中村 毅 院長の独自取材記事
なかむら耳鼻咽喉科
(岡山市北区/備中高松駅)
最終更新日:2025/11/14
備中高松駅から徒歩2分の場所にある「なかむら耳鼻咽喉科」。大学病院をはじめとする複数病院の耳鼻咽喉科で、めまいの外来やアレルギーの外来、さらに補聴器の外来などで研鑽を重ねてきた中村毅院長が2012年に開業したクリニックだ。中村院長は「患者さんを家族と思って接する」ことをモットーに、常に「自分の家族だったらどう診断するか? どういう処方をするべきか?」を念頭に、患者に寄り添って診療を行っている。院内には岡山県内では少ない補聴器適合検査の機器を備え、月のうち10日ほど補聴器の専門家が訪れ、補聴器の外来を行っている。また、中村院長はダニのアレルギーとスギ花粉症の治療に有用な舌下免疫療法の経験が豊富で、同院でも積極的に治療を行っている。そんな中村院長に同院の方針や、行っている治療について話を聞いた。
(取材日2025年10月3日)
3代続く想いを受け継ぎ、新たな土地で開業
これまでの経歴を教えてください。

私の祖父、父が耳鼻咽喉科の医師なので、小さな頃から医師になろうと考えていたんです。大学は祖父、父と同じ日本医科大学に進学し卒業後、大学付属病院の耳鼻咽喉科に入局しました。そこで2年間研修医を務め、めまいの外来やアレルギーの外来、さらに補聴器の外来で研鑽を積み、睡眠時無呼吸症候群の検査や手術にも携わりました。その後、山形県の北村山公立病院に派遣され、2年間さまざまな手術を学び、日本医科大学の付属病院に戻ったんです。そこから千葉にある日本医科大学千葉北総病院に異動し、助教と医局長を務めた後、当院を開業しました。
どうして、このエリアに開業されたのでしょう。
もともとは当院の前身となる中村耳鼻咽喉科を祖父が姫路で開業し、父が継いでいましたが、私が日本医科大学千葉北総病院に勤務していた2011年、東日本大震災が起こりました。その時まだ子どもが小さかったので、妻の実家がある岡山県に避難をさせたんです。そして今後のことをじっくりと考えた結果、妻と子どもが千葉に帰ってくるよりも私が岡山県に移住したほうが良いと決断しました。この場所に決めたのは周辺に耳鼻咽喉科が少なかったからというのが大きな理由です。もし震災がなければ父のクリニックを継いでいたかもしれません。震災によって人生が大きく変わりました。小学生の時に父から「いい医者になるよ」と言われたことがあるのですが、まだ父にはいろいろな面で追いついていないですね。
院内の内装では動線にこだわられていますね。

そうですね。新型コロナウイルスの流行以前から、感染症の疑いがある発熱をしている患者さんと、それ以外の患者さんの出入り口を分けたかったんです。インフルエンザに罹患した場合、高熱でつらいのに隣の患者さんに気を使いたくないじゃないですか。また、診察まで横になっていたいという気持ちにもなるでしょうから、そういうスペースもつくりたかったんです。逆に耳掃除を目的に来た患者さんが、万が一インフルエンザに罹患されるのも申し訳ないですし、待合室がそれほど広くないので、診察の順番が来るまで車の中で待ったり隣の薬局に行ったりされる方のために、ポケベルを用意しています。順番が来たら鳴らしますので、それまでは院外で安心してお待ちいただけます。
患者を自分の家族と思い親身に診療
クリニックの診療方針と理念をお聞かせください。

