氷室 公秀 院長の独自取材記事
氷室クリニック
(大阪市都島区/都島駅)
最終更新日:2025/06/11

大阪メトロ谷町線・都島駅から徒歩4分の場所にある「氷室クリニック」は、神経内科専門のクリニックだ。氷室公秀院長は、日本神経学会認定神経内科専門医の資格を持ち、東京大学大学院で医学博士号を取得後、大阪市立総合医療センターで神経内科部長を務めるなど、急性期病院において研鑽を積んできた経験豊富な医師。開業後は頭痛やめまい、認知症、神経難病の発症期から進行期に至るまで長期にわたって向き合う医療を提供しており、数多くの症例をもとに下す適切な診断と治療は、専門機関ならではの強みだろう。2022年には訪問リハビリテーションも開始し、在宅療養を神経内科専門医の立場から支援しているという。今回は氷室院長に、クリニックの特徴や診療にかける思いをたっぷり聞かせてもらった。
(取材日2025年5月14日)
神経内科分野の職能集団による専門性の高い診療
クリニックの特徴をお聞きします。

今まで総合病院で行われていた神経内科専門の外来をクリニックで提供し、長い期間にわたって一人ひとりと向き合う医療の提供をめざして日々の診療にあたっています。神経内科とは、脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。患者さんはここ数年、パーキンソン病や脊髄小脳変性症といった神経難病の方がメインにいらしている他、認知症や血管障害の二次予防をはじめ、頭痛やめまい、ふらつきやしびれといった症状が原因となる疾患の診断と治療を行っています。当クリニックには私の他、女性医師である中村芳美先生が在籍しており、2人ともが日本神経学会認定神経内科専門医です。また、難病に特化した看護師もおり、専門職の集団による質の高い医療を提供できているのではないかと自負しています。
どのような思いで開業に至ったのですか?
私が以前勤めていたような大きな医療機関では患者さんの急性期に強く介入しますが、その後は地域のクリニックの先生に治療を委ねることが多いため、患者さんに対するアウトリーチが短くなります。入院患者さんの病名や治療内容によって1日あたり医療費が決められるDPC制度(包括支払制度)が導入されるようになってからは特に、その傾向が顕著です。病院でしかできない高度な検査や治療もありますが、一方でクリニックは認知症や神経難病の患者さんを、発症期から進行期に至るまで、住み慣れた地域で長くサポートすることが可能となります。私としては、患者さんを長期にわたり経過観察し、治療を行っていきたいという思いから開業を決意しました。
神経内科専門の強みはどういったところにあるのでしょうか?

専門医療機関の良さは、疾患の診断レベルの高さにあると考えています。私たちは頭痛やパーキンソン病関連疾患をはじめとする神経内科関連の疾患において、長い期間、たくさんの症例を診てまいりました。例えばパーキンソン病でいうと、当クリニックには通院患者さんが多くいらっしゃいます。発症期から進行期にわたる段階に、どのような症状が起こり、その際にどのような医療的干渉を加え、コントロールを図ることによってADL(日常生活動作)が安定するように働きかけるという知識と経験を生かし、患者さんのQOL(生活の質)向上をめざしています。幅広く診療を行われている先生から患者さんのご紹介があれば、こちらで診断し、ある程度コントロールを図った後に、また戻っていただくというような診診連携にも対応していますよ。
クリニックのホームページには、細かく分類された診療実績が掲載されていますね。
そうなんです。例えば頭痛でも、筋収縮性頭痛、群発性頭痛、低髄液圧症候群を含む、その他の頭痛に判別、細分化して載せています。なぜかというと、頭痛でも原因が違うと治療法も使う薬もまったく違うからです。パーキンソン病関連疾患でも、パーキンソン病か、多系統萎縮症によるものなのか、進行性核上性麻痺によるものなのかを判断した上で診察や治療を行います。ここまで細分化し、適切な処方が行うことが、専門クリニックとしての強みだと思っています。
MRI検査設備の導入や在宅療養を積極的に支援
神経内科ならではの診察方法についても詳しく教えてください。

