荒川 泰秀 院長の独自取材記事
横須賀ファースト歯科クリニック
(横須賀市/堀ノ内駅)
最終更新日:2024/10/30
神奈川県横須賀市、京急本線・堀ノ内駅から徒歩5分。海に程近い住宅地にあるのが「横須賀ファースト歯科クリニック」だ。院長である荒川泰秀先生は神奈川歯科大学を卒業後、歯周病治療において研鑽を積み、2021年に先代院長の父よりクリニックを継承。以来、患者一人ひとりの思いに寄り添い、歯周病によって歯を失わないためのアプローチを続けている。父から引き継いだ「横須賀ファースト」と冠したクリニック名は、横須賀生まれ横須賀育ちの荒川院長にとって「しっくりくる」ものだと言う。地域に育てられ、これからも地元のためにより良い歯科医療を提供していこうとする荒川院長に、クリニックの診療内容や患者への思いについて話を聞いた。
(取材日2024年10月8日)
憧れから継承へ。父の背中を追いかけて
お父さまからクリニックをご継承されたそうですが、どのような経緯だったのでしょうか。
3年前に父が急逝し、それをきっかけに父が診療を続けてきたこのクリニックを継ぐことになりました。当時僕は大学病院に勤務しており、かなりドタバタとした中での継承でした。それまでも週に1度、大学病院が休みの日にクリニックの診療を手伝っていましたが、いざ継承するとなった時は正直不安でしたね。父を慕って来てくださる多くの患者さんが、僕の代になっても通い続けてくれるだろうか、まだ若い自分の技術が追いつくのだろうか、そういった心配がありました。しかし外勤の先生や昔からの患者さんもいい方ばかりで、本当に助けていただいて。運が良かったと感謝しています。
先生が歯科医師をめざされたのはどういった理由からですか?
幼少期から父の背中を見てきたことで、なんとなく「自分もこうなりたい」とずっと考えてはいました。父は補綴、つまり義歯が専門でした。歯を失って噛めなかった人が再び噛めるように行う治療分野なので、生活の質にも直結した分野なんですね。患者さんに喜んでもらい、それを自分のやりがいや喜びにつなげている父の仕事ぶりが、子どもながらにすごくいいなと思っていました。
お父さまの影響が大きかったんですね。
そうですね。ただ、僕が専門分野として補綴ではなく歯周病を選択したのは、父の頃とは若干時代が変わってきたと思ったからです。かつては「歯がなくて噛めない」という人が多かったんですが、予防のための方法も増え、皆さんの意識も変わってきたこともあり、歯を失うということは昔に比べて格段に少なくなったと思うんです。食事の際の不便さは歯がないことによるものではなく、歯はあるけれどその中の疾患によって起こる不便さのほうが、これからは多くなると考えました。
クリニックの個性を生かした進化と変化を
今年の7月にクリニックを改装されたそうですが、こだわった点はありますか?
