川原 綾夏 院長の独自取材記事
カナリア歯科クリニック
(横浜市金沢区/金沢文庫駅)
最終更新日:2025/11/12
金沢文庫駅からバスで10分ほど、白山道公園停留所近くの交差点に面した「カナリア歯科クリニック」。釜利谷(かまりや)という地名の語感にちなみ、鮮やかなイエローのカナリアをモチーフにしたという。地中海の住宅をイメージさせる純白の壁と凝ったデザインの外観。1階フロアは完全バリアフリーで、土足OKなため靴の脱ぎ履きなしに利用できる。子どもの患者を退屈させないよう診療室内でアニメのDVDを流したり、砂時計を持たせたりといった工夫をするなど、老若男女問わず、誰に対しても気配りが行き届いている。「0歳の赤ちゃんから120歳の方まで、末永いお付き合いをさせていただければと思います」と話す川原綾夏院長に、同院の特徴や10周年を目前にしての思いなど、さまざまなことを語ってもらった。
(取材日2025年9月30日)
一般歯科治療から訪問診療まで、世代を問わず広く対応
クリニックの特徴を教えてください。

小さなお子さんからご高齢の方まで、地域にお住まいの方を中心にお迎えし、一般歯科、予防歯科、義歯、小児歯科、歯列矯正など幅広く診療しています。私が大学で総義歯を専門にしていたこともあり、入れ歯治療を求めて来られる方も少なくありません。現在、ユニットは1階に2台、2階に3台を配しています。診療内容でフロアを分けているというわけではなく、ベビーカーや車いすの方はバリアフリーの1階で、複数のお子さんを連れて受診されるご家族などは貸し切りのようなかたちでご利用いただける2階フロアでといった感じに、シーンに合わせて使い分けています。この建物はもともとカフェ兼住居だったこともあり、各部屋が独立した個室になっているのも特徴です。プライバシーを気にされる方や小さなお子さんをお連れの方も、落ち着いて受診していただけるのではないでしょうか。
まるで友人の家にいるかのような、くつろげる内装ですね。
ありがとうございます。内装デザインは一級建築士である父が手がけたものです。印象的な外観や特殊な間取りはそのままに、壁にガラスブロックを入れて診察室に光が入るよう工夫するなど、見た目はもちろん機能面にもこだわってくれました。黄色いカナリアのキャラクターは、現在もスタッフとして活躍してくれている妹のデザインによるものです。生まれ育った金沢区で開業したいと思い探す中、この物件を見つけてくれたのも実は父と母。家族みんなの手でつくりあげたクリニックなのです。
訪問診療にも対応していらっしゃいますね。

はい。当院に通われていて通院が難しくなった方はもちろん、歯科医師会からご紹介いただいた方もご自宅に訪問して診療しています。簡単な抜歯を含む虫歯治療や歯周病治療に加え、専門である入れ歯治療にも力を入れています。この辺りはご高齢の方が多く、入れ歯のニーズも高いエリアです。しかし、入れ歯を作るにはトータルで5回程度の受診が必要で、移動に難がある方にとってはハードルが高くなってしまいます。また、人工物である入れ歯は長く使用するとすり減ったり、合わなくなってしまったりで左右バランスが崩れることも。ご本人が気づかないうちに噛みにくくなっていることも少なくありません。少し直せばもっと食べることを楽しめることができるのに……という方も多いのです。訪問診療も活用していただきながら定期的にチェックし、必要な調整を受けることが、生活の質を大幅に上げることにもつながります。
大切なのは患者の思い。受診ハードルを下げ予防に注力
お子さんの診療で気をつけていらっしゃることは?

