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宮木 大 院長の独自取材記事

在宅療養支援クリニックかえでの風

(町田市/古淵駅)

最終更新日:2019/08/28

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2012年に町田市で開院した「在宅療養支援クリニックかえでの風」は、在宅医療を専門とするクリニック。院長を務める宮木大先生は救急医療を専門としてキャリアをスタートしたが、「地域医療から社会を変える」との思いから在宅医療の分野で新たな道を歩み始めた。特に末期のがん患者が穏やかな最期を迎えられるようにと、患者に寄り添い、患者の尊厳を保つよう配慮した在宅療養に力を注ぐ。在宅でも病院と同等の鎮痛剤を用い、抗がん剤治療やCART療法を受けることができる体制を整えているのも、患者が望む生き方をできる限り尊重するためだ。「後悔なく最期を迎えられるよう、複数の選択肢があることを知ってほしい」と語る宮木院長に、診療への思いや今後の展望などじっくりと聞いた。
(取材日2016年12月21日)

体の痛みだけでなく心の苦しみも含めて緩和ケアを行う

どのような患者さんを在宅医療で診ているのですか?

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当院では、通院が困難な要介護3以上の方や積極的な治療を行っても改善が見込めない終末期の方を数多く診療しており、看取りも行っています。特に多いのは、末期がんの方で、その割合は全体のおよそ7割になります。がん拠点病院や大学病院からの紹介によって、当院での在宅医療がスタートする場合が多いですね。末期がんの患者さんの中には、全ての標準治療をしても良くならない、または、標準治療ができないということで、立ちすくんでしまっている方々がかなりいらっしゃいます。その状況を何とかしたいという気持ちで、在宅の緩和ケアに取り組んでいます。

緩和ケアのあり方について、考えをお聞かせください。

近年、緩和ケアという言葉を知る人は少しずつ増えてきましたが、その考え方は徐々に変わりつつあります。従来は病院での治療がもう何も無いという状況になってから緩和ケアを始めるのが一般的でした。しかし、最近は、治療と緩和ケアはがんと診断されたときから同時に進めていくべきものだという考え方になっています。病気が進行すれば、治療と緩和ケアの割合を変えていくということです。例えば、がん患者は体の痛み以外にもいろいろな痛みを抱えており、がんになったことでうつ状態になるケースもありますが、これも痛みの1つだと考えることができるでしょう。こうした精神的なストレスや苦しさなども含めて、一緒に悩んでいくことが緩和ケアだと考えています。

診療方針について教えてください。

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患者さんに寄り添うということです。医療従事者は医療を主として考えがちですが、多くの人にとってみれば、医療と関わりを持つのは、人生の一部の期間でしかありません。それなのに医師がその人の人生をコントロールしてよいはずがありません。あくまでも本人がどういう生き方を望むのか、どういう人生観を持っているのか、ということをふまえて選択肢を提示していくのが医師だと考えています。在宅療養を望む方とそのご家族からは家で過ごしたいという思いを持って当院に連絡をいただきますが、そこで、なぜ家で過ごしたいのかをしっかりと話を聞いてあげることが重要なのです。

一人ひとりの人生を受け止めて尊重することが大切

心に残っている患者さんとのエピソードはありますか?

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中南米の民俗学を研究されていた大学教授の患者さんを思い出しますね。その先生は末期がんで、状態としては自分で立ったり座ったりすることができないほど弱っていました。あるとき、その先生と話をしていると、もう一度だけ授業をしたいと言われたのです。なんとか希望を叶えようと、ベッドをデイサービスの施設内に用意して、授業をしてもらいました。私たちスタッフとデイサービスの利用者さん、総勢30名ほどの聴講生を前にして、お話をしているときの先生の表情が忘れられませんね。人生をかけて研究し、蓄えてきた知識をみんなに伝えたいという先生の思いを実現させることができました。病床にあってもご自身のアイデンティティを意識することで、尊厳を保つことに繋がったと思っています。「患者さん」という言葉で一括りにせず、一人ひとりの人生を受け止めて尊重することが終末期患者の緩和ケアでは大切な仕事だと強く感じる経験でしたね。

