山野 ちなみ 院長の独自取材記事
やまのクリニック
(姶良市/加治木駅)
最終更新日:2025/06/06

加治木駅から徒歩5分ほどの場所にある「やまのクリニック」。自然光がたっぷり差し込む院内は明るく、患者がリラックスできるような空間となっている。同院は山野ちなみ院長が2011年に開業し、内科、消化器内科、神経内科、リウマチ科を標榜。山野院長は生活習慣病の治療や負担の少ない内視鏡検査を得意とするほか、夫の山野嘉久先生によるHTLV-1の外来を月に1度実施している。最後は笑顔で帰ってもらえるようにをモットーに診療にあたり、その朗らかな人柄や、きめ細かな気配りが印象的な山野院長に、診療や検査のこだわり、患者への思いをたっぷりと聞かせてもらった。
(取材日2025年1月22日)
丁寧な問診と患者が納得・安心できる対応を心がける
良い意味で医療機関らしくない、明るい雰囲気のクリニックですね。

ありがとうございます。院内でくつろいで過ごしていただけるように明るい色を使ったり、光がたくさん入るような設計にしました。待合室は天井を高くしているので圧迫感も少ないと思います。私たちは、患者さんに「最後は笑顔で帰ってほしい」をモットーに診療にあたっているんです。病気がその場で治るわけではないけれど「安心した、来て良かった」と感じてもらえるような診療や雰囲気づくりをスタッフ全員で心がけています。また、納得して帰っていただきたいので、専門用語をなるべく使わず、誰にでもわかりやすく丁寧に説明することや、質問に対し明確に答えることも意識しています。
山野院長をはじめスタッフは全員女性なんですね。
はい。女性の患者さんにとって、男性には話しづらいような症状もご相談いただきやすいのではないでしょうか。私は問診を看護師に丁寧に行ってもらうようにお願いしているんです。聞き取った内容を電子カルテに反映する際、患者さんのご家族や仕事のこと、最近の楽しかった出来事など症状以外の情報も書き加えてもらうようにしています。そういった生活背景を垣間見ることが診断の参考になるケースも多いですし、患者さんとの対話を大切にしているので、こだわって取り組んでいることです。
どのような患者さんが来られますか?

風邪などの一般的な内科疾患から、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のご相談まで、幅広い年齢層の方がいらしています。全体の7割ほどが女性の患者さんですね。比較的若年層の方も多く、下痢や便秘など胃腸関連のお悩みのほか、痔のご相談をいただくことも。更年期障害により体調不良を訴える方もいらっしゃいます。また、内視鏡検査を行っているので、特に大腸カメラは女性医師による検査を希望されて来られる方も多いですね。この地域で女性医師が開業し大腸カメラを行っているクリニックは珍しいと思いますし、近隣だけでなく遠方からも検査に受けに来てくださる患者さんもいます。
内視鏡検査の苦痛軽減に努め、定期的な受診を促す
内視鏡検査へのこだわりを教えてください。

内視鏡検査を1回だけでなく定期的に受けていただけるよう、なるべく苦痛を与えないよう配慮しています。そのために、無理せず優しく操作するよう心がけたり、極細のやわらかいカメラを使用した内視鏡システムを導入したりしています。胃カメラは要望に応じて、鼻から挿入する経鼻内視鏡と、口から挿入する経口内視鏡の両方に対応しています。また、検査の際にはご希望に応じて鎮静剤をしっかり使い、検査後も患者さんが落ち着いてからお帰りいただけるように、ゆっくり休める環境をつくっていますのでご安心ください。
1回だけでなく、定期的に検査を受けることが大切なのでしょうか。
そうですね。がんなどのさまざまな病気を早期発見し、早期治療につなげることができます。例えば胃がんにおいて、原因であるピロリ菌を除菌したとしても、発がんリスクがゼロとはなりませんので、定期的な検査が、がんの早期発見のための大切な要素となるのです。一方で、患者さんにとっては内視鏡検査を受けるということは大きなイベントですよね。「年に1回だったら頑張れるかな」と思ってもらえるよう、できるだけ苦痛を軽減したいと思っています。患者さんがリラックスしていると検査もよりスムーズに進みますので、緊張させない雰囲気づくりも大切にしています。
生活習慣病の治療にも力を注がれていますね。

