いました。大学卒業後は、湘南鎌倉総合病院で4年間、内科・外科を中心に小児科・産婦人科にも携わり、救急科外来で子どもの細い手に点滴をしたり、産科で赤ちゃんを取り上げたりもしました。白血病の治療中に若くして亡くなられた患者さんやそのご家族と過ごした経験は、精神科の医師になる大きな転機になりました。
精神科の専門病院にも勤められたそうですね。
主に東京都立松沢病院、調布市の青木病院で研鑽を積みました。その他にも総合病院の精神科として、東京都立府中病院(現・東京都立多摩総合医療センター)、児童精神科の専門病院として東京都立梅ヶ丘病院(現・東京都立小児総合医療センター)にも勤務していました。内科・外科での診療経験を積んでいたので、精神科での当直で患者さんが急変した際に、適切な救急対応ができたということも経験しました。開院後も内科での経験が役立つことは非常に多いです。
内科と精神科の双方の視点を持っていることは、御院での診療にはどのように生かされていますか?

内科診療でも患者さんの身体のことだけではなく、家庭や職場の環境や対人関係のストレスなどの要素も大切であるという考えは以前から持っていました。うつなど精神的な疾患の場合でも、頭痛・めまい・動悸などさまざまな身体症状が出現することは珍しくありませんし、双方の視点を持つことは大切だと考えています。また、患者さんを診療する際に精神的な症状を訴えていたとしても、この症状は他の診療科で診てもらったほうがいいなどの判断がつけられることは利点といえるかもしれません。脳の疾患である場合なども考えられますからね。
病気を治すために、きちんと「休息する」ことが大切
薬物療法に関しての方針はありますか?

基本的には、精神科の薬が何か特別というわけではなく、花粉症や風邪の薬を飲むことと、精神科の薬を飲むこととは大差ないと考えています。病気を治すために何より大切なのは休息を取ること、眠ることです。風邪は薬で治るわけではありませんが、熱を下げたり咳を鎮めたりするために薬を使うことで、休息しやすくなることが期待でき、こじらせずに早く治す助けになることが見込めますよね。精神科の薬もまた、神経を休めるために使用することで、患者さん自身が休息するための補助となるものです。休息のために上手に薬を活用していって、もし合わなければ使用を止めればいい。もちろん、きちんと休息するための助けになるのは薬だけではありません。薬を服用する、生活環境を改善する、人間関係を変えるなど、助けになることが期待できる方法はなんでも使って、うまく休んでほしいですね。
日々、多くの患者さんを診察する中で、どのような工夫をされているかお聞かせください。
たくさんの患者さんを診るため、なかなかゆっくりと診察することが難しいのですが、その中でも、午後の診察では30分の時間を確保した時間予約診療を行っています。予約料がかかりますが、ゆっくり診察を受けたい方はぜひご利用ください。初診の場合も十分な時間を取ってお話を伺うため、50分の時間予約診療を行っています。最初の時点で時間をかけ、状況をしっかり把握しておくことで、結果として長期的には患者さんの時間の節約にもつながることが多いと考えています。
最後に読者にメッセージをお願いします。

精神的な病気になってしまう時には、無理をしたり頑張りすぎたりと、何か原因があるものです。「元の状態に戻りたい」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいますが、元に戻るということは、元の無理をしていた不安定な状態に戻るということです。病気になる前と同じように、無理をしていればどこかでまた具合を悪くしてしまいます。病気を機に、もうちょっと自分に合った無理のない生き方や働き方を一緒に探してみましょう。のんびりと心身を休めるため、元気になるためのお手伝いをします。精神科のかかりつけ医として幅広く診察していきたいと思っていますので、気になる症状があれば気軽にお問い合わせください。

