福泉 憲治 院長の独自取材記事
福泉歯科医院
(福岡市中央区/薬院駅)
最終更新日:2025/05/02

薬院駅より徒歩約3分の場所にある「福泉歯科医院」は、地域に根差した診療を続ける、昔ながらの歯科医院だ。長年付き合いのある患者も多く、一人ひとりの声に丁寧に耳を傾けながら、その人に合った治療の提供に努めている。福泉憲治院長は、福岡歯科大学で歯周病を専門的に学び、卒業後は親戚の歯科医院での勤務などを経て、父が営んでいた内科医院のスペースを活用する形で開業したという。全身の健康状態への配慮を欠かさず、必要に応じて他科との連携も行いながら、全身の健康まで見据えた歯科医療の提供をめざしている。日々の診療では「できることを着実に積み重ねながら、地域の方の支えになれたら」と静かに語る姿から、控えめで誠実な人柄が垣間見える。そんな福泉院長に、診療において大切にしている思いを中心に、話を聞いた。
(取材日2025年4月8日)
全身の健康と口の中の健康を、ともに診ていく
歯科医師を志したきっかけと、開業するまでの経緯を教えてください。

もともと祖父が歯科医師、父は内科医として地域で診療を続けており、身近に医療人が多い環境だったため、自然と医療の道を志すようになりました。中でも、手を動かして何かを作ることが好きだったので、歯科医師という職業に惹かれていったように思います。福岡歯科大学に進学後、大学院に進んで歯周病の教室で学びを深めました。その後は親戚の歯科医院で経験を積み、父が営んでいた内科クリニックのスペースを活用し、現在の「福泉歯科医院」を開業しました。開業当初から、内科と歯科が連携できることで、より多角的に患者さんの健康を支えられる環境だったと思います。すでに内科は閉業していますが、今でもお口の中だけでなく、全身の状態も考慮しながら診療する姿勢は、変わらず大切にしています。
診療において、大切にしていることは何ですか?
診療の中で一番大切にしているのは、「患者さんの声に耳を傾けること」です。治療を始める前に、どんな悩みを抱えて来院されたのか、どんなご希望があるのかをきちんと伺うようにしています。無理に治療を押しつけることはせず、できる限り患者さんの思いに寄り添う形で選択肢を提案しています。また、話をする際は患者さんの正面ではなく、なるべく横に並んで話をするなど、心理的な距離が近くなりすぎないように配慮しています。日頃から同じ目の高さで話すことが、安心して治療に向き合ってもらうための第一歩だと思っているからです。治療に入る前には、回数や流れについても説明します。「いつの間にか削られていた」といった不安が起こらないように努めています。
昔から通っている患者さんが多いと伺いました。

はい。ゆっくりと丁寧に診てほしいと希望される方や、じっくり話をしながら治療を進めたいという方が多い印象です。お薬を複数服用されていたり、持病があったりと、全身の状態にも配慮が必要なケースもあるため、できる限り個別の事情をくみ取りながら治療計画を立てています。最近では、近所の方や、かつてこの地域に住んでいたという理由で来られる方もいますね。急な痛みや入れ歯の不調といったご相談も多く、インターネットで当院を見つけて来る方もいらっしゃいます。患者さんのご希望にすべて応えられるわけではありませんが、お口の状態や治療の選択肢について丁寧に説明し、「こういう場合は通院が必要になりますが、こういう進め方もあります」というように、選択肢を提示できるように努めています。
患者に十分な選択肢を提示する診療を心がける
虫歯や歯周病の治療では、どのような相談が多いですか?

歯がしみる・歯茎が腫れている・入れ歯が合わないなど、さまざまなお悩みがありますが、高齢の方が多いこともあり、歯周病のご相談が目立ちます。中には、長年使っている義歯が劣化してきた、という相談を受けることもありますね。また、知覚過敏の症状を虫歯と勘違いされて来院される方もいらっしゃいます。そうした場合は、歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせの影響など、原因を慎重に見極めた上で治療方針を決定します。また、削る治療を避けたいという方も多いため、処置の前に原因や治療の選択肢を丁寧に説明し、患者さんの希望を尊重しています。歯周病については、全身疾患と関わりが深く、持病や服薬の影響が出ることもあります。問診時、生活習慣や全身の健康状態も確認することを大事にしています。
入れ歯や義歯の治療についてはいかがですか?
入れ歯や義歯は食べるために欠かせない大切な道具です。噛み合わせのバランスが崩れるとうまく噛めなくなるだけでなく、肩凝りや顎の痛み、頭痛など、全身の不調につながることもあります。そのため、調整の際は話を聞きながら、口の動かし方や日頃の癖を丁寧に確認し、一人ひとりの状態に合わせて調整しています。また、長年使っているうちに合わなくなった義歯のご相談も多いですね。他院で作った入れ歯の調整にも対応しています。外科手術が必要なインプラント治療に抵抗のある方も多いため、そういった方にとって安心して選べる治療法として、できる限り快適に使えるような入れ歯作りをめざしています。
診療の際、気をつけていることがあればお聞かせください。

歯科治療に対して不安を抱いている患者さんは少なくありません。中には持病の影響で、診療台に座るだけで緊張して体が震えてしまうという方もいらっしゃいます。そういった方に対しては、無理に治療を進めるのではなく、まずは慣れていただけるように、声かけや対応の仕方を工夫し、少しずつ信頼関係を築くようにしています。小さなお子さんの診療でも、無理なく落ち着いて通えるよう、親御さんと一緒に治療の流れを確認しながら進めています。「怖くない場所だった」と思ってもらえることが、何よりも大切ですからね。
困ったとき、悩んだときに頼られるような歯科医院に
説明の工夫や患者さんとの会話で意識されていることはありますか?

患者さんに安心して治療を受けていただくために、目で見てわかる説明を心がけています。診療中には写真や資料などを見せながら、どこに問題があるのか・どのような治療が必要なのかを具体的に話します。ご自身では気づかなかった症状に驚く患者さんもいますが、実例を交えて話すことで、治療の必要性の理解につながっていたら良いなと思います。スタッフにもサポートしてもらいながら、緊張しがちな診療室内でも、できるだけわかりやすく説明できるよう工夫しています。「聞いてもよくわからなかった」で終わらないよう、丁寧に話すようにしています。
スタッフの皆さんについて教えてください。
幸いなことに、当院のスタッフはとても親身になって患者さんに対応してくれる人ばかりです。診療の補助だけでなく、患者さんと自然に会話をして場の緊張を和らげてくれたり、こちらが伝えた治療方針をしっかり理解した上で動いてくれたりと、日々助けられています。皆それぞれに自立心があって、私がすべてを細かく指示しなくても、考えて行動してくれる点がありがたいですね。頼りがいのあるスタッフたちに支えられて、歯科医院としての診療が成り立っていると感じています。
今後の展望と、患者さんへのメッセージをお願いします。

派手に何かを打ち出している歯科医院ではありませんが、だからこそ「ちょっと気になることがあるから聞いてみよう」と思っていただけるような、地域の隙間を埋める存在でありたいと考えています。急に歯が痛くなった・入れ歯が合わない・口の中に違和感があるなど、そういったときに気兼ねなく来てもらえる歯科医院をめざしたいです。私自身、あまり強く主張するタイプではありませんが、患者さんが安心して話せるように、お一人お一人の声に、丁寧に耳を傾けることを大切にしています。何でも相談していただけるとうれしいですし、歯科のことに限らず、体や服薬のことなど気になることがあれば、ぜひお話しください。そこからお口の健康につながるヒントが見つかることもありますから。