高橋 謙 院長の独自取材記事
たかはし皮膚科クリニック
(尼崎市/猪名寺駅)
最終更新日:2026/02/20
JR宝塚線の猪名寺駅から徒歩3分のドラッグストア。2階にはクリニックが軒を連ねており、「たかはし皮膚科クリニック」もその一つとなっている。フクロウのロゴマークは、幼い頃から生き物好きという院長の高橋謙先生が、2015年の開業当時に飼っていたフクロウに由来。院内に入ると、ゆったりとしたロビーに迎えられる。森をイメージした壁紙もリラックスできる雰囲気だ。高橋院長は、総合診療科・総合内科で長らく研鑽を積んだ。その経験をもとに、地域に密着した皮膚科クリニックとして、年齢層も主訴も幅広い患者に日々対応している。とりわけ、アトピー性皮膚炎の治療においては一家言あるという。高橋先生に、治療の方針についてじっくり聞いた。
(取材日2026年1月20日)
内科経験を生かしてアトピー性皮膚炎に対応
アトピー性皮膚炎はクリニックによって治療方針に幅があると思いますが、先生のお考えは?

まず、ステロイドは「使います」。これは「できれば使いたくない」という患者さんが多いので最初に言うんですが、僕も決して使い続けるわけじゃない。「最終的には脱ステロイドをめざす」ということはしっかり伝えるようにしています。ただ、そのためにはきちんと定期的に来院してもらわないといけません。状態がいいから来ない、塗り薬が残っているから来ないでは脱ステロイドをめざせません。ステロイドは、炎症を抑えて皮膚を落ち着かせるための薬ですが、とても強力な物から微弱な物までさまざまなグレードがあります。その時々の皮膚の状態をしっかり診て、合うグレードを選択していき、それを何度か繰り返し、非ステロイド系に変更することで離脱がめざせるんです。
脱ステロイドをめざす他に、治療の特徴はありますか。
比較的、飲み薬を多く使うクリニックだと思います。僕は内科の出身なので、飲み薬を使うことに抵抗がないんですよね。例えば足白癬や爪白癬、いわゆる水虫という病気は、塗り薬では治療が難しく、飲み薬にすることで治ることが期待できます。でも、飲み薬はまれに肝障害が出ることがあるので、それを恐れて使うのをためらってしまう場合があるんです。その点、僕は内科で肝障害も山ほど診てきました。実は、肝障害は積極的にできる治療が少なくて、基本的には軽傷であれば様子見。薬剤性の肝障害なら、わかった時点で薬をやめれば済む話ですし、それほど恐れることはないんですよ。これは、内科経験者だからこそわかることだと思っています。
内科出身ということについて、これまでの経験をお聞かせください。

1999年に東京女子医科大学の循環器内科に入局し、内科の医師としての研鑽がスタートしました。4年目を迎えた頃、母がよく圧迫骨折をするようになり、ひとまず関西に戻りました。そして、京都大学医学部附属病院の総合診療科に入局。当時、そのような科は全国でも少なかったと思います。受診する科の判断がつきにくい患者さんを診る科で、難病や珍しい病気、精神科の患者さんもたくさん診ました。貴重な経験を積み、その後は関西電力病院の総合内科へ。ここも内科疾患を横断的に扱い、内科のどの専門につなぐべきかを判断するような科でした。これらの科に勤務し、とても深い知見を得られたことが、今のクリニックでの診療においても大いに役立っていると感じています。
飲み薬も活用し無理なく段階的にコントロール
先生が理想とするアトピー性皮膚炎の治療は、どのような流れですか。

