佐藤 達明 院長の独自取材記事
さとう耳鼻咽喉科
(松江市/揖屋駅)
最終更新日:2023/04/03

昔からの住民が多く暮らす一方で、近年若い子育て世代も増えてきている東出雲町錦新町に「さとう耳鼻咽喉科」はある。院長の佐藤達明先生はこの地域のかかりつけ医として、長年にわたり子どもから高齢者まで幅広い世代に向けた医療を提供してきた。診療に対する真摯な語り口と朗らかな笑顔からは、日々患者に温かく接する姿が目に浮かぶ。院内は白を基調とした清潔感あふれる内装で医院のイメージキャラクターである象の絵やぬいぐるみなどが所々に置いてあり、来院した子どもが安心して過ごせるような優しい雰囲気が広がっている。「耳鼻科は耳や鼻の症状が出た時に通う場所」というイメージを抱かれることが多いものの、実際の診療範囲は幅広いと語る佐藤先生。今回はその診療の特徴や患者と接する上で大切にしている点などについて、詳しく聞いた。
(取材日2023年2月24日)
耳や鼻だけでなく風邪やめまいなどの症状にも広く対応
こちらではどんな診療が受けられるのでしょう?

首から上全般の領域を対象に診療を行っています。「耳鼻科」と聞くと中耳炎やアレルギー性鼻炎など、耳や鼻に関わる症状だけを診るという印象を持たれる方も多いかもしれませんが、実際は「耳鼻咽喉科」と言って、診療範囲はとても広いのです。呼吸をする、においを嗅ぐ、味わう、聴く、平衡感覚を保つといった、生きる上で欠かせないいろいろな機能に関連するさまざまな症状を担当するのが、耳鼻咽喉科の役割です。ですから一般的な風邪やめまいの症状を抱えた患者さんにも対応しています。耳鼻咽喉科の守備範囲への認知度がやや低いことが課題ではありますが、今後は多くの方に認識してもらい、身近なかかりつけ医院として気軽に利用していただけたらと思っています。
他の医療機関とも連携されているのですか?
診療の範囲が広い分だけ、患者さんの症状によっては他の診療科との連携が欠かせません。例えば、食べ物をかみ砕き細かくしたものを塊にして飲み込むことを「嚥下」と言いますが、そのプロセスに関連した症状の場合、より詳細な評価については総合病院の耳鼻咽喉科に依頼しています。他にも誤嚥性肺炎の症状が見られる時には内科、口腔ケアが必要である場合には歯科といったように、必要な場合にはさまざまな医療機関と連携をとって協力しながら患者さんの症状に対応していきます。
医師を志したきっかけや開院までの経緯をお聞かせください。

私の父も耳鼻咽喉科の開業医で自宅の隣に医院がありました。そんな環境だったので幼い頃から自然と医師を志すようになったのだと思います。臨床での経験を重ねながら大学院ではめまいを専門的に学び、2005年に当院を開院しました。その際にこだわったのは、院内での薬の処方と土足のまま入れる設計にしたことです。当時自分の子どもと病院に行った際に、靴の履き替えや院外の薬局まで足を運ぶことにとても手間を感じていました。そんな自分の体験から、お子さん連れの方が少しでも通いやすい医院にしようと考えたのです。当院に来院される患者さんの半数は小さなお子さんたちなので、この経験が役に立っていたらうれしいですね。
子どもや家族の不安な気持ちに温かく寄り添う診療
子どもと接する時に気をつけていることはありますか?

