中村 涼 院長の独自取材記事
おさきマタニティクリニック
(貝塚市/蛸地蔵駅)
最終更新日:2025/03/03

院内に入ると、ほんのり香るアロマや心地良いBGMに優しく包まれる「おさきマタニティクリニック」。2019年より同院の2代目院長を務める中村涼先生は、多くの基幹病院で研鑽を積んだベテランの医師だが、その表情はやわらかく、インタビュー中にスタッフへの感謝の言葉が随所に出るような謙虚な人柄だ。同院では、出産が特別な体験となるよう、時代に合わせたさまざまな取り組みを実施。痛みに配慮した分娩もその一つだが、お産に対してだけでなく、生理痛に悩む女性に対し「何とかしてあげたい」と寄り添う姿も印象的だ。自身もエイジングケアに取り組んでいると、つややかな笑顔を見せる中村院長。エイジングケアに関心のある女性にとって相談しやすい存在でもあるだろう。そんな中村院長に同院の診療理念など詳しく話を聞いた。
(取材日2025年1月22日)
患者との絆を深める産婦人科医療を提供
産科の医師は大変だと聞きますが、なぜ産婦人科に進もうと思われたのですか?

当初は内科に進もうと考えていたんですよ。というのも私の父が内科の医師でしたので、いずれは父の後を継ぐという漠然とした将来像があったからなんです。それが、初期研修で産婦人科を訪れた際に出産のダイナミックさに圧倒されて、心が大きく揺さぶられました。出産の一つ一つの過程には生命現象の仕組みがあり、驚きと発見の連続だったんですね。そして、学びを深めるにつれて産科への興味と関心がますます高まり、その頃にはもう強い意志を持ってこの科に進むことを決めていました。お産で起こることは喜ばしいことばかりではありません。医療従事者は母子の命を預かっているという緊張感の中、昼夜を問わずサポートし続ける大変さがありますが、出産の喜びは何事にも勝るほど大きく、元気な赤ちゃんが産まれてくれることがわれわれの活力になります。
こちらの院長になられた経緯についてお聞かせください。
医学部を卒業後、大阪大学医学部附属病院の産婦人科をはじめ、各地の総合病院に勤務して研鑽を深めました。ただ、産科医療を取り巻く環境はどこも厳しく、その過酷さゆえに医師の担い手が減り、現役の医師一人ひとりにかかる負担が増えていくばかりの状況に直面しました。高度な医療を提供できる総合病院の存在は地域にとって欠かせませんが、そうした病院では妊婦さんお一人お一人に割ける時間が限られてしまい、満足のいく対応ができないことにもどかしさを感じていたんです。そんなとき前院長である尾崎敦男先生が不慮の事故で他界され、尾崎先生の遺志を継ぐ形で2019年に当院の院長に就任しました。当院ではそんな私の勤務医時代の経験を生かし、一回一回の出産を大切に、お一人お一人の患者さんの現状や背景に向き合って、それぞれの方に合わせた医療を行うことを診療理念としています。
産婦人科の受診に敷居の高さを感じる方は多いですが、何か工夫されていることはありますか?

特に私が男性ですので、ハードルの高さを感じられたとしても無理はありません。ですから、少しでもリラックスして受診していただけるよう、待合室にアロマを焚いたり、診療の際は雑談を交えてフランクにお話ししたりすることを心がけています。ときにはそうした雑談の中から抱えていらっしゃる悩みがわかることもあり、症状を解決するためのお手伝いができることもあります。これは当院の診療理念でもありますが、お一人お一人の患者さんにしっかりと寄り添うことをこの6年間貫いてきました。患者さんとの関係性を深め、お産の方に対しては、「一緒に頑張ったよね」と退院の日に言葉を交わし合えるくらい、患者さんとの“絆”を大切にした診療をめざしています。
自然なお産を基本に、痛みに配慮した分娩も実施
こちらの分娩の特徴について教えてください。

