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中村曜祐 院長の独自取材記事

なかむら眼科

(世田谷区/尾山台駅)

最終更新日:2021/10/12

中村曜祐院長 なかむら眼科 main

尾山台駅前、ハッピーロード商店街沿いビル3階にある「なかむら眼科」。この11月に開院したばかりという真っ白な診療所は、ガラス張りのビルが印象的で通りからでも目を引く存在だ。院長の中村曜祐先生はこれまで大学病院を中心に、10年にわたり白内障手術や網膜硝子体手術などを手掛けてこられた眼科の専門医。開業後もこれまで積み重ねてきた自身のキャリアを生かしていきたいと、連携する東急病院で手術を続けながら、一般眼科診療を行っている。取材時、柔らかい物腰と言葉を慎重に選びながら質問に答える誠実さが印象的だった中村先生。インタビューでは研修医時代の思い出や勤務医時代のキャリアの話、そして開業に対する思いまでたっぷり語っていただいた。

(取材日2010年11月22日)

「患者とじっくり話したい」。その思いで開業へ

まず先生のプロフィールからお聞かせ下さい。

中村曜祐院長 なかむら眼科1


このクリニックを開業する前は、大岡山にある東急病院の眼科医長をしていました。専門は眼球のなかの部位の病気で、いわゆる網膜硝子体疾患と呼ばれるものです。糖尿病や加齢性黄斑変性、網膜剥離、硝子体出血といった手術が必要となる病気を中心に診てきました。ですから開業しても、できればメスを置きたくないなという気持ちを持っていたんです。尾山台で開業したのは東急病院とも距離が近く、以前と同じ環境の手術室を借りてオペすることも可能だということが大きな理由でした。これまで僕が診させていただいていた患者さんたちも通える範囲ですし、そういった点も考慮しました。これまでは通勤時に通り過ぎるだけの町でしたが、以前から街の雰囲気がすごく気に入っていたんです。実際に移ってきてからも駅前の商店街の活気があって、きれいな街だという印象を持っていますね。

研修医時代、思い出に残っていることはありますか?


実は大学を卒業後すぐ、研修医1年目で結婚したんですが、とにかくお金がなくて大変でした(笑)。当時、妻も働いていたので僕より給料が高かったんですよ。今も昔も妻には助けてもらっているかなと思いますね。このクリニックのデザインもすべて妻が一生懸命頑張って考えてくれたんですよ。仕事面での思い出といえば、僕が医局へ入局した頃は今とは比べものにならないほど、本当に雑務が多かった記憶があります。当時、白内障の治療技術が飛躍的に進歩し、短時間で手術ができるようになった時期でした。それまでは1件1件の手術時間が長かったので、1日にできる手術件数も少なかったのですが、技術の進歩で手術件数が格段に増え、それに付随する書類が山ほど増えたんです。その頃のコンピューターは今ほどシステマティックではなかったので、その作業がとにかく大変でしたね。また手術が増えて入院患者さんも多かったのでその対応も大変でした。教授が朝8時半に入院患者さんを回診するので、研修医はそれまでに10人、20人という患者さんの視力測定や検査を全部終わらせないといけなかったんです。僕ら研修医はもちろん、患者さんにも朝早くから起きてもらって準備をするんですが、毎朝忙しくてドタバタしていた記憶がありますね。

医師として成長するにあたり、影響を受けた方はいますか?

中村曜祐院長 なかむら眼科2


厚木市立病院で勤務していた頃、ものすごくハートが熱い先輩がいました。その先輩がすごいなあと思ったのは、何事に対してもとにかく諦めないということでした。先輩は主に糖尿病網膜症、網膜剥離といった、眼科のなかでも長時間にわたる手術を担当されていました。糖尿病などいわゆる失明の危険性が高い病気の場合、本当に病状がこじれているケースですとさらに手術時間がかかってしまうんです。時間がかかるということは限界に近い目の状態で、手術をしても非常に厳しいということなんです。そういった難しいケースでも、先輩は決して諦めず、最後まできっちり治療されていました。そのいい意味での諦めの悪さ、粘り強さを一番勉強させていただいたと思います。先輩は手術技術の素晴らしさもさることながら、後輩にも一生懸命教えてくれました。この先輩の下で働けたことが、今の自分にとっても大きな財産になっていると思います。

急激に進歩した眼科医療の現場で、その可能性を実感

開業しようと思われたきっかけは?

