成富 健剛 理事長の独自取材記事
なりとみ歯科
(鳥栖市/田代駅)
最終更新日:2025/05/02

佐賀県鳥栖市にある「なりとみ歯科」は、1997年の開業以来、歯科医療を提供するだけにとどまらず、コミュニケーションの場として地域住民に寄り添ってきた。理事長兼院長の成富健剛(なりとみ・けんごう)先生は、勉強会の理事や講師を務め、啓発活動も積極的に行っている。その活動は、高齢者の摂食嚥下に関してや小児の口腔育成についてなど多岐にわたる。「口腔内のトラブルが全身疾患を招くきっかけになることを広く知ってほしいです」と、語る成富先生。そんな成富先生に、診療への向き合い方や患者への思い、クリニックの方針などについて詳しく聞いた。
(取材日2025年1月15日)
口腔内だけでなくトータルケアを行う歯科医院に
歯科医師になろうと思ったきっかけや、歯科医師になるまでの経緯を教えてください。

歯科医師をめざすようになったきっかけは、私の父は歯が悪く、どうにかしてあげたいと思ったからです。また、私自身も子どもの頃から虫歯があり、歯科医院に通うことが多かったように記憶しています。歯の治療は苦手でしたが、頑張って通ったことやクリニックのスタッフさんが優しく接してくれたことが印象的でした。そんないくつかのきっかけが重なり歯科医師になろうと思ったわけですが、大学入学後すぐに父親が亡くなったんですね。たいへんショックな出来事でしたが、どうにかして卒業するしかないと奮起して、無事歯科医師になりました。勤務医時代は毎日忙しく、たくさんの患者さんと接して勉強させてもらいました。患者さんの虫歯を治療したりその後のケアをしたりと、地域の皆さんのお役に立てるこの仕事にやりがいを感じています。
開業から現在に至るまで、歯科医師としての心の変化はありましたか?
たくさんありましたね。勤務医時代は虫歯を削って詰める治療を中心に担当しました。そんな中で徐々に、「なぜ虫歯になったのか」という点について深く考えるようになっていきました。ただ治療をするだけではなく、患者さんの生活スタイルや食事の仕方がどうなのか、そこにまで踏み込み、根本を改善していく必要性を感じたんです。そして全身疾患、特に糖尿病との関連について学び、患者さんに健康を維持するためのアドバイスをしたいと思うようになりました。虫歯や歯周病の原因は、普段の食生活や歯並びなどさまざまです。やはり生活習慣を見直し、虫歯にならない環境をつくることが大切ですので、全身の健康維持を含めたケアができるように取り組んでいます。このように、歯だけでなく、もっと広い視点で患者さんのことを考えるようになった点が、大きく変わったところですね。
反対に、歯科医師として変わらない思いについてお聞かせください。

患者さんとのコミュニケーションと、きちんと説明することですね。当院は「デンタルクリニック」ではなく、「デンタルコミュニケーションハウス」です。患者さんとは歯の治療だけで関わるのではなく、その他のコミュニケーションも含めて信頼関係を築いていくようにスタッフにも指導しています。患者さんのお話をしっかり聞くために、初診ではできるだけ長く時間を取っています。もちろん患者さんが今一番解決したい悩みを優先しつつ、ある程度口腔内の状況の改善につながったら、予防に対する意識を高めていきたいです。患者さんと一緒に健康な体をつくっていきたいという思いも、昔から変わらないかもしれません。
スタッフとともに患者の健康管理と維持に貢献する
こちらで注力していることを教えてください。

