蓮井 正史 院長の独自取材記事
はすい小児科
(門真市/大日駅)
最終更新日:2025/04/04

大日駅から徒歩2分の「はすい小児科」は広いショッピングモールの中にあり、待ち時間に買い物もできる利便性に優れた小児科クリニックだ。院長の蓮井正史先生は、大学病院の小児科で感染症や免疫不全疾患などの診療にあたり、2011年に開業。幅広い疾患の診療にあたるほか、今ほどワクチンが普及していなかった時代に苦しむ子どもやその家族を目の当たりにしたという経験から、予防接種の啓発にも注力している。ただし、たとえ接種に抜けがあっても、穏やかにその重要性を説くのが蓮井スタイル。10人に伝えて1人でも接種につながれば良いと語る。小児科を怖い所だと思われないよう、できるだけゆっくりと話すようにしているという蓮井院長に、診療で大切にしていることなどについて詳しく聞いた。
(取材日2025年2月21日)
薬の処方を前提とせず、丁寧な診察と説明を重視
開業以来、土日も診療されているんですね。

僕の実家は祖父の代から小児科医院をしているのですが、祖父と父は急な患者さんがあれば日曜や夜でも往診していましたから、小児科の医師というのは「土日も働くもの」という意識がもともとあったんです。大学病院に勤務していた時も週末の当直があり、急な体調不良で駆け込んでこられる患者さんをいつも診ていたので、土日も対応したいという思いは開業前から強かったんですね。僕には週末にするような趣味もないので、ちょうど良いかもしれません(笑)、と言ってもサッカーや野球は好きなので、練習帰りのユニフォームを着たお子さんがやってくると、「ポジションどこ?」なんていう話をして楽しんでいます。
小児科の医師として長いキャリアをお持ちですが、こちらではどのような疾患を診ていただけるのでしょうか。
当院では乳幼児から中学生くらいまでの幅広い疾患を診療しています。インフルエンザや胃腸炎などはもちろん、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーも診ますし、予防接種、乳幼児健診も行っています。小児科というのは基本的に中学3年生までが対象ですが、小さい頃から診ているお子さんに、「高校生になったから診ません」と言うことはありません。中には社会人になっても頼ってくださる方がいるくらいです。診察はウェブ予約制で、順番が近づくとメールでお知らせするシステムなので、待ち時間に買い物をすることもできます。熱のある患者さんと、そのほかの患者さんの診療が重ならないように動線を分けて診療していますので、その点についても心配せずお越しくださいね。
診察する上で大切になさっていることがあれば教えてください。

一番大事なことは、見逃がしがないように診察すること、また、しっかりと説明することだと思っています。親御さんは日々忙しいですから、「薬だけもらえれば」というお気持ちになるのも無理はありません。ですが、大したことはないと思って来られている患者さんの中に、医師が診ると既に重症化している例があるんですね。例えば問診で「少し咳をしている」と伺って診察してみると、重症の喘息発作だったということがあります。逆に、「昨日すごく咳をしていたから喘息発作じゃないですか」と心配されている親御さんに「大丈夫ですよ、良かったですね」とお伝えすることもあるので、診察は欠かせません。マイコプラズマ肺炎も咳が出ますから、検査をして風邪などと区別することも重要です。ですから、薬は二の次、三の次で、「まずは診察が大事ですよ」と親御さんにはよくお伝えしているんです。
つらい経験があるからこそ、予防接種の重要性を説く
予防接種の啓発に力を入れて取り組んでいらっしゃるのはなぜですか。

