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船山 正 院長の独自取材記事

船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス

(名古屋市西区/名古屋駅)

最終更新日:2023/11/24

船山正院長 船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス main

名古屋駅から徒歩10分。「船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス」は2013年12月に開業した新しいクリニックだ。院長の船山正先生は、初対面でも話しやすい、柔和な雰囲気の精神科ドクター。スタッフは、船山先生と名古屋市立大学時代から約15年の付き合いになる臨床心理士をはじめ、全員ベテランで丁寧な対応をしてくれる。当時の患者170人ほどが船山先生を慕い今も心のメンテナンスに訪れている。インタビューでは幼い息子と過ごす休日を大切にするマイホームパパの一面を見せてくれた船山先生に、認知行動療法をはじめとした同院での診療を詳しく聞いた。

(取材日2016年5月23日)

認知行動療法の研究を基礎に、開業医としての今がある

最初に、開業までのご経歴を教えていただけますか。

船山正院長 船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス1

名古屋市立大学を卒業してから、同大の精神医学教室で2年間初期研修をした後、瀬戸の病院に2年間赴任していました。その翌年に、天白区にある精神科病院の八事病院に勤務しながら、名市大の大学院に入りました。大学院の4年間のうち、前半の2年は八事病院に在籍しながら週に1回大学に行き、後半2年は主に大学に籍を置いて研究をしていましたね。大学院では認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)の研究をしていて、具体的にはパニック障害と、対人恐怖症の一つである社交不安障害の、2つのグループの認知行動療法を担当していました。患者さん3人に、治療者が2人ついての治療を毎週2時間、16回連続して行うなどして、多くの治療に携わりました。その時に勉強してきたことが基礎となり、今があると思っていますよ。

開業の際、どのような点にこだわりましたか?

当院は2013年の12月に開業したのですが、その2年ほど前から企画を考えていたんです。設計会社さんと相談をして、僕がやろうとしているコンセプトに合わせてデザインを提案してもらい、つくっていただきました。1、2階の診療フロアの部分は、居心地はいいけれども日常ではない空間にしたくて、あえて床も壁も真っ白の無機質にしています。その非日常の中にファブリックのオレンジのソファーという、日常で安心できるものを配置しました。ホームページに関しても、あえて一般的な医療のものにはせず、業者さんにゼロからお付き合いいただいて作ってもらいました。文章も全部自分で書いて、実際の患者さんの声を参考に作成した困り事リストを掲載しています。「自分が困っていることの解決策がここにある」と感じていただけるように、作ったつもりです。実際に、ほとんどの方がホームページを見てから来てくださっています。

患者さんの層について教えていただけますか?

船山正院長 船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス2

この地域自体は円頓寺商店街も近く、空襲で焼け残った古い長屋が立ち並ぶなど、徳川の時代から続く古い歴史のある場所なんです。ですから住民はご高齢の方が多いのですが、クリニックにいらっしゃるのは平均で30代前半の若い方が多いですね。ご近隣の方もいらっしゃいますが、再開発で最近できたマンションの方、特にIT系やオフィスワークの方が多い印象があります。患者さんの悩みで多いのは、うつ病。「どうも自分が思ったようにできない」という悩みで来院される方が多いです。

良質なカウンセリングがあってこその投薬治療

ご専門である認知行動療法について、詳しくお聞かせください。

船山正院長 船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス3

認知行動療法というのは、患者さんが抱えている問題を患者さん目線で一緒に考えて、どういうふうに変えていくかを一緒に考えて行動する治療法です。認知行動療法では治療者の役割はパートナーであり、答えを与える人ではありません。「行動」「身体」「考え」「感情」の4つの構成要素に患者さん自身が注目をするように誘導していきます。大事なのは、この4つの要素の関係性です。行動を変えれば考えが変わるかもしれないし、考えが変われば前向きな行動が出てくるかもしれない。するといつもドキドキしてしまうような体の反応も減るかもしれない。このように要素ごとの関係性を考えて、試しにでも動かしてみるわけです。段階をつくって目標を設定し、実際に行動をしてもらって感想を聞く、というふうに治療を進めていきます。

