松浦 玄嗣 院長の独自取材記事
松浦玄嗣デンタルオフィス
(川口市/西川口駅)
最終更新日:2024/08/09

「松浦玄嗣デンタルオフィス」が、西川口駅から徒歩2分のビル2階に開院したのは、2007年のこと。院長の松浦玄嗣(まつうら・もとつぐ)先生は、開院当初から患者に寄り添う姿勢を貫き、現在も夜23時まで診療を続けている。急な痛みを訴える患者や仕事帰りに診療を希望する患者も多い。松浦先生を頼り、同院を訪れる患者は取材中も後を絶たず、その患者層は年齢や性別、国籍もさまざま。日々忙しく診察を続ける中でも、医療やそれを取り巻く環境に関する知識のアップデートに余念がない。「健康長寿へとつなげられるのも、口腔ケア」と語る松浦先生に、歯科医療にかける想いについて話を聞いた。
(取材日2024年7月8日)
主治医の姿に憧れて、歯科医師の道へ
歯科医師を志したきっかけを教えてください。

私はもともと歯並びが悪く、7歳から大人になるまでずっと矯正を受けてきました。それを担当してくださったのが、原宿デンタルオフィスの山崎長郎先生、よごさわ歯科矯正の与五沢文夫先生、東海大学医学部付属病院元病院長の谷野隆三郎先生です。このお三方がタッグを組み、チームアプローチで矯正にあたってくださったのですが、当時はまだインターネットがなかったこともあり、大学に入るまで日本を代表する先生方とはまったく知りませんでした。ただ、治療を受けるたびに「カッコいいな」と子ども心に思っていたことは、今でもよく覚えています。高校生の頃、医師になるか歯科医師になるか、迷ったこともありましたが、整形外科の医師の父が自分がやりたいことをやればいいと背中を押してくれたので、憧れていた歯科医師をめざして山崎先生が卒業された東京歯科大学に進むことにしました。
大学卒業後は、どのような経験を積まれましたか?
歯科医師免許を取得してから、全力で勉強できてハードに鍛えてくれる勤務先を探すため、求人の有無に関係なく、自らアポを取り、かれこれ90院近くに足を運びました。そのうちの1つ、八丁堀の歯科医院での見学時、目にしたのが私の主治医の山崎先生のご著書でした。そこの先生は原宿デンタルオフィスで山崎先生から学ばれた方だったのです。そんなご縁のあった歯科医院に勤めることになったわけですが、歯科医師になってからも学ぶことはやめませんでした。大学院では薬理学を専攻し漢方の研究に励み、歯科については山崎先生や仙台の阿部晴彦先生からも教えを受けて、知見を広げました。そして、医療法人の分院長として西川口のこの場所に来たのが2004年です。その後、その医療法人は閉院になりましたが、患者さんを残して歯科医院を閉めるわけにいかないと思い、一念発起して2007年に当院を開院しました。
漢方を研究対象にしたのはなぜでしょう。

それは漢方の知識が患者さんの役に立つのではないかと考えたからです。東洋医学では、この世のあらゆるものは、木・火・土・金・水の5つの要素から成り立っているという「五行」の考えがもとになっています。西洋医学とはまったく異なるものですが、良いところを折衷して提案することで、きっと患者さんのためになる。そう考えて漢方薬と口腔免疫について研究し、歯学博士の学位を取得しました。現在も当院では口腔粘膜の代謝活性を上げる目的などで、さまざまな漢方を活用しています。
「全身管理の中の口腔ケア」という視点で診療
街の変化に伴い、さまざまな国籍の人が来院されているのですね。

