坂本 典之 院長の独自取材記事
よこはま本町通りクリニック
(横浜市中区/日本大通り駅)
最終更新日:2025/01/27

みなとみらい線の日本大通り駅から徒歩1分、横浜市の官庁街の中に総合内科・心療内科を専門とする「よこはま本町通りクリニック」がある。院長の坂本典之先生は、1998年にこの地で開業した「かりべクリニック」を2023年6月に継承。前院長の苅部千惠先生のポリシーを引き継ぎ、内科・心療内科医師としての視点からの緻密な診察を心がけ、心身両面より症状を軽減することをめざす。「目の前の患者さんの心身の困り事に幅広く対応できる“かかりつけ医”をめざしています」と、坂本院長。自らが理想とする医師像に近づくため、20年以上にわたってさまざまな病院で研鑽。多くの人を救うべく、真の心療内科を普及していきたいという坂本院長の穏やかで優しくも熱い思いを聞いた。
(取材日2024年12月13日)
心と体の両面から症状の軽減を図る心療内科
こちらのクリニックが専門とされている、心療内科とはどのような診療科目なのでしょうか。

心療内科は、心理社会的要因すなわち“ストレス”と関連した内科疾患や身体症状を診る科です。ストレスは自律神経のバランスを乱し、頭痛、肩凝り、倦怠感、動悸、息切れ、心窩部痛・腹痛、下痢・便秘など、多岐にわたる身体症状や、不安や抑うつなどの心の症状、さらには食生活、睡眠、活動量など日常生活の変化を来します。ストレスは、緊張型頭痛、片頭痛、高血圧、脂質異常症、糖尿病、気管支喘息、胃潰瘍、機能性胃腸症、過敏性腸症候群などにも関与し、これら内科疾患の発症や経過にストレスが強く関与した病態を“心身症”と呼びます。心身症やストレス関連症状に対し心身両面からの病態評価を行い、薬物療法と心理療法による症状改善および、ストレス対処の強化、生活習慣の改善など行動変容をめざします。心身相関への気づきとセルフコントロール、自己効力感と自己肯定感の回復、これが心療内科がめざす治療目標です。
そもそも心療内科を専門とされている先生が少ないんですね。
私は、日本内科学会総合内科専門医に加え、日本心療内科学会心療内科専門医資格も保有していますが、心療内科講座を有する大学は非常に少ないのが現状です。全国すべての大学に精神科講座がある一方、心療内科講座は両手で数えられる程度のため、世の中に心療内科専門医って驚くほど少ないんです。心療内科と精神科との違いをよく聞かれますが、内科の医師か精神科の医師か、ストレスと関連した身体症状か精神症状か、得意とするところが通常心理か病的心理かで分けるとわかりやすいです。心理療法も扱える内科、“心理療法内科”が心療内科の原点です。
そんな中、なぜ先生は心療内科を専門にされたのですか?

学生時代に脳外科の教授から心身症の講義があり、さまざまな疾患にストレスが深く関わっていることを知りました。その頃から、患者さんの身体的な不調だけでなく、心の状態にも配慮した全人的医療を実践したいと考えました。まず最初に心身の問題にふれられる医師として、患者さんの訴えに真摯な姿勢で耳を傾け、包括的な医療を提供したいという思いが、心療内科をめざすきっかけとなりました。大学6年生の夏休みに東京大学、東北大学、九州大学で開かれていた心療内科の夏季セミナーに1週間ずつ参加し、各大学の診療方針や雰囲気を体感。最終的に、個々の意思を大切に、患者さんに寄り添った診療、丁寧な教育、最先端の研究を行っている東京大学心療内科の門をたたきました。
その後の経歴を教えていただけますか?
浜松医科大学を卒業後、全国的に見てもレベルの高い救急病院である東京都立墨東病院で2年間のスーパーローテート研修、地域医療の中核、藤枝市立総合病院で2年間、総合内科・心療内科の研鑽を積みました。その後、東京大学医学部附属病院に戻り、心療内科の臨床・教育・研究に携わり、大学院で医学博士号を取得。医師11年目で、地域の救急災害医療に力を入れている、足立区のいずみ記念病院の門をたたきました。内科診療部長・医局長として14年間、総合内科・救急の外来、内科急性期病棟管理、急性期・回復期病棟におけるコンサルテーションリエゾンなど多岐にわたる経験を積みました。これらの経験を生かし、2023年6月、当院の前身「かりべクリニック」を継承し、よこはま本町通りクリニックを開院しました。
ストレスと断定せず、内科的な検査や診察も丁寧に
1998年に開業された「かりべクリニック」を継承された経緯を伺えますか?

