梨井 泰鉉 院長の独自取材記事
そがリウマチ・整形外科
(千葉市中央区/蘇我駅)
最終更新日:2023/05/02

JR外房線蘇我駅東口から徒歩約1分。「そがリウマチ・整形外科」はビルの2階にある。梨井泰鉉(りい・たいけん)院長は、関節の痛みやスポーツによるけが、骨粗しょう症など整形外科の幅広い疾患に対応している。特に関節リウマチを専門にする院長のもとへは多くのリウマチ患者が訪れ、中には遠方からや、30年以上も通う人もいるという。診療においては「テニスがやりたい、マラソンがやりたいなど、患者さんがやりたいことをやめたほうがいいとは言いたくないですね」と話し、患者の思いを尊重しサポートすることを心がける。リハビリテーションにも力を入れ、薬を極力使わずに痛みを改善することを最終的な目標に置くという梨井院長に、同院の診療の特徴について話を聞いた。
(取材日2023年3月24日)
リウマチを専門に30年以上のキャリア
開業のきっかけを教えてください。

医学部を卒業してから、勤務医として30年近く勤めました。病院のほうができることは多く、手術もそうですし、入院できるので術後のケアもきちんとできるのですが、開業して「一国一城の主」のようになって地域で貢献したいと思っていました。ただ、勤務医の時は医療だけに専念すればよかったのが、開業すると経営や労務管理まで行う分、大変な面もあるかもしれませんね。現在のスタッフは看護師、理学療法士、診療放射線技師、事務、薬剤師です。常勤の医師は私1人ですが、非常勤医師が5人在籍し、肩や膝のスポーツ障害の専門家がいます。
患者さんはどういった方が多いですか?
リウマチの患者さんが3~4割ぐらい、一般の整形外科の患者さんが6~7割ぐらいでしょうか。急な痛みやけがなどで来院される方には若い方もいますが、定期的に通って来られるのは高齢の方が多いですね。慢性的な痛みを訴える患者さんは、ほとんどの場合、体の特定部分の使いすぎや、生活習慣・姿勢・動き方に原因があります。そこを正していかないと痛みを何回も繰り返すことになるので、その部分のリハビリや啓発が大事になってきます。関節リウマチとは簡単に言うと関節が腫れて痛くなる病気で、薬を使いコントロールを図りながら長く付き合っていく場合もあります。患者さんの中には、前の職場だった千葉リハビリテーションセンター、千葉大学医学部附属病院や成田赤十字病院などで診ていて、続けて来院されている方もおられます。遠くは茨城からお見えになる方もいますね。
関節リウマチがご専門でいらっしゃるのですね。

はい。研修医の時に先輩に誘われて関節リウマチを専門にし、それから30年以上患者さんを診ています。関節が腫れて痛みを生じるリウマチは、重症化すると機能障害が起こり、関節が壊れてしまうこともあるため、薬での治療や、手術を行う場合もあります。診療を始めた当時は、リウマチと診断されるとショックを受けられる患者さんもいらっしゃいましたが、20年ほど前に有用な注射や飲み薬などが開発され、関節が壊れないように維持が図れるようになりました。ただ、リウマチの方の体内で起こっている現象はある程度解明されても、その原因や何が引き金になるのかはまだよくわかっていません。約2割が遺伝的な素因、約8割が後天的な素因だと考えられ、喫煙や歯周病などが環境要因として関連しているともいわれています。
関節リウマチの罹患について特徴的な点はありますか?
有病率は約0.5%といわれ、少なくはないですが、高血圧や腰痛症ほど多い病気ではないですね。割合としては女性が多く、以前は40歳ぐらいが中心だった発症年齢は、今や50歳、60歳と高齢化しています。また、70歳以上で発症する高齢発症関節リウマチも増えており、この場合は患者さんの男女差があまりありません。高齢発症だと症状がおとなしいかというと必ずしもそうではなくて、炎症反応が強く出る方もいらっしゃいますね。高齢の患者さんは若い方よりも日常生活への支障が大きいかもしれません。当院では理学療法士が、患者さんが生活しやすいようにサポートしています。
チームで痛みの解消をめざし、患者を導く
患者さんと向き合う際、どんなことを心がけていますか?

