古田 摂夫 院長の独自取材記事
アスク歯科クリニック
(可児市/日本ライン今渡駅)
最終更新日:2025/04/04

名鉄広見線・日本ライン今渡駅から車で約5分、通り沿いに位置する「アスク歯科クリニック」は、予防歯科を重視した診療で地域住民の健康を支えている。院名の「アスク」は、ギリシャ神話に登場する医神・アスクレピオスが由来。医学の象徴的存在である神の名には、「歯科診療を通して患者の健康を支えたい」という古田摂夫(せつお)院長の思いが込められている。岐阜生まれ静岡育ちの古田院長は、大学進学を機に福島に移り、歯科医師としてのキャリアをスタートした。専門に選んだのは歯科麻酔。同院の診療では培った経験を生かし、常に全身状態に意識を向けながら安全を第一に考えて歯科診療を行っているという。「治療の主体は患者さん」と話す古田院長に、開業の経緯や診療のモットー、歯科医療にかける思いについて詳しく話を聞いた。
(取材日2025年2月20日)
全身状態に目を向け、安全性と歯の健康を守りたい
院長のご専門と、開業までの経緯を教えてください。

奥羽大学歯学部を卒業後、奥羽大学歯学部附属病院の歯科麻酔科で助手として知識を身につけ、総合会津中央病院(現・会津中央病院)では医科の麻酔について学びました。全身麻酔を必要とする手術も数多く経験してきましたね。専門性を磨く中で、「将来は地域医療に携わりたい」とも考えていました。急性期医療などを担う大学病院や市中病院での経験を生かすことで、地域医療の質をより高められるのでは、と思ったんです。そこで歯科医師となって15年の節目を迎えた2012年に、亡くなった父の出身地であり、私も幼少期を過ごした岐阜県での開業を決めました。当院が位置する可児市は歯科に関する啓発活動が活発で、医科・歯科を含めた他職種連携の推進にも力を入れて取り組んでいます。私も「顔の見える連携」を意識しながら、デンタルIQや地域医療の質の向上をめざして活動しています。
歯科の中でも歯科麻酔を専門とされたのはどのような理由からだったのでしょうか?
大学在学中に歯科の専門知識を学ぶ中で、「全身のことを知らなければ、安全性にこだわった治療ができないのでは」と思ったのが最初のきっかけです。歯も全身の一部ですから、全身について学ぶのは、ごく当然ともいえます。麻酔を扱う上で、患者さんの全身状態を理解することは不可欠ですし、全身疾患の知見も求められます。ちょうど私が歯科の道に進んだ時代に、歯と全身の関係性や予防歯科の重要性に注目が集まり始めていました。歯科麻酔で得られる経験は、一般歯科の現場でも必ず生きると直感し、専門的に学ぼうと決めたんです。また、一般の方が想像する以上に、医療を行う現場は感染リスクにあふれており、手術は徹底した感染症対策のもとで行われます。衛生管理のノウハウを学べたことも、現在の診療に生きていると感じます。
院内設備や空間設計で重視した点を教えてください。

院内はバリアフリー設計で、駐車場から診療室まで車いすやベビーカーで入ることができます。診療室は患者さんのプライバシーに配慮しつつ圧迫感を与えないよう半個室仕様にしました。患者さんとスタッフの動線も分けています。すべての診療室には、固定式の口腔外バキュームを備えつけています。患者さんにとっても診療を行う私やスタッフにとっても安全な環境を用意したいと考え、治療やスケーリング時に飛び散る唾液や粉塵などをしっかりキャッチできるように、吸引力の高いものを採用しました。そのおかげもあって、院内は歯科医院独特の臭いがあまりしないんですよ。診療で用いる器具類の滅菌対策にも力を入れていて、使い捨てできる製品を積極的に活用しています。滅菌器は複数台導入し、診療で用いたタービンなどはすべて滅菌処理しています。
患者の選択を尊重し、納得いく治療の提供に力を尽くす
どのような診療に対応されていますか? 患者さんの年齢層などと併せてお聞かせください。