神経内科は診察技術が特殊で、専門的なトレーニングを積んだ医師でなければ診察が行えない分野です。神経学的検査という保険項目があり、診察が一つの検査になっているんですよ。具体的には、意識・精神状態や運動機能、感覚機能、歩行能力などを調べます。中枢神経や末梢神経などのすべての動きを見る検査を行いどこがどう障害されているのかを推察し、補助的にMRIなどの精密な検査を行い、詳細を明らかにしていきます。
2024年10月にはMRIを導入されたそうですね。
はい。以前は他の医療機関に依頼していましたが、自院でMRI検査を行えるようにしました。パーキンソン病や脊髄小脳変形症などの変形疾患や認知症、頭痛、脳血管障害、頸椎、腰椎などの脊髄・脊椎疾患が検査対象です。頭痛やめまい、ふらつきのある患者さんに他の医療機関に行っていただくことは負担をかけてしまいますし、他院での初診料がプラスでかかるため費用も余計にかかってしまいます。患者さんの利便性を高めたいという思いから、当クリニックの隣物件に空きが出たことを機に、MRI検査設備を導入できるよう改修しました。
在宅療養支援にも力を注がれています。

当クリニックは、パーキンソン病のような運動障害を来す難病を抱える患者さんがたくさんいらっしゃいます。疾患の診療にあたり、薬物による治療を行うだけでなく、神経難病の方にとって運動療法は非常に重要です。例えば、運動機能の低下に伴って消化管の動きも悪くなり、便秘や消化不良を引き起こすことがあるように、運動機能の直接的な低下だけではない周辺症状が現れる可能性があります。薬物療法や運動療法など全体的にマネジメントすることで、患者さんのADLの安定が見込め、QOLの向上につながると考えていることから、2022年には訪問リハビリテーションを開設しました。もともと私がたびたび依頼していた優秀な理学療法士さんがリハビリテーションを担ってくれています。患者さんが住み慣れた所で、生き生きとした生活が送れるようなサポートに努めていきたいです。
病気を理解し、ともに歩んでいけるよう丁寧な説明を
院長はこれまでどういったご経歴を歩まれてきたのでしょうか。

大阪市の城東区出身で、医師の道を志したのはなんとなくです(笑)。大阪市立大学で医学を学び、その後は東京大学大学院で臨床を行いながら、神経内科の知識と経験を積みました。神経内科を専門としたのは、患者さんの症状からどのような疾患なのかをじっくり考えなければならない診療科であり、そういった面が私の好みに合っていたためです。大阪に帰ってきてからは、当クリニックのすぐ前にある大阪市立総合医療センターと日本赤十字社和歌山医療センター、高槻赤十字病院の神経内科部長を務め、2013年に当クリニックを開業しました。
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?
指針にも掲げている「治療や疾患等に対する科学的で理解しやすい説明をする」ことです。近年は、在宅医療や介護において「寄り添い型」で包み込むようなサポートが提唱される傾向にありますが、24時間一緒にいられるわけではないので、包み込もうにも限界があります。そのため、疾患の内容や進行していく過程など、医学的なことも患者さんやご家族に十分理解いただいた上で、収入や家族の規模に応じて、どのような対応体制が取れるかどうかを考えていただき、選択していただくことが重要ですし、そうでないと成り立たないと思います。必然的に患者さんとお話しする時間は長くなりますが、初めはしっかり時間をかけて診察し、説明することで患者さんのご理解も深まり、その後の経過にも良い影響をもたらすと考えています。
最後に今後のご展望と、読者へのメッセージをお願いします。

今後、難病患者さんが安心して在宅療養生活を送れる施設をつくることができたらいいなと考えています。頭痛やめまい、ふらつきといった症状や運動障害にお悩みの際など、専門的な診療をご希望される方は、ぜひいらしてください。しっかりと対応させていただきますので、お気軽にご相談ください。