井上 禎子 院長の独自取材記事
まごめ内科・腎クリニック
(大田区/西馬込駅)
最終更新日:2026/01/05
生活スタイルが多様化した現代では、多くの人が生活習慣病のリスクを抱えている。一方で、生活習慣病は地道な治療を長期間行う必要があるため、治療が続けられるのか不安に感じる人も少なくないだろう。西馬込駅から徒歩2分の「まごめ内科・腎クリニック」では、井上禎子院長が専門とする腎臓病や糖尿病をはじめ、高血圧や高脂血症などの生活習慣病を幅広く診療している。井上院長と管理栄養士や看護師のスタッフが連携しながら、栄養指導にも注力。普段の食生活を無理なく改善をめざすことをモットーに、患者の思いに共感しながら日々の診療を行っている。インタビューでは生活習慣病や腎臓病の治療を続けていくためのヒントをじっくりと教えてもらった。
(取材日2025年10月16日)
自覚症状がないからこそ、早期発見のためにできること
まず、クリニックの特徴について伺います。

私は長年にわたり母校である東京女子医科大学の大学病院や関連の病院で腎臓内科の診療に携わってきました。また、腎代謝内科では糖尿病の診療を行ってきましたので、これまで培ってきた経験に基づく専門性の高い医療を当院でも提供したいと考えています。近年は高血圧による腎硬化症や糖尿病による糖尿病性腎症の患者さんが増加してきており、腎臓の疾患と生活習慣病は切っても切れない関係になっているといえます。糖尿病の罹患歴が長くなって腎臓の合併症が出てきた時に、複数の医療機関に通院せずに済むように、当院では血糖値のコントロールを行いながら、同時に腎機能障害の進行を防ぐための医療を提供できる点が強みだと考えています。
診療方針について教えてください。
糖尿病が悪化すると、他の臓器に深刻な合併症を引き起こしてしまいます。そのため、糖尿病の診療はとても難しいのですが、患者さんを全身的に診ていく必要があると考えています。とりわけ「心腎連関」といって、心臓と腎臓の機能には密接な関わりがあるのです。糖尿病性腎症によって腎機能障害が悪化した場合、心不全など心臓の病気を引き起こすリスクが高くなります。逆に、心臓が悪くなれば腎臓もダメージを受けてしまうのです。そこで当院ではエコー診断装置を用いて、腹部や心臓など全身の状態をチェックするようにしています。また、24時間連続して心電図を記録するホルター心電計を導入するなど、心臓疾患のフォローもできる限り行う体制を整えています。
クリニックを受診するのは、どのタイミングが良いのでしょうか?

糖尿病も腎臓病も初期の場合は自覚症状がほとんどないため、当院を受診するきっかけは、職場などの健康診断で異常を指摘されたというパターンが多くを占めます。しかし、子育てや介護に追われる女性に多いのですが、ご家族を優先するあまり自分の体の心配を後回しにせざるを得ず、健康診断を受ける機会を逃している方がいらっしゃいます。病気の早期発見・早期治療のためにも定期的に健康診断を受けていただきたいですね。また、インターネットが普及した昨今、病気について気軽に検索できるようになってきていますが、それらの情報が正しいとは限りません。偏った知識をうのみにしないためにも、まずは専門的な医療機関を受診して適切な指導を受けることが大切です。
生活スタイルに合わせた「続けられる栄養指導」を
生活習慣病の治療で注力していることは何でしょうか?