不必要な医療介入は避け、自然なお産をしていただくことを基本にしていますが、母子の安全のために必要だと判断した場合はためらわず医療介入するというスタンスで臨んでいます。例えば、医師側の都合でお産を進めるための陣痛促進剤を使用するということはありません。当院では、お一人お一人のお産が特別な体験になるよう、検診時に4Dエコーによる胎児の動画撮影を選択できたり、入院時に個室・和室特室・4人部屋から選択できたりするなど、患者さんのさまざまなニーズにお応えしています。また、沐浴・授乳指導のほか、安産教室やパパ教室、マタニティーヨガ、ベビーマッサージといったお産に関する学びの場も豊富に用意していますのでご活用ください。お産のスタイルについては、力が入れやすいあお向け体勢が多いですが、もしご自身にこだわりがおありでしたら、いろいろな形に合わせたお手伝いもさせていただきます。
痛みに配慮した和痛分娩にも対応していただけるのですか?
はい。自然に勝るお産はないといっても、陣痛に対して皆さんが恐怖心を抱かれるのはよくわかりますし、世界的に無痛分娩の流れがあることも理解していますので、時代に即した対応をしていきたいと考えています。当院では、不安が強い妊婦さんに対して、和痛分娩や無痛分娩も行っています。
頼りになるスタッフがいらっしゃるのですね。

そのとおりなんです。助産師さん、看護師さん、看護助手さん、事務スタッフさんまで、職種は異なるものの皆さん本当にお産が好きですし、この6年間、よく連携してやってくれています。私としても家族と過ごす時間よりもスタッフと過ごす時間のほうが長いほどなので、今やもう一つの家族のような存在ですね。例えば、入院時のアメニティーのセレクトなど、女性ならではの視点でアドバイスをいただけることもありがたいです。スタッフが当院で働くことに誇りを持って貰えるように、私自身さらに頑張らないといけないなと思います。
生理痛や更年期障害などにも親身に対応
お産だけでなく、婦人科の諸症状にも対応されているそうですね。

マタニティークリニックですので、お産が軸にはなりますが、当院では女性のライフステージの変化に伴って起こるさまざまな不調に幅広く対応しています。中でも生理不順や生理痛に悩んでいらっしゃる方は多く、生理痛に関しては皆さんすごく我慢していらっしゃるなという印象です。「こんなものかな」と諦めていらっしゃる方もおられるのではないでしょうか。おそらく私が想像するよりもつらいのだろうと思うと、何とかしてあげたい気持ちでいっぱいです。ご自身の生活の質を上げるためにも、お一人で抱え込まずにご相談にいらしてください。
更年期や高齢の方の診療についてもお聞かせください。
40代以降は更年期に伴う諸症状、60歳を過ぎると老年期のトラブルが増えてきます。不正出血があってお見えになる方は多いのですが、おりものの増加や些細な痛みなどの症状の裏にも怖い病気が潜んでいる可能性があるので、普段と違うことがあれば早めに受診してください。各種検診にも対応しています。更年期の症状は、細かいものを含めると数百種類に及びます。女性ホルモンの減少に起因する症状が多いものの、かといって女性ホルモンを足せば良いかというと、必ずしもそうではありません。漢方薬や心療内科で出されるお薬など、多角的にアプローチしていくことが大切で、かつ長い目で経過を診ていくことが肝心です。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

昔よりも女性の出産する回数が減少しているからこそ、より一層、一回一回のお産を大事にしていきたいと思っています。当院では現在、産後のケアの充実を図るため、リラクゼーション設備を整え、マッサージやアロマを取り入れるなどして、短期間の入院でも充実感を感じていただけるようさまざまな取り組みを行っています。今後も患者さんに対するアンケートなどを参考にしつつ、「ここで産んで良かった」と思っていただけるようなクリニックづくりに励みたいと思います。また、婦人科の諸症状に関しては、皆さんが日常生活をより良く過ごせるためのお手伝いができるよう尽力してまいりますので、お困りのことがあればぜひ一度ご相談ください。