原田 健一 理事長の独自取材記事
都城フォレスト・クリニック 脳神経外科
(都城市/都城駅)
最終更新日:2024/03/18

都城駅から車で5分。「都城フォレスト・クリニック 脳神経外科」は、国道10号から程近く、駐車場も完備されているため車での来院もしやすい。2012年に原田健一理事長が開業したこのクリニックは、物忘れを専門に診る外来を設け、認知症デイケア施設と通所リハビリテーション施設も併設されている。原田理事長は自身の経験から、予防に重点を置いた診療を提供。特に脳卒中は食生活の見直しも重要と話し、患者の不安も受け止めつつ、リスクもしっかりと説明するよう心がけている。認知症については、検査や家族の話などから総合的に診断し、診療に取り組む。市や医師会の認知症に関する活動も積極的に行っている原田理事長に、同院の診療内容や地域医療への想いを聞いた。
(取材日2023年10月25日)
自身の体調不良が転機に。認知症にも注力
開業までの経緯を教えてください。

もともと私は鹿児島の生まれで、大学も鹿児島大学に行きました。大学卒業後は大学の医局に入局し、急性期の患者を多く診ていました。そこから東京に行って、興味のあった他科での診療に携わっていました。ただ、そちらの診療科は肉体労働でもあったため腰を痛めてしまい、療養としてお世話になった先輩のいる病院で勤務することになりました。開業を決めたのはその頃です。勤務医だと使える機器や診療などで制限が出てきてしまうんです。自分のやりたい仕事がしたいと思い、開業しました。この場所で開業したのは辺りに脳神経外科を扱うクリニックが少なく、地域の皆さんのお役に立てるのではと思ったからです。
この地域の特徴はありますか?
高齢の方が多いです。今は認知症をはじめとした病気の初期症状で受診する方も増えましたが、開業当初はかなり症状が進んだ状態で受診される方が多かったです。軽度の患者さんの受診が増えたのは、病院やクリニック、メディアなどによる啓発活動のおかげだと思います。なので、患者さんの年齢層も高めですね。認知症は患者さんご自身とご家族で来院される場合もありますし、季節の変わり目は脳卒中の患者さんも増えます。当院は総合病院などと連携していますので、緊急を要する場合はすぐにそちらに搬送できるよう準備しています。
なぜ認知症に注力するようになったのでしょうか。

それまで認知症には専門的に関わってこなかったのですが、大学の先輩が熱心に取り組んでいたんです。そのうち、勤務先の病院でサテライトクリニックをつくることになり、私が院長に就任しました。初めて認知症デイケアにふれ、いいシステムだと思い、開業するならこのシステムを取り入れようと考えました。実際にやってみて楽しいですし、やりがいもあります。当院のデイケアでは、利用者さんの残存機能を引き出すことを目標の一つに掲げています。作業療法士が複数在籍し、一人ひとりに合ったケアの提供に努めています。
患者の負担を考えた検査機器を導入
どのような症状の患者さんが受診されますか?

認知症の場合は、ご家族が気づいて患者さんを連れてくることが多いです。もしくは「最近物忘れが気になる」と言って、患者さんご本人が来られることも増えました。脳卒中についてはいつもと違う頭痛やめまい、半身のまひやしびれといった症状で来院される方が多いです。もちろんすべてが脳卒中というわけではないですが、左右どちらかの手足のまひに加えてろれつが回らない症状があると、脳卒中である可能性が高いです。また、一時的に脳の血流が悪くなってまひが起こる場合もあります。中には一過性黒内障と呼ばれる、一時的に視界が失われる症状もあります。血の流れが回復すると症状もなくなるのですが、脳卒中に準じた治療が必要になる場合もありますので、一度検査したほうがいいかもしれません。
こちらではどのような診療を受けることができますか?
当院は検査機器を充実させているので、必要に応じた検査を受けることができます。当院でできる検査はMRI、CT、頸部血管エコー、エックス線検査、心電図、血脈検査などです。特にMRIはオープン型で左右に空間のある機器を導入しているため、MRIの閉塞感が苦手な方や認知症の患者さんも受けやすいのではないかと思います。また当院では、患者さんの要望に即する治療の提供を方針としていますので、認知症は患者さんご本人だけでなく、ご家族の要望もよく聞くようにしています。脳卒中の患者さんは、慢性期の方であればリスクの説明はしっかりした上で、生活習慣を正すことの大切さを説明しています。頭の症状は不安を抱えて来院されることが多いので、安心してもらいたいのはやまやまですが、安易なことは言わないようにしているんです。
物忘れの診療について教えてください。

検査としては、MRIでまず脳の状態を診ます。患者さんご本人には認知機能検査をし、ご家族には別室で家庭の状況をヒアリングします。総合的に判断していますので、血液検査をして栄養状態などを調べる場合もあります。軽度の症状で患者さんご本人だけが来院する場合から、症状が進んでご家族が患者さんを連れて来院される場合など、幅広い方が来院されます。軽度の場合は軽度認知障害と呼ばれる、健康と認知症の間である場合も少なくありません。重度の場合だと、行動障害が起こり、家族が困って来院するケースも見られます。認知症は進行を遅らせることが目的の薬しかないので、可能であれば症状が軽いうちに来ていただきたいです。気になったら相談、という感じで構いませんので、ぜひいらしてください。
生活習慣を見直すことが予防につながる
予防に重点を置かれていると伺いました。

脳卒中も認知症も、発作や症状が起きなければ健康寿命が延びますから。生活習慣を見直し、食事と運動に気をつけるとかなり違ってくると思います。特に脳卒中は、発作が起きる度に脳がダメージを受けることになりますから、生活習慣は重要です。患者さんの意識次第で、生活習慣はいくらでも変えることができるんです。私自身も、生活習慣の大切さは身をもって実感しました。腰を痛める直前は今より体重が10kg以上ありましたし、血液検査では尿酸値や中性脂肪、コレステロール値が見たことない数値をたたき出していました。そこで腰を痛めて、食生活や運動などの生活習慣を見直したんです。私自身の失敗談として、こういった話を患者さんにすることもありますよ。
今後の展望をお聞かせください。
都城市という地域に根づいた活動をしっかりしていきたいです。可能な限り患者さんが在宅で生活できるよう、サポートしていきたいです。市の認知症初期集中支援チームにも所属し、私にできる仕事は精いっぱい取り組んでいます。地域の医師会の認知症に関連した活動にも関わらせてもらっているので、これからももっと地域貢献していければと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

脳卒中や頭痛、めまいなど、気になることがあれば気軽にご相談ください。認知症でお困りの方も、ご家族も、人から物忘れを指摘されて不安になった方も、一度来ていただければ力になれると思います。「ずっと頭痛が続いているけど、いまさら受診するのも気が引ける」「生活に支障はないから、受診したところで何もなさそう」そういった方も遠慮なく来てください。何もなければそれで安心できるでしょうし、病気の発見は早ければ早いほど対処できることがありますから。今抱えている不安や心配事を聞かせてください。