患者さんは痛みがあって来院されるわけですから、注射、薬などでできるだけ速やかに痛みの軽減に努めることを心がけています。当院では体外衝撃波も導入し、足底筋膜炎の痛みの治療に用いています。リハビリも行い、最終的には薬を使わなくても痛みの心配をせずにいられる状態にできたらいいですね。特にリウマチに関しては、現在承認されている先進的で有用な治療の選択肢を患者さんに提示することを大事にしています。中には高価な薬もありますが、患者さんが知らなかったという状況にならないよう、選べる選択肢はすべて提示します。また、リウマチでも他の整形外科でも、「あなたはこれはやっちゃいけない」と、その人がやりたいことを制限するようなことは言いたくないですね。テニスがやりたければテニスを、マラソンがしたければマラソンをできるようにしてあげたい。それが整形外科の医師として大切な姿勢だと思っています。
先に言われたように、体の使いすぎなど頑張りすぎて体を壊す方もいるのですね。
頑張りすぎというのは、正しい体の使い方をしていないと思うのです。例えばスポーツでは下半身がうまく使えていないことが多いようで、手投げや手打ちになるなど上半身だけしか使えていない状況も見られます。スポーツに限らず日常生活や家事をするときでも、手先だけを過剰に動かしていれば、当然手先が痛くなりがちです。億劫でも、下半身を含め、しっかり全身を使って日常生活を送ることが大事ではないでしょうか。痛みの原因にはその人の日常の体の使い方や姿勢がかなり関わっていますから、当院では患者さんの細かい動きも理学療法士がしっかり見ながら、リハビリテーションで動きの改善に取り組んでもらいます。
リニューアルされた院内のことについて教えてください。

当院ではリウマチの検査を行っていますが、通常、クリニックの場合は検査データを外注するので、結果が返ってくるまでに半日から1日程度かかります。そこで当日に結果が出るようにしたいと思い、リニューアルして機械をそろえるためのスペースを確保し、体制を整えました。骨粗しょう症の検査機器も使いやすいように設置場所を設けたほか、時間帯によっては診療放射線技師を2人体制にするなど、患者さんの待ち時間をできるだけ少なくするように工夫しています。
地域の整形外科医として痛みの駆け込み寺に
今までに数多くの人工関節手術を行ってきたと伺いました。

開業以前に勤務していた病院でも人工関節手術を多数担当していましたが、現在も当院との連携病院で手術を行っています。手術の対象となるのは、変形性膝関節症、股関節症やリウマチの患者さんです。関節が一度壊れて動きが悪くなった場合、今の医療で改善を図ることは難しいのです。ただ、壊れた関節の軟骨の下に神経が入りこむと痛みを感じるようになるので、その痛みを緩和するために、壊れた関節を金属やプラスチックでできた人工関節に手術で取り替えます。日本で行われる人工関節の手術は、年間で膝だと約10万件、股関節だと約7万~8万件ぐらいといわれています。
骨粗しょう症も増えているようですね。
骨粗しょう症は女性が全体の8割ほどを占めるといわれる疾患です。閉経後に女性ホルモンの分泌の減少でなりやすくなり、70歳を超えると患者さんの割合がかなりの増えます。骨粗しょう症は、骨折しなければ特に大きな問題はありませんが、背骨や股関節を骨折すると車いす生活や寝たきりになるケースが増え、寿命にも影響が及びます。予防としては、食生活や運動など生活習慣の見直しが必要になります。症状が進んでしまった方には、生活習慣の見直しのほかに薬による治療も行います。医者が一人で治療すべてに携わるのは無理なので、スタッフ全員の力も借りながら進めていきます。
読者へのメッセージをお願いします。

これまで関節外科の分野を専門に、リウマチや骨粗しょう症、外傷などの治療に携わってきました。地域の整形外科医として、「痛い」となったらすぐ駆け込める場所でありたいとの思いがあり、予約制にしながら、緊急の患者さんも受けつけています。リハビリについては理学療法士を置き、体の痛みが生じないように患者さんの普段の姿勢や生活習慣などの改善に努めています。今後は、リウマチや、人工関節が必要な患者さんにより広く対応できるようにしていきたいと思っていますので、気になる方はご相談ください。