松谷 英子 院長の独自取材記事
ひらおかデンタルクリニック
(東大阪市/瓢箪山駅)
最終更新日:2025/09/10

瓢箪山駅から徒歩5分の「ひらおかデンタルクリニック」は、口腔を全身の門番と捉え、薬に頼らない医療を提案している。院長の松谷英子先生は、若い頃の自身の歯のトラブルと、それに伴う心身の不調を経験したことから、天然歯の大切さを身を持って実感。さらに、口腔の状態が全身に与える影響の大きさにも気づき、「削らない、抜かない、かぶせない」治療と予防歯科の重要性を強く意識するようになったという。歯科だけでなく心理学についても深く学び、口腔の治療を通して人に寄り添うことをめざす松谷院長。医療人としての誇りや、人の健康を心から願う深い愛情や熱量を感じながら、現在の診療方針や力を入れている治療分野について聞かせてもらった。
(取材日2025年7月17日)
心身ともに迎えた限界を乗り越えて
まずは歯科医師をめざしたきっかけから聞かせてください。

私の祖母が医師、祖父は歯科医師でしたので、幼少時から医療を身近に感じて育ちました。当時はまだ歯科技工士がいない時代。祖父が義歯を作っている姿を見て憧れていたこともあり、全寮制の歯科大学に進学しました。実は学生時代はバスケットボールばかりしていました(笑)。ただ、私は手先を使う細かい作業が好きで、小学生の頃からミシンを使いポーチや袋を手作りしたり、祖父と一緒に陶芸をしていました。ですから、いざ歯科医師として働き出すと、手を使う仕事に夢中になりました。
先生ご自身、歯のことで悩まれた経験があるそうですね。
私は幼少時に、祖父に治療をしてもらっていました。ただ、当時の歯科医療は「悪くなった歯は抜く」という考え方が主流で、生えたばかりの歯を失い、口の中は治療だらけの状態に。学生時代には輪郭が変わるほど口腔状態が悪化しただけでなく、原因不明の肩凝りや湿疹など全身に不調が現れるようになり、本当につらい日々を過ごしました。出産時には歯が割れ、インプラント治療を受けた際には1週間以上にわたって激しい嘔吐が続くなど、心身ともに限界を感じるような経験もしました。セカンドオピニオン、サードオピニオンも試みましたが、なかなか改善せず、出口の見えないような思いを抱えていた時期もあります。
そういった経験が、今の診療方針につながっているのでしょうか?

当院のコンセプトは、できる限り「削らない、抜かない、かぶせない」治療です。私はさまざまな歯のトラブルを経験してきましたから、“天然歯に勝るものはない“を、身を持って痛感しています。歯は単に「噛む」ための器官ではなく、心と体の健康、そして人生の質そのものに深く関わるもの。この実感こそが、現在の私の診療の原点になっています。私は20代の頃に、歯の不調が引き金となり、自己コントロールが難しくなるほど悩んだ時期がありました。「どう生きていくか」を真剣に考え、心理カウンセラーの勉強にも没頭しました。そうしてもがいた中でわかったのは「私は、人を元気にしたい」ということ。心を癒やすための仕事に進むことも考えましたが、せっかく得た歯科医師という道を行けば、悩みを抱える人の力になれる。そう確信して、クリニックを開業したのです。
天然歯を守るための予防と咬合治療に注力
実際に診療する際、大切にしていることは何ですか?

私たちが大切にしているのは、悪い部分だけを治療して終わるのではなく、その原因まで丁寧に向き合うことです。例えば虫歯の治療といえば、「削って詰める」「神経を取る」といった処置が一般的です。もちろん、それは必要な治療なのですが、当院ではそれで終わりとは考えていません。虫歯や歯周病には、必ず原因があります。体質や噛み合わせ、メンテナンスの方法、食生活など、患者さんの背景に総合的にアプローチをしなければ、いくら治療しても再発を繰り返してしまいます。この悪循環を断ち切るために必要なのが「予防」という考え方です。歯は一度削れば元には戻りません。どれだけ優れた技術でも、何百万、何千万円払っても、天然歯の機能を完全に再現することはできないのです。だからこそ、当院を受診いただいた患者さんには「予防」について、しっかりとご理解いただくよう努めています。
予防歯科について詳しく聞かせてください。
当院ではまず、唾液の酸化度測定と、口腔内の細菌を調べる位相差顕微鏡をしています。全身の病気に口腔内細菌が関与していることを知らない方が多いので、自身の口腔内細菌をリアルに見ることで自覚させ、正しい口腔ケアができるように指導しています。定期検診では口腔ケアのみならず、噛み合わせ、舌の可動域や口腔周囲筋の状態、姿勢、食事や全身のケアについてもたくさんのアドバイスをしています。歯周病治療にも重点を置きつつ、歯石取りも実施。予防歯科の目的は、虫歯を見つけることだけでなく、患者さんを「病気にさせない」こと。つまりお口を健康にし、生活習慣を正し、心身ともに元気になってもらうこと。残念ながら日本は、先進国の中でも歯並びが悪く、虫歯や歯周病の罹患率が高い。そのような現状を変えていきたいと予防に取り組んでいます。
噛み合わせ治療にも尽力されているそうですね。

