寺尾 浩 院長の独自取材記事
てらお皮ふ科・アレルギー科クリニック
(福岡市城南区/六本松駅)
最終更新日:2022/09/15

福岡市営地下鉄七隈線・六本松駅より車で6分、西鉄バス友丘三丁目停留所より徒歩1分、閑静な住宅街の中にある「てらお皮ふ科・アレルギー科クリニック」は、専門的な知識と経験をもとに地域医療に貢献しているクリニックだ。院長の寺尾浩先生は、皮膚免疫・アレルギー学を専門として九州大学や国立小倉病院、浜の町病院などで研究と臨床を経験している。「正しい診断と適切な治療で、病気を上手にコントロールする方法を一緒に考えていきましょう」と優しく語る寺尾院長に、診療において大切にしている考えや、主な病気の治療方法などを詳しく聞いてきた。
(取材日2021年2月4日)
正しい診断と適切な治療で、皮膚疾患にアプローチ
医師になるきっかけから、開業までの経緯を教えてください。

子どもの頃から兄のように慕っていたいとこが整形外科の医師をしておりましたので、その姿に憧れて医師の道を選びました。産業医科大学を卒業後は2年間の九州大学皮膚研修医を経て九州大学大学院に入学し、免疫学の野本亀久雄教授のもとで研究に注力しました。「人間、一生勉強だ」という野本先生からの言葉は今でも私の行動の軸となっており、自分で学ぶことの大切さを教えていただいたと思っています。当時、同じ釜の飯を食べてきた他科の先輩や同僚、後輩とは今でも公私に渡る大切な仲間です。その後は九州大学皮膚科の外来医長などのスタッフを経て、浜の町病院で皮膚科部長を7年務めました。特にこの期間に、私の臨床医としての引き出しを増やすことができて、さまざまな皮膚疾患に対して自分の考えで治療を行うことができたと思っています。その後、生まれ育った六本松に近いこの友丘に開業しました。
専門分野や、来られる患者さんの主訴について教えてください。
私の専門分野は皮膚免疫・アレルギー学となります。当院では皮膚科疾患全般を診ています。患者さんは、アレルギーでお困りの方や、アトピー性皮膚炎、じんましんなどをご理由にお越しいただく方が多いですね。また、「皮膚は内臓の鏡」といわれるように、内臓悪性腫瘍や膠原病の初期段階として、治りにくい皮膚疾患が生じることもあります。当院では治りにくい慢性的な疾患や専門性を要する疾患まで幅広く対応しております。皮膚にかゆみや違和感があるとき、市販の薬でもなかなか治らないときなどはぜひお越しください。正しい診断をして初めて正しい治療ができます。専門的な知見から丁寧にお話しできればと思っています。
治療において大切にされていることを教えてください。

正しい診断を行ってその診断をもとにした適切な治療を行うことが大切です。原因もわからないまま薬を出して様子をみましょう、という治療はしたくありませんから、当院ではきちんとした診断をするために採血による各種アレルギー検査のほか、難治性の手荒れや顔の皮膚炎などには各種のパッチテスト検査も行っています。また、薬を処方するときも外用薬であれば丁寧に塗り方の指導を行い、定期的な通院の中で症状の変化を観察し、症状がコントロールできているかを判断していきます。今までなかなか治らなかった疾患でも、丁寧に原因を探っていきますので、お困りの方はぜひご相談ください。
アトピー性皮膚炎も、自分でコントロールがめざせる
多くの方が悩まれているアトピー性皮膚炎について教えてください。