最初にステロイドに対する方針を話して、その炎症に見合ったステロイドを体であれば1日に2回で、指から手指に対しては1日に複数回で塗布することから始めます。飲み薬も併用し、症状によってはステロイドの服用も短期間に絞って使い、炎症やかゆみを抑え込むことを図ります。特に夜中の就寝中、無意識に皮膚をかかないようにすることが大事。僕がよく使う飲み薬は、かゆみの抑制が期待できるだけでなく眠気が出ることも見込まれるので一石二鳥なんです。これをしばらく続けると、ステロイドのグレードを下げたり、塗布回数を減らしたりできるようになることが望めます。飲み薬も変えてコントロール。ステロイドでの治療を終えてからも、塗り薬や飲み薬を調整しコントロールを続けます。もちろん個人差はありますが、だいたいこのような流れが理想的だと思っています。
最近は、新たな注射薬も注目されていると聞きます。
私は正直、そのような注射薬を安易に使う治療法には疑問を感じています。確かに、患者さんの安楽を考えると注射薬を使うのが早いのかもしれませんが、その前に医師と患者さんができることはもっとあると思うんですよね。既存の治療薬をうまく組み合わせていくことで、十分対応していけるはずなんです。それに新しい注射薬は、高度療養費制度が適用されるほど薬価が高い。つまり患者さんにとっても負担ですし、国が大問題と捉えている医療費の増大にもつながってしまいます。そこをもっと考えないと、自分たちの首を絞めることになる。医療経済が破綻してしまうことを非常に危惧しています。
既存の治療薬で対応した具体例はありますか。

勤務医時代に経験したケースなのですが、その方は中〜重度のアトピー性皮膚炎で、顔にも炎症が見られました。通常、顔にはミディアムグレードのステロイドを使うのですが、転居前に通われていたクリニックではそれでも良くならなかったようで、「次は注射薬だと思います」という内容の紹介状が来ていました。でも、それまで飲み薬はあまり出ていないようだったので、僕は「ストロングクラスのステロイドを短期間使用して夜中にかかないよう飲み薬を駆使すれば対応できる」と読み、そこに服用ステロイドと抗アレルギー剤を組み合わせて治療にあたりました。それから注射薬を使うことなく、今も服用と非ステロイド系外用剤でコントロールを続けているそうです。
治療の様子が見えやすいという皮膚科のやりがい
そもそも、先生が医師を志したきっかけというのは。

母方の祖父母が医師で、母も医師という環境だったんです。また父も、医師ではないのですが大学医学部の教授でした。周りに医療関係者が多かったので、他の仕事に対するイメージが湧かず、高校時代は漠然と医師になりたいと考えていました。でも、結構な回り道をしたんですよ。医学部の大学受験で挫折して二浪し、いったんは文系の上智大学へ。4年生まで通ったものの、やっぱり医師になりたいと考え、再受験して大阪医科薬科大学に入り直しました。その時点でかなり遅れをとっていたので、早く一人前になりたかったのと、医学の基本分野を極めたいという思いで内科の道に進みました。
2015年の開業にあたって、皮膚科を選んだのはなぜですか。
母の影響と、外来診療で皮膚科のやりがいを知ったからですね。母は子育てなどで医師としてのブランクがあったのですが、僕が小学4年生の頃に勤務医として仕事を再開。もともと母も内科出身ですが、皮膚科の勉強も始め、やがて皮膚科で開業したんです。母は、手術以外は何でもやるというスタンスで、遠方からも難治性の患者さんが来ていました。そんな母の姿を見ていたので、僕も総合内科で経験を積んでから母のクリニックを内科で手伝うようになり、次第に皮膚科も診るようになりました。母のやり方を教えてもらって鍛えられ、大阪市立総合医療センターの皮膚科でも研鑽を積み、皮膚病を診療する医師として自信をつけました。皮膚科の、治療の様子がダイレクトに見えることが多い点や、患者さんの笑顔が見られたり、感謝の言葉をもらえたりする点がやる気につながりますね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

「先進の治療をしています」「すぐに注射で楽になります」という言葉を聞いたら、特にアトピー性皮膚炎に悩む患者さんは飛びつきたくもなるでしょう。でも、本当にそれで良いのか、今一度考えていただきたいと思います。アトピー性皮膚炎は、長く付き合っていく疾患です。繰り返しになりますが、なるべく高い薬を使わず、既存の薬をうまく組み合わせていくのが僕の方針。もちろん、服用と服薬で症状が治まらない場合には注射性剤も導入はしています。当院では、皮膚科だけでなく内科の知見も生かし、飲み薬をはじめステロイド以外の選択肢を幅広く提示することができます。特に、ご高齢の患者さんは診断を受けないまま薬だけを処方されている方も多くいらっしゃるので、改善されない皮膚疾患は専門家にご相談ください。また、なかなか治らないアトピー性皮膚炎やその他皮膚疾患のことでお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。

