舟串 直子 院長の独自取材記事
ふなくし皮膚科クリニック
(三郷市/三郷中央駅)
最終更新日:2025/06/13

つくばエクスプレス三郷中央駅を降りるとすぐ目の前に大きなマンションがある。このマンションの1階に耳鼻科、内科、皮膚科、メディカルモール「クリニックステーション三郷中央」があり、その一つ2014年に開院した「ふなくし皮膚科クリニック」を訪ねた。オレンジ色の壁が明るく広々とした印象の待合室は居心地が良さそうだ。舟串院長は日本皮膚科学会皮膚科専門医と日本アレルギー学会アレルギー専門医の資格を持っており、生まれたばかりの子どもから高齢者まで幅広い年齢層の患者を診ている。開業し10年以上が経過し、地域に欠かせない存在として、大学病院や地域の中核病院他科のクリニックとも連携し、質の高い医療を提供している。
(取材日2016年3月3日/情報更新日2025年6月6日)
地域医療に貢献したいと思い開業を
この場所で開院されたのはなぜですか?

メディカルモールの隣の内科の先生のつながりでお話をいただいたのがきっかけです。もともと皮膚科のニーズがあるところなら特にエリアにこだわりはありませんでした。自分が一番必要とされているところに行きたいという思いも強く、かつて内科の時に近くの総合病院に当直で来たこともあり、とにかく患者さんが多くて忙しかった記憶があります。つくばエクスプレスの開線とともに発展している街で開業する前はやや人通りが少なく寂しい雰囲気もありましたが、その後新しいマンションも建ち、人がどんどん増えて活気のある地域になってきました。とにかく患者さんに近くに皮膚科ができて良かった、女医さんで良かったと言われることが多く、ここで開業して良かったと思っています。
こちらに通院される患者さんの年齢層や特徴はありますか?
基本的に小さなお子さんが多いですね。時間帯によっては2階の保育園みたいになっています。また最近は駅近くに老人保険施設がいくつかできたためか、車いすでの受診も増えてきました。1階なので、階段やエレベーターではつらい人でも大丈夫です。80、90歳代のお元気な方が顔のイボを取りを希望されて来たりしています。また、都心に勤務している会社員の受診や、物流関係の倉庫が近いので運送業の方、製造業の方などの外傷、科学熱傷によるやけどなどの受診もあり、患者層は本当に多彩です。
患者さんの訴える症状に傾向などありますか?

子どもが多いので乳児湿疹、乾燥肌などスキンケアのこと、花粉やじんましんなどのアレルギーが多いかな。アレルギーについては、2歳から採血でき、20分で結果がわかる迅速検査を導入し、積極的に検査しています。また、学童期のアレルギーも増えてきていて、抗ヒスタミン薬の眠気や集中力の低下などに注意をして診療しています。光線治療の紫外線治療機器もありますので、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、尋常性白斑などにも対応しています。光線治療を希望していらっしゃる方も多いですね。
患者のモチベーションを上げるために予約制は必要
慢性的な症状で訪れる患者さんは、どんな悩みを抱えていらっしゃるのでしょう?

アトピー性皮膚炎にしても乾癬にしてもそうですが、皮膚の病気には治療に時間がかかるものが少なくありません。これっていつ治るのだろう、何回ぐらいの通院しなくてはいけないのか、と思ったり、薬塗るの面倒だな、薬がなくなったけど忙しいからいいか、と諦めたりと、通院を続けることはとても大変です。そういった慢性疾患の方々が通院しやすいようにするためには、予約制がいいと考えています。また、診察に際してはお薬の塗り方や次回の来院のタイミングなどを詳しく話すようにしています。患者さんのライフスタイルもさまざまなので、それに合わせてできるだけ待ち時間を短くするよう工夫しています。患者さんにとってもクリニックにとっても待ち時間は永遠の課題ですね。
こちらのクリニックでは漢方薬も治療に取り入れているのですか?
私は順天堂大学の大学院で、アトピー性皮膚炎のモデルマウスに漢方薬を投与して効果を見る研究をしていました。アトピー性皮膚炎はストレスでも悪化しますし、かゆみを抑えないと掻いてしまいますます悪化するという悪循環になっていきます。これを何とかするにはいろいろな方向からの治療が必要ですがさまざまな生薬の合剤である漢方薬が適する場面もあります。ただし、漢方薬も副作用があるのでそこは注意しています。
開業するときに院内の設備や機器でこだわったことはありますか?

まず患者さんのことを考え、できるだけ快適な空間をつくろうと待合室にはこだわりました。壁の色は健康な皮膚の色をイメージし、床は視覚に訴え転びにくい格子状のデザイン、待合いの椅子も素材や形にこだわりました。また、クリーンな空気を保つ空調、照明の色・照度なども、内装業者と相談して計算された居心地の良い待合室になっています。機器については、高性能の立ったまま紫外線を当てられる全身型紫外線治療器を導入し治療時間の短縮につなげています。また、最近はターゲット型の紫外線治療器も導入して、さらに治療の選択肢が増えました。
あいまいな表現をせず、できるだけ具体的に説明する
診療の際に心がけていることは何かありますか?

丁寧で具体的な説明と、患者さんが質問しやすい雰囲気をつくることを心がけています。治ったら薬を塗るのをやめていいですよとか、薄く広げて塗ってくださいとか、曖昧な表現をすると、治っていないのに薬を塗るのをやめていたり、十分な量の薬が塗れていなくて治らないということがあります。なので外用量の目安であるFTU(フィンガー・ティップ・ユニット)の単位の説明をしたり、1週間は塗ってくださいとか、お風呂あがり5分以内に塗ってください、というような具体的な説明を心がけています。また、患者が質問しやすいよう、2つの診察室と処置室をフル活用し、医者と看護師が協力して患者さんの質問を受けられる時間と雰囲気をつくっています。
ご開業後、順風満帆に行かなかったこともあるのですか?
開業直後は、大きな病院と違ってすべて自分の裁量で何でも決められる自由を感じていました。幸いなことに多くの患者さんにも来院いただけています。しかし、3年前私自身の乳がんが発覚しました。患者の立場になってみて身にしみたのは、スタッフや家族、友人だけでなく、クリニックに訪れる患者さんにも、私は支えられていたのだということです。当院をかかりつけにしてくださっている方々には、急遽休診にせざるを得ず、多大なるご迷惑をおかけしてしまうため、病名は隠さず、すべて公開しました。すると患者さんや近隣の先生方までが、口々に励ましやお見舞いの言葉をかけてくださったのです。皆さまの温かなお気持ちに触れて、病に立ち向かう勇気をいただき、無事手術を乗り越えることができました。入院のため2週間休診にさせていただきましたが、復帰後は幸い再発もなく経過観察となっております。
肌のトラブルに悩む方々へのアドバイスをお願いします。

特に最近気になるのが、断熱効果のある化学繊維の肌着が原因と思われる接触性皮膚炎が本当に多いことです。もともと乾燥肌で、上半身のみ衣類が当たっているところが湿疹になっている方はその疑いがありますので、ぜひ気をつけてほしいです。特に皮膚の弱い方やお子さんは綿素材の肌着にしたほうが安心です。それから、若い方などで陰部のかゆみで来院する方には、ぴったりしたジーンズをはいていて、すれて皮膚炎を起こしていると思われるケースが少なくありません。健康な皮膚を保つためには、できるだけしめつけない、ゆったりとした衣類を身に着けることをお勧めします。また、シャンプーや石けん、柔軟剤など肌に直接触れるものの素材や成分にはぜひ気をつけてほしいですね。