アトピー性皮膚炎の診断には3つの要素があります。まず、かゆみがあること。次に、年齢によって変化する特徴的な皮膚炎であること。最後に、何度も繰り返すということ。日本皮膚科学会の診断基準では、これらを満たした場合、アトピー性皮膚炎であると診断が下されます。しかし、一見アトピー性皮膚炎に見えるような状態でも、違う皮膚病である可能性は十分にありますので、正しい診断を受けることが大切です。アトピー性皮膚炎の原因としては、皮膚が持つ外界からのバリア機能が弱く、さまざまな刺激から皮膚炎を起こしやすくなっていること。ホコリやダニ、花粉などの環境抗原に対するアレルギーのある人は、その抗原に皮膚が触れてしまったときに皮膚炎がひどくなりやすいですね。
アトピー性皮膚炎の主な治療方法はどのようなものですか?
アトピー性皮膚炎の治療方法には、薬を用いた治療方法、日々のスキンケア、病状を悪化させるものが何なのかを特定して対策する方法があります。薬を用いる際は、ステロイド外用薬と、かゆみを抑えるための内服薬などを組み合わせていきます。重症の患者さんには紫外線療法、免疫抑制剤内服療法、生物学的製剤注射療法など組み合わせていきます。アトピー性皮膚炎は肌の最も外側にある角質の水分含有量が減ってしまい、皮膚が乾燥することで皮膚のバリア機能が低下して起こる場合があるため、乾燥した皮膚を保湿することで皮膚のバリア機能の回復を促すスキンケアが有用です。また、アトピー性皮膚炎には発症原因となる悪化因子が存在するため、その悪化因子が何なのかを特定できれば、事前に対策することも可能です。これらを組み合わせることで、うまく病気と付き合っていきながら、病状をコントロールしていくことをめざしていきます。
病状をコントロールして、じっくりと付き合う姿勢が大切なのですね。

治療を途中でやめることなく、根気強く取り組むことが大切です。中には、ステロイド外用薬に抵抗感があり早々に塗るのをやめてしまう患者さんもいらっしゃいますが、ステロイド外用薬は、専門の医師の適切な指導のもと使用すれば全身性の副作用を抑えながら使用できるお薬です。抵抗感のある患者さんもまだまだいらっしゃいますが、できる限り丁寧に説明をしてその不安を払拭できるように心がけています。皮膚炎とは、文字どおり皮膚が炎症を起こしている病気です。火事が起きたとき最初に鎮火をするように、まずはその炎症を抑える必要があります。そこで役立つのがステロイド外用薬なのです。正しい使い方を知っていただくためにも、薬の正しい使用方法や塗り方、分量なども当院で丁寧にお伝えしておりますので、お悩みの方はご相談ください。
皮膚とアレルギーの専門家として、地域に貢献
日常生活品が皮膚に合わず炎症を起こす事例もあると伺いました。

アトピー性皮膚炎と症状が似ていますが他の病気として、接触皮膚炎(かぶれ)があります。これは全身どこでも起こり得るもので、皮膚炎ができている部位の診察を行うことで、原因物質を推定します。思ってもみない日用品が皮膚炎の原因だったという方もいらっしゃいますよ。例えば、シャンプーやリンス、ゴム手袋などの日用品、化粧品や食物、アクセサリーや歯科金属などの金属類など。これらの原因物質がどれであるかを知る上でパッチテストを行っています。
パッチテストとはどのようなものなのでしょうか?
パッチテストは接触皮膚炎の原因となっていそうなものを確定するための検査です。皮膚のかぶれを起こしやすいさまざまな物質を直接背中や上腕の内側の皮膚にパッチテープを貼って調べていきます。準備している検査試薬だけでなく、日頃皆さんが使用している日常生活用品も使用して、幅広く原因を追究していきます。検査は3日間かけて行うため、その間入浴や汗をかくスポーツができませんが、それ以外はいつもどおりの生活をすることができます。初日にパッチテープを貼り、48時間後にパッチテープを外して判定を行って原因物質がどれであるかを判別。貼った所が赤くなったりかゆくなったりしたら陽性です。繰り返し皮膚炎を起こしてしまうという方は、一度パッチテストをお受けになることをお勧めします。
では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

皮膚は体の中でも特に目に見える部位であり、さまざまなものと常に触れて過ごしています。そんな外的要因にさらされやすい所だからこそ、日頃から関心を持ってケアをしてほしいです。多くの皮膚病は的確な診断で、うまくコントロールできる病気がほとんどです。長年悩まれていた人も、適切な検査と治療を経て、健康的な人とほとんど変わらない生活を送ることは可能です。小さな違和感やかゆみなどの皮膚トラブルがあったら、原因追及のためにも早めに医療機関を訪ねてください。当院では今後も新しい治療方法を積極的に学んで取り入れ、日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本アレルギー学会アレルギー科専門医として、皆さまの健康を支えてまいります。