耳鼻咽喉科での治療は機械も使うので、やはりお子さんにとっては怖い場所なのだと思います。ですから治療中は「頑張っているね」と、できるだけこちらから声をかけるようにしています。それから問診の時には基本的に親御さんの顔は見ていません。診療を受ける患者さんはあくまでお子さんですからね。ご本人にきちんと向き合って丁寧にお話をするように心がけています。それでもやっぱり泣いたり暴れたりといったことはありますが、それは仕方のないことです。親御さんはどうかお気になさらずに見守っていただければと思いますね。
「お助けぞうさん」について教えてください。
耳鼻咽喉科に通院されている患者さんは、夜中に鼻血が出たり耳が痛くなったりといった症状を経験することが少なくありません。そんな時でもご家庭で慌てずに対処ができるように、当院では「お助けぞうさん」という象の絵が描かれたプリントを配布しています。このプリントは鼻血の止め方や耳掃除の仕方など、ご家庭でできることを疾患ごとにまとめたもので、皆さんが自由に持ち帰れるように中待合室に置いています。鼻血が出た時にティッシュを詰めるなど間違った対応をしてしまう方や、中耳炎での耳だれに驚いてしまう方も多いのですが、このプリントを参考にして落ち着いて対処していただけたらうれしいですね。ちなみに当院のイメージキャラであるぞうさんのイラストは私がデザインしました。
子どもの耳掃除もお願いできるのですか?

はい。ご自宅でお子さんの耳掃除をすると、どうしても耳垢を奥に押し込んだり耳の中を傷つけたりしてしまいます。医師によって考え方はざまざまなのですが、私は小学校に上がるくらいの年齢まで耳の掃除は耳鼻咽喉科医に任せてもらえたらと考えています。4ヵ月から半年に一回くらいのペースで定期的にご来院ください。鼻水の吸引についてもご家庭で鼻吸い器を使用してくださって問題ありませんが、粘りがある場合などうまくできないこともあると思いますので、これも難しいと感じたら無理をせずにお任せください。ご家庭で不安に感じることがあれば、ぜひお気軽にご相談いただけたらと思います。
地域の相談窓口のように患者の悩みに向き合いたい
大人の方ではどんな症状で来院されるケースが多いですか?

ご高齢の方はめまいが多いです。人は頭の中で平衡感覚を保つための情報処理を行いますが、情報処理がうまくいかないとめまいの症状が現れます。他にも、加齢に伴い足腰の筋力が落ちてふらつきが出る場合もあるため、診察を通じて評価をしていきます。患者さんが診察室に入ってこられた時から、足幅の広がりや杖の有無など歩き方のチェックから診察を始めます。一方、中年の方に多い症状は喉のつかえで、特に男性では逆流性食道炎のケースが多いですね。喉の粘膜は敏感にできており、そこに胃酸が当たることで症状が現れます。食事の時間帯が遅く、食後横になる習慣のある方や炭酸が入った飲み物を飲む方に多く見られます。消化時間である食後1〜2時間は横にならないほうがいいでしょう。喉と胃の間に高低差があれば予防できるので、休みたい方にはリクライニングの利用をお勧めします。根本原因は生活習慣なので、患者さんにはその見直しをお願いしています。
問診に時間をかけるとお聞きしました。
例えばめまいの発作が起こって大きな病院に搬送された患者さんでも当院に来る頃には症状が治まっていて、評価に必要な情報が十分に得られないことがあります。そのため問診を丁寧に行うことによって原因がどこにあるのかを明らかにしていきます。「起床時にめまいが起きた」と訴える患者さんには、それが布団の中で横になっている時なのか、それとも体を起こした時なのかという点まで確認します。情報を細部まで集めて診断の手がかりにするため、日頃から問診はとても重視していますね。
補聴器の相談にも対応されているのですね。

近年の研究で難聴が認知症のリスクを高めることがわかってきています。補聴器の使用によって発症の予防や発症時期を遅らせることが期待できますが、高価なため購入できない方も多いのが実情です。そこで購入時に公的な補助が得られるよう、行政にかけ合っていけたらと検討しているところです。社会が高齢化していく中、耳鼻咽喉科医として取り組む必要のあるテーマの一つだと考えています。
今後の展望と読書へのメッセージをお聞かせください。
長くこの地域にいることが、私の役割だと考えています。患者さんがお困りの症状を治療するのはもちろんですが、診察を受けて問題がないことがわかり安心してもらうのも大切なことだと思っています。ぜひ相談窓口のように利用していただきたいですね。耳鼻咽喉科では内科と同じく目に見えないところを扱うことが多いので、患者さんには丁寧な説明を心がけています。早めに対処すると気持ちも楽になると思いますので、お一人で抱え込まずにご相談ください。