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川崎 泰史 院長の独自取材記事

在宅療養支援クリニックかえでの風

(町田市/古淵駅)

最終更新日:2020/07/08

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2012年に開院した「在宅療養支援クリニックかえでの風」は、在宅医療を専門とするクリニック。病院と同じ治療を自宅でも提供したいという理念のもと、医療用麻薬の投与、腹水をろ過して点滴するCART(腹水濾過濃縮再静注法)のほか、在宅輸血も可能な体制を整えている。2019年から院長に就任した川崎泰史先生は、大学院で研究している時に末期がん患者の在宅での受け皿が少ないことを憂い、それをきっかけに在宅医療の道を選んだという。自らを「縁の下の力持ちが向いている」と評する川崎院長。その言葉の端々や穏やかな物腰から優しい人柄が伝わってくる。そんな川崎院長に、さまざまな職種との連携の中で行う在宅緩和ケアについて、日々の診療内容やチーム力の大切さ、そして同クリニックの特徴を聞いた。
(取材日2020年3月31日)

患者が「病とともに生きる」を支援する在宅緩和ケア

在宅の緩和ケアについて教えてください。

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私自身は、緩和ケアとは「病とともに生きる」ことのサポートだと思っています。患者さんには、無理して病と闘うのではなく、痛みや苦痛を和らげながら上手く病と付き合っていきましょうと説明しています。例えば、がんがあれば、むくみが出ることがあります。そのむくみはつらいのか、生活に支障を来しているのかを患者さんに聞きます。つらいようであれば、つらさを軽減する。生活に支障を来しているのなら対処する。そのどちらでもないなら、あえて触らず、新たな医療行為で費用や手間が発生しないようにする。こういった視点も緩和ケアにおいては大切だと考えています。

先生が在宅医療に携わられたきっかけは何だったのですか?

私は自治医科大学出身なので、卒業後は計6年間離島、へき地といわれるところに勤務しました。ですから、1人だけで島民の病気予防から治療まで対応し、往診や訪問診療の経験もありました。その後、何か専門を持ったほうが良いのではないかと考え、先端の医療を学ぶために母校の大学院(血液科)に進学しました。大学院での4年間は研究中心で臨床に携わることは少なかったのですが、血液のがん患者さんの終末期に在宅での受け皿が少ないことに気づきました。血液疾患は専門外の先生方にとっては経験が少なくわかりにくいものと捉えられ、自宅に帰ろうとしても受けてくださるところが見つからず、そのまま病院で最期を迎える方が少なからずいらっしゃいました。

それで受け皿になろうとお考えになったのですね。

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以前離島で行っていたような“ホームドクター(かかりつけ医)”といわれる総合的な診療を行うスタイルが自分には向いているのではないかと考えていたこと、そして血液のがんも含めたさまざまな病気の在宅緩和ケアに対応できる受け皿の必要性を感じていたことが在宅医療の道に進もうと決意したきっかけとなり、当院への入職につながりました。

こちらのクリニックの特徴を教えてください。

宮木理事長は、病院と比べても遜色のない医療を提供したいという理念を掲げて当クリニックを立ち上げました。現在、当院には宮木理事長を含めて5人の常勤医師が在籍し、それぞれの得意分野を生かして仕事をしています。例えば、医療用麻薬の投与、腹水をろ過して点滴するCART(腹水濾過濃縮再静注法)のほか、昨年からは在宅輸血も始めました。手術や放射線治療など機器やスタッフが充実している病院でしかできないこともありますが、できるだけ病院と在宅の差を埋めることを目標にしています。技術的・マンパワー的な理由などで他のクリニックが敬遠しがちな診療行為であっても、薬剤師や訪問看護師など、さまざまな方から援助をいただき積極的に取り組んでいます。

