杉原 桂 院長の独自取材記事
ユアクリニックお茶の水
(千代田区/御茶ノ水駅)
最終更新日:2025/08/26

御茶ノ水駅から徒歩1分の「ユアクリニックお茶の水」。日本小児科学会小児科専門医の杉原桂院長は、大学病院や専門病院などで研鑽を積み、2015年より同院を率いている。「治療はあくまで手段。患者さんが抱える本当の不安に寄り添いたい」と、小児アレルギーや赤ちゃんの頭の形の相談を含め、幅広く診療。また、患者に対してだけでなく、スタッフとのコミュニケーションにも重きを置いている。そんな杉原院長に、同院の診療の在り方や治療の特徴について話を聞いた。
(取材日2025年7月30日)
クリニック・患者・地域の「三方良し」を理念に開業
クリニックの成り立ちについて教えてください。

私は以前、昭和大学のヒューマニズムコミュニケーション研究会で、医学部の学生を対象にコミュニケーション力の指導をしていました。医療現場では、患者さんやご家族、スタッフとの関わりの中で、コミュニケーション力が欠かせません。しかし、そうしたスキルを学べる機会や、実践している医療機関が少ないと感じていました。そこで、当時研究会に所属していた4人の医師とともに、自ら理想とする医療の実現をめざし、2015年に当院を設立することになりました。当初は生活習慣病なども診療していましたが、2025年1月にその分野は別のクリニックとして独立。現在は小児科を中心に、内科や感染症の診療も行っています。
小児科を専門にしたきっかけは何ですか?
実は、高校3年生の夏まで文系の学生で、医師になるという考えはありませんでした。ただ、自分の進路について真剣に考えるようになったときに、理系・文系という枠にとらわれず、どちらの知識も生かせる仕事として医学に興味を持つようになりました。どんな時代でも必要とされる仕事だと思ったからです。大学の医学部卒業時には、厚生労働省への入省を考えていました。ところが、当時お世話になった小児科の教授が、私の柔軟な対応力を評価してくださり、「小児科には君が必要だ」と声をかけてくれたため、博士号取得までという約束で小児科の道に進みました。その後、その教授は急逝してしまい、遺志を継ぎたいという思いもあり、現在まで小児科を続けています。
クリニックの診療方針を教えてください。

当院では、「クリニック・患者さん・地域」の三者がともに満足できる「三方良し」を理念としています。もともとは近江商人の考え方ですが、医療にも通じる部分があると感じています。まず患者さんに「受診して良かった」と思っていただくことが大切であり、そのためには医療者自身も自信を持って提供できる医療であるべきです。加えて、地域社会にとっても信頼される存在でなければなりません。診断や処方はあくまで手段であり、患者さんの安心や笑顔につながることが本来の目的です。その理念を実現するため、当院では「あなたのかけがえのない健康をともにつくるパートナーでありたい」という方針のもと、診療にあたっています。また、医師やスタッフ自身が心身ともに健やかであることも大切です。そのため、どうしたらヘルシーな思考を保てるかなど、スタッフ同士が日々のやりとりの中で共有するようにしています。
小児アレルギーや予防接種に注力
ベビーヘルメット矯正に取り組まれていると聞きました。具体的にどのような診療なのでしょうか?