特長的な診療や取組みについて、お聞かせください。

特長として、1つ目は病院で使われている痛み止めは、医療用麻薬を含めて、ほぼ全て在宅療養で使えます。患者さんの状態を見極め、適切に使い分けています。2つ目は腫瘍内科を専門とする常勤医師がいますので、在宅で抗がん剤の点滴など、化学療法が受けられます。外来で受けられるところは多いですが、自宅で受けられることで、抗がん剤治療のためだけに通院する必要がなくなります。3つ目はCART(腹水濾過濃縮再静注法)療法を行っています。がんなどの病気によっておなかに水がたまり、苦痛となる場合があります。一般的には腹水を抜いて対応しますが、この水の中には、体にとって良い成分と悪い成分、両方が含まれているで、どんどん抜いていくと体が弱ってしまうという側面があります。CART療法であれば、腹水を濾過し、悪い成分だけを取り除き、良い成分は点滴で体に戻すという治療なので、体への負担が少なくてすみます。

在宅医療に携わるまで、どのような経験を積んでこられたのですか。

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私が医師を志したのは高校3年生のとき。ニュース番組で国境なき医師団が災害現場で活躍している姿を見たことがきっかけでしたね。鹿児島大学医学部に進んで学ぶうちに、日本国内で災害医療分野について専門的に取り組んでいるところは限られた病院だけということを知り、それならば救急医療分野に進もうと考えるようになりました。大学卒業後、慶応大学病院の救急科に9年勤めて、その後、関連病院の川崎市立川崎病院の総合診療科を経て、今に至ります。

ビジネススクールでの出会いを機に在宅医療の分野へ

在宅療養支援のクリニックを開院するきっかけについて、お聞かせください。

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川崎市立川崎病院での総合診療科時代に、3、4年目の若手医師を指導する立場を経験しました。若手の面倒を見ながら、自分の仕事もやっていかないといけないという状況の中で、しっかりとマネジメントについて学ぶ必要があるということを感じ、ビジネススクールで学び始めました。そこで出会ったのが当グループの創立者です。彼と医療のあり方、社会のあり方などについて意見を交わし、話をする中で「一緒に社会を変えよう」と声をかけられ、在宅医療分野に取り組もうと決めました。「一緒に訪問診療をやろう」と声をかけられていたら断っていたと思いますね。2001年にNPO法人を立ち上げ、まずデイサービスから始まり、2007年から訪問看護を、そして2012年に在宅医療をスタートしました。よりよい社会に変えていくために、これからも行動し続けていきます。

休日はどのように過ごしていますか?

子どもがいますので、公園で一緒に遊ぶことが多いですね。子どもって不思議なもので、ただ走り回るだけで、ゲラゲラ笑って楽しそうにしています。その様子を見ていれば、元気をもらいますね。学生時代は柔道に打ち込んでいたのですが、最近はしていません。子どもが大きくなったら、もう少し運動したいし、趣味のテナーサックスも楽しみたいなと思っています。

今後の展望についてお聞かせください。

人生の最期を自宅で穏やかに迎えたいと希望している末期がん患者は、この近隣地域だけで、1年間に3000名ほどいるという調査があります。しかしながら、実際には、希望が叶って自宅に戻れるのは10パーセント程度です。つまり、残りの90パーセントの方はご自身の希望にそわない形で最期を迎えているのです。この数字を1パーセントずつでも、改善させていくことに全力を注いでいきたいです。

読者の方へメッセージをお願いします。

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日本では、死というものを避けるような空気があります。しかし、どこかのタイミングで家族の死、または自分自身の死と向き合う瞬間が訪れます。それならば、最期を迎えるにあたってどうすればいいか、情報を集めたり、自分なりに考えてみたりするべきだと思います。実際に、最期をどう迎えるかについて、見ないふり、聞かないふりをして、後悔された方々をたくさん目の当たりにしてきました。ご本人もその家族も悔いのない穏やかな最期を迎えられるように、早い段階でどのような選択肢があるのか知っておいてほしいですね。そのための相談窓口もありますので、話を聞きたい方は気軽に連絡していただきたいと思います。

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