高垣 謙二 院長の独自取材記事
高垣皮膚科クリニック
(出雲市/出雲神西駅)
最終更新日:2021/11/01

山陰のメイン道路である国道9号線や431号線からほど近くの、住宅や田畑が広がる落ち着いた景観の中に「高垣皮膚科クリニック」はある。院長の高垣謙二先生は、巻き爪治療やアトピー性皮膚炎の治療に力を入れ、改善後の再発を防ぐケアまで一人ひとりの患者に寄り添い提供している。地域中核病院での勤務医時代には、多くの熱傷患者の対応をした経験を持つなど、豊富な臨床経験に支えられた適切な治療に患者からの信頼も厚い。「困ったことがあればいつでも相談に来てほしい」と気さくにほほ笑む高垣院長に、皮膚科治療にかける想いやこれからの展望について話を聞いた。
(取材日2021年7月28日)
人が好き、人の役に立ちたいという想いが原点
先生が医師をめざしたきっかけについて教えてください。

昔から人が好きで、人の役に立つことをしたいという想いがあり、そこから医師をめざしました。医学部に進んでからは、病気だけではなく、人そのものに接する科に進みたいという想いが強くなり、皮膚科に進むことにしたんです。「人と接するために皮膚科を選んだ」というと意外に思われるかもしれませんが、皮膚は体の最も外側にあるので、見る、触る、感じることで診察、治療が可能です。例えば、体の内側にある臓器を診る内科では、画像や検査データからその状態を推し量りますが、皮膚科は直接診ることができる。つまり、一番患者さんに近い科だと思ったんです。実際、地域中核病院に勤務していた頃も、新生児科から始まりすべての科から往診依頼がありました。そうした依頼の中で、発疹をきっかけに亜鉛欠乏を見つけたり、隠れていた内臓疾患を見つけたりと皮膚科医としての知見を生かすことができ、とてもやりがいを感じていました。
人の傍らにいることができる、これが皮膚科の医師を志した先生の原点にある想いなのですね。
はい。皮膚科は、外科的側面からも、内科的側面からも、精神的側面からもアプローチが可能な分野だと思っています。体の中を診ることができるような機器や検査方法がまだなかった時代には、医師は五感で判断し、治療するしかありませんでした。つまり、皮膚を見ることは医療の原点であると思っています。また、皮膚疾患にはさまざまな側面があるのですが、皮膚を直接治療するのではなく、歯の治療や扁桃腺の摘出で皮膚症状の軽減につながるようなものもあります。見えない部分で体は互いに関連しているんです。さまざまなアプローチを検討しながら、常に患者さんにより良い医療を提供していきたいと思っています。
勤務医時代に培った経験で今の診療に生かしていることはありますか?

皮膚疾患について広く経験させていただきましたが、特に私にとって大きかったのは、やけど(熱傷)の治療に携われたことでしょうね。大学病院から地域の中核病院に移り、当時、熱傷治療に力を入れていた中央の大学病院に勉強に行ったりしながら経験を積んでいくうちに、いつしか島根県内の重度熱傷の患者さんの多くを診るようになっていました。熱傷はひどい場合には全身管理から始まり、広範囲の軟膏処置、植皮術と、あらゆることが求められるのですが、どんな症例にも焦らず冷静に適切な対応が取れるようになりました。個人で開業した今では、そこまで重度の患者さんはいらっしゃいませんが、どんな患者さんが来られても対応できるという自信が、今も支えになっているように思います。もちろん、当院でできることには設備上限界もあるので、必要に応じてしかるべき医療機関と連携し、適切に対応しています。
治療後まで見据えて、再発を防ぐケアを
巻き爪治療とアトピー性皮膚炎の治療に特に力を入れていらっしゃると伺いました。

そうですね。皮膚科全般の疾患を対象にしていますが、特に力を入れているのは巻き爪・陥入爪とアトピー性皮膚炎の治療です。巻き爪が進行すると、爪が皮膚に食い込んで、次第に激しい痛みを引き起こすようになりますが、そこまで放置してしまう人は少なくありません。もっと早く来院してくれれば痛みも少なく治療も楽なのに、と思うこともしばしばです。当院では、手術療法も含めた各種治療を行っています。爪の処置はもちろん、爪の切り方や靴の選び方、靴の履き方など再発をしないための具体的な指導も行っています。巻き爪というと、ついその爪だけを注視してしまいがちですが、巻き爪・陥入爪になるのには理由があります。原因を絶たない限りは再発してしまうので、治療後の日々のフットケアも大切にしています。
アトピー性皮膚炎についてはいかがでしょう。
アトピー性皮膚炎は正しく認識しないと、悪い状態が当たり前になってしまいます。そうなるとご本人も苦痛ですから、何とかいい状態まで持ち上げて、いい状態がどういうものか、それをキープするためにはどうすればよいかを知ってほしいと思いながら診療しています。アトピー性皮膚炎は、つい症状が出ているところばかりにフォーカスしがちですが、実は症状が出ていない場所を知ることが大事なんです。少し皮膚のバリア機能が弱いために起こる疾患なので、症状が出ていない場所に着目すると、何をしたらいけないのかが見えてくるんです。それを日々のセルフケアに生かして、症状の軽減、緩和、寛解につなげていきたいと考えています。
先生が診療の中で大切にされていることを教えてください。

診療で大切にしているのはやはりコミュニケーションです。患者さんに寄り添った治療を一番に心がけています。どうしてこうなっているのか、どうしたらこうならないのかを一緒に考えるようにしています。薬を出して、目の前の症状が良くなれば終わり、ではないんですね。何度も同じ症状を繰り返している方、痛い思いをして病院から遠ざかってしまっている方などにもぜひお越しいただきたいと思っています。
今日よりも明日、より頼ってもらえる医師をめざして
治療を支えるスタッフさんたちの対応も好評だそうですね。

診療では、いつもわかりやすい説明を心がけているのですが、私の説明だけでは足りないこともあります。逆に、私が熱を込めて説明しすぎた結果、患者さんが「先生に怒られてしまった」と感じて怖がってしまうこともあるので、そんな場合にはスタッフが「先生は一生懸命なだけで怒っているわけではないんですよ」と、上手にフォローや補足をしてくれます(笑)。スタッフとはいつも情報や意識、知識を共有していますし、チームとしての動きをいつも意識してスタッフ教育にも力を入れています。おかげさまでスタッフの対応については患者さんたちからも好評をいただいています。
先生がやりがいを感じるのはどんな時ですか?
やはり、診察して、治療して、結果を出すというプロセスを経て、最終的に患者さんに喜んでいただけた時ですね。医師になった初めの時から今も変わらずやりがいを持って、毎日の診療に取り組んでいます。でも、まだまだ課題はあるので、足りないところは日々1歩でも2歩でも前に進んでいきたいとも思っています。
読者へのメッセージをお願いします。

皮膚に関するトラブルには何でもお答えいたしますので、お気軽にご相談ください。まずは相談だけでも大丈夫です。必要に応じて紹介や連携もいたします。かかりつけ医を見つけるための、最初の窓口にしていただいても結構です。その症状が現れた原因を探り、いい状態を維持していくことができるようにするということを大切に、お一人お一人の患者さんに伴走して、その時その時で最善と思える治療法の提供を常に心がけています。一人で悩まずに、気がかりなことがある場合は早めにいらしてください。