中村曜祐院長 なかむら眼科3


東京慈恵会医科大学を卒業後、長年大規模病院を中心に勤務医をしてきたのですが、どこの病院も時間的に制約のある本当に忙しい現場でした。そのなかで東急病院は、忙しいながらも比較的ゆったりとした現場だったんです。そこで時間的にも少し余裕を持って、患者さんとちゃんと会話をしながら接することができる機会がありました。そうした経験を通じて、「自分がやりたい医療というのはこれなんだ」と痛感したことが大きなきっかけでした。今後勤務医を続けていけば、職場環境によってどうしても状況が変わってしまいます。それで今後も自分のやりたい医療を続けていきたいと開業の道を選んだんです。開業してまだ1ヵ月も経っていませんが、今はじっくり患者さんと向き合って、コミュニケーションをとる時間も増えましたので、自分の理想の形に近づいたかなあと思っています。

開業してからうれしかった出来事はありますか?


これまでの勤務してきた大学病院などでは、病院としての信頼性や設備面で患者さんが来てくださっていたところがありました。でも今こうして開業してみて、患者さんが自分という人間を求めてわざわざ来院してくださっているんだなあと実感することがあるんです。以前は歩いて通ってこられていた患者さんも、僕のクリニックまでわざわざ電車に乗って来てくださるんですね。これは医師としてものすごく幸せなことだなあと思っています。こうした患者さんの要望にきっちり応えていけるような診療所を目指していきたいと思っています。

開院にあたりこだわったところはありますか?

中村曜祐院長 なかむら眼科4


開業後も自分の専門分野の患者さんに対応するために、導入した機器にはこだわりました。眼科は他の科と比べてもとくに検査機器が必要な科。機器ひとつでいろんな治療や検査が可能になりますからね。例えば当院にある光干渉断層装置OCTは、大学レベルの施設などで標準的に置かれている機械です。クリニックレベルではあまり置かれていない機械ですが、OCTがなければ、網膜の病気の細かい診断や経過観察などができなくなってしまいます。しっかり、きっちりした診査、治療ができるよう、院内の環境整備には力を入れました。まだ開院したばかりなのですぐには無理だと思いますが、余裕が出てきたらもっと機械を充実させて、患者さんに還元していきたいと思っています。将来的には大学病院に行かなくても、ほとんどの検査、治療が終われるような診療所にしていきたいですね。

専門性を維持しながら、眼科医としての総合力も上げていきたい

長年眼科医をされていらっしゃいますが、以前と比べて変化を感じることはありますか?

中村曜祐院長 なかむら眼科5


僕が眼科医になりたての頃は、治療できない病気が非常に多くありました。もしくは治療法があっても、劇的に病状がよくなるというような有効な治療法が今ひとつないという状態が続いていました。それがこの十数年で、治療法や治療薬も格段に進歩し、画期的な手術方法に変化してきましたね。傷口も小さく、侵襲の少ない手術にどんどん切り替わり、毎年術式も進化しています。具体的には、これまで失明の危険性が高かった加齢性黄斑変性や黄斑浮腫などの病気が挙げられます。これらは昔からあった病気ですが、以前は有効な治療法が存在しませんでした。失明するのではないかと不安になっていた方も諦めなくてよくなった。これは大きな変化だと思います。そういう意味でもこの10年は医療の可能性をより実感できた10年でしたね。

今後、どのようなクリニックを目指していますか?


今後専門性は生かしていきたいという気持ちはありますが、だからといってこの診療所で、専門だけに特化していこうとは全く思っていないんです。目指しているのは幅広く、いろんな分野の疾患をちゃんと診ていけるような診療所。医師として難しいところですが、大学病院に長くいるとどうしても専門性が高くなって、逆に総合力が落ちていくという面も多少あるんですね。開業したことで自身の専門性も維持しながらさまざまな患者さんと触れあい、眼科医としての総合力もあげていきたいと思っています。

最後に読者の方へメッセージをお願いします。

中村曜祐院長 なかむら眼科6


医療が進歩して人間の寿命はどんどん延びていますが、だからこそ目は大事だと思うんですね。「視力を健康に保ちながら長生きしたい」。これはご年配の患者さんが、実感としてみなさんおっしゃることなんです。目が見える、見えないで老後の過ごし方はかなり変わってきます。そういう意味では目は体の器官のなかでも命に代えられないくらい大切な器官だと思います。その治療に携わっていけるとういうことが、僕にとってのやりがいにもつながっています。30代、40代の若い頃から生活習慣で、老後のクオリティーオブライフも上がってきます。例えば加齢性黄班変性症では、喫煙が悪影響を及ぼしていることは明らかになっていますし、そのほかの目の病気でも規則正しい生活や食習慣がキーポイントになっています。やはり若い頃からの心がけが、長生きしても視力を保つ秘訣かなと思いますね。

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