篠田 宏文 院長の独自取材記事
ひばりの森歯科
(東久留米市/東久留米駅)
最終更新日:2024/09/09
「病気をお持ちの方にも安心して通ってほしい」と優しい笑顔で話す歯科医師の篠田宏文院長。その思いを形にしたのが、2012年に東久留米駅から徒歩6分の場所に開業した「ひばりの森歯科」だ。何らかの病気を持つ有病者に対応できるような設備を整え、近隣の内科の先生とも連携。歯科衛生士などスタッフにも有病者に関する教育を行っている。また、大学病院でがんの放射線治療に長年携わってきた篠田院長は、外科的な処置も得意。地域の人々にとっても心強いクリニックといえるだろう。篠田院長に仕事のやりがいや治療にかける思い、そして趣味のアウトドアについて話を聞いた。
(取材日2016年7月20日/情報更新日2024年7月29日)
有病者治療、外傷にも対応できる歯科医院
同院のコンセプトを教えてください。
当院は、私が開業前に手伝っていた父の「ひばり歯科クリニック」の屋号と場所を変更したクリニックなんですよ。院名に「森」をつけたのは、やわらかいイメージを出したかったから。新しくしてからこだわったのは、抗がん剤の治療を受けている方や透析治療に通っている方など、病気をお持ちの方も安心して通っていただきたいということです。それで、血圧計など有病者にも対応できるような設備を整えました。また近隣の内科の先生とも医療連携を強化し、歯科衛生士などスタッフの教育にも力を入れています。患者さんが飲んでいる薬を聞いただけである程度の症状や状況が判断できたり、糖尿病の方が取るべき生活習慣を理解していたりすることは、私だけでなくスタッフにも必要なことだと考えています。
有病者の歯科治療はどのように学ばれたのですか?
日本大学歯学部を卒業後、約16年間、東京女子医科大学に在籍しました。最初に大きな病院に勤務したのは、歯科医師だった母から「歯を削ったり詰めたりといった治療はいつでもいくらでもできる」というアドバイスをもらったことがきっかけ。ならば、その前に手術や看取りを行う医療現場を見ておきたいと思い、高度先進医療を提供する大きな拠点病院である大学病院に入局し、耳鼻科の領域とも重なる頭頸部のがんの放射線治療に携わってきました。重要臓器が密集する頭頸部にできたがんは手術で切除できないこともあるんですよ。そこで放射線治療が重要になってくるのです。また、口腔がんや舌がんは味覚異常や口内炎などを引き起こすことがありますから、術後のケアも大事なポイントでした。
主な患者層を教えていただけますか?
この辺りは会社勤めの方が多い住宅地ですから、会社員の方とそのご家族が多いですね。とりわけ多いのは40~50代の女性で、来院動機は虫歯や入れ歯など一般的な症状。でも、治療だけで終わらず、痛みの原因や予後などについてしっかり説明することのほうが大事だと考えています。また、キッズルームを見ていただいてもわかるように、お子さんもたくさん診ていますよ。3ヵ月に1度の虫歯がないかの確認やフッ素塗布などに来られる子が多いですね。さらに、もともと口腔外科にいた私は、転んで前歯が折れたり口唇や舌が切れたりしたというお子さんの外傷の治療をすることも少なくありません。近隣の幼稚園や保育園、小学校の保健室から緊急処置の依頼の連絡が来るんですよ。また、訪問診療にも力を入れています。
体の「入口」である口をしっかりケアする
大学病院では、重症の患者さんと向き合ってきたのでしょうね。
そうですね。そんな中で、患者さんの病気への姿勢、病気から這い上がるメンタルの強さ、絶望感や無念さ、家族との関係など、さまざまなことを目の当たりにしました。そして、最終的に亡くなったとしても、それまでの過程を実りあるものにすることが大事で、そこが歯科の役割だと気づかされました。さらに、口からまともなものを食べるという「入口」、そしてお通じをする「出口」がしっかり機能していることのありがたさと大切さを実感しました。それは健康なときには気づきづらいことですから、私から患者さんにしっかりと伝えていきたいと思っています。
それで「入口」となる口腔のケアに力を入れているんですね。
口腔ケアは、有病者が少しでも快適に生きる上で非常に有用なんですよ。例えば肺がんが脳に転移して意識レベルが下がってきた患者さんがいるとします。誤嚥性肺炎を引き起こし、生死をさまよう容体でも、毎日の口腔ケアで肺炎の改善を図り、亡くなるまで平穏な日々が送れるケースもあると思います。もし誤嚥したとしても、きれいな口の中を通ったものと汚れた口の中を通ったものでは肺に与える影響は違いますからね。そこで力になるのが歯科衛生士。先ほど申し上げたように、当院では歯科衛生士にもしっかり教育をしています。まだまだ認知されていないと感じますが、歯科衛生士というのは非常に専門的な技術や知識を持つ人たちなんですよ。
スタッフのモチベーションを上げるために何か工夫されていますか?