クリニックでの具体的な診療やカウンセリングについて教えてください。

当院は1、2階が診療を行うフロア、3、4階が臨床心理士によるカウンセリングを行うフロアに分かれています。精神科診療の診察は5分枠なのですが、カウンセリングは当院の場合、30分枠になりますから、物理的な量としてやれることが違いますよね。またそれと並行して、薬での治療も大切だと考えています。今の薬は、おそらく皆さんが思われている以上に効果が期待できます。認知行動療法にはどうしても時間が必要ですから、治療法で考えると、薬で改善が望める人は圧倒的に多いのですよ。薬などによる治療と良質なカウンセリング、両方を並行することが大切だと考えていますよ。

診療で特に心がけていることはありますか?

船山正院長 船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス4

いろいろとあるのですが、安易な共感をしないことです。例えば1分間話を聞きかじって、「それは大変ですね」と話すのは簡単なことです。でも大変だろうなと腑に落ちるところまでしっかりとお話を聞いて共感しなければ、信頼関係は成り立ちません。精神科の初診は30分ですが、10分以上聞かないと、患者さんのつらさはわかりません。また、ただ話を聞いているだけでわかるものでもなくて、その時にどういうことがあって、どう思ったかなどについても共有していかないと、やはり共感には至りません。共感ができるように聞くというのは、適切な診断に必要な情報を手に入れることでもあります。共感の言葉が軽々しく聞こえないように、意識していますね。

認知行動療法の要素を、より広く患者に届けたい

先生はなぜ精神科医を志されたのでしょうか?

船山正院長 船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス5

はっきりと、これといった理由があるわけではないのですが、高校2年生くらいから精神科医になろうと思っていましたね。当時の僕にはとても不思議に思っていたことがあって、例えばAさんとBさんの意見がそれぞれ同意できるものであるのに、その2人の意見の内容は相いれないものだったりするわけです。AとB、それぞれオッケーならば、お互いにオッケーになるはずなのに衝突する。なぜそんなことが起こるのか、不思議でしかたなかった。そういう人の気持ちの不思議さを感じていたのと、実家が歯科の開業医だったこともあり、医療が身近にあったので、精神科医を志すようになったのだと思います。

これまでの診療を通じて、印象深い患者さんはいらっしゃいますか?

個別の患者さんではないのですが、社交不安障害の患者さんは疫学調査上、病気を患っている期間が平均で20年を超えています。これはつまり、治療をしないと治癒が望めないことを意味しています。大学院ではそのグループ療法を担当していたわけですが、対人関係の緊張といった問題で、学業や友達関係を諦めてしまっていた方の治療に携わった時のことはよく覚えています。僕の専門分野というパーソナルな部分が、ジェネラルに多くの人の役に立ち、患者さんの満足につながっていたらうれしいですね。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

船山正院長 船山メンタルクリニック/カウンセリングオフィス6

認知行動療法の4つの要素を患者さん一人ひとりに届けられるよう、より質の高い、包括的な医療をめざしたいですね。つまり薬も必要であり、カウンセリング技術も必要なのですが、そのカウンセリング技術をより使いやすいような方法で、認知行動療法ではない普通の診療にも取り入れられないかと考えています。当院では患者さんのアフターフォローも行っているのですが、ある患者さんが、クリニックに通うことを「美容院に行くようなものです」と言ってくださいました。ご自身のメンテナンスとしていらっしゃっているということですね。当院のコンセプトは「ご自分が困っていることの中に答えがある」。いきなり薬をどっさり出すようなことはありませんから、気軽に来ていただいて、直接お話をして一緒に解決方法を見つけていきましょう。

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