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野本文子 院長の独自取材記事

医療法人社団友輝会 ひのわクリニック鶴見

(横浜市鶴見区/鶴見駅)

最終更新日:2020/04/01

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鶴見駅から少し離れた住宅地の中にある「医療法人社団友輝会 ひのわクリニック鶴見」は、2014年3月に開業。一般内科、専門外来から、訪問診療など幅広く対応している。中でも院長の野本文子先生が力を入れているのが、外来での糖尿病をはじめとした慢性疾患のコントロールと訪問診療だ。元々は循環器が専門の野本院長だが、専門にとらわれることなくこれまで勤務した病院やクリニックで学んだ専門知識や経験を生かして、身近で何でも相談できるクリニックをめざす。おだやかな笑顔がすてきな野本先生。ざっくばらんに地域連携の重要さや訪問診療について語る言葉や表情からは、人としての温かさや優しさが滲み出ている。自然に話に引き込まれて「この先生に頼りたい」と思わせる、そんな魅力を持った野本先生に、開業の経緯や診療モットー、患者や家族への思いのほか、今後の展望までたっぷりと語っていただいた。
(取材日2014年10月27日)

外来診療と訪問診療を柱に点から線へ、線から面へと広がる医療を

開業から半年が経ち、そろそろ落ち着いて来られた頃でしょうか?

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そうですね。通りに面した一階にあるのでどんな様子かのぞいていく人もいて、少しずつ地域の皆さんに知っていただけているようです。私は、一昨年まで総合病院で救急医療を行っていましたが、縁あって在宅診療のクリニックに職場を移し、在宅診療のお手伝いをしてきました。その時思ったのが、救急で診ている患者さんは「点」だということ。入院される患者さんは、病院ではみんな同じような部屋で、同じようなベッドで、決まった時間に食事を摂り、決まった時間に回診していきますが、退院後、患者さんがお家に帰ってどんな生活をしているのかが病院の中からは見えてきません。でも、その患者さんが私の外来に引き続き通院するようになると、「点」がつながって「線」になっていきます。そして、在宅診療は生活の中で医療を受けながら頑張って暮らしていくために、線を「立体(現実の生活)」にしていく物であり、「立体」の医療をベースに、私たちがどうやって支えていくかというところが、今まで17年間、病院の中で走り続けてきた医療とは少し違うところかもしれませんが、新しいことも多く楽しみながらやっています。

クリニックの外来、訪問診療それぞれの特徴を教えてください。

外来では生活習慣病など慢性疾患全般の診療を中心に、合併症も含めてどのようにコントロールしていくかをコンセプトとしています。私は元々循環器内科が専門なのですが、以前から糖尿病について勉強し、そこから内科全般に診療の幅を広げてきました。というのは、糖尿病の人で喫煙の習慣がある場合、それが原因で肺気腫が起こるといったことも多く、体全身の管理が非常に重要になります。「この病気を専門に診る」ということではなく、トータルで健康管理のお手伝いをしていきたいと考えています。糖尿病は若い人ほどきちんと治療をしてほしいものです。忙しくて治療を中断してしまい数年後に悪化して救急車で運ばれてくる人もいますから、どうにか、病院よりも敷居が高くないクリニックで治療を続けていただけるようにしていきたいです。訪問診療については、病院に来るのが困難な人や病院の待ち時間がつらいという人のために、病院と変わらない質の医療を提供したいという思いで取り組んでおり、基本的には慢性疾患と準急性期の診療を行っています。

内科の診療以外にも緩和ケアや慢性閉塞性肺疾患など専門性の高い診療をされていますね。

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これまでの約20年間、必ずしも今ある状態をめざして過ごしてきたわけではないのですが、結果的に振り返ってみれば、10年間急性期医療に奔走し、その後糖尿病の勉強をし、一般病院に移ってがんの患者さんと向き合うことで、緩和ケアについて学びました。自宅に帰ってからの緩和ケアは病院での緩和ケアとはまた違っていますので、ご家族への対応も含めてしっかりと取り組んでいきたい分野の一つです。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や呼吸器系の疾患については元々、循環器内科だから心臓だけを診て肺を診なくて済むということではありませんし、認知症などは全身と関係がありますから、全身を診ながら管理をすることで知識を身につけてきました。あとは救急にいたことでさまざまな症例も経験しましたし、何を見ても驚かなくなったので、たいていの症状については幅広く対応できると考えています。

生活の中で行われる在宅医療。患者と家族それぞれの思いに寄り添う

地域連携にも積極的だと伺いました。

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先日、地域のケアマネージャーさんをお招きして院内勉強会を行いました。数名でしたが地域住民の方も参加していただき、そこから始まって町内会の集まりでお話をすることになりました。初めは地域の人とどう関わっていくか、そのきっかけがなかなか掴めませんでしたね。マンションにお住まいの方は日中お留守ですし、お年寄りも在宅診療が必要な歩けなくなってしまったような人はお家から出ませんから、どこにどうアプローチしていいかわからないような状態だったのですが、ようやく半年経って動き出しました。外来の患者さん向けの勉強会では、病気についての情報をわかりやすく発信していくことを目的としています。ここは少し下町に似た雰囲気の町なので、気軽に参加していただき、病気や予防について知ることで健康に興味を持っていただければ嬉しいです。訪問診療の関係者向けの勉強会は、ケアマネージャーさん対象のレクチャーのほか、ケアマネージャーさんから話をしていただくという形になると思います。地域のさまざまな立場の人と連携を取ることで、皆が知っておいたほうがいい情報を遅延なく伝わるようにすることで、円滑な訪問診療を行えればと思っています。

先生が日々の診療で大切にしていることは何ですか?