はい。川口はもともと鋳物の街として有名でしたが、私が勤務を始めた2004年当時は関東有数の歓楽街でした。その後ゴーストタウン化した時期を経て、中国の人たちがたくさん流入し中華街ができたのですが、現在はベトナム・韓国・トルコ・カンボジアなど、さまざまな国籍の人が暮らしています。それに伴い、当院の患者層も年齢や性別だけでなく、国籍も含めて多様性が広がりました。直近では、来院される方も外国をルーツとする人たちが増えてきています。川口・西川口は誰でも受け入れる、懐の広い街です。当院もこの街と同じようにすべての患者さんのニーズに応えられるような歯科医院でい続けたいと思います。
診療方針や、患者さんと接する際に心がけていることを教えてください。
歯だけを診るのではなく、「全身管理の中の口腔ケア」という視点で診療しています。そのため当院には管理栄養士も在籍し、一人ひとりの要望や悩みをよく聞いて、それぞれに合った治療法を提案することを心がけています。モットーにしているのは、「痛みに配慮して」「リラックスして」「楽しく」治療すること。1つ目の「痛みに配慮して」は、麻酔を適宜使用することです。神経麻酔の基本は、細い針を早く入れて、ゆっくりと薬を注入することですが、患者さんがなるべく痛みを感じないよう努めています。2つ目の「リラックスして」もらうために気をつけたのは空間づくり。開院当時の一般的な歯科医院は、白を基調とした医療機関然としたスタイルがほとんどでしたが、落ち着いた雰囲気になるようアンティークのソファを置くなど工夫しました。
3つ目の「楽しく」は、どのようなことを指しているのでしょうか。

私が考える「楽しく」とは、先進の医療情報や知識を伝えることで、患者さんの知的好奇心を刺激することです。診療の前後や合間に交わす会話に、健康に関する話題を織り交ぜているんです。歯科に関する知識だけでなく、口腔疾患が全身管理とどう関係するのかという話から予防医学、時には再生医療の分野の話題にまで広がることもあります。高校時代の友人が再生医療の分野の研究に携わっているのですが、彼は医学部ではなく工学部の出身です。ゲノム解析もSEの力を借りなければできないわけで、今や医療に関わるのは医師だけではなくなっている。そうした話を普段からしているので、患者さんの歯や健康に対する意識が少しずつ変わってきたように感じています。
口腔メンテナンスは、健康長寿にもつながっていく
23時までの夜間診療も実施されていますね。

歯はたいてい夜に痛くなるものなので、開院当初からなるべく夜遅くまで診療しようと考えていました。私はラジオパーソナリティーなど他の仕事もしていたこともあり、その当時は夕方から深夜まで当院での診療を行っていました。身体の炎症は血流が良くなると痛みがひどくなる傾向があります。そのため就寝前のリラックスした中で急に歯が痛くなることも多くあります。そのような夜遅くの急な痛みにも対応できればと思い、現在も23時までの診療を実施しております。
これから力を入れていきたいことはありますか?
日本人の口腔ケアに対する意識を変えていきたいと考えています。アメリカを例に挙げると、富裕層が健康長寿のために最初にするのは口腔ケアだといわれています。また、睡眠時無呼吸症候群の治療を歯科医師が担当するケースも増えているようです。加えて、アメリカは日本のような保険制度がないので、虫歯を治療するのにも数十万円かかってしまう。そうした社会的背景もあって、アメリカでは予防意識が非常に高いのですが、日本は保険のおかげで治療費が安いからか、そもそも口腔ケアに対する意識が低いように感じます。日頃から口腔のメンテナンスをすることは、ひいては健康長寿にもつながっていくことを伝えていきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

痛くなってから歯科医院に行くと、時間もお金もかかってしまいます。何もない時に行けば、診療時間も短く、金額も安く済む。それに歯周病菌が、アルツハイマー型認知症や心臓病、糖尿病、がんなど全身のさまざまな病気を引き起こす恐れがあるという研究報告も発表されています。口腔疾患が他の病気につながること、そして健康長寿にもつながり得る口腔ケアを多くの方に知っていただきたい。この記事を読んだ人は、すぐに歯科医院に予約を入れてほしいと思います。