中平 陽 院長の独自取材記事
中平矯正歯科クリニック
(香芝市/五位堂駅)
最終更新日:2024/12/02

近鉄大阪線五位堂駅から徒歩3分ほど。「中平矯正歯科クリニック」は県道に面し、広い駐車場がある。院長の中平陽先生は大学院を修了後、近畿エリアの矯正専門の歯科医院で経験を重ね、2013年に開業。出っ歯やでこぼこ、受け口などの噛み合わせの悪い患者に手を差し伸べている。顎を広げ骨格からアプローチする治療に重点を置いている。結果として、内側に倒れたり外側に傾いている奥歯をまっすぐにすることで、「50年後、60年後もしっかりと噛めることをめざしています」と話す中平院長。落ち着いた雰囲気で静かに語る様子に、誠実で治療にまっすぐに向き合う意思が伝わってくる。同院で行われる歯科医療について、じっくり話を聞いた。
(取材日2024年10月23日)
骨格からアプローチする歯列矯正に力を入れる
この地域に開業されたきっかけは何ですか。

近鉄大阪線の五位堂駅からすぐなので、立地がいいなと思いました。近くにニュータウンがあり、若い世代のご家庭が多い地域であることも決め手になりました。私が力を入れて取り組んでいる歯列矯正は年齢層が低いこともあって、患者さんは小学生が一番多いですね。
こちらで行われる歯列矯正の特徴を教えてください。
成長に合わせた矯正を行い、成長をより良い方向に向けることをめざしています。顎の成長を適切に導く装置を使って治療します。子どもの矯正は5~6歳ぐらいから始めて、永久歯が生えそろう頃に終了します。当院には中高生はもちろん、成人の患者さんもいらっしゃいますが、そのくらいの年代ではワイヤーと拡大装置を組み合わせて行います。拡大矯正をすると、抜歯をしなくて済むことが見込めます。ただし、永久歯が全部生えそろうと難しくなりますので、成人では、拡大しても、抜歯をすることが多くなります。
拡大矯正について、もう少し詳しく教えてください。

当院では、奥歯が真っ直ぐ噛める状態をめざしています。そのため、歯一本一本を動かす矯正ではなく、必要に応じて顎を広げることで全体のバランスを整える方法を採用しています。特に歯並びに問題がある方は、下の奥歯が内側に倒れ、上の奥歯が外側に傾いていることが多いです。この状態で噛み続けると、奥歯の傾きがさらに進行してしまいます。そのため、下の奥歯を起こし、上の奥歯を内側に戻すように導くことが重要です。当院では、固定式の拡大装置を用いて顎を広げ、上下の奥歯が真っ直ぐに噛める状態をめざしています。実際、奥歯がまったく傾いていない方はとても少ないです。ほとんどの方に、奥歯に多少の傾きが見られますが、その程度によって矯正治療が必要かどうかを判断しています。
奥歯が傾く理由は何ですか。予防にはどうすればいいですか?
しっかり噛んで食べていないことが原因でしょうか。やわらかく加工された食品を、噛まずに飲み物で流し込んで食べていると、顎は発達しません。矯正をしなくても歯並びがもともときれいな方がいらっしゃいますが、そういう人は、小さい時から硬い物をよく噛んでいて、口の機能が正常に発達しているからだと思います。
骨格へのアプローチが呼吸にも関連
顎の骨を拡大するための矯正は、患者さんへの負担はどんなものなのでしょうか。

患者さんの負担はけっこうあると思います。食べ物が引っかかりやすかったり、人によっては少し痛みを感じたりする場合もあるかもしれません。歯並びはただ歯だけの問題ではありません。骨格の問題も大きく関係しています。骨格に問題があるということは、その後の成長に対しても問題が出てくる可能性があります。例えば受け口の傾向があると、それがもっとひどくなるかもしれません。子どもの時の小さなずれは、大人になったら大きなゆがみになり得ますからね。得られる治療効果は大きなものになる可能性はありますが、大がかりな矯正ですので、矯正を始める前にお子さんご本人とご家族が方針について十分理解してもらうことを重視しています。なので、問診と方針の話をする初診時は、1時間半くらいかけてカウンセリングしていますね。
装置はどのくらいの期間つけているのですか。
小学生のお子さんが始められた場合、基本的には永久歯に全部生え替わるまでが治療期間です。その間ずっと装置をつけているわけではありませんが、だいたい12歳くらいまででしょうか。乳歯の時期に広げると安定性が望めますね。永久歯に生え替わる時期は矯正を進めることができないので、いったん外して休憩します。それ以外でも、経過観察で装置を外して様子を見ている時期もあります。成人の患者さんの場合は、拡大後にすぐにワイヤー矯正に移行しますが、通常の矯正治療同様に3年ぐらいは装着が必要となります。
呼吸に関しても、問題を抱える患者さんが受診されていると聞きました。