とにかく「歯科医院嫌いにしない」ことを大切にしています。慣れないお子さんは診療室で親御さんと一緒に座ってもらったり、モニターでアニメのDVD映像を流したり、落ち着ける環境を整えるようにしています。飽きてしまわないように、グッズも活用しています。例えば、砂時計。「この砂が落ちるまでに終わるから、頑張ろうね」と言うと、じーっと落ちる砂を見たり、少しでも早く落とそうと振ったりして、気が紛れるみたいです。もう一つは、お子さん用にデコレーションを施した手鏡。2つ用意して「どっちがいい?」と選んでもらうのですが、自分で選んだ満足感から治療が終わるまで頑張れるようです。また、診療の流れを写真とイラストで解説する紙芝居を用意したり、治療内容を記録する連絡ノートを活用したり工夫しています。連絡ノートにはスタッフがイラストを添えることもあり、楽しい記念になっています。
歯科への良い印象を保てるよう工夫されているのですね。
良いお口の状態を保つためには、長く通い続けていただくことが重要です。これは、お子さんに限らず大人にも言えることです。予防のためにはセルフケアとプロケアを充実させることが不可欠で、そのためには気軽に来院していただかなくてはなりません。できるだけ予約を取りやすくし、時間どおりに診療する。診療で嫌な思いをさせないようにするといった工夫で、受診ハードルを少しでも下げられればと思っています。特に成長過程にあるお子さんでは、歯並び・噛み合わせへのアプローチにより、長期で良い状態を保てるお口に導くことも可能です。いわゆる歯列矯正の一歩手前となる咬合誘導治療も、できるだけ手の届きやすいかたちでご提供するようにしています。
診療の際に心がけていることはありますか?

患者さんの貴重な時間をいただいて診療している以上、効率的に、かつ安心・安全な診療を提供するように心がけています。また、ご本人の「こうしたい」という思いを尊重することを大切にしています。医学的に正しい選択が、その方にとってベストであるとは限りません。例えば、気に入って使っている入れ歯であれば、医学的な理由だけで変えるのはその方のためにならないという場合もあるのです。悪いところを治すことが目的でも、「何を改善したいのか」を共有し、その方の生活に合った治療を提案するよう心がけています。治療は歯科医師の都合ではなく、患者さんの思いを軸にすべきだというのが私の考えです。
この10年の取り組みが間違っていなかったと再確認
10周年を間近に、感じていることがあれば教えてください。

とにかくあっという間でしたが、こうしてやりたい診療ができていることにあらためて感謝しています。当院には定期的なメンテナンスで通っていただいている人も多いのですが、長く通っていただいている方で歯を失うといったケースは少ない印象です。やはり、セルフケアとプロフェッショナルケアを充実させることが、健康な歯を残すためには大切なのだと実感します。短期間では見えない成果ですが、10年続けてきたからこそ、「開業以来やってきたことは間違っていなかった」と確信しています。
医療チームについても教えてください。
歯科衛生士、歯科助手、受付に非常勤の歯科医師と、それぞれが専門性を持ちながら協力し合っています。出産や介護などのライフステージに合わせて勤務形態を柔軟に変えながら、長く勤め続けてくれているスタッフもいて頼もしいですね。患者さんからの質問に誰もが同じ答えを返せるよう、説明内容の共通化にも取り組んでいます。また、全身疾患をお持ちの方などはカルテを色分けするなどの方法でリスクを見落とさないような工夫もしています。常に安心・安全な診療を提供できるよう、入ったばかりの新人スタッフでも理解できるようにしています。これも、5年、10年と運営を重ねる中で、「こうすればもっと良くなる」という点を少しずつ改善しながら、働きやすく安全な環境を整えてきた成果です。
ひと言メッセージをお願いします。

定期的な歯科受診は「将来の健康への投資」です。若い頃はイメージしづらいかもしれませんが、歯を失うと食べられるものが少なくなり、栄養バランスが崩れ、全身の健康にも影響します。「食べられるからいいや」ではなく、「何を食べられているか」にも注目することが大切です。パンやおかゆなどのやわらかい食品中心の食生活では糖質過多となり、糖尿病や高血圧の悪化、ひいては脳梗塞などにつながることも。筋力低下によるフレイルから要介護になることもあります。歯は全身の健康の入り口。思っている以上に重要です。当たり前のことですが、その大切さをこれからも地域に発信していきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とはエアフロー(歯面清掃)/3300円~、矯正/77万円~、小児の咬合誘導/5万5000円~、PMTC/3300円~