前院長の苅部先生は、東京大学心療内科の先輩でした。かりべクリニックが掲げる「内科心療内科」というコンセプトは、私がめざす診療スタイルと完全に一致していました。苅部先生から直接お声がけいただいたこと、そして14年間のいずみ記念病院での幅広い診療経験、特に総合内科・救急、心療内科の分野の経験を生かせる場であると確信したことが、継承の決め手となりました。都・市・区の地域総合病院、東京大学で培った専門性を地域医療に還元し、身近な存在として患者さんをサポートしたいという思いもありました。
このクリニックにはどのような患者さんが多くいらっしゃいますか?
地域にお住まいの方はもちろん、横浜の官庁街の中心地という土地柄もあり、働き盛りで仕事上強いストレスを抱えている方や、学生さんも多く来院されます。内科の相談、予防接種だけで来る方もいれば、不眠、不安・抑うつなどのメンタル相談で来られる方もいらっしゃいます。一方、働き盛りの方やそれ以上の年代の方は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病をはじめ、何かしら内科疾患を抱えていることも多いため、内科的な評価をきちんと行った上で、それが本当にストレス関連なのかを判断するよう心がけています。
初診の際の診察の流れについて教えてください。

初診時は30分~40分の時間を確保し、丁寧な問診と内科診察を行います。現在の症状、発症時期、症状経過、生活習慣、仕事や家庭環境、人間関係など、多角的な視点から詳しくお話を伺います。その後、血圧・脈拍・体温測定、心音・呼吸音聴診、腹部聴触診、神経学的所見など内科診察および各種心理テストを実施し、患者さんの状態を総合的に評価します。必要に応じて、採血採尿、心電図、甲状腺・腹部エコーなども実施します。当院で絶対に行わないようにしているのが「ストレスが原因」と決めつけることです。他の疾患の可能性を常に念頭に置き、鑑別診断を丁寧に行いながら、患者さんに適した治療方針を決定します。
「心療内科」を気軽に受診してほしい
先生の専門分野と強みについて教えてください。

総合内科と心療内科、両方の専門性を有し、働く人の健康をサポートしています。心身症状のみならず、その背景にある心理社会的要因であるストレスを含む、全人的な診断と治療を心がけています。医師26年間で培ったさまざまな経験を生かし、患者さんにとって最善と思われる治療を提供します。高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に関しても、薬物療法のみではなく、ストレスおよび行動に着目し、心理面を含む心身医学的アプローチを行います。心と身体、両面からのアプローチは時間もかかり大変ですが、身体のつらさ、心のつらさ、社会的つらさ、存在のつらさに寄り添い、同じ方向、同じ歩幅で、少しずつ前に進んでいくお手伝いができればと考えています。
どのような方々が来院されると良いのでしょうか?
いわゆる精神病は専門外ですが、心の不調、身体の不調、心身の不調がある方、どなたでも受診可能です。ストレスによる心身の不調でお困りの方はもちろん、健康診断で異常を指摘された方、人間関係や仕事で悩んでいる方など、些細なことでもお気軽にご相談ください。その際、医師が上から目線で“指示的”に駄目出しすることはありません。“支持的”であることを常に意識し、患者さんが気軽に相談できる存在でありたいです。
地域の方々にメッセージをお願いします。

「心療内科」という言葉に不安や抵抗感を覚え、受診をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、心療内科は決して敷居が高い診療科ではなく、気軽に相談できる科です。「なんか体調が悪いけどストレス?」「ストレスに気をつけるにはどうしたら?」など、少しでも気になる場合は遠慮なくご相談ください。地域の皆さまの心と身体の健康をサポートする身近な存在でありたいと考えています。「上手じゃないけど何とか心と身体と付き合っていけそうかも」というような、自分らしさを回復するお手伝いができれば幸いです。