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中村 幸生 院長の独自取材記事

中村クリニック

(大阪市福島区/福島駅)

最終更新日:2021/10/12

中村幸生院長 中村クリニック main

JR環状線・福島駅すぐの場所にある「中村クリニック」は、2010年に開院した外科と内科の診療所。同院の大きな特徴は在宅医療に力を入れていること。院長の中村幸生先生は、大阪大学医学部を卒業後、大学病院など高度医療機関などを経て、在宅医療への強い思いを胸に同院を開院。午後の診療時間を中心に1日5~10件の患者宅を精力的に回っている。病気にだけ注目するのではなく、人同士のコミュニケーションを大切にするのが中村先生の診療スタイル。インタビューでも終始、穏やかな雰囲気で一つ一つの質問に真摯に対応する姿が印象的だった。中村先生に、日々の診療への思いや今後の展望などについて、じっくりと語ってもらった。

(取材日2017年6月12日)

在宅医療に夜間の外来など、多角的に地域を支える

まずは貴院の特徴について教えてください。

中村幸生院長 中村クリニック1

もともと外来のみで開院していましたが、2013年から在宅療養支援診療所として在宅医療にも力を入れるようになりました。3年前からは割合が逆転して、外来よりも訪問診療の方が多くなっています。それだけ地域からのニーズも高まっているのと同時に、訪問診療をする医院が少ないということなのだと思います。診療科目は外科と内科。その他、漢方専門の外来や禁煙治療、感染症の治療、各種健康診断も行っています。また当院では困難な専門的な検査や治療が必要な患者さんには、高度医療機関との連携を図り、速やかな診断・治療が受けられるような体制も整えています。

どのような患者さんや症状が多いですか?

この辺りは駅前なので若い方が多いです。ビジネス街と住宅地のちょうど境目になっているので、さまざまなライフスタイルの患者さんがいます。火曜と金曜日は予約制の夜間診療も行っていて午後8時まで開院しています。外来は風邪や胃腸炎の患者さんが多いですね。冬になるとインフルエンザの方も増えます。高血圧や糖尿病など生活習慣病の患者さんも通院されています。訪問診療の対象となるのは、病院への通院が難しい方。例えば、認知症、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経疾患の患者さん、がんや心臓病の方などです。訪問診療の患者さんは80~90歳代が中心で、103歳の患者さんもお二人いらっしゃいますよ。がんの方だともっと若い世代の方もいらっしゃいます。

訪問診療もあると、スケジュール管理が大変そうですね。

中村幸生院長 中村クリニック2

訪問するエリアは診療所を中心に16キロ圏内と決められています。といっても16キロ先だと堺市になってしまいますので、そこまではほぼ行っていません。主に午後の時間帯を訪問診療としていますが、あまりきちきちに予定を入れず、急に1件増えても大丈夫なように余裕はもたせるようにしていますよ。でも、いきなり3件の依頼が入ることもあるので、その場合は病状が安定している患者さん宅にお電話して調整が必要になる場合もあります。年に数回は外来診療中に緊急の往診の依頼が飛び込んで来ることがあります。その時は外来を止めて看板を下ろしてからすぐに、患者さんのお宅に向かいます。

家に帰りたくても帰れない患者と接して在宅医療の道へ

訪問診療について、もう少し詳しく教えてください。

中村幸生院長 中村クリニック3

訪問診療は皆さんが想像されるようないわゆる「往診」とは違います。往診は急な症状の時に行くものですが、在宅の訪問診療は日時を決めて定期的に行うものです。患者さんの症状に合わせて訪問の頻度を決めて、ドクターがご自宅に通います。私は基本的に午後の時間帯を訪問診療に充てていて、1日5~10件くらい回っています。患者さんの症状は基本的に落ち着ている方ばかりなので、聴診器で胸の音を聞いたり、血圧を測ったり、注射をしたりするくらいで、積極的な治療というよりは健康を見守るというイメージです。「前回と何か違いがないですか?」というスタンスで診療しています。ただし、症状が厳しくなったら救急車で大きな病院に行っていただくこともありますので、その判断力は求められます。

訪問診療を始めようと思ったきっかけは?