自覚がなくても、噛み合わせの位置がずれている人が非常に多いです。歯を抜いたり削ったりすると、それがわずかな変化でも接触位置がずれ、噛み合わせに影響します。そのため当院では、口腔写真やエックス線検査による分析だけでなく、首・肩・顔の触診も行っています。噛み合わせに問題がある方の8割の方は、首や肩、背中の筋肉が適度に緊張している状態。特に、口を閉じたときに一部の歯だけが早く接触する「早期接触」や、歯を左右にギリギリと動かしたときに引っかかりを感じる場合は、歯に大きな負担がかかり、歯を喪失する恐れがあります。その場合は、噛み合わせの微細な部分まで丁寧に確認し、必要に応じて咬合の調整を行います。1人1回の診療に要する時間は1~2時間。天然歯を残すにも治療をするにも、まずは土台部分をしっかり整えることが大切になります。
歯と口もとを通じて体を健康に、人生を豊かにしたい
子どもの口腔機能訓練法とはどのようなものですか?

口の中には歯、中央に大きな舌筋、周りには口腔周囲筋があり、これらは三位一体です。現代は子どもだけでなく、すべての世代で噛むことが減り、舌が下方に落ち込み、口唇力も弱い傾向にあります。実際、口唇閉鎖力を測定すると、唇を閉じていられない口呼吸の子、奥歯でしっかりと噛めない子どもが多いのが現状です。口唇閉鎖力が弱いと、歯並びが悪くなるだけでなく、鼻呼吸ができなくなり、アレルギーや集中力の低下を招くことがあります。当院では、MFT(口腔筋機能療法)で機能訓練を行い、口腔周囲筋や噛む力を鍛えていきます。
治療する際は、見た目の美しさも重視されているそうですね。
歯の治療を通した心身のトータルケアを目標にしていますから、見た目もかなり重要視しています。美しく健康な歯は、機能面に優れているのはもちろんのこと、自信や笑顔もつくり出します。当院では仮歯の作製時から美しさにもこだわっていますし、入れ歯治療やホワイトニングも得意としています。矯正も非抜歯であり、機能的な改善を重視しています。口元は表情や輪郭にも影響しますし、鼻中隔が広がれば睡眠時無呼吸症候群や鼻炎、頭痛の改善もめざせます。口腔内環境を整えることは、将来的に寝たきりや認知症を回避するためにも大切です。患者さんとの共同作業で、美しさと健康な人生を一緒にめざしています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

歯科と医科を切り離して考える人が多いですが、どちらも体内の臓器や機能面でつながっています。部分だけを治療しても、根本的な治療にはなりません。口腔は、生命を維持するための酸素や栄養を取り入れ、言葉を発する重要な場所です。口を健康にすることは体全体を健康に導き、心も人生も豊かにすることにつながります。ですから、患者さんには「自分の体と対話し、自分の主治医になってください」と伝えています。肩凝りや疲れ、頭痛などを年のせいにせず、不調があればその原因を突き止め、自己免疫力を上げる習慣を身につけてもらいます。「噛み合わせを診てもらおう」「食べ物や食いしばりに気をつけてみよう」と、患者さんの意識を変えることも歯科医院の大切な役目。今後もさらに、患者さんのためになる情報を発信していきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とはホワイトニング/6000円~、矯正/3万円~、小児矯正/3万円~(症例による)、床矯正/40万円~、審美性を重視した入れ歯/8万円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。