保険診療を中心に一般歯科全般に対応しています。中でも、開業以来力を入れて取り組んできたことの一つが予防歯科です。歯の痛みなどのトラブルをきっかけに受診した患者さんにも、定期的な検診やメンテナスの大切さを伝え続けてきました。この取り組みが実を結んだのか、今では患者さんの多くが予防目的で受診されています。患者さんの年齢層は1歳半健診を終えたばかりの赤ちゃんから90代のご高齢の方まで非常に幅広いです。何らかの理由から他院では断られてしまったという方の相談にも、できる限り対応しています。開業間もない頃から通う患者さんがお孫さんを連れて来たり、結婚や妊娠をして妊婦歯科検診で受診されたりといったケースも見られるようになりました。長くお付き合いできるのはうれしい限りですね。
診療のモットーは何ですか?
「全身状態を考慮した安全な治療」をめざすとともに、患者さんが納得して治療を選択できるように丁寧な説明を意識し、気持ちに寄り添う姿勢を常に心がけています。治療の相談を受けたら、相談内容や要望を踏まえて患者さんごとに適した治療計画を複数用意して、メリット・デメリットなどを説明します。「先生に任せます」とおっしゃる患者さんもいますが、当院では必ず患者さん自身にどんな治療を行うかを決めていただきます。こちらが選んだり、選択肢を押しつけたりするようなことはありません。どんな選択も尊重することが、治療の一歩だと思っています。
患者さんの中には、選択に迷ってしまう方もいるのではないでしょうか?

もちろん、すぐには決められない方もいらっしゃいます。でも、治療の主体は他でもなく患者さん自身です。誰かに委ねるのではなく、自分で決めることが、満足いく治療を受ける上で欠かせないのです。悩む時間が必要であれば、それを用意するのも治療の一環と思っています。症例にもよりますが、まず保険診療ベースで今やっておくべきことを済ませることもあります。例えば歯が抜けてしまった部分を補う場合、インプラント治療に興味があるけれど、費用や治療の痛みが不安で決められないようであれば、まずは歯列の崩壊などを防ぐためにも保険診療で部分入れ歯を作製することを提案します。部分入れ歯で補うことで事足りると感じるかもしれませんし、「やっぱりインプラントを入れたい」と思うかもしれません。一見すると遠回りに感じるかもしれませんが、考える機会を用意することで、患者さんはより納得して治療を選べるのではないかと思います。
病診連携にも取り組み、地域に根差した歯科診療を実践
近隣の医療機関とも密接に連携されているそうですね。

インプラント治療や難しい抜歯を行う場合、あるいは口腔がんなどの心配がある場合は、近隣の大きな病院を紹介しています。病院の口腔外科であれば設備が充実しているので全身麻酔下での治療も可能ですし、万が一治療後にトラブルが生じた場合も適切に対応できる体制が整っていますから、患者さんにとっても安心できるかと思います。私自身、責任を持ってご紹介できるよう日頃から病院と信頼関係を築き、顔の見える連携を心がけています。
開業から現在までを振り返り、何か変化があったと感じますか?
予防歯科の重要性を理解して、当院を受診してくださる患者さんが増えたと感じます。予防歯科がめざす究極は、虫歯や歯周病にならないことであり、そのために私たちは治療に向き合っています。病気になって悪くなった歯を削ったり、それを人工物で補ったりはできても、元通りの状態に回復させることはできない。だからこそ、悪くならないようにしていくのが大事で、当院でも一番に重視してきました。このスタンスは、この先も変わることはありません。
今後の展望をお聞かせください。

今後も、気軽に歯のことを相談できる歯科医院であり続けたいと思っています。地域に根差しながら、クオリティーを追求し続けるとともに、私自身も大学病院の先生方にも引けをとらないように常に新しい知識を吸収して成長していきます。その上で、患者さんにはわかりやすく、理解を促せるような説明を心がけることで信頼関係を築き、一緒により良い治療をめざしていきたいです。