当院の2025年のテーマは、「口腔から生活と機能を診る」です。口腔内だけにとどまらず、患者さんの生活習慣の改善や全身疾患の予防を見据えて取り組んでいきます。それと、院外に加えて院内での多職種連携ですね。当院には、歯科衛生士や歯科助手、受付を担当しながら、管理栄養士や保育士の免許を持って活動しているスタッフがいます。ですから、お口のこと以外にも食事や子育てに関するお悩みにも対応できるのですね。スタッフ全員が広い視野を持って患者さんのトータルケアを担うという考えのもと、情報共有や勉強会なども積極的に行っています。
小児の口腔育成にも力を入れていきたいと伺いました。
そうですね。日本は少子高齢化が進んでいます。これからの日本を支える子どもたちが生きる力を十分に蓄えるためには、口腔内の環境を良くしておくことが必須だと考えます。私は歯科医師として、子どもの噛む力や呼吸の仕方など、発達に関わる部分を支援することが使命だと思っています。残念ながらお子さんの中には、スナック菓子や炭酸飲料ばかり取っている子もいて、非常に悲しいです。そんな食生活が将来どのような結果をもたらすのか、あまり深刻に考えていないのかもしれません。特に子どもたちには、一次予防、つまり病気にならないように子どもの頃から食事や生活習慣を考えながら生きていくことの重要性を伝えていきたいですね。ですから私は、講演会などで子育て中の保護者にお話ししたり、ある時は予防の実演を交えたりしてお伝えしています。
スタッフさんとの連携も緊密ですね。

当院では月に1回ミーティングを行い、コンサルタントさんにも入ってもらっています。現在の業務の状況や振り返り、今後の方針の見直しなどを行う時間を設けているんです。また毎年年末になると、翌年の方針の発表会をしてスタッフ全員と意識を合わせていますね。あとは、随時オンラインで講習を受けたり、外部講師を招いて勉強会をしたりして常に情報のアップデートを行います。私自身、学ぶことが好きですし「患者さんのために何ができるか」と考えると、さまざまな知識を得る必要があります。身につけたいことがあれば、自然と学びたいと思いますよね。学習は、新しいことを取り入れる以外にも大切なことを再認識する機会にもなるため、スタッフと一緒になって幅広く学んでいます。
歯科医師や歯科衛生士をめざす人のサポートも
奨学金制度を導入された理由や背景について伺います。

まず、慢性的に歯科衛生士が不足している点が挙げられます。なりたい人が少ないこともあると思いますが、学費を払うのが大変な方も多いのですね。アルバイトをかけ持ちしても生活が苦しいという意見を見聞きして、当院に奨学金制度を導入しようと思いました。おかげで、当院の制度を利用して歯科衛生士になった人が数人スタッフとして働いてくれています。歯科医師に関しては、学費を払う大変さを私自身が身をもって経験しています。大学入学後すぐに父親を亡くし、奨学金制度を利用しながら卒業しました。それがあったから安心して学業に専念できたため、私がしてもらったことを今度は今の学生たちにしてあげたいと思ったんです。少しでも、歯科医師や歯科衛生士になりたい人の助けになればと思い、続けています。
今後の展望についてお聞かせください。
医療従事者全般にいえることですが、口腔の健康の重要性や、全身の関連を把握している人は少数派です。ですので歯科医師として、虫歯や歯周病が全身に及ぼす影響を伝えていきたいですね。もちろん一般の方々にもお伝えするのですが、医療従事者の間で共通認識を持つことが重要だと感じています。歯科医師の仕事は、単純に歯を削ったり抜いたりするだけではありません。それよりもっと大きな視野を持ち、患者さんの体全体の健康をサポートできるように意識を向けていかなければならないと思います。そのために歯科医師を含め、地域の多職種の方にアプローチしていきたいですね。そして、私自身が実際に努力していくことも重要ですので、当院で率先して患者さんのトータルケアに取り組みたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

虫歯や歯周病は、脳卒中や心不全など命に関わる病気になる前のサインであることが多いです。ですから、そのような重い病気になる前に歯科医院に行き、治療を受けてほしいと思います。そしてアドバイスを受けながら生活習慣を見直すことで、その先の人生がより健康なものとなるはずです。特に人生がこれから長く続くお子さんには、早い段階で口腔内を良い状態に保つことの大切さに気づいてほしいですね。もしお口のことでお困りのことがあれば、ぜひ当院にお問い合わせください。治療だけでなく、患者さんのQOLが高まるような情報提供も行います。当院は、「デンタルコミュニケーションハウス」として患者さんと会話することを大事にしています。ぜひお気軽にいらしてください。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療(骨が現状で埋入可能な場合)/45万1000円、インプラント審査料/1万9800円、ステント作製料/3万8500円