父の時代から一台しかユニットを置いていないクリニックでして、そういうマンツーマンのスタイルが僕も好きでした。ただそうなると、急に歯のトラブルが起きた方への対応が難しかったんですね。また「この器具を導入したいな」と考えても置き場がないということもありました。リニューアルしたことでそういったスペースの確保ができましたが、何台も椅子を並べて歯科医師が忙しく治療をして回るというスタイルにもしたくなかったんです。せっかく悩んだ末に来院してくれる患者さん一人ひとりに、きちんと時間をかけて治療していきたいという思いがあったので、今のところ治療のための椅子は2台置いています。今後は検査のための機器や設備を充実させていきたいですね。
来院される患者層はどういった方が多いのでしょうか。
もともとは長年通ってくださっている高齢の患者さんが多かったのですが、リニューアルして外装的に「歯科医院がある」ということがわかりやすくなったのか、20代や30代の方も増えてきました。主訴として多いのはやはり痛みですね。「歯科医院に行こう」という踏ん切りがつくタイミングは、やはり痛みが出た時が多いんですよね。僕自身も歯科の治療を受けたことがあるので、なかなか腰が上がらない患者さんの気持ちはよくわかるのですが、「本当は痛くなる前に来てもらえるともう少し楽に治療が終わりますよ」というお話はさせていただいています。治療が終わった後は定期メンテナンスに通ってくださる方や、お子さんやご主人などを連れて家族ぐるみで通ってくださる方もいて、うれしく思っています。
ご専門である歯周病の治療についてお聞かせください。
歯周病はかなり進行しないとご自身で自覚するのが難しい疾患です。例えば、虫歯が痛くなれば歯科医院には行きますよね。でも歯周病はそんなに痛みは出ないまま病気が進んでしまい、歯がグラグラしてしまってからやっと自覚する。そうなってしまう前の段階で歯科医師が介入する必要があると考えています。虫歯が原因で歯を失う人は年々減ってきていますが、歯周病が原因で歯を失う人はまだまだ多いと思っています。歯並びをはじめとするお口の中の状態は、患者さんお一人お一人異なりますので。それぞれ合ったブラッシング方法やデンタルフロスの使用法があります。しかしそれをきちんと習う機会は少ないですよね。当院では患者さんのセルフケアを充実させるためのアプローチをこれからもしていければと思っています。
患者さんと接する際、どのようなことを心がけていますか?
患者さんご自身の意見をできるだけ引き出したいと思っています。やはり皆さん緊張して来院されていると思うので「本当はやりたいことがあったけど言えずに終わっちゃったな」と思う方も中にはいると思うんです。でも本当に患者さんが思っていることがあるのであれば、遠慮なく「こうしたい」と言えるような環境をつくる必要があります。当院では患者さんが最初に診察室へ入って来た時、雑談でもなんでもできるだけ話をするようにしています。あと、治療中も天気の話や関係のない話を一度挟みます。そうやって患者さんが少しでもリラックスできるような空気をつくってから、「何かご希望はありますか?」とお尋ねすると、患者さんも考えていることを話しやすくなるようです。歯科医師側から提案されると、ついそのまま受け入れてしまう人も多いと思うので、できるだけご本人の希望を引き出すように心がけています。
地域に根差し、患者一人ひとりの思いに寄り添う
先生が診療で大切に考えていることは何ですか?
「いい人」でありたいと思っています。これは歯科医師になったばかりの頃、勤務先の先生に「いい歯科医師になるためには、まずいい人でなければいけない」と言われたことでもあります。もちろんいい歯科医師であることは重要なことですが、患者さんと歯科医師という立場であっても、大切なのは人対人であることだと考えています。患者さんの不安な気持ちを聞くことで安心してもらったり、急な痛みに困っている場合は予約外でも来てもらって処置をしたり、こうした日々の診療の根底には患者さんへの共感が不可欠です。僕自身が患者として歯科の治療を受けてきた経験を生かし、「わかります。あれはつらいですよね」と、共感していることをお伝えするようにもしています。また、「僕の場合はこのようになりました」と話すことで、経過をなんとなく理解してもらい安心してもらえるよう心がけています。
患者さんと接する中で印象的だったエピソードはありますか?
僕がクリニックを継いだ時、父の代からの通ってくださっている高齢の患者さんに「これから20年でも30年でも安心して通えるようになった」と言っていただいたことです。クリニックを継承して不安だった僕にとって、この言葉はうれしかったですね。当院では外来診療だけでなく訪問診療も行っていて、義歯の作製、調整なども行っています。訪問診療の患者さんはご高齢で全身状態が悪いことも多いのですが、まずはしっかり食べられるようなお口の環境づくりを通して、健康をサポートしていきたいと思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
今のところ外来診療も訪問診療も僕が診ていますので、訪問診療については予約の時間がシビアになってしまいがちなんです。でも今後は僕が訪問診療に行っている間も外来で急患の対応ができるようにしたり、逆に外来が入っていても急な訪問診療に対応できるようにしたり、ということが可能になればと思っています。大きい歯科医院にはしたくないですが、機器も充実させて「小さいけれど高性能なクリニック」をめざしています。今後も「横須賀ファースト」というクリニック名のとおり地域を大切にしながら医療を提供していきたいです。