与田 紘一郎 院長の独自取材記事
与田病院附属ふじと台クリニック
(和歌山市/和歌山大学前駅)
最終更新日:2021/10/12

和歌山大学前駅に隣接する大型ショッピングモールと直結したアクセス至便な場所にある「ふじと台クリニック」は、大阪府泉南郡岬町にある在宅療養後方支援病院「与田病院」の附属クリニックとして2015年に開業。院長は日本糖尿病学会糖尿病専門医の与田紘一郎先生。大阪市立大学医学部附属病院では、糖尿病・内分泌疾患・関節リウマチ・骨粗しょう症の診療を数多く手がけ、同院でも糖尿病などの生活習慣病や内分泌疾患の治療に力を入れている。穏やかで優しい語り口、専門用語を用いず、言葉を尽くしてわかりやすく解説してくれるその様子に、患者を丸ごと受け入れる包容力と日々の丁寧な診療ぶりがうかがえた。そんな与田院長に同院の特徴や、専門分野である生活習慣病の治療や予防についてたっぷりと話を聞いた。
(取材日2021年6月9日)
生活習慣病を重篤な疾患につなげないために
クリニックの特徴について教えてください。

当院は地域のかかりつけ医院として、赤ちゃんからご高齢の方まで切れ目のない医療を提供するため、現在、糖尿病内科・内科・小児科・内分泌内科のほか、健康診断、予防接種、訪問診療、胃・大腸の内視鏡検査など幅広く対応しています。お子さんが小児科で診察している間に一緒に来た親御さんが内科を診療されたりと、家族ぐるみで受診されるケースも多いです。このふじと台は和歌山の中でも人口増加率が高い地域で、近隣小学校の児童数は1000人近くおり、その親世代である30〜40代の若いファミリー層が多い地域なんですね。僕の専門である糖尿病と生活習慣病なので、将来糖尿病や生活習慣病から重篤な病気につながらないように、若い世代の方々に予防の段階からしっかりと関わっていきたいという思いで日々の診療に取り組んでいます。
先生のご専門は生活習慣病とのことですが、どのような病気か教えてください。
生活習慣病は、肥満症、高血圧、脂質異常症、糖尿病など、主に内臓脂肪の蓄積が原因で引き起こされる病気全般を差し、食事や運動、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣がその発症に大きく関与しています。高血圧、糖尿病、脂質異常症はいずれも血管を痛める病気なので、それらが進行したり、いくつかの症状が重複したりすれば、将来的に脳梗塞や心筋梗塞にかかるリスクが高まってきます。こうした命に関わる重篤な疾患のリスクをいかに防いでいくかが、生活習慣病の治療ではとても重要になります。
生活習慣病の治療法についてお聞きします。

生活習慣病は内臓脂肪の蓄積からくる病態ですので、まずは体重を落として内臓脂肪を減らしていく必要があります。そこで食事や運動など生活習慣の改善や薬による治療を行うわけですが、生活習慣病というのは、糖尿病を見てもわかるように一度発症したら完治が難しく、症状や数値をコントロールしながら生涯付き合っていかなければならない病気です。5年、10年と治療は長丁場になりますから、患者さん自身が納得し、受け入れられる方法でなければ治療は続きません。患者さんの希望は人によってさまざまで、最初からお薬で治したいという方もいれば、まずは食事を見直したり、運動を頑張ったりして経過を見たいという方もおられますので、その方の希望や治療に費やせる時間、そして病気の重症度を照らし合わせながら、「こんな方法もあるけど、どうですか?」といくつか選択肢をご提示して、その中から患者さんが一番望まれる方法でまずは治療を開始します。
健診結果を放置せず、問題があれば早めの対処を
生活習慣病は予備軍の人も多いと聞きますが、発症を防ぐ方法は?