勤務医時代は外科が専門でした。症状はがんが多く、病院で亡くなる方が多かったです。でも患者さんの中には、自宅に帰りたいと望まれる方が多くいらっしゃいました。当時は、病状が悪いのに家にお帰しすることはできないというのが、病院の基本姿勢でした。しかも、その頃の私は訪問診療のことは知りませんでした。家に帰りたいのに帰れず、病院で亡くなる患者さんのことがいつも気がかりでした。そんな時に、訪問診療をされている先生にお会いしてお話を聞くうちに興味を持ち始めました。もちろん、当院を開院した当初から訪問診療をしようと決めていました。

診療で大切にしていることは何ですか?

中村幸生院長 中村クリニック4

人同士のコミュニケーションを大切にしています。病気にだけ注目するのではなく、患者さんについての全般的なことを会話を通して聞き出すように努めています。診療で必要なことはもちろんしますが、時間が許す限り患者さんとお話しするようにしていますね。スケジュールを考える時、対話する時間はきっちり取るようにしています。訪問診療では、日頃の状態との変化に気づくことが重要ですから、患者さんの普段の様子を知っておくことは診療において貴重な情報となります。また大きな視点では、在宅医療が中心なので、皆さんが安心して生活できるのを支えるというスタンスで訪問診療に臨んでいます。暮らしの中にドクターが入って行ってお話を伺うというイメージです。ですので、外来とは違った感覚で仕事をしています。

訪問診療の医師と支えあうネットワークをつくりたい

ところで、休日の過ごし方やご自身の健康法は?

中村幸生院長 中村クリニック5

訪問診療をしているので遠い所へは行けません。この4~5年は関西から出ていませんね。私自身、そこが一番の悩みです。仕事とプライベートのバランスを取るのが難しいです。訪問診療をするドクターが増えないのも、それが最も大きな原因かも知れません。実際、休日でも電話は手放せませんし、日曜に訪問診療に行くこともあります。ただ、私も年を重ねていきますので、このような働き方が10~20年後もできるとは到底思えませんから、方法を模索しています。健康法はなるべく運動をすること。予約を取ってジムに行き、トレーナーさんの指導の下、体を動かしています。もともと運動嫌いなので、強制力が働く方法で運動を無理やり習慣にしているんですよ(笑)。あとは1駅分を歩くようにしたり、訪問診療が福島区だけの日は自転車で回るなど、日常生活の中でも運動量を増やすようにしています。

今後の展望について教えてください。

現状では、それぞれドクターが在宅医療をしている「点」の状態。将来的には地域の診療所同士で線にしていき、広げていってネットワークをつくり、お互いに支え合える仕組みが構築できればと思います。多くの先生が訪問診療をしやすい環境になれば、地域医療も豊かで強固なものになっていくと思います。自治体としてうまくいっている所もあるので、福島区でも実現できればと思っています。現状でも、どうしても大阪を出て遠くに行く必要があるときは、その留守の間をお願いできる先生がいますが、それはあくまでも個人的な関係。そうではなく仕組みとして、例えば担当制で週末や夜間に待機したり、ドクターが順番で長期休暇を取れたりできればいいですよね。団塊の世代が全員75歳以上になる2025年問題はもう目の前。在宅医療の仕組みがしっかりあれば、私も含めて誰もが安心できる老後が迎えられるので、ぜひ取り組んでいきたい課題です。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

中村幸生院長 中村クリニック6

かかりつけの医院や先生をつくっておくことをお勧めします。体調が悪くなった時だけインターネットで検索してその病院に行くのではなく、いつでも相談に行けるような関係を先生と築いておくことが大切だと思います。たとえ専門外でもドクターはその患者さんのお話を聞いて、その症状ならこの科が適していますよとか、他院を紹介することもできます。かかりつけ医としては、患者さんの普段の様子を知り定期的に接していると、「ちょっと痩せたかな?」「顔色が少し悪いかも」というような、体調の変化に敏感に気づくことができます。かかりつけ医をつくっておくことで、早期発見・早期治療に結びつく確率が高まりますので、ぜひ気軽に相談に行ってみてください。

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