越野 健司 院長の独自取材記事
たまゆ内科クリニック
(松江市/玉造温泉駅)
最終更新日:2024/07/08
松江市の中心街から車で10分ほどの場所にある温泉地、松江市玉湯町。国道9号線に面した場所に、2010年から診療を行っている「たまゆ内科クリニック」はある。院長を務める越野健司先生は、自治医科大学卒業後、9年間島根県内の地域医療に従事。専門は消化器内科・内視鏡検査だが、その間、診療科の枠を超えてさまざまな症例の患者を診察したという。同院ではそんな地域医療の経験を生かしながら、予防医療、病気の早期発見に注力し、専門の内視鏡検査をはじめ各種健診や検査に対応している。子どもから大人まで、幅広い年齢の患者が訪れるという同院。「医療難民をつくらない」というモットーのもと、ホームドクターとして地域の住民たちと向き合う越野院長に、地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2023年6月5日)
地域医療に携わった後、生まれ育った玉湯町で開業
医師になったきっかけや、消化器内科、内視鏡検査を専門に選んだ理由を教えてください。
医師になろうと思ったのは、両親が医療関係の仕事をしていたのが大きいです。また、幼少時は体が弱かったこともあり、病院が身近な場所でした。そのため、医師をめざそうと思ったのは自然な流れだったかもしれません。その中でも、消化器内科と内視鏡を専門にしたのは、もともと内視鏡検査をするのが好きだったんです。ただ、鼻から管を通すので、患者さんにとっては痛くて大変な検査でもあります。なので、少しでも患者さんの負担を減らし、痛みを軽減させるために腕を磨きたいというのが目標の一つでした。その延長で内視鏡検査が専門になりました。現在は内科、消化器内科、各種健診など、幅広く対応しています。
大学卒業後は9年間、地域医療にも携わったそうですね。
私の出身校である自治医科大学は、卒業後、9年間地域医療に携わることが義務づけられていたので、島根県の中核都市から遠い地域の病院に勤務しました。循環器、呼吸器、消化器など、さまざまな症状の患者さんが来院されるので、専門にこだわらず、たくさんの経験をさせていただきましたね。精密検査をする場合も、設備の整った病院までは40~50km離れています。検査のためだけに患者さんに長距離移動をしてもらうのは大変なので、基本的なことは病院内でできるようにしました。以前は救急医療も経験し、1日に何台も救急車が来るような病院で働いたこともあります。こうした経験は、今に生かされていると思います。
そんな地域医療の経験を経て、玉湯町で開業したのはなぜでしょうか?
地域医療を経験した後、将来の選択肢がいくつかあり、内視鏡治療や消化器内科を専門とした医師になろうと思ったこともありました。ですが、地域に根差した医療もやりがいがあると考え、開業することに決めました。私はここ玉湯町出身です。なので、生まれ育った地域に恩返ししたいという気持ちもありました。今、来院される患者さんの中には、同級生のお父さんやお母さんもいらっしゃいます。自分のことを子どもの頃から知っている方の診察をするのは、プレッシャーがありますが、同時にお互い話しやすい部分もあるので、「安心できる」と思っていただいているかもしれません。
地域のホームドクターとして、幅広い症状に対応
どんな年齢層の患者さんが多く来院しますか?
お子さんから高齢者の方まで幅広いです。島根県民は約30パーセントが高齢者といわれています。でも最近の玉湯エリアは新しい家がどんどん建ち、若い人も増えてきました。子育て世代も多いですね。中には、一家全員で当院をかかりつけ医にしてくださっているご家庭もあります。また、温泉がある観光地のため、旅行中の方や旅館の人たちがいらっしゃることもあります。肺炎や心筋梗塞、脳梗塞など、症状もさまざまで、必要に応じて救急車を呼びます。旅行中に来られた方たちは、あとからお手紙をくださることもあります。そういう時はやりがいも感じますし、本当にうれしいですね。
こちらのクリニックの特徴を教えてください。
どんな症状の方でも来院していただけるように心がけています。松江市の中心街とは違い、近隣にあまり医療施設がないため、膝が痛いから整形外科に行く、喉が痛いから耳鼻咽喉科に行く、と症状に合わせて科目を選ぶのは難しいんです。ですので、何かあったらまず相談していただける、地域の医療相談窓口になることをめざしています。あらゆる症状に当院だけで対応するのは難しい部分もありますが、患者さんの症状を適切に把握し、専門的な治療が必要であれば適切な施設をご紹介するといった対応を心がけています。ご要望があることには可能な限りお応えしていくことを信条としています。新しい情報や技術も積極的に学ぶようにしていて、スタッフにも外部の勉強会などに積極的に参加するよう呼びかけています。
診察の際、心がけていることを教えてください。
できるだけ気軽に話しやすい雰囲気をつくるように心がけています。質問形式にすると、患者さんも身構えてしまうので、雑談するような感覚で症状や近況をお聞きしています。最初の頃は緊張されている患者さんも、回数を重ねるうちに、だんだん打ち解けてくれる気がします。私に対してだけでなく、受付のスタッフや看護師とも楽しそうにお話をされているようです。雑談で得られる情報はとても大きいです。診察中は聞けなかった話も伺え、そこから得た情報によって適切な治療につながる場合や、患者さんの家庭状況が見えることもあります。クリニック全体でアンテナを張り、スタッフ同士で情報共有しながら患者さんに寄り添っています。
多くの検査や健康診断を実施し、予防医療に力を入れる
予防医療や健康診断にも力を入れているそうですね。
経鼻内視鏡の胃の内視鏡検査や大腸内視鏡検査、超音波検査、エックス線検査の設備がそろっているので、一般検診は一通り受けられます。オプションとしてがん検診、呼吸機能検査なども行っています。内視鏡検査は鼻から通すので、患者さんも緊張しがちですが、スタッフもそれをわかっているので準備には時間をかけ、患者さんにリラックスしてもらえるようにしていますね。あとは、松江市の特定健康診断、全国健康保険協会の健康診断、肺の生活習慣病ともいわれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や、気管支喘息を含めた呼吸器疾患も診ています。消化器疾患については、連携している島根大学から月に何回か消化器内科の医師に来院してもらい、専門的な治療や検査にも対応可能です。エックス線検査室は車いすのまま撮影できるようにしていて、バリアフリーにも気を配っています。
多忙な毎日を送られていると思いますが、先生ご自身はどのように体調管理をされていますか?
開業医は運動不足になりがちで、体調管理として何かしらスポーツをする必要があるんです。だから、以前はマラソンをしていました。フルマラソンも走りましたし、仲間と一緒に美保神社から出雲大社まで走る100kmマラソンに参加したこともあります。駅伝形式でとても楽しかったです。でも、最近はなかなか走る時間が取れなくて、替わりにゴルフをするようにしています。体幹トレーニングにもなるのですが、やっぱり練習する時間が少ないのが悩みです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
医師として、たくさんの患者さんから学ばせていただきました。これからも、たまゆ内科クリニックを地域の方々に育てていただけるよう、力を尽くしていきたいです。私の目標は「誰でも適切な医療サービスを受けられるようにすること」です。いわゆる「医療難民」を出さないよう、地域の総合医療窓口になりたいと考えています。スタッフ全員で、患者さん全員が気軽に相談できる雰囲気づくりを心がけています。何か困ったことがあったら、どんな症状でもすぐに来院していただければと思います。