平松 愼右 院長の独自取材記事
みそのハートクリニック
(相模原市南区/相模大野駅)
最終更新日:2025/02/19

モダンな家屋が立ち並ぶ住宅街の一角に「みそのハートクリニック」はある。スタッフもベテランぞろいの同院の院長を務める平松愼右先生は、日本循環器学会循環器専門医、日本超音波医学会超音波専門医でもある。年齢を感じさせな軽やかな立ち居振る舞いは、趣味のゴルフやスキューバダイビングでの鍛錬を思わせる。穏やかで優しい雰囲気の平松院長は、医師としての熱い使命感を持つ。2011年の東日本大震災の時には、ボランティアとして、岩手県大船渡市県立大船渡病院で診療を行った。現在も相模原市医師会の災害対策活動ではトリアージの訓練や災害シミュレーションといった取り組みに参加する。同院のことだけでなく、広い視点で医療を考える平松院長とはどんな人物なのか、独立のきっかけなど詳しく聞いた。
(取材日2024年5月25日)
カテーテル治療に専心し、専門性を深める
患者層について教えてください。

比較的75歳以上の患者さんが多いですが、若い方では中学生もいらっしゃいますね。疾患としてはさまざまです。循環器内科が専門なので、心疾患の患者さんはもちろんですが、糖尿病や高血圧症、脂質異常症といった生活習慣病の方、喉の痛みや熱といった風邪の症状も診察します。地域のクリニックとして患者さんがいつでも相談できる場所でありたいと思っているので、間口を広く、どんな症状でも診るという気持ちです。どの診療科を受診すべきかわからないことがあると思います。そうした時にも、ご相談ください。
平松院長のご経歴を教えてください。
北里大学の医学部を卒業後、同大学の大学院に進みました。大学院時代に心臓カテーテル検査を使用した研究を行いました。当時症例数が多かった北九州市の小倉記念病院循環器内科への国内留学でカテーテル治療の技術を学びました。当時の日本では冠動脈カテーテル治療が始まったばかりで、今ほど主要な治療法ではありませんでした。小倉記念病院への国内留学をきっかけにカテーテル治療を専門的に行うようになり、北里大学病院で冠動脈カテーテル治療の開始に携わりました。大学院を修了後は沼津市立病院内科で16年間、大和市立病院循環器内科に3年間勤め、当院の院長に就任し今に至ります。
カテーテル治療に尽力されていたということですが、独立したきっかけは何だったのでしょうか。

一番の理由は年齢と体力かなと思います。実は、当院は北里大学の医局の先輩が開業したクリニックなんです。私が沼津市立病院にいる時に、クリニックを承継してほしいと打診されました。私もいずれは出身である町田市近辺に拠点を移したいと思っていましたが、当時はカテーテル治療や検査に注力し、自分の得意な分野でもあったので、すぐに承継するという気持ちにはなれませんでした。ちょうど同じ時期に家族の体調が悪くなり、沼津市から町田市へ通うことが困難になったため、大和市立病院に異動させてもらうことに。大和市立病院は患者数も多く、激務ではありましたが充実した日々を過ごせました。ただ、50歳を目前にして体力の衰えも感じていましたので、年齢的にも独立するのなら早いほうが良いと思い、先輩のクリニックを引き継ぐことを決めたのです。
救急の現場での経験から診療の幅を広げる
なぜ循環器内科を専門にしようと思ったのですか?