大切にしているのは「患者さんを家族と思って接する」気持ちを忘れずに診察することです。常に「自分の家族だったらどう診断するか」を念頭に置き、診療をしていますので、患者さんにも何でも話をしていただきたいですね。例えば、すでに診療を受けたのに症状が改善しなかったため当院に来られた患者さんは、それをおっしゃらないことが多いんです。もしそのような場合、薬の話になった段階で、以前他のクリニックに通っていて薬を処方してもらっていたということがわかったとしたら、薬を変えないといけなくなる場合があります。最初から何でも話していただけるとありがたいですね。また、患者さんがインターネットで自分の症状を調べ、アレルギーと判断して来院されることがあります。もし診察結果がアレルギーでないことに怒りをにじませる患者さんがいらっしゃったとしても、患者さんを家族だと思い、違う病気だとはっきりとお伝えしています。
補聴器の外来についてお聞かせください。
当院では聴力検査の器械の他、補聴器適合検査の機器を備えています。これはクリニックではあまり備えていない機器だと思います。耳鼻咽喉科の多くの医師は、患者さんの聴力検査をして補聴器を使ったほうがいいと診断した場合、補聴器販売店を紹介するんですよ。でもこの辺りには補聴器販売店がないため、当院では月のうち10日ほど補聴器の専門家が滞在し、聞こえのお悩みに対応する補聴器の外来を行っています。補聴器適合検査の機器を使いながら、患者さんに合う機種を選んでお試しいただいて、聴き取りにくい音域などに合わせ微調整してと、約30分の時間をいただいています。
補聴器の利用を検討している方に向けて、お試し期間を設けられているのですね。

はい、そうです。お試し期間中に「こういうところが気になる」とおっしゃることをすべて解決してから導入していただいています。早い場合、お試し期間が2週間から1ヵ月の間に決まるのですが、長い場合は3ヵ月たっても決まらないこともあります。お試し期間を設けることで、導入後もきちんと利用していただけると考えています。もし、いろいろと調整したけど合わなかったという場合は利用を中断し、私のほうから補聴器の専門家に返却します。患者さんから直接断らずに済むようにすることで、より気軽にお試しいただけると思っています。当院で補聴器を選ばれた方が、長く装用を続けてくださるよう、そういった心がけをしているんです。
舌下免疫療法は親から子に贈ってあげられるプレゼント
こちらで行われている舌下免疫療法とはどういった治療ですか。

舌下免疫療法はダニのアレルギーとスギ花粉症の方に使える治療方法です。これまでは、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりという症状が出るアレルギー性鼻炎やスギ花粉症は、飲み薬や点鼻薬といった対処療法が普通でした。舌下免疫療法は、アレルゲンとなる物質が配合された治療薬を舌の裏に含み、しばらくそのままにしてから飲み込む治療法です。これを毎日続けて行い、アレルゲンの含有量を増やしていきます。治療には3~6年の時間がかかりますが、アレルギー症状が出なくなることが見込め、完治しなくても症状を緩和させることが期待でき、薬の服用を減らすことにつながります。岡山市では小学1年生から6年生までは無料、中学1年から高校3年までは1割負担で診療を受けられる制度があります。また、治療をやめてから12年間は症状が出ないことが期待できるといわれています。
舌下免疫療法は大人にも有用ですか。
はい、もちろんです。私が所属していた日本医科大学付属病院では舌下免疫療法のほか、アレルギー物質のエキスを直接皮下に注射していく皮下免疫療法も行っています。私は、日本医科大学大学院教授に師事し、彼が率いていた舌下免疫療法の研究チームに所属していました。そして長年にわたり研究に携わり、保険適用後は多くの患者さんの治療にあたり、豊富な臨床経験を積んでいます。よく相談に来られる親御さんの話を聞いていると、「子どもにアレルギーを遺伝させてしまった」と申し訳なく思っているという声を聴きますが、私はこの治療は、親から子どもに贈ってあげられるプレゼントだと思っているんです。
最後に読者の方へのメッセージをお願いします。

たまに、アレルギー性鼻炎で鼻が詰まって口が開いた状態のお子さまがいらっしゃいます。小さな頃からその状態だと、親御さんは何とも思わなくなって病院に連れて来られないのですが、そういうお子さんこそお越しいただきたいです。ほかには難聴の自覚がないご年配の方にもお越しいただきたいです。補聴器を利用したら8割くらい言葉を聞くことが見込め、聞き間違いをかなり減らすことが期待できます。大体70代から「体は元気だけど、音や声が聞こえにくくて」という方が増えていきます。やがて呼びかけに応じなくなり、脳に音が入らなくなると認知症が進むことがあるというデータも。そうなると人生がもったいないので、聞こえが悪くなったら補聴器をつけて音を入れてあげてほしいです。でも自覚がないケースが多いので、ご家族の方がちょっと変だと思ったら病院に連れて行ってあげてほしいです。