最近のお子さんは、口をポカンと開けて口呼吸している子が多いですね。顎の成長を促し口腔内を広げるための矯正をすることは、鼻腔通気の改善につながり、ひいては口呼吸の改善も期待できるのではないかと思います。扁桃腺が腫れる咽頭扁桃炎という病気があるのですが、これは口呼吸が原因で起こることが多いです。耳鼻咽喉科ではアデノイドがひどい場合、扁桃を摘出する手術を行いますが、口腔内を広げるよう促すことで口呼吸の改善につながれば、手術をしなくても咽頭扁桃炎が軽快する可能性が期待できます。また、夜にいびきをかき、昼間眠そうな睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるお子さんにも、お勧めできます。現状では睡眠時無呼吸症候群の場合、CPAP療法や、扁桃摘出など外科的処置が主流ですが、最近は歯科からのアプローチも注目されるようになってきていますね。
健康な口腔環境が高齢者の健康の鍵に
最近気になる患者さんのお口のトラブルなどはありますか。

高齢者の口腔機能低下症という病気ですね。老化はすべての人に必ず起こることなので、子どもの時にどれだけ口腔機能を高めておけるかがその後の人生に重要になってくると思います。もともとのポテンシャルが高い場合、多少機能が落ちていっても問題になりにくいという考え方ですね。食生活が悪いと、2世代で歯並びに問題が出てしまうといわれています。ある人類学者の先生は「昔のポリネシア人は立派な歯並びだった。近代食を取り始めてから体が退化している」という研究報告を発表しています。日本で今、「食事を昔の食生活に変えましょう」と急にいっても無理でしょう。口腔を広げるための矯正を行い、その後はよく噛む生活を心がけていけば、体の退化の軽減も見込めるのではないかと私は考えています。
診療のスタンスについて教えてください。
矯正が保険適用ではないように、歯並びは見た目だけの問題だと捉えられがちですが、そうではありません。矯正歯科の問診表では「口呼吸する」、「いびきをかく」などの項目があるように、歯並びは将来の健康にも関わっています。それらに対してアプローチせずに美容面だけに着目した矯正歯科もあるかもしれませんが、当院では機能面の改善を主眼とした矯正を行っています。機能と形態は表裏一体です。「機能美」という言葉があるように、形だけが良くて機能が悪い、あるいは機能が良いのに形が悪い、ということは本来ないと考えます。その両立をめざしましょうというスタンスで診療をしています。口腔内に舌がゆったりと入るスペースができていないと舌を突き出す癖が生じ、舌が歯を押すと口元の突出や横顔の印象にも影響が出てしまいます。口腔内を広げる矯正を行うと、その予防にもつながります。そういった観点を重視した診療をこれからも続けたいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

奥歯が倒れた状態ですと咬合崩壊のリスクがあり、その奥歯をまっすぐに導くことは、50年後、60年後にもしっかり機能し老化を防ぐことにもつながると考えています。歯はもともと、横からの力には弱いのですが、縦からの力に強いのです。歯が倒れた状態で噛み続けるのと、まっすぐになった状態で噛み続けるのとでは、将来が大きく変わるでしょう。実際、歯周病の患者さんは奥歯が倒れていることが多いです。長く健康で暮らし続けるにはきちんと食べられること、噛めることが不可欠です。それを真っすぐな奥歯が支えているのです。そういった口腔内へ子どものうちに実現を図って、皆さんの健康をずっと先まで支えていきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児矯正/44万円~、成人矯正/88万円~
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。