循環器内科は、内科でありながらカテーテル治療など外科的な要素があったからです。母校の北里大学は、私が在籍していた頃から学生に幅広い診療科をローテーションで経験させる方針でした。現在は当たり前ですが、私が学生の頃はそうしたことを行っている医学部は少なかったのです。さまざまな診療科を見学し経験した中で、循環器内科の医師が救急医療を行っている姿がとてもスマートで魅力的に見えました。救命処置を行う様子は、映画やドラマで観るまさに「医師」のイメージそのまま。父も内科の開業医でしたので、そうした影響もあって循環器内科を専門としました。結果的にカテーテル治療は私の得意分野となりましたので、専攻分野は間違っていなかったと思います。
病院とクリニックの診療での、大きな違いは何でしょうか。
幅広い疾患を診るということでしょう。沼津市や大和市の市立病院では循環器内科外来を担当していましたので、心臓や血管の疾患の患者さんがほとんどです。一方、クリニックではいわゆる風邪や整形外科に関わる疾患の方もいらっしゃいます。クリニックに来て最初の頃は診療の幅広さに戸惑いもありましたが、相模原医師会の救急事業に携わったことで、循環器以外の疾患にも対応できる力が身につきました。また、患者さんとの向き合い方も、病院とクリニックでは異なります。病院は多くの患者さんがいらっしゃるので、患者さん一人ひとりとコミュニケーションを取る余裕がありません。しかし、クリニックでは診療以外の話をすることもあり、患者さんとより近い関係になれていると感じます。ただ、お待ちの方が多い時は、どうしても時間が取れない場合もありますので、その際はベテランのナースにご相談ください。
平松院長は優しくて穏やかなので、患者さんも話しやすいのでしょうね。

そう思っていただければ、うれしいことですね。長年通ってくれている患者さんもいて、ご家族やご自身の近況をお話ししてくれる方も少なくありません。近年は患者さんも高齢化していて、外来に通院できなくなってしまう例も出ています。幸い、近隣に在宅医療を専門とする先生がいらっしゃるので、外来に来られなくなった患者さんはその先生と連携し、在宅医療を提案しています。今後は在宅医療のニーズも増えてくると思うので、連携先があるのは心強いことです。
他の医療機関と連携しスムーズな診療提供をめざす
相模大野駅周辺には専門的なクリニックが多いそうですが、どういった連携がありますか?

先ほど申し上げたように、在宅医療の先生と連携することもありますし、消化器内科や内分泌内科、腎臓内科、泌尿器科などの先生などと連携することも少なくありません。相模大野駅の周辺には、各分野を極めた先生方が開業されています。そのため、私が診察して診断がつかない場合は、各専門の先生を紹介しています。場合によっては電話で直接先生と話をすることもありますね。クリニック間で連携すると、患者さんにスムーズな医療を届けられるので、医療従事者側にとっても、患者さん側にとっても大きなメリットだと思います。また、クリニック間だけでなく、国立相模原病院や北里大学病院といった基幹病院とも連携し、術後の経過観察や治療の継続を当院で行ったり、反対に緊急性や重症度の高い患者さんを基幹病院に紹介したりします。基幹病院の医療従事者が減少する中で、これからは病診連携が欠かせません。
働き盛りの世代でも心臓の疾患に注意が必要と聞きました。
心臓の疾患の危険因子は糖尿病や高血圧症、脂質異常症といったものがあるので、若い頃からの予防が大切です。年に1回健康診断を受け、異常があったら詳しく調べましょう。当院では超音波検査装置で、心臓の大きさや厚み、動き、心臓のポンプ機能に異常が生じていないかどうかを検査し、血管で動脈硬化が起きていないかなどを診ます。私は超音波専門医でもあるので、大学病院レベルの検査を受けられると思ってください。検査の結果、より詳しく診たほうがいいと判断した場合は、超音波検査のレポートを添えて大学病院などを紹介します。勤務医時代には重症化した患者さんを多く診てきました。今は重症化しないうちに、早めに食い止められるよう患者さんに接することを心がけています。糖尿病や脂質異常症は遺伝的な要因もありますので、血縁者に病歴がある場合は、より注意深い健康観察が必要です。
今後の展望をお聞かせください。

継続して取り組みたいのは、相模原市医師会が実施している肺がん検診です。市民の皆さんが受けた胸部エックス線検査のデジタル画像を、医師会所属の医師数人で読影し、肺がんやその他の病気がないかどうかを確認します。病気の早期発見につながる例もあるため、今後も継続していく予定です。また、相模原市メディカルセンターでの一次救急対応も引き続き行っていきたいと思います。相模原市メディカルセンターとは、相模原市と相模原市医師会が協力して運営している救急診療事業です。平日の夜間と、日・祝日・年末年始に一次救急として診療を行います。私は勤務医時代、循環器救急として一次救急に携わってきました。もともと救急が好きだということもありますが、これまでの経験を相模原市南メディカルセンターで生かし、市民の皆さんに還元したいです。