当院では毎週水曜日に症例検討会を行うなど、スタッフが常に勉強できる環境をつくっています。人は、一つの知識を身につけることで道が開けるようになることがあります。例えば私が勉強会で「血圧の薬の中に歯槽膿漏に悪影響を与える種類がある」ということを説明すると、新しい知識を身につけたスタッフはやる気がアップしていると感じますね。そのためには私がいかにうまく説明するかも鍵です。それは訪問診療でも当てはまります。訪問診療も私一人ではできないため、スタッフの協力を得ることがとても大事。そのため、協力していただく医療関係者にいかに理解していただけるプレゼンテーションをするかという点に力を注いできました。
歯科だけでなく、医科的な視点でのアプローチも重視
歯科医師をめざした理由を教えてください。
祖父と両親が歯科医師で、父は長年大学職員を務め、母は開業医でした。夜中に「口を切ったから縫って」と駆け込んで来る人を母は当たり前のように診ていましたから、私は歯科医師に「人助けをする人」というイメージを持ち、幼稚園の頃から歯科医師になると決めていました。心身ともに健康になった患者さんの姿を見ることができたなら、やりがいを感じます。例えば、長年歯科に背を向けていた人が、ご飯がいよいよ食べられなくなってようやく来院したとします。そういう状態で歯科に行くと、「こんなになるまで……」と叱られることも多いそうなんですよ。でも私は「よくぞ来てくれました。大丈夫。これから治療していきますから」と励まします。自分も、なかなか腰が上がらないことなんてよくありますからね(笑)。治療の末、ご飯が食べられるようになり体重も増えたならとてもうれしいですし、患者さんに喜んでいただけたら何よりです。
休日はどのようにリフレッシュしていますか?
私は川遊びが好きなんです。カヌーやリバーサップなどを、青梅や御岳、多摩川上流、秩父などで楽しみます。川の流れは自然のものなので逆らえませんが、時折うまく流れに乗って遊べるのが醍醐味ですね。「うまく乗る」といえば、仕事も同じ。患者さんも治癒、軽快の方向へうまく乗せてあげることが大事です。例えば、がんの末期でホスピスを進められたと落ち込む患者さんには、心の整理ができる方向に気持ちを乗せるようにします。また、頭頸部のがんは治療が2週間遅れると治癒率が20%下がるというデータがあるので、患者さんには治療をすぐに決断してもらうことが大事。でも医師が「上から目線」で話すことで患者さんが話に乗ってきてくれなければ、治療開始が遅れてしまいます。当院では看護師である妻とも連携を取りながら、患者さんに安心して治療の流れに乗ってもらえるコミュニケーションを心がけています。
最後に今後の展望をお願いします。
大学病院では、ある程度良くなった患者さんは転院する必要があります。でも、転院した先で、あるいは在宅医療を受ける中で、十分な治療やケアが受けられず亡くなられる方も少なくありません。そんな方たちに誰かがきちんとした医療を届け続けなければいけないと感じました。それが、私が訪問診療を始めたきっかけです。自分の「箱」から一歩も出ずに目の前の治療だけをしていてはいけません。その点、当院には看護師がおり、医科的なアプローチをすることが可能です。さらに、管理栄養士が常駐しており、往診にも同行しています。いずれは、管理栄養士が食事などのアドバイスをする栄養ケアステーションを院内に設ける予定です。今後も、お困りの医科の先生やケアマネジャーなどと積極的に連携しながら地域医療に貢献していきます。地域の方の心身ともに健康な姿を見続けたいですからね。
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。