コントロールのためにお薬が必要になることもありますが、併せて生活習慣の改善を継続して行っていくことが大切です。そのため、取り組みやすい方法を具体的に提案するよう心がけています。多くの患者さんから聞かれるのは「何を、どう食べたら良くなるのか?」という減塩やカロリー制限など食事に関する質問です。それに対し「塩分は何gまで」などとお伝えするのではなく、もっとざっくばらんに、主婦の知恵を生かして、実践的な取り組み方をわかりやすく伝えることで継続してもらえるよう意識しています。今後はそういった日頃のアドバイスをSNSでも発信していきたいです。
山野嘉久先生によるHTLV-1の外来についても教えてください。
夫は、HTLV-1というウイルスが原因で起きるHAMという脊髄の病気の専門家で、月に1度、当院でHAMやHTLV-1キャリアの外来を行っています。HTLV-1キャリアとは無症状のままHTLV-1に感染し続けている方のことを指します。日本には推定約100万人の感染者がいるとされ、その中でも南九州地区の感染者は多いんです。鹿児島県において約10人に1人がHTLV-1に感染しているといわれており、その中の約5%の方が白血病や神経の病気を引き起こす可能性があります。私も検査で陽性を指摘された方へのサポートを行っており、感染者の方に正しい知識を持っていただき、少しでも不安を取り除けるよう努めています。
小さな不調も遠慮せずに相談できるクリニック
漢方薬も扱われています。

開業後は特に、検査では異常がなく病名はつかないけれど、何らかの症状で苦しんでいる方をたくさん見てきました。そういった症状にアプローチする手段の1つとして、漢方薬は非常に有用なツールだと考えています。漢方薬は一般的に何ヵ月も飲まないと効果がないというイメージが強いかと思いますが、数日で効果が期待できるものも多いため体質に合わせて1~2週間など比較的短いスパンで漢方薬を処方して様子を見るようにしています。患者さんが「もう少し治療を頑張ろう」と前向きな気持ちになれるように努めています。すべてがうまくいくわけではありませんが、漢方薬も含めたさまざまな方法を使って皆さんのお悩みに寄り添えればと思っていますので、お気軽にご相談ください。
診療において心がけていることは何ですか?
患者さんの顔をきちんと見てお話を伺うことです。たくさんの患者さんが来られる中、お一人あたりの診療が短くなってしまうこともありますが、何より大事なのは限られた時間をいかに有意義で密度の濃いものにするかということだと考えています。また、スタッフ一同、元気に明るく患者さんと接することも心がけています。皆さんに気持ち良く過ごしていただきたいですね。
山野院長が医師を志し開業されるまでの経緯もお聞かせください。

幼い頃は学校の先生に憧れていましたが、高校生の時に家族が脳の疾患で倒れ、リハビリテーションを熱心に行ってくださる先生の姿に感動し、医療系の職業を考えるようになりました。進路選択で悩んでいたところ、担任の先生に背中を押され鹿児島大学医学部に進学し、卒業後は同大学病院の第三内科に入局。その後は、子育てをしながら介護施設内のかかりつけ医として勤めていました。鹿児島大学病院で難病の研究・臨床をしていた夫が神奈川の大学病院に赴任。子育て中ということもあり私は地元で一般的な内科症状や生活習慣病の診療、内視鏡検査、ワクチン接種などで、病気の早期発見・早期治療に重きを置いた診療を展開したいという思いがあり、2011年に当院を開業しました。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
今後も新たな薬や治療法、予防法などを積極的に学び、クリニックでできる最善の治療を提供していきたいです。また、内視鏡検査のハードルを下げることで、地域の方々の健康をより一層支えていきたいと思っています。「なんとなく調子が悪いけれど、何科を受診すればいいのかわからない」という時も、遠慮せずにご相談ください。一緒に改善方法を考えていきましょう。皆さんにとって気軽に相談して、安心できる場所であり続けたいです。