糖尿病・高脂血症・高血圧などの生活習慣病は、その名前のとおり日頃の生活習慣が大きく影響します。当院では生活習慣病の治療に薬を併用しながら、経験豊富な管理栄養士と私が連携して栄養指導にあたっています。人間の体は口から入れる栄養素で作られているからこそ、病気を悪化させないためにも薬と同様に栄養管理を重視しているのです。しかし、自己流のダイエットに走ってしまうことは危険な面もあります。極端なダイエットは、脂肪だけでなく筋力も落としてしまいますし、腎機能に大きな負担がかかってしまいます。何より、1ヵ月は頑張ることができても長続きはしませんよね。そこからリバウンドしてしまい痩せにくい体になってしまうのでは、せっかくの努力も水の泡になってしまいます。
栄養管理を続けるのは難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに、過去に栄養指導を受けた経験がある患者さんから「あれも駄目、これも駄目と言われたから、指導は受けたくありません」といった言葉を聞くことがあります。また「これを食べていると伝えたら怒られるんじゃないか」など、治療に前向きになれない方もいらっしゃいます。人間ですから、好きな物を食べたい時だってありますし、私もその思いにとても共感できます。例えば、普段から外食が中心の患者さんが外食をやめて手作りすることを実行するのは、非常にハードルが高いものです。それならば「外食に行くならこんなメニューを食べてみては?」と提案するようにしています。このように「患者さんとともにつくり上げる栄養指導」を心がけていますので、前向きに栄養指導を受けていただけたらうれしいですね。
近年、生活パターンが多様化していますが、どんなことに配慮して診療を行っているのですか?

お仕事の関係で帰宅が夜遅くなってしまう方、逆に朝早い生活を送っていらっしゃる方など、患者さんの生活は十人十色です。ですので、先ほどお話しした栄養指導はもちろん、お薬を処方する際も丁寧にヒアリングするようにしています。腎臓病の治療薬を選択する時は「お手洗いに頻繁に行ける環境ですか?」という質問をすることもあります。また「朝と夜のお薬では飲み忘れが少ないのはどちらですか?」と質問したとすると、患者さんが「夜はお酒を飲むから朝のほうが忘れないかな」というお返事があるかもしれません。言いたくないことを無理に聞くことはありませんが、患者さんとの会話の中から生活スタイルを把握し、個々に合わせた治療を行っています。
患者の思いを丁寧にヒアリングするための工夫
患者さんとのコミュニケーションにおいて大切にしていることを教えてください。

診療室に入ってきた患者さんにいきなり「今日はどうしましたか?」と尋ねると、戸惑ってしまう方もいらっしゃいます。そこで私は、「こんな症状はありましたか?」など答えやすい質問から始めるようにしています。そうしたやりとりを重ねるうちに、患者さんが少しずつ心を開き、「そういえば、こんなこともありました」と話してくださることもあります。腎臓病や糖尿病は生活習慣と深く関わるため、患者さんの背景を知ることを大切にしています。ただ、その分どうしても一人ひとりにかける時間が長くなり、予約時間をおしてお待たせしてしまうことがあります。患者さんの病態や個性に合わせた診療を行うため、やむを得ず時間を要することもあります。お待ちいただく患者さんには申し訳なく思っています。ご理解いただきながらも、できるだけ快適にお過ごしいただけるよう、待ち時間の改善にも取り組んでいきたいと思っています。
クリニック全体で患者さんに寄り添っている印象を受けました。
生活習慣病の治療は根気良く続ける必要があり、当院の患者さんは月に1回程度の頻度で通院いただく方が多いです。診察の前に採血などの検査を行う際は、問診のトレーニングを受けた看護師が1ヵ月間の出来事をヒアリングしていきます。あらかじめ看護師と患者さんが困り事などを共有しておくと、診察室でもスムーズに診療を進めることができます。その後、栄養指導の際に「これを先生に伝え忘れてしまった」という声が患者さんから上がった場合は、もう一度私がお話を伺うこともあります。患者さんが伝えたいタイミングはさまざまですし、医師だけの力では偏りが出てしまいますので、当院では3つの段階で患者さんの思いをくみ上げるようにしています。
最後に、今後の展望も含めて読者の方へメッセージをお願いします。

いずれは、当院の管理栄養士と一緒に食事のレシピをウェブ上で発信して、適切な食事の啓発を進めていきたいです。また、腎機能障害や生活習慣病の治療を受けている方へのアドバイスですが、治療中にお仕事が繁忙期で生活が不規則になる、お誕生日で食べ過ぎてしまうなど、波は誰にでもあることですから、あまり数値にとらわれて一喜一憂せずに長い目で見ることが必要です。当院では無理なく治療が続けられるよう、私とスタッフが協力してサポートしていきます。また、同じ病気の経験者の話を聞く機会もあるかもしれませんが、体に合った治療は人によって異なります。少しでも不安なことがあれば、お気軽にご相談していただきたいですね。