例えば現在、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンは定期接種になっていますが、僕が医師になった頃にはありませんでした。ですから、勤めていた大学病院でも細菌性髄膜炎で入院するお子さんがたくさんおられたんです。そのような状況だったので、まず僕がめざしたのは、「細菌性髄膜炎をちゃんと治療して、親御さんに喜んでもらえるような医師になろう」ということだったんですね。ところが2000年代に入ると薬剤耐性菌がいっぱい出てきて、髄膜炎の治療が非常に困難になってしまいました。新しい抗菌剤を投与しても治療がうまくいかず、後遺症が残ってしまった方や、命を落とす方がいらっしゃって、つらい現実を何度も目の当たりにしました。今では細菌性髄膜炎の患者さんはほとんど見られなくなりましたね。
ワクチンの重要性を肌で感じられたわけですね。
はい。逆に、今の若い医師は細菌性髄膜炎の治療経験がほとんどないはずなんです。そのような事情もあって、ワクチンを打っていない方を見ると僕なんかは、もうゾーッと怖くなるわけですよ。おたふく風邪も同じで、大人になってかかると髄膜炎や難聴になる可能性が高くなるので、任意接種でもぜひ打っていただきたいと思っています。私立の学校では海外研修の際にB型肝炎などの接種が義務づけられている場合もありますからね。とはいえ、あまり強く言ってお母さん方を追い詰めてはいけないので、「もうそろそろ打ってほしいなあ」といった具合に優しくお伝えするよう心がけています。かかりつけのクリニックがある場合は、もちろんそちらで接種していただくのが一番ですが、他院で受ける場合でも、これまでの接種に抜けがあれば新たにスケジュールを立て直して差し上げますし、希望があればごきょうだいについても同様に対応しています。
花粉症の治療にも注力されているとか。

スギ花粉症の治療として、当院では舌下免疫療法にも対応しています。最短5年は投薬が必要ですが、5歳から実施可能で、親子で治療を受けられるケースも少なくありません。お子さんだけで取り組むよりもお二人のほうがモチベーションが上がるというメリットもあるでしょう。スギ花粉の飛散は受験シーズンと重なるので、将来的なことを考えてこの治療法を選択する方も多いです。
医療情報を積極的に発信するなど、地域医療に貢献
ホームページ上に毎週「医療コラム」を執筆されているのはなぜですか。

診療中はどうしても、今目の前で苦しんでいる症状をどうするかというお話になるので、「皆さんに本当に知っておいてもらいたいこと」をお伝えすることができません。例えば、先ほどの耐性菌の話などがそうですね。患者さんのお薬手帳を見ると、「黄色い鼻汁が出る」という症状だけで、海外では非承認の抗菌薬を他院から処方されているケースがあります。ですが、単に膿性鼻汁というだけでは抗菌薬の効果が認められないだけでなく、一部の抗菌剤の使用によって耐性菌が出現する恐れもあるために注意が必要なんです。このように、親御さんにぜひ知っておいてもらいたい情報を毎週コラムにしてホームページに上げるようにしています。
感染者情報も毎週更新されていらっしゃいます。
そうなんです。ニュースサイトなどで、都内では〇〇という病気が流行中、といった情報を目にしても、大阪と東京では流行にタイムラグがあります。また保育園などから、今こういう病気が流行っているというお便りが来ても、プライバシーの問題から病名ごとの罹患者数まで出しづらいのが現状でしょう。それでは結局、今地域で一番流行しているのは何なのかがわからず、親御さんは注意のしようがありません。そのため、当院から具体的な情報を発信することで、予防や早期発見・治療につながればと考えています。
最後に今後の展望や、読者へのメッセージをお願いします。

僕は、診察にかける時間が他の医師に比べて長いかもしれません。その分、待ち時間があって申し訳ないのですが、しっかりとお話を伺って信頼関係を築き、見逃しのないように診るということを大切にしています。ですから診察が終わる頃になってお母さんから、「先生、全然関係ないことなんですけど」と話を切り出されたときは、「お、僕のことを信頼してくれたのかな」とうれしくなって身を乗り出してしまうんですよ。今後も医療を通して皆さんのお役に立てるよう1年でも長く診療を続け、今診ている患者さんが親になったときに、「小児科は怖くないよ」とお子さんに伝えていただけるような記憶の礎になることができれば幸いです。そしてまた親子でお顔を見せに来てもらえたらうれしいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは予防接種/3500円~、入園前検診・健康診断/3000円