ベビーヘルメット矯正は予防的なケアの一つで、赤ちゃんの頭の形を整えるために行います。従来、生まれつきのいわゆる後頭部の絶壁や左右差のある頭の形は自然に治るとされていましたが、実際はそのまま残るケースもあることがわかってきました。3Dカメラで撮影したデータをもとに頭の形をシミュレーションし、3Dプリンターで作製したヘルメットを2~6ヵ月間装着するという治療法で、当院では2024年から対応しています。きっかけは、ヘルメット装着による皮膚トラブルの相談に来られる方が増えたことです。そこで、当院でヘルメットを作るところから対応できたらと思い、治療法を学ぶようになりました。頭の形のゆがみによる健康面へのリスクについてはまだ十分に解明されていませんが、見た目や生活への影響を心配する親御さんも多くいらっしゃいます。治療に適しているのは生後3~6ヵ月の時期ですが、当院では1歳未満であれば対応しています。
小児アレルギーの治療にも力を入れているそうですね。
はい。私は以前、相模原病院の小児アレルギー科に勤務しており、その際、食物アレルギー分野に精通する方のもとで学ぶ機会がありました。その経験から、小児アレルギーの治療は自分の得意とする分野だと感じています。最近では、アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・喘息のご相談が特に多く見られます。いわゆるアトピー性皮膚炎というと皮膚科のイメージを持たれる方も多いですが、大人と子どもでは症状の背景が異なるため、お子さんの場合は小児に詳しい医師によるトータルな診療が重要です。例えば、複数のアレルギー疾患が連続して現れることや、「アトピー性皮膚炎だと思っていたら実は別の原因だった」というケースもあるためです。小児のアトピー性皮膚炎の治療も、基本的には大人と同様にステロイド剤の処方になります。ただし、乳児の場合はあまり強いものを使わないなど、年齢や症状に応じて強さや使い方を調整することが大切です。
予防接種についてはいかがでしょうか。

一般社団法人日本外来小児科学会は、予防接種の重要性を強く推奨しています。2014年に水痘ワクチンが2回接種に切り替わりました。その際の国立感染症研究所のデータを確認するなどして、当院でも予防接種に力を入れています。乳幼児は生後間もなくから接種の機会がありますが、大人の方でも帯状疱疹ワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、年齢に応じて推奨されるものがあります。予防接種は車で例えるならシートベルトのようなもの。打てる時にしっかり接種しておくことが、将来の健康を守るための大切な備えになります。どのワクチンが必要か迷う場合は、かかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。当院では、極細の針を使うほか、会話で意識をそらすことでできるだけ「痛くなかった」と感じていただけるよう工夫しています。
治療は手段。患者の本当の不安を解消することが大切
患者さんに接する際に意識していることを教えてください。

ただ病気を治療するだけでなく、その方が抱えている不安や本当の課題に向き合うことを大切にしています。例えば「風邪を治したい」と来院された方でも、実際には「来週おばあちゃんに会いに行けるか」といった、別の心配事を抱えていることもあります。治療はあくまでも「手段」に過ぎません。患者さんの本当の心配事を共有することこそが、本来の目的だと考えています。そのため、声のトーンや話を聞く姿勢にも気を配り、どんなことでも相談しやすい雰囲気づくりを心がけています。また、こちらからも積極的に声をかけることで、不安や疑問を引き出せるよう努めています。
スタッフとの連携では、どのようなことを意識していますか?
スタッフ一人ひとりの価値観や考え方、情報の受け取り方の癖に合わせたコミュニケーションを意識しています。例えば、自分視点で物事を考える人もいれば、相手の立場で捉える人、視覚情報が得意な人、感覚的な表現のほうが響く人もいます。チーム全体がよりスムーズに連携するためには、こうした違いを理解した上での対話が大切です。そして、クリニック内の信頼関係がしっかり築かれてこそ、患者さんとの良好なコミュニケーションにもつながると考えています。私は「月曜日が待ち遠しくてたまらない職場」をつくりたいと思っているんです。良い部分だけでなく、足りない部分も含めてしっかり評価されながら成長していける。そんな環境が当たり前になるクリニックをめざしています。
読者へのメッセージをお願いします。

私たちは、地域の皆さんの「かかりつけ医」として、子どもから大人まで、ご家族全体をサポートできる存在でありたいと考えています。特に大切にしているのは、「病気になる前に予防する」ことです。小児科の診療では、子ども自身が持つ自己治癒力を支えることが私たちの役割だと考えています。心と体の両面から寄り添う「添え木」のような存在として、お子さんの自然に治る力を引き出していけたらと思います。「怒られそう」「薬をたくさん出されるんじゃないか」と身構えず、まずはお気軽にご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とはベビーヘルメット治療/33万円~