さまざまな職種が連携しチームで取り組む在宅緩和ケア

緩和ケアにはさまざまな職種の方が関わられるそうですね。

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在宅医療は、さまざまな職種が一つのチームとして連携することが大切です。人口の少ない離島では当たり前のように実践していたことですが、今は町田市という人口の多い都市部での実践になります。事業所が違う、訪問看護師、ケアマネジャー、薬剤師などが別々に活動するため、お会いする機会も少ない状況です。そのため、電話やSNS、e-メールなどさまざまなツールを駆使してコミュニケーションをとる努力をしています。医療の現場では医師が周りを引っ張っていくイメージがありますが、私自身はどちらかというとみんなで肩を組んで二人三脚のように進んで行きたいという思いがあります。医師、訪問看護師、相談員、事務員、訪問薬剤師、みんなそれぞれの役割があって別々に仕事しているのですが、共有される価値は「患者さんのため」というところですね。

まさにチームで取り組む医療なのですね。

そうですね。例えばチームの中には、訪問薬剤師という強力な仲間がいます。薬剤師が注射製剤の医療用麻薬を無菌状態で容器に充填し、それを患者さんの自宅に届けてくれます。その届けられた薬剤を訪問看護師が患者さんに投与する。それにより、痛みを持続的に緩和していくことが可能になります。また、薬剤師は患者さんの痛みなどの病状だけでなく、生活上の課題も伝えてくれます。何より薬の専門的な知識を持っていらっしゃるので、毎日のように相談したり、ディスカッションしたりして方針を決めています。在宅で緩和ケアを行うためにはなくてはならない存在です。

専門知識を持つ方々の連携、とても心強いです。

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訪問看護師やケアマネジャーなどの専門職の方々も、それぞれの分野で患者さんに関わり、チームに情報提供をしてくれます。もちろん医師も行います。訪問診療は週に1回、あるいは2週間に1回という頻度ですから、診察外の時間をどうやってサポートしていくのかが課題で、その答えは多職種で連携することだと思っています。医師の思いやスタンスをチームに伝え共有することがとても大事になりますね。

患者さんはご高齢の方が多いのですか?

当クリニックは、がんの終末期の患者さんが多く、ご高齢の方ばかりではありません。宮木理事長は1歳にもならないようなお子さんを診ていたこともありますし、私が担当している患者さんにも30代や40代の方が多くいらっしゃいます。病院への通院を続けたい、そのために何とか家での生活を支えてほしいという方は、どちらかというと若い方が多い印象です。ご高齢の方は、がんの積極的な治療ができないなら家でゆっくり過ごしたいと考え、ご家族も同様の意見であることが多いと思います。

患者とともに、どの道を選択するかを決めることが大切

先生が医師を志したのはなぜですか?

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私の母親は看護師でしたが、医療が身近な環境で育ったというわけではありません。私が中学生のときに父親が胃がんを患いました。早期だったので手術を受けることになり、幸いなことに再発することなく元気に過ごしております。そのおかげで家族も救われました。そのときに患者本人はもちろん、同時に家族も救うことができる医師というのは良い仕事だなと思い、この道をめざしました。その当時から、今の在宅医療に通じるホームドクター的な医師に対する憧れはありましたね。

診療で大切にしていることは何でしょう?

患者さんやご家族がどうしたいのかを聞くようにして、医療の押しつけにならないよう気をつけています。時々患者さんとご家族の思いがすれ違っているケースがありますが、そういうときは、ご家族にお話しして、ご本人の意志を尊重するような流れをつくっていくようにしています。それが自分たちの仕事かなと思います。また、抗がん剤や手術といった病院で行われる治療の選択とは異なり、在宅の緩和ケアでは人生の最終段階をどのように過ごしたいかを患者さんと話しをしながら決めていきます。この点は在宅医療ならではなのかなと思います。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

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私はリーダーになることが苦手なのですが、院長という役目を仰せつかった以上は、みんなが働きやすい環境をつくることに尽力していきたいと思います。誰が上でも下でもない、みんな大切な一員です。そういう協力体制の中で一人ひとりが一生懸命にやっていこうという雰囲気は大事にしていきたいですね。それはもちろん患者さんを支えるチームのすべての職種の方々に対しても同じ思いです。在宅の緩和ケアは、本人・家族が一丸となって取り組むことが大事です。そのために私たちができることを最大限サポートしていきます。それは医師だけではなく、チームが一丸となって行うサポートです。安心して頼っていただけたらと思います。

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