しゃべりたいだけ患者さんに話していただくことですね。救急をやっていたときとの一番の違いは待つということでしょうか。患者さんは言いたいことを一度にではなく、少しずつと話されるので、こちらから聞きたいことがあってもあと数秒黙ることを意識して、自発的に話をしてくれるような空気を大切にしています。もちろん、話が進まないときには質問形式でこちらから投げかけるのですが、こちらがせっかちに話かけても本当の要望にたどり着くまで時間がかかりますし、後々出てくるバックグラウンドのほうが重要だということもあるので、基本的には相手が話し出すまで待ち、まだ何か言いたそうだと感じたら黙って聞いているようにしています。特に漢方の相談に来る人は主訴を最初に言わない人も多く、眠れないと言っている人の中には、心療内科で処方されたたくさんの薬を飲んでいてびっくりすることも。それに対して、いくつかのクリニックを転々としてから当院にたどり着いた人も少なくありません。病院での診療であれば、胸が痛いので循環器に、お腹が痛いので消化器にとある程度振り分けられていますが、クリニックでは、問診票に書かれた症状と実際に聞く症状が違うこともよくあります。ですから、男女問わずなぜここへいらしたのかを知るために時間をかけて患者さんの話に耳を傾けるようにしています。

では、訪問診療の現場で気を付けていることはありますか?

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訪問診療のベテランの先生のところへ研修にいくと色々なスタイルがあり、徹底している先生の中には、“主役は患者さんであってご家族ではない”という考えの先生もいらっしゃいます。もちろんそれも間違いではありません。医師として患者さんに医療を提供し、生活のことはヘルパーさんたちに任せてもよいと思うのですが、在宅医療というのは生活の場であるお家の中で行われる物であり、患者さんご本人の思いとご家族の思いが違っていることもあります。病院にいる人たちや外来に来る人たちには医療がメインであるのに比べ、在宅ではまず生活があり、そこでどうやって療養を続け、医療従事者が関わっていけるかだと考えます。ちょっと主役がぼやけるというか主役が複数になるといった感じでしょうか。生活やご家族の意向を無視して在宅医療は成り立たちません。ですから私はなるべくご家族の思いを聞いて、患者さんが家にいたいと思い、ご家族がそうしてあげたいのであれば、それに寄り添う医療を提供することが私たちの仕事と考えています。点滴を内服薬に変えたり、食事の形態を変えたり、どこまでが医師の仕事なのかというとその線引きは難しいのですが、人の家に一歩入ってしまったからには、やはりご家族を無視できませんよね。ご家族が介護疲れしないように、“病気になってもこの人が家にいてくれてよかった”と思えるようにしないと、在宅療養をしている意味がなくなりますから。

地域が一つになって「生活ありきの医療」に取り組めるように

ところで、先生が医師をめざしたきっかけは何だったのですか?

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10歳の頃に二か月ほど入院したことがあり、その辺りから医師という職業を意識し始めました。あまり強い思い入れがあったわけではないのですが、小学校の卒業文集には「医師になる」と書いていましたね。ですが、高校3年生の秋に祖父が肝臓がんで亡くなったときに、色々と思うことがありつつその後時間が経ち、両親からの「人のためになることを何かしなさい」という言葉で吹っ切れ、医師になることにしました。循環器を専門にしたのは、大学4年生の授業で心臓という臓器を気に入ったからです。心臓自体はシンプルな臓器です。血液を送るポンプです。だけどそれがないと生きていけない、いのちの最後の砦のようなものですよね。胸が痛い痛いといって救急車で運ばれてきた人が元気に帰るという、自己満足かもしれませんが、あの充足感は何とも言えないものでしたし、大学病院では移植班で心臓移植にも関わり、移植待ちの若い患者さんたちを何人も診てきました。その中で、一人の人間の生死の分かれ目を立ち直らせるということに、とてもやりがいを感じていました。ベッドで寝ている姿しか見たことのなかった人の心臓移植が成功して、数ヵ月後に会ったときにはその人が立っていたということも。数か月前までは体重計に乗るのが精一杯だった人が、点滴もなくベッドの横に普通に立っているのを見たときは、本当に循環器をやっていてよかったと思いましたね。

心臓移植など循環器医としての高度な治療への未練はなかったのですか?

以前、救急の現場にいたときは、よくなると近くのクリニックにその後の診療はお願いしていたので、結局、継続してその人がどうなったかというのはわからないままでした。でも、病院で治療を受けた後も生活が続いていき、そこからのほうが長いわけですよね。人はその後も生きていきますし、また病気になるかもしれない。そんなふうに考えると私が関わった部分はすごく狭い領域でしかいないと思った時期もありました。今後は、循環器の症状を診る機会は少ないかもしれませんが、終末期を含めた医療に取り組み、痛い、苦しいと言った症状をなんとかしてあげる、その人にとっての急性期をどう治療していくかという 、在宅総合診療医をめざしていきます。

最後に、今後のクリニックの展望と読者へのメッセージをお願いします。

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今後は、地域全体が一つの「生活ありきの病院」になるような状況を整え、家で普通に暮らしながら医療が受けられるようにしていきたいですね。そのためには情報共有、そして、連携の密度が重要になってきます。かゆいところに手が届かないことがまだまだたくさんあるので、地域に関わる皆さんと協力しあい、少しずつでも進めていきたいと考えています。私個人の目標はやはり患者さんの期待を裏切らない医師であり続けることでしょうか。簡単ではないと思いますが、頑張ります。ご近所にお住まいの方は、何か気になることがあればどんな小さなことでも相談にきてください。ご家族の相談に来られたとき用の相談室も設けています。ご自身の不調を感じたとき、ご家族の事で相談があるとき、医療の分野で解決できるのか、介護に関係しているのかわからないこともたくさんあると思うので、些細なことでもお気軽にいらしてくださればと思います。

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