高血圧や糖尿病、脂質異常症は、いずれも痛みなどの自覚症状がありませんから、年に1回の健康診断を受けることがとても重要になってきます。日本では40歳をすぎると全国民が年1回は何らかの形で健康診断が受けられるシステムになっているので、必ず受けるようにしましょう。そしてこの後が大事なんですが、健診結果が届いて何かの数値が基準値から外れていたり、「要治療」「要精査」の項目があったら放置せず、すぐに医療機関を受診してください。そして医療機関を受診する際は、検査結果を持参することお勧めします。当院でも「血圧で引っかかってしまって」とおっしゃるだけで、健診結果を持ってこられない方が結構いらっしゃるんですが、検査結果を見ながらだと診療がスムーズに開始できます。
内分泌内科も掲げていますが、どういった疾患を扱っていますか?
橋本病やバセドウ病などの甲状腺疾患ですね。あと、不眠や動悸、のぼせ、疲労なども内分泌ホルモンの乱れが原因となっていることがあります。人間の体の生活リズムはこの内分泌ホルモンで調整されている部分が大きく、夜に眠たくなるのも、朝起きて体が活動し出すのも、あるいは血圧や体温の調整も、体の恒常性を維持する内分泌ホルモンが大きな役割を持っています。ここに異常を来すとむくみが出て体重が増えたり、代謝が悪くなって血糖値が上がってきたり、だるさが抜けなかったり、冬の寒さが一層つらく感じたりします。もしこうした自覚症状があれば内分泌ホルモンの異常が原因かもしれませんので、専門の医療機関を受診してください。当院では内服薬による治療を行い、手術や放射線治療が必要な場合は、専門医療機関と緊密な連携を図りながら、診断・治療を行っています。
先生が診療で心がけていることは何ですか?

患者さんの思いや考え方を知るために、まずはしっかりお話を伺います。そして、患者さんに納得して治療を受けてもらえるよう、病気や治療のことをできるだけわかりやすく説明します。実際、当院の患者さんは、どこが痛いか、何がきついか、何が気がかりか、時には内科と関係ないようなことまで残さずしっかりとお話しして帰っていかれます(笑)。そうやってなんでも話してくださるのは診療する上でも役立ちますし、僕のことを話しやすいと感じてもらえているのならありがたいですね。僕は座右の銘こそありませんが、通っていた高校には「世の光になれ」という校訓があり、いつしか自分もそうありたいと思うようになっていました。まずは「自分」をしっかり持って、その上で患者さんと向き合っていくことを常日頃から心に留めています。
地域の人たちが最適な医療・介護を受けられるように
訪問診療も行っているそうですね。

高齢者の数は今後ますます増えていきますので、訪問診療も柔軟に対応し、地域ぐるみで高齢者の医療を支えていく必要があります。また当院としては、脳梗塞や心筋梗塞になってから救急車で運ばれるという事態を避け、ご自宅で元気に過ごしていただける時間を少しでも長くできるよう、皆さんの健康管理をしっかりサポートし、早め早めの対処を心がけています。当院が所属する法人では療養型病院の与田病院を運営するほか、通所リハビリや老人ホームといった介護サービスも提供していますが、患者さんの症状に応じて、受ける医療・介護のサービスも細分化されているので、患者さんが最適な医療・介護サービスを受けられるように、この方は今どういう段階におられるのか、どうすればQOLを高く維持したまま生活していけるのかを考えながら診療しています。
先生が医師を志し、糖尿病を専門にしようと思われた理由は何ですか?
いつから、何がきっかけでそう思ったのか覚えていないくらい、小さい頃からずっと医師になろうと思っていました。小学校の卒業文集にも「将来は与田病院の院長になる」と書いていましたが、おそらく小学校に入った頃にはすでに医師になろうと決意していたように思います。糖尿病内科を専門にしたのは、患者さんの生活と密接に関わっていく領域だから。病気だけを診るのではなく、患者さんが普段の生活、どのような食事を食べて、どんな仕事をしているのか、そういう背景も踏まえた上で治療を行っていくところに面白みを感じました。
今後の抱負と読者へのメッセージをお願いします

今後も地域のかかりつけ医として患者さんの全身を診るということを重視し、僕も各診療科の医師も専門だけにとらわれず連携し合い、専門の医療機関や急性期病院へのつなぎ役をしっかり担っていきたいです。そして、このふじと台に住む皆さんが健康にQOLを保って末永く暮らしていけるよう、お子さんや若い世代の方々の健康管理をはじめ、ご高齢者の健康寿命の延伸に全力を尽くして取り組んでまいります。読者の皆さんには、繰り返しになりますが「健康診断を受けましょう。そして結果を大切にしてください」